比較鑑賞のために 目次

1 「愛の別れ」(日本語)クラウディオ・ビルラ       
2 「さよならをもう一度」尾崎紀世彦
3 「アドロ」(日本語)グラシャラ・スサーナ
4 「暗いはしけ」アマリア・ロドリゲス/村上進
5  ―
6 「サイレント・ナイト」マヘリア・ジャクソン
7 「ヴォラーレドメニコ・モドゥーニョ
8 「愛の讃歌エディット・ピアフ
9 「リリー・マルレーンマレーネ・ディートリヒ
10 「カルーソ」村上進

 

11「この胸のときめきをエルヴィス・プレスリー/ピーノ・ドナッジョ/ダスティン・スプリングフィールド/ブレンダー・リー
12「キサスキサスキサステレサ・ガルシア・カトゥルラ&オマーラ・ポルトゥオンド/坂本スミ子

13「バナナボード」ハリー・ベラフォンテ/浜村美智子

14「タイムトゥセイグッバイ」アンドレア・ボチェッリ&サラ・ブライトマン /中島啓江布施明

15「君に涙とほほえみを」ボビー・ソロ/布施明
16「神の思いのままに」ジルベールベコーと堀内
17「帰り来ぬ青春」 シャルル・アズナブール/今陽子

18 ―
19「マック・ザ・ナイフエラ・フィッツジェラルド/渡辺えり
20「ハンブルクにて」エディット・ピアフ/ 金子由香利
21「ソモスノビオス」(「It's Impossible」)クリスティーナ・アギレラ/ 夏川りみ(デュエット:アンドレア・ボチェッリ)/ペリーコモ(ソロ)
22「インシャラー」サルヴァドール・アダモ/ アマリア・ロドリゲス

 

23「アモール・モナムール・マイ・ラブ」クラウディオ・ビルラ/岸洋子
24「アル・ディ・ラ」ベティ・クルティス/岸洋子
25「去り行く今」セルジオ・エンドリゴ/中原美紗緒
26「愛は限りなく」ジリオラ・チンクェッティ/ドメニコ・モドゥーニョ
27「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」トニー・ベネット/ブレンダ・リー
28「ラヴィアンローズルイ・アームストロングサッチモ voとtp)
29「ラスト・ワルツ」エンゲルベルト・フンパーディンク

30「生命をかけて」オルネラ・ヴァノーニ
31「黒い鷲」バルバラ
32「ギターよ静かに」ニコラ・ディ・バリ
33「聞かせてよ愛の言葉を」リュシエンヌ・ボワイエ
34「行かないで」ジャック・ブレル

 

35「上を向いて歩こう美空ひばり/坂本九/マリーナ・ショウ
36「枯葉」サラ・ヴォーン
37「人生よありがとう」メルセデス・ソーサ
38「心遥かに」イヴァ・ザニッキ 
39「Who wants to live forever」ジョルジア

40「明日に架ける橋」ジョルジア

41「ある日恋の終わりが」 ジョルジュ・ムスタキ

42「暗い日曜日」ダミア

43「ガラスの部屋ペピーノ・ガリアルディ

44「涙のさだめ」ジャンニ・モランディ/ボビー・ソロ/イヴァ・ザニッキ

45「愛は君のよう」サルヴァトール・アダモ

46「エ・ヴェーロ」ミーナ

 

47「愛遥かに」ミルバ

48「そして今は」ジルベール・ベコー

49「死ぬほど愛して」アリダ・ケッリ

50「限りなき世界(イル・モンド)」ジミー・フォンタナ

 

 

1~11は、

1.歌詞と曲と演奏 ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど
2.この歌手自身の声、歌い方、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと(VS比較歌手)

 

12~は、

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

V042「暗い日曜日」 ダミア

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.短調の曲ですが、低い主音から、一音程3~4音でしっかり踏みしめながら、上向分散和音で第三音、第五音、高い主音まで昇り詰めた後、さらにその上の高い第三音からの、力強い順次下向を3度の狭い音域で、やはり3回繰り返し、続いて高い主音からも同様に、さらに第五音からもと、かなり暗い曲なのに、決して弱々しい歌い口ではないところが、ますます悲しみを増幅させています。

また、前奏の最後と曲の最後に、コーラスの男性の重低音がとても目立つところが、さらに悲しみを絶望的なものにしていくようで、当時、この曲で自殺者が何百人も出たという都市伝説が、事実のように思えてきます。

伴奏は、コーラスとピアノと一本の管楽器で、メインはコーラスで、ピアノは小さく弱く、管楽器は、薄っすらとしか聞こえません。そこがまた、もの悲しさを助長しているようです。

歌詞の内容は、ほぼ絶対に帰って来ない恋人を思って、自殺するという内容で、その背景には、恋人は戦地で行方不明という話もありますが、歌詞だけでは推し量れない部分です。

 

2.ダミアは、説得力の強い声で、本当にこの曲のために、存在するかのような歌手です。

 

3.「自殺の聖歌」とも言われる曲なので、あまり練習はお勧めしませんが、練習をするならば、日本人歌手がカバーしているものを選んで聞き、それを真似するのが、何となく安心です。(♭Ξ)

 

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1.とにかく暗い歌という印象です。ダミアがフランス語で明るい言語で歌っていますが、曲の暗さの方が圧倒的に勝っています。その意味では歌手というよりも曲が強いといった印象でしょうか。歌詞の内容も暗い。しかしどこか耳に残るメロディは、人をひきつける何かがあるのでしょう。

 

2.ダミアが歌っているせいか、日本でもシャンソン歌手が歌うことが多いようですが、日本のシャンソン歌手にありがちなぼそぼそした感じがなく、明瞭なフランス語と明るい声の音色と響きで歌っていてとても素晴らしいです。言葉が外にでていると言ってよいとおもいます。日本のシャンソン歌手がぼそぼそ聞こえるのは、声が外に出ておらず、そこに感情をこめるからです。どこか暗い印象を受けてしまいます。

 

3.歌詞の内容、メロディに声の響きや音色が影響を受けすぎないようにしましょう。個人的には初心者や基礎力を高めているという人は歌うことをお勧めしません。声が出しづらい条件がそろっている曲なので、曲のトレーニングではなくヴォイストレーニングとしてはあまり向いていない曲だと考えます。

むしろ、歌詞の内容に自分が引きづりこまれるととても陰鬱な感じがしてくるので、この歌詞を客観的に第三者的に感じられる人には、ある意味トレーニングになりえると思います。(♭Σ)

 

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1.歌詞の内容は、恋人と別れた女性が苦悩に打ちひしがれる思いを歌ったもので、短調の旋律によってその歌詞をより引き立たせています。また、前奏の段階で混声のコーラスが入るのはシャンソンでは特徴的だと思います。歌詞の1節目はダミアだけが歌い、2節目からはコーラスも加わって音の厚みが増すことで、女性の苦悩が増大していくさまを描写しているように感じられます。

 

2.ダミアは女性としては低めの声で、芯の強い生々しい声(歌声というより話し声のまま)という印象です。そのような声質が「暗い日曜日」のような苦悩や悲しみを歌う曲にマッチしているように感じます。もちろん声質だけではなく、強調したい部分のテヌートやフレーズ末尾をリタルダンド(だんだん遅く)したりといった歌い方も不自然さがなく、それらが歌詞の内容をより深く表現することにも繋がっているのだと思います。

 

3.原調のまま歌うと人によってはかなり低い音に感じるので、その場合は無理をせずに少し高めに移調して歌うのがよいと思います。ダミアの音源を聞くと割とテンポが揺れていますが、それはあくまでダミアのテンポ感です。参考にするのはよいですが、まず練習の段階ではインテンポでリズムや発音の入れ方を正確に確認しましょう。(♯α)

 

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1.ある女性が、愛する人を失った強い喪失感と、それに伴う「死」というものに対する覚悟を歌った曲だと思います。直接的な因果関係は不明確ではありますが、陰鬱とした詩の内容と曲調から、一時はこの曲を起因と知る自殺者が増えたと言われており、イギリスやフランスでは放送禁止になったと言われています。確かに、カンツォーネや、他のシャンソンのような切なさの訴えとはだいぶ違い、一日中聞いていると陰鬱な気分になってしまうように思います。

 

2.非常に悲しげに語るように歌う印象を受けます。曲調と合ってポジティブさを微塵も感じさせない、悲劇的な印象を強く受けます。

 

3.カンツォーネなどのような、悲しさの中にも熱さを秘めた曲の切なさとは違い、非常に陰鬱とした印象のある曲だと思います。この曲の場合、熱さを込めて歌ってしまうと歌詞の内容とも、音楽的な部分ともミスマッチしてしまうと思いますので、切なく語るように歌うのがよいでしょう。しかし、その表現が日本人的では無く、あくまでも西洋風であることを念頭に置いて歌う必要があると思います。(♭Я)

 

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1.1936年に発表されたというだけあって、4声のコーラスをまじえたとてもクラッシックなアレンジです。

その整然としたアレンジ、コーラスによるしっかりとした和声のせいで、退廃的な歌詞のこの曲を、とてもシリアスで、かつ美しく表現することを可能にしています。

 

2.とても低音が充実した歌手です。下のミまで出ているので、なかなか一般の女性にはまねできない音域かもしれません。鼻母音が目立つ発声をしていて、常に鼻にかかったような声が目立ちます。しゃべり声をそのまま歌に乗せたような、現実的な表現で歌っています。

 

3.この歌を歌えるようにするには、彼女と同じ調で無理して歌わずに、自分に合う音域に移調して歌っていただくとよいと思います。フランス語をよく発音し、口の中ではなく顔の外に発語した音が響かせられるようにしてください。この歌手の音だけを真似すると、鼻にかかって顔の内側に声がこもったようになってしまいかねないので、言葉をしっかり発音できるように朗読してから曲に取り組みましょう。(♯β)

 

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1.この曲の特徴は、歌いにくいということです。一見そう聞こえないでしょうが、歌ってみるとわかります。まず、音域が広いです。はじめの1フレーズだけで1オクターブ以上あります。次に、伴奏のコードが意外に複雑で音がとりづらいです。伴奏に合わせればカラオケで音程がずれることはないのが普通です。しかしこの曲は逆に耳がよい人が、伴奏に引きずられて自分の音の高さを見失う可能性があります。最後にリズムが難しい。波のように寄せては返すリズムを歌で表現できるでしょうか。勝手気ままのようでいて、正確なリズム感が腹の底に流れています。

 

2.ざっと聞いて「歌いにくい曲だ」ということがわからないのが、ダミアの歌唱力です。歌いだしの合唱を聞くと、音域が広い曲だとわかりますよね。その直後にダミアが同じフレーズを歌うと、音域がそんなに広いように聞こえません。これが歌唱力です。オクターブ以上が見事に一本の線に乗っています。この歌いだしのフレーズは、繰り返すごとに少しずつ響きを変えています。よく聞いてみてください。

 

3.歌いだしのフレーズコピー。どうやったらこの広い音域が一本の線に乗るでしょうか。まずは弱く始めないで、はじめから全力で表現してみてください。息の強さ、お腹の使い方。はじめの1フレーズができたら上級者です。(♭∴)

 

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1.元はハンガリーの歌で、死んだ恋人の後を追って自らも死を望む内容のようですが、こちらのフランス語版では、恋人が去ったことに絶望した私が自殺を図り、いつか戻る恋人が私の亡骸を見つけるだろう、という内容になっています。

亡霊のようなコーラスと、薄く奏でるピアノのみの編成。

 

2.ダミアの声はナザールでゴムのように強靭です。声の立ち上がりに時間がかかり、ちりめんビブラートのかかった蓮っ葉な音色はあまり上品とは言えず、正直言って我慢しないと聞いていられない歌手だと感じました。とはいえ、美しいものだけが芸術だとは思わないので、日の当たらない世界を歌い上げるにはこういう声の歌手も必要なのかと思います。

 

3.音型に関しては、ほぼ分散和音をなぞっているだけのシンプルな曲です。1オクターブ上がって降りてくるドミソドソミドの発声練習をしてからこの曲を歌うとよくわかります。その動きの中でブレない発声を心掛けましょう。このぶっきらぼうで乾いた世界を表現するには、発声に左右されている場合ではないのです。(♯∂)

 

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「福島英のヴォイストレーニングとレッスン曲の歩み」より(https://www.bvt.co.jp/lessonsong/

 

31.ダミア 「暗い日曜日」「人の気も知らないで」

 

 この2曲を新井英一のカバーと比べてみましょう。

 

ダミアの「暗い日曜日」で、18人が自殺。

警察から止められた、そんな曲です。

おすすめアーティスト・作品 No.384

「TAR ター」(映画)

女性ながら一流オーケストラの指揮者として頂点を極めた主人公。私が想像していた映画とは違ったのですが、人間は権力を手にすると堕落してしまうものかと改めて感じました。

名声を失った主人公がタイの決して恵まれた環境ではない場所で指揮をしながらも、純粋に音楽を楽しんでいる姿に何事も楽しむことが原点だと感じました。

 

「The Voice」(オーディション番組)

今年日本で初めて開催されたそうで、ちょっと見てました。

アメリカとのレベルの差が凄まじく感じました。

そしてふと、何故(平均的に)アメリカ人の方が上手なのだろうと考えてました。

あと、選曲の重要さを再度思い知らされました。

 

「密やかな結晶」小川洋子(本)

私の大好きな小川洋子さんの小説。いつもは読んでいてホッとするのですが、この小説は怖かったです。1つずつ様々なものが消滅し、最後は人間の体の一部も消滅していく。一度消滅すると人々はそれについての記憶がなくなる。消滅に抵抗する人は秘密警察に連れて行かれてしまう。

私たちも日々何も考えずに生きていると、知らないうちに大切なものを失い、それがあったことすら忘れてしまうという警告かと思うとドキッとしました。

 

「夢と金」西野亮廣(本)

「夢を叶えるにはお金が要る。」

「お金が尽きると夢が尽きる。」

そう語るのは、お笑いコンビ「キングコング」の片割れを務める芸人であり、絵本作家でもあり、イベントプランナーでもある西野亮廣さん。

夢とお金の関係を綺麗事なしで説明してくれます。

商売をする際に「お客さん」を大きく分けると、お金に余裕のないお客さん(一般層)と、余裕のあるお客さん(富裕層)に分かれるが、一般層に買ってもらいたいのならば、富裕層を取り込み、富裕層向けの高額商品と一般層向けのお手頃商品でラインナップを組むことが大切。

お金は、お金の使い道をしっかり考えている人のところに集まるもの。

「高性能のサービス」や「完璧なサービス」よりも、「惚れさせてくれるサービス」をお客さんは求めている。

「顧客」は完成された商品を気に入ったときに買ってくれるだけだが、「ファン」は商品の完成度が低くてもこれから成長しようとする人を末永く応援してくれる。

「顧客よりもファンを増やし、大切にせよ」というのが西野さんの持論。

自分はある日の夜、寝付きを良くしようとこの本を開いてみましたが、あまりに面白いことが書いてあるので興奮してしまい、却って深夜3時ごろまで眠れなくなってしまいましたが、歴史上の人物や有名人のエピソードにも通ずるところに気付き、楽しく読めました。

今後の自分の起業テーマを考える上でも、有力なヒントになりそうです。

カンツォーネ 目次

カンツォーネ曲集の進行について

Vol.1 CANZONE1~20
1.ケ・サラ/リッチ・エー・ポヴェリ
2.コメ・プリマ/トニー・ダララ
3.ラ・ノヴィア/トニー・ダララ
4.アモーレモナムールマイラブ/ビルラ
5.カーザ・ビアンカ/オルネラ・ヴァノーニ
6.チャオチャオバンビーナ/ドメニコ・モドューニョ
7.ロマンティカ/トニー・ダララ
8.花咲く丘に涙して/ウィルマ・ゴイク
9.花のささやき/ヴィルマ・ゴイク
10.砂に消えた涙/ミーナ
11.海に来たれ/ルチアーノ・パヴァロッティ
12.太陽はひとりぼっち/ミーナ
13.帰れソレントヘ/アルベルト・クピード
14.君に涙とほほえみを/ピーノ・ドナッジョ
15.夢見る想い/ジリオラ・チンクェッティ
16.アル・ディ・ラ/ベティ・クルティス
17.この胸のときめきをピーノ・ドナッジョ
18.ヴォラーレドメニコ・モドゥーニョ
19.サンタ・ルチア/ロベルト・ムローロ
20.タイム・トゥ・セイ・グッバイ/アンドレア・ボッチェリ
(S1 コンコーネ1番 Concone Op50)
(S2 カーロミオベン Caro Mio Ben/ルチアーノ・パヴァロッティ

Vol.2 CANZONE21~41
21.遥かなるサンタ・ルチア/ルチアーノ・パヴァロッティ
22.アリヴェルチ・ローマ/ビルラ
23.去り行く今/セルジオ・エンドリゴ
24.チャオ・ベラ・チャオ Bella Ciao/ミルバ
25.モア/ボビー・ソロ
26.ラ・スパニューラ/ジリオラ・チンクェッティ
27.愛は限りなく/ジリオラ・チンクェッティ
28.青空に住もう/ビルラ
29.アネマ・エ・コーレ/ジリオラ・チンクェッティ
30.心遥かに/イヴァ・ザニッキ
31.リコルダ/ミルバ
32.あなたに口づけを/アウレリオ・フィエロ
33.カタリカタリジュゼッペ・ディ・ステファノ
34.勿忘草/ビルラ
35.花をありがとう/ニラ・ピッツィ
36.誰も寝てはならぬホセ・カレーラス
37.マリア・マリ/ルチアーノ・パヴァロッティ
38.オーソレミオ/Various Artist
39.ほほにかかる涙/ボビー・ソロ
40.イルモンド 限りなき世界/ジミー・フォンタナ
41.2万4千回のキッス/アドレアーノ・セレンターノ

Vol.3 CANZONE42~63
42.恋する瞳/ブルーノ・フィリピニ
43.別離/ミーナ
44.待ちましょう/ロサーナ・フラテオ
45.ルナ・ロッサ/ビルラ
46.タンゴ・イタリアーノ/ミルバ
47.ギターよ静かに/ニコラ・ディ・バリ
48.パローレ・パローレ/ミーナ
49.恋のジプシー/ナーダ
50.ナポリは恋人/ジリオラ・チンクェッティ
51.涙のさだめ/ジャンニ・モランディ
52.愛の詩/マッシモ・ラニエリ
53.愛のカンツォーネ/ビルラ
54.愛のわかれ/ビルラ
55.アモーレ・スクーザミ/トニー・ダララ
56.ガラスの部屋ペピーノ・ガリアルディ
57.カンツォーネ/ミルバ
58.この愛に生きて/ミルバ
59.愛遥かに/ミルバ
60.逢引き/オルネラ・ヴァノーニ
61.雨/ジリオラ・チンクェッティ
62.ガリオーネ/アウレリオ・フィエロ
63.ジェルソミーナ/inst.

Vol.4 CANZONE64~84
64.薔薇のことづけ/ジリオラ・チンクェッティ
65.愛のめざめ/ウィルマ・ゴイク
66.愛のうぐいす/ビルラ
67.チリビリビン/ビルラ
68.乾杯の歌/3大テノール
69.ブジレコの漁夫/マリオ・デル・モナコ
70.舟人の歌/ルチアーノ・パヴァロッティ
71.フニクラフニクラ/ルチアーノ・パヴァロッティ
72.マッティナーダ/ルチアーノ・パヴァロッティ
73.マリウ、愛の言葉を/マリオ・デル・モナコ
74.ミニエラ/Various Artists
75.おもちゃと香水/ミルバ
76.悲しい運命/Various Artists
77.君を愛したい/トニー・ダララ
78.ソロ・ノイ/トト・クトゥーニョ
79.太陽の扉/ジリオラ・チンクェッティ
80.ナポリカンツォーネ
81.パッショーネマリオ・デル・モナコ
82.光さす窓/Various Artists
83.消え去る想い/ジリオラ・チンクェッティ
84.狂ったハート/Various Artists

Vol.5 CANZONE85~
85.さらばナポリ/フランチェスコ・アルバネーゼ
86.サンライト・ツイスト/ジャンニ・モランディ
87.恋する兵士/ミルバ
88.太陽の土地/Various Artists
89.月影のナポリ/ミーナ
90.つばめのように/ジリオラ・チンクェッティ
91.トマトジュースに乾杯/リタ・パヴォーネ
92.激しく愛す/マッシモ・ラニエリ
93.村の娘/Various Artists
94.誘惑されて 棄てられて/Various Artists
95.リンダ・ベラ・リンダ/ダニエル・センタクルス・アンサンブル
96.ローマのギター/ビルラ
97.ローマよ今夜はふざけないで/オルネラ・ヴァノーニ
98.死ぬほど愛して/アリダ・チェリ
(99. ラ・パロマ
(100.涙を許して Perdono)

V041「ある日恋の終わりが」 ジョルジュ・ムスタキ

1.歌詞と曲と演奏など
(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)
2.歌手のこと
(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)
3.歌い方、練習へのアドバイス

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1.はかない恋の歌なので、あまり低音域を使わずに、中音域での動きをメインにしていて、何度か出てくる高音域でも、決して張らずに、はかなさともの悲しさを醸し出しているようです。作曲者のムスタキにならって、ほとんどの歌手が、サビでも高音域を弱めの声で歌っています。中には、3節の中盤だけ、しっかり強い声を使って、ドラマチックにまとめている歌手も、稀にいます。

2.ムスタキは、作詞・作曲家ということもあり、歌詞への思い入れが強いためか、息混じりの安定しない歌声で、上ズリ気味の不安定な音程になっています。そんな部分も、女心に訴えかけるのかもしれません。

3.この曲を練習するためには、ムスタキ以外の歌手を真似しましょう。日本人女声も、多くの歌手がカヴァーしていますが、日本人男声の大塚博堂は、お勧めです。シャンソン好きの人には、物足りなさもあるかもしれませんが、息混じりの声も使いつつ、きれいに音程も合っていて、シャンソンらしいタメや激しいアレンジも、とても控えめなので真似をしてみましょう。(♭Ξ)

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1.失恋の歌である歌詞の内容、メロディ、リズム、歌手の声がどれも絶妙にあっていて聞きやすい曲だなという印象です。凹凸や盛り上がりが少なめの曲ではありますが、それが故に歌詞と声に意識がいきやすい曲です。

2.甘い声という印象がとても強い歌手です。そしてフランス語がとても聞き取りやすい。中学生がビートルズの歌を聞いて英語を学ぶようなレベルでフランス語がとても聞き取りやすいです。あえてそうしているのかはわかりませんが、とてもクリアなフランス語です。フランス語の鼻母音を学ぶには、とても参考になる歌手です。

3.多くの日本人の場合、この彼を真似すると息がとてももれてしまうか、発音が不鮮明になりかねません。ある程度、自分の声にあった歌い方で歌うべきだと思います。かなりべったりとしたレガートな曲なので声を張り上げるよりも、レガートを意識する方がうたいやすくなると思います、歌詞を縦によむのではなく横に読んでいくようなイメージをもって歌うとよいかもしれません。
発声の基礎力が崩れやすくなる事例の一つは鼻声です。その意味ではフランス語の鼻母音や日本語の鼻濁音は間違えると発声を崩しやすい言葉の一つなので、そこを改善する意味でも鼻母音に取り組んでみるのはよいと思いました。(♭Σ)

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1.恋人と別れた後の思い・心情を描いた歌詞で、激しい心の葛藤というよりは心の奥深くにあるものを静かに語っています。その歌詞を表現するかのように旋律にも大きく盛り上がるような箇所はなく、淡々と語る言葉が音に乗っていくという印象です。それ故に、歌い手は歌詞の内容をしっかりと理解した上での音楽的表現というものがより一層問われる曲だと思います。

2.ムスタキは、曲全体を通して声を抜く(息を緩める)ような歌い方だという印象を受けました。そのせいでフレーズが短く途切れやすいという聞こえ方になっています。ですがそれらが恋人と別れた心情を表現するためのものだと捉えれば、フレーズが短いのもため息のようであり、歌い方に心が沈んだ雰囲気が出ていてまさにぴったりだと思います。もし彼の歌い方をそのまま真似しようとすると、恐らく初心者の人は歌いにくさを感じると思うのであまりお勧めではありません。

3.全体的に流れるような旋律で一見すると歌いやすそうですが、そこに日本語より子音の多いフランス語の歌詞を乗せるのでどうしても旋律が曖昧になりやすいです。ぜひ始めの段階から、歌詞の発音はリズム読み(音程はつけずに、音符の長さ・リズムに合わせて発音する)をしてください。また旋律の方も、いったん歌詞を外してラやマなどひとつの発音だけで歌い音程やリズムの確認をしましょう。この作業を行うことで、土台となるもの(旋律の輪郭や歌詞の発音)が安定してきます。(♯α)

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1.「恋はいつか終わりを迎え、恋人同士が愛し合うのはひとときの間だけ…」という言葉を繰り返し歌っています。また、愛することについてさまざまな比喩を用いてその感情を表現しています。

2.シャンソンなのでフランス語ですが、語るような印象を受けます。恋の儚さを語るニュアンスがあっているように思います。リズムに囚われすぎない、フランス語を語るイメージの参考としてみてはいかがでしょうか。

3.終わった恋に対する苦しさをメッセージに変えて伝えるような、そんな印象を受ける曲だと思います。終わった相手に直接伝えるだけではなく、さまざまな比喩も用いて訴えかけるような曲として書かれていると思います。基本的に悲しい内容ではあると思いますが、日本人的に内向きになるのではなく、聞き手に伝わるように歌えるとよいですね。歌いすぎず、語りかける割合が高めになるような歌い方、語り方をよく研究してみるとよいと思います。歌詞だけを内容が伝わるように読むことを練習として行えるとよいですね。(♭Я)

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1.1~3番までの構成で、3拍子系のリズム、「恋はいつかは終わる、愛し合うのはほんのひとときだけ」と切々と歌っています。

2.初めて聞いたとき、表現スタイルはシャンソンですが、発音がシャンソンらしくない、母音がやたらに明るく少しイタリア語や日本語に近い印象を受けました。ムスタキはエジプト生まれで、17歳でフランスに渡ったのだそうです。シャンソンらしい、語りの延長のような歌唱表現をしており、素直な気持ちをそのまま音に乗せたような表現で歌っています。

3.発音そのものを真似する必要はないと思いますが、この録音を聞いていると、うっかり単語でぶつぎれのフレージングになりかねないので、文章の単位でフレーズをつないでいくとよいと思います。詩をよく朗読して、文章の抑揚をつかんでそれを歌に乗せていきましょう。
(♯β)

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1.ピアノ中心のシンプルなアレンジなので歌を集中して聞くことができます。伴奏のアウフタクトの入りの歌い方が素晴らしいです。またよく聞くと、ピアノの右手と左手のタイミングが少しずれていることがわかります。歌も少しフライング気味に入ってきます。以降、ピアノと歌がずれていることがよくありますが、揃うべきところはそろっています。この「ずれ」をよく聞いて、フレーズの進め方の参考にしてほしいです。伴奏が先に行っているところと歌が先に進んでいるところです。

2.「語るように歌う」シャンソンの男性の醍醐味が堪能できます。全曲を通じて、語る声を基調としてまとめられています。それゆえ、高い声では抜いているので、そこが「軟弱に」「弱々しく」聞こえる人もいるかもしれません。

3.歌いだしのフレーズコピー。まずは詩を聞き取ってせりふとして真似してみます。そこから少しずつ歌に近づけていってみましょう。伴奏とのタイミングのずれも、よく聞いて積極的に表現してみましょう。(♭∴)

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1. 「恋はいつか終わってしまうものである」という冒頭の言葉がこの歌のテーマです。執着しても仕方がないという醒めた目で恋の終わりを俯瞰する。センチメンタルではあるもののそこに涙はなく、今はただその気分をもう少し味わっていたいという、実にフランス的な恋愛観が現れた歌だと感じました。伴奏はピアノがメインで、味づけ程度のオーケストラがときどき加わります。

2.ムスタキの声は、まるで柔らかな毛布に包まれるような肌触りです。少し息交じりで角がなく、肩の力が抜けています。声を張り上げることだけが豊かな音楽ではないと感じさせてくれる歌手です。

3. 失恋の歌ですが、湿っぽくならない方がよいと思います。ダメだったら次の精神とでも言いましょうか、Jポップともカンツォーネとも違う感性だということは念頭に置いておきましょう。繊細にアンニュイな気分を表現するためには常にレガートで、しかし伸ばし過ぎないことと、微妙な音程で表す色彩の変化に留意するとよいと思います。(♯∂)

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「福島英のヴォイストレーニングとレッスン曲の歩み」より(https://www.bvt.co.jp/lessonsong/

25.ジョルジュ・ムスタキ 「ある日恋の終わりが」「私の孤独」
 
 ジョルジュ・ムスタキのは、大塚博堂の「ある日、恋の終わりが」の元の曲として紹介しました。ムスタキが来日したとき、ホテルで食事を伴にする機会があり、そのときの写真は、私の宝物の一つです。こういう神がかり的な仙人のような歌手は、まねられるものではありません。
 「私の孤独」では、日本語の語りのまま、メロディを処理して歌わずに歌として、成立させるためにどうすればよいかを模索しました。コラヴォケール、大塚博堂さとう宗幸などがカヴァーしています。
 「私の孤独」は、出だしを日本詞でコピーするとよいでしょう。
 同じ目的で、ピアフとシャルル・デュモンの「あなたはいつでも笑顔で応える」(「恋人たち」)を使いました。
 ムスタキの作品としては、「異国の人」「17歳」「HIROSHIMA」など。

No.383

「生きるLIVING」(映画)

真面目に、しかし空虚にお役所仕事をこなしていた公務員が自分の余命を宣告され自分の生き方を考えるというストーリー。

これまで棚上げにしていた面倒な仕事を精力的に行い亡くなる。同僚は彼の行いに胸を打たれ、その生き方をひきついでいこうと考えるが、やはりもとの日常に戻る。

たとえ余命宣告されなくても、日々大切に生きたいと思う。雑多な生活の中でなるべく流されずに。

 

「切り捨て御免」中村吉右衛門(TV)

時代劇チャンネルを楽しみにしている母に付き合って、なんとなく見ていたが、中村吉右衛門の殺陣はスキがなく、動きがシンプル。斬り終わり、懐紙で刀を拭い、半身で腰を割り刀を鞘に納め、すっと正面に立つ、その一連の所作が美しく、見入ってしまった。動きの美しさに感動するとは、思わなかった。また、ドラマの中では、血はドバドバッと容赦なく出る。最近のドラマには見ない出血量の多さ。罪もない人々の殺され方も息を飲むほど無惨。それが正義の怒りになるという単純なお話だけれど、ひと昔前はこういうものがカタルシスの一翼を担っていたのではないか、と感じる。

 

ブラフマンの埋葬」(小説)

私の大好きな小川洋子さんの小説です。

主人公とブラフマンという名の小動物の触れ合い。ワクワクしたり刺激的なことが起こるわけではないのに、引き込まれてしまう物語です。

 

「巨大おけを絶やすな!」岩波ジュニア新書(本)

小豆島の醤油蔵のご主人が、自社の木桶が壊れたことをきっかけに、日本で最後の木桶職人が引退してしまうことを知る。木桶は百年以上持つと言われ、次に注文する自分の子どもの時代には木桶を作る人がいないという現実に直面し、一年発起。親友の大工と、妹の知り合いの大工との三人で木桶職人に弟子入りする。そして、毎年木桶を製作するイベントを発案、普段はライバルの醤油蔵に声をかける。参加者がどんどん増え、木桶サミットは毎年お祭り騒ぎ。ひとりの熱い思いが回りを動かし、ライバルを巻き込んで、食文化が守られる様を一気に読んでしまった。普段の調味料は、良いものを使おうと心がけて、醤油と味噌は木桶仕込みを買っているが、ステンレスが一般的とは知らなかった。購入することで木桶文化に貢献したいと思った。

 

V040「明日に架ける橋」 ジョルジア

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.「明日に架ける橋」は、サイモンとガーファンクルの大ヒット曲です。ジョルジアは、かなりのアレンジをしています。

原曲は、第4音から始まる、落ち着かない不安な導入で、歌詞の「君が生きるのに疲れて ちっぽけな存在に思えて 涙がこぼれそうなとき…」によくマッチしたメロディになっています。

途中、第5音から高い第3音への跳躍が印象的で、特に、中高音域では、美しい順次進行が多用されているので、この部分の跳躍が目立ちます。

サイモンとガーファンクルは、男性2人のグループで、やや息混じりのハイトーンで、優しく歌い上げているのに比べて、ジョルジアは、力強く、張りのある高音域を、自由自在に使いこなしています。もちろん、中音域では、息混じりの声なども使って、楽に歌っていますが、それでも原曲に比べれば、とても明るく元気に、自由奔放に、歌い飛ばしていて、ファンにとっては、たまらなく楽しい空間なのだろうと、想像できます。

 

2.ジョルジアは、とてもよい発声で、声域も広く、息混じりの声から、しっかり張った艶のある声まで、うまくコントロールしています。

 

3.ジョルジアの発声は、なかなかよいので、真似をしてみましょう。ただ、この曲は、ジョルジア用にアレンジされていて、とても難しいので、原曲を練習してみましょう。(♭Ξ)

 

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1.サイモン&ガーファンクルのイメージが強い曲のイメージです。いろいろな歌手に歌われているので聞き比べしても面白い曲という印象です。ラブソング的な印象ですが、ジョルジアが歌うと、情熱的な曲に聞こえてきます。

 

2.ジョルジアの声の印象はなんといってもパワフルな高音域だと思うのですが、聞いた印象としてかなり音域が広いのだろうなと想像できます。もっと余裕が見える歌い方と言ってもよいかもしれません。甘い声からのパワフルな声量のある音は、日本人にはなかなか大変だと思います。なによりも身体の支えと声道がとても広くつながっているなという印象です。ジョルジアが歌うとこの曲がとてもパワフルで情熱的な曲に聞こえます。カンツォーネとも違いますが、英語を歌っているのに、どこかイタリアンポップスのように声で聞かせるというような曲に聞こえます。

 

3.歌を歌うというだけなら音域的にも広すぎない曲なので歌えると思うのですが、ジョルジアのような歌唱をめざすとなるなら、歌詞を身体で支えて前に飛ばすことをまずは訓練する必要があるかと思います。しかしそれは顎の脱力と舌の脱力がセットの上で行う必要があります。

日本人の場合、あごや舌が固く、あごが下がりづらいです。結果的に空間が狭いのです。それではパワフルな声ではなく頑張って固めて力んだ声となってしまいます。「押している声」と言われることもあるでしょう。顎や舌が柔らかくなくてはお腹を使っての支えもパワフルな声も生まれません。(♭Σ)

 

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1.オリジナルの曲にアレンジを加えてカバーした演奏です。前半部分はオリジナルのゆったりしたテンポで、中間部分からは前半よりもアップテンポでアレンジした旋律を付け加えており、後半部分でまた元のオリジナルのテンポに戻ることで、大胆なアレンジでありながらも、しっかりとこの曲の骨組みの中でアレンジを施しているという印象を受けます。

 

2.ジョルジアはオリジナルのテンポと、アレンジを加えて歌うアップテンポとの歌いわけがうまく、とてもメリハリのある歌唱だと感じました。ゆったりのテンポで歌詞の発音もゆとりがある、アップテンポで歌詞の発音も忙しい、この対照的な歌唱を難なく歌いこなす技術力と声の柔軟性によって、曲をカバーする中でもちゃんと彼女のオリジナリティが出せるのだと思います。

 

3.ジョルジアのアレンジは難しいので、最初はオリジナルの曲を勉強することをお勧めします。オリジナルの調だと低音域が苦しく感じる人は、無理をせずに自身の歌いやすい調に上げましょう。また、テンポがゆったりめの曲は息の流れが停滞しやすい傾向にあります。音程に慣れてからでよいので、Z(ズ~)で歌う練習を入れると効果的です。息が停滞してくると、比例して子音Zも減りウ〜と母音だけになってしまうので、そうならないよう子音Zを維持しながら歌い進めると、結果的にその音域に必要な息を促すことができます。(♯α)

 

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1.サイモン&ガーファンクルを代表する曲として、多くの人によく知られている曲です。もともとゴスペルに影響を受けて作った曲だといわれているようです。原曲がフォークロックなのに対して、この音源の場合はロック要素がかなり強くアレンジされています。

曲の内容を簡潔に表すと、「君が辛い時に、僕が橋のように寄り添い支えるよ」という内容ですので、相手を勇気づけるよう、時にやさしく、時に力強く語りかけるように歌えるとよいですね。

 

2.ジョルジアはイタリア人ということもあって、ていねいに歌う部分でも音域の低い部分でも、母音の発音が日本人のように奥まらない、明瞭であるということは参考になるかと思います。また激しく歌う部分でも、息を押し出したように歌うようなことはしておらず、怒鳴ったり叫んだりした歌い方との違いの参考になるかと思います。

 

3.歌詞の内容に沿った声と表現で、歌詞を語ることができる状態であることが第一段階として望ましいのではないかと思います。その上で、原曲のようなフォークロックとして歌う場合でも、ジョルジアのように歌う場合でも、曲としての本質を見失わないように、伝えたいことや曲としての核となっているものが何なのかを理解したうえで歌えると、表面上はいろいろなバージョンで変化していても、聞き手に訴えかけたい大切な部分を失わずに歌うことができると思います。(♭Я)

 

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1.サビの「like a bridge over troubled water 」で楽器が入らない声のユニゾンで歌っているアレンジが特徴的です。多くの歌手がこの曲を歌っていますが、原曲のサイモンとガーファンクルでは出てこない歌詞を用いているのもユニークなアレンジです。曲が進行するにしたがってアップテンポになり、エネルギーも増していきます。聞く人を鼓舞していくかのようなアレンジと歌唱で誰もが心をつかまれることでしょう。もともと、ゴスペルやフォーク調である曲に、ロックのテイストも加え、大変魅力的なアレンジになっています。

 

2.2コーラス目の終わりで「I will lay me down」を非常に弱々しい表現で、まるで自分が元気をなくして横たわるという意味であるかのように表現しますが、(本来は「洪水にかかる橋になろう」という強い意味)ここでエネルギーを一気に下げておいて、「I will lay me down, whenever you need me, I will be there, to hold you, to touch you, to love you, to comfort you」と原曲のサイモンとガーファンクルのバージョンにはない歌詞を畳みかけて、聞くものを一気に感動に引き込んでいきます。

 

3.まずは、この歌唱の構成をしっかり分析してとらえてみてください。静かな部分、アップビートで盛り上がる部分、再びサビをゆったり歌う部分、この構成をわかったうえで練習しましょう。この3つの異なる雰囲気をメリハリをつけて表現するように気をつけましょう。特に難しいのは、アップビートのロック調の部分かと思います。言葉が早く畳みかけるようなところは、しっかり歌詞を発音しつつ、音程も正確に歌えるよう、そしてテンションも高く保てるよう練習しましょう。(♯β)

 

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1.みんなが知っている有名な曲で、アレンジに特徴がある。長いが、通して聞くと盛り上がっていくのが順番にうまくいろいろ仕掛けられており、気持ちよいです。だから、イントロが長いが聞き応えがあり、ギターが工夫を凝らしています。ライヴならではの指板と指がこすれる音、残響とさまざまな音色に注目したいところです。最初のサビのところであえてアカペラになるところが素敵で、ドラムの音がクリアで冴えています。特に最後の盛り上がりのロールがうまいので、テンションが上がります。そこからのリットで終わるのかと思いきや、もう一度のサビへのテンポの運び方も、ドラマーの力でしょう。最後のギターのグリッサンドも粋です。

 

2.息がよく聞こえ、声に芯があって、キャンバスに油絵の具を塗るように、よく伸びて、質感や色がクリアに見えます。最後の盛り上がりに向けての3連符のリズム感がよいです。高い声も完全に身体でコントロールできているため、高い音に聞こえません。伸ばす音がたまにフラット気味のことがあります。

 

  1. 息と声との接点ということでは、真ん中くらいの「ハー」と歌っているところを取り出してみましょう。ここをまずは息でとってみます。そして少しずつ声の割合を増やしていき、最後はコピーしてみます。身体から息を吐くことの難しさがわかると思います。(♭∴)

 

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1.言わずと知れたサイモン&ガーファンクルの世界的ヒットナンバー。原曲はフォークですが、これはロック調のアレンジ。困難な状況に置かれても、未来に向かって進めるという希望に満ちた歌詞は、数えきれない歌手のカバーで歌われています。しかし、ここでは、サビの部分以外はほとんど原曲の形をとどめず、かなり自由に展開されていきます。

 

2.ジョルジアは、イタリアのポップスシーンを牽引する実力派アーティストですが、幼少から日本で言うところの「洋楽」やジャズを歌っており、その英語にはイタリア臭さがまったくありません。のちにクラシックの発声やカンツォーネを学んだということが、彼女の歌声に振り幅の広さを与えていると思われます。冒頭のハスキーなバラード調の語りと、サビのなめらかなメロディ、ロック調にアレンジされた中間部の激しく力強い声。同一人物とは思えない引き出しの多さに脱帽です。

 

3.いかに声を開放できるかが鍵となります。遠くに飛ばした先で声が自由に動き回れるように考えましょう。凧揚げやドローンの操作を想像してみてください。操作自体は手元=自身の身体で行うのですが、声の到達地点を遠くに設定するわけです。広い場所で練習してみると発見があると思います。(♯∂)

 

 

 

1.歌詞と曲と演奏 ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど

2.この歌手自身の声、歌い方、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと(VS比較歌手)

 

1.よく知られている曲なので、このようなジャズバージョンになってしまうと、ジャズ愛好家でない私には(ジャズは嫌いではなく、むしろ好きな曲もありますが)全く違う曲として楽しむしかありません。何回聴いても、原曲のイメージが頭から離れず、楽譜と違い過ぎることが、まず拒絶反応として浮上してしまいました。オペラの世界でも、主役の歌手が、メインの曲の最後で、楽譜には無い歌い方・音符を歌って、絶賛されたり、少しガッカリされたりしますが、それが、曲全般にわたって起きているようなものと解釈するべきなのでしょう。

 

2.ジョルジアという歌手は、この曲を聴いただけでもわかるように、低音域から高音域まで、全く無理のない発声で、艶と張りのある声だけに頼らず、張らない声も綺麗に使い分けていて、さすがオペラ歌手に師事し、バックコーラスの経験も積んでいて、経験も豊富な百戦錬磨の歌手という貫禄まで感じさせます。このように、自分の音域の中で、ほとんど無理をせず、良いパフォーマンスを組み立てることが、長く歌い続けるためにも、ぜひ必要なことです。(♭Ξ)

 

1.メロディやリズムがとても複雑かというとそうは感じないです。むしろシンプルに聞こえます。シンプル故に歌う歌手によって全く違う曲に聞こえるのだろうなという印象をうけます。ロングトーンが多い曲ですから、歌手の声の力や表現のしかたがより鮮明になると感じます。

 

2.子音のさばきかたが短く、母音の伸ばしに声の魅力があるのでイタリアやスペインの人という印象です。声門閉鎖がしっかりとおこなわれていることと、ベルティングとよばれる胸声の高音がしっかりと行われているので聞いていても心地よいですし、パワーがあり力強いです。声門閉鎖、ベルティングがしっかりと行われているからこそ、高音域でも胸声のまま音が突っ張らずビブラートがかかります。単に地声で叫んでいるだけだと音がつっぱりこのような声にはなりません。また、ビブラートがかからないので聞いているほうには心地よくはないと思います。単に叫んでいるだけの声と、技術がついている力強い声は違うという見本の一つになる声だと思います。(♭Σ)

 

1.始めの方ですぐにアカペラが差し込まれることで、聴き手を一気に引き寄せ、音楽と聴き手に一体感を生まれさせる効果が出ていると感じました。

中間部では、歌手のオリジナルの歌詞に加えて原曲にはない多様なリズムも入れています。裏拍から入るリズムや三連符、シンコペーションなどをつけ、それらのリズムを連続することでより畳み掛ける(メロディが迫ってくる)印象を与え、さらに聴き手を引き込んでいます。

 

2.個人的にですが、素直で澄んだ声だけど力強い歌唱という印象で、声や表現にも緩急があり、ぜひ他の曲も聴いてみたいと思わせてくれます。

高音域が伸びやかで通る声なので、上に飛躍する音型を多く取り入れることでご自身の特徴を存分に活かしたアレンジになっていると感じます。

また声に瞬発力があるからか、力強い歌唱の中にも声が軽やかに動く印象もあり、そのことで重々しくならずにメロディが聴き手にどんどん流れ込んでくるのだと思いました。(♯α)

 

1.きれいに歌うことや、声にこだわること、歌い方をまねすることをしないほうが、この曲を歌う上では有効的なのではないかと思います。きれいに歌おうとしたり、声(発声)にこだわってしまうと、歌い方がコンパクトにまとまりやすくなるか、逆に力み過ぎるかのどちらかになることが考えられます。また、この歌い手の歌い方をモノマネのようにしたところで、自分自身の歌いたい歌い方と合致するとは限りません。歌う人がこの曲に対して、詞や音楽から感じるものを大事に、それをどのように魅せたいのかを最優先にしたほうがいいと思います。

 

2.声量もありますし、非常にスケールの大きい歌い方をする方だと思います。大きく歌い上げる部分は歌い上げていますが、前半の部分などは語りかけるように穏やかに歌っていますし、幅広い表現ができる方だと思います。表現方法の勉強として、ひとつの参考にしてみるといいと思いますが、ただまねをするのではなく、自分の気持ちとしてどのように歌いたいか、どのように魅せたいかをある程度持っている状態で参考にしてみるといいと思います。また、声を聴くというよりは、フレーズ感だったり、音楽の持っていき方の参考にしてみるといいと思います。声だけマネするとつまらない音楽になると思いますよ。(♭Я)

 

1.7分にわたり、原曲からバリエーションが展開されていきます。テンポもアップするので聞いている人を興奮に導く効果が絶大です。

その構成は、前奏、Aメロ、Bメロ、サビ(アカペラを織り交ぜて)、Aメロ、Bメロ(少しバリエーションを利かせています)、サビ(アカペラを織り交ぜて)、間奏、スキャットのようなバリエーション、8ビートでスキャットのようなバリエーション、オリジナルのサビ、エンディング。

ポップス歌手は大体のバリエーションを考えて歌う人が多いかと思いますが、これがジャズになってくると、完全にインプロヴィゼーションです。そのための練習を何度も重ねます。また、作曲の勉強をすると、このように原曲をアレンジして構成することも可能になると思います。

 

2.息交じりのウィスパリングボイス、弱い音だけど、芯のある声で歌っています。そして、さすがイタリア人だからなのでしょうか、母音をしっかり伸ばすという歌の基本が自然にできています。イタリア語話者の特徴なのでしょうか。

ロングトーンもよく伸びます。さらにポップスシンガーとしては必須のエッジ6ボイスも効果的に使えています。ホイットニーヒューストンなど黒人歌手の声の伸びを要求されるような曲を歌うのに応用できるかもしれません。(♯β)

 

1.語りかけるようなルバートではじまり、ライブ感あふれるなかにも計算されたアレンジが印象的です。

 

2.有名なメロディ部分はオリジナルのメロディを大切に、他の部分は自由にかつコントロールされたフェイクが知的な印象です。(ON)

 

2.ジョルジアに対しては、多くの人が様々な賛辞を書くでしょう。疑いようのない歌唱力、高音の伸び、つや、深さ。しかし私はあえてここで、主に歌いだしの彼女のフレーズ感とリズム感について述べてみます。イントロに関してこのアレンジでまず印象的なのは、ドラムが拍を刻むことが少ないということです。そのギターだけのとりとめがないともいえるイントロの後に、ジョルジアがぽつぽつ、と言葉を紡ぎ始めますが、一見ぞんざいに言葉を置いているかのように見えて、見事にフレーズがつながり、高まっていっています。人によっては「フレーズの最後の音をのばしている」と聞こえるかもしれませんが、実はそのフレーズの間、何も聞こえていないところのブレス、タイミングが絶妙なのです。「リズム感がいい」のです。後半でドラムが入ってきたり裏打ちのところでみごとにリズムに乗っているということはたぶん誰が聞いてもわかるでしょう。その前、このすかすかの伴奏で、完璧なフレーズ感を出せるということがそれよりもすごい一流のリズム感なのです。(♭∴)

 

2.ジョルジアはイタリアのポップスシーンを牽引する実力派アーティストですが、幼少から日本で言うところの「洋楽」やジャズを歌っており、その英語にはイタリア臭さが全くありません。のちにクラシックの発声やカンツォーネを学んだということが、彼女の歌声の振り幅の広さの理由でしょう。冒頭のハスキーなバラード調の語りと、サビのなめらかなメロディ、ロック調にアレンジされた中間部の激しく力強い声です。同一人物とは思えない引き出しの多さに脱帽です。(♯∂)

No.382

「ブルージャイアント(BLUE GIANT)」(映画)

プロのジャズミュージシャンを目指す少年達(サックス、ピアノ、ドラム)の物語です。

山あり谷あり、とても熱い映画でした。

音楽をやっている人に限らず、どんな芸術家にも刺さるストーリーだと思いました。芸術じゃなくても夢を追い続ける人全員に刺さると思います!

ジャズ中心のストーリーだけあって、音楽がとても良かったです!

色々と共感できる場面や感情が思い描かれていて、素敵な作品だと思いました。

是非お時間あれば映画館で観てみて下さい!

 

「ブルージャイアント(BLUE GIANT)」(映画)

世界一のサックス奏者になると迷いなく突き進む主人公に励まされました。

 

エゴン・シーレ展」(美術展)

独特の色遣いや強烈な表現が心にささりました。

 

「神田愛山→神田伯山相伝の会」(講談)

お客さんや劇場の場所によって雰囲気が変わるんだなと感じた。青之丞→伯山→愛山という流れで行われた。この会で改めて発声が大切なんだと感じた。表現力と深いところから出ている声があってより聞き手に想像力を持たせられるんだなと。声はその人の状態を全て映してしまう。聞いている人には全て伝わるんだなと思った。お客さんの反応も若い人よりもやや年配の人の方が顕著に出ていた。

表現の学びも多かったが、その場にいる人と作り上げていくというのが生の醍醐味で面白いところだと体感できた。いつか浅草キッドで聞いた、「笑われんじゃねえ、笑わせるんだよ」というのを体現してるなと思った。

 

「おがトレ」(YouTube

YouTubeに投稿されているストレッチ動画。シンプルでとてもわかりやすい。ダンスを今後やるに備えて利用している。2種間ほどで体が当初に比べて柔らかくなった事を感じた。しかしやっていくうえで、どうしても開脚と開脚前屈が良くならない。そこでわかったのは、お尻の筋肉が硬くなっているとその二つは出来ないらしい。自分自身が身体が硬いと思っていた大きな要因がお尻関係なのかもしれないとわかった。オガトレの動画はどこを伸ばしているのかを指摘してくれるので原因を知る手助けになった。引き続きお尻のトレーニングに励みたいと思う。

 

tiktok」(SNS

最近スマホで動画を見る機会を減らしていたが、友人からの勧めで見てみた。数秒の動画に音楽と文字と映像でものすごい情報量、それと何かの欠落を補うような内容のもの。すごいなと思うと同時に怖いなとも感じた。たくさんの動画を見ているうちにあっという間に時間は過ぎる。最初の数秒で気になると思ったら見てしまう。本来やる事よりもこっちの方が楽に満たされるから需要があるのかも知れない。あくまでも利用する側の立場に入れるようにしたいなと強く思った。

V039「Who wants to live forever」 ジョルジア

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.プッチーニのオペラのアリアのようなメロディです。オーケストラの伴奏ということも、そう感じさせるのかもしれません。

 

2.ジョルジアは、なかなかよい声で、中低音はまったく無理がなく、地声高音域も広めの音域で、きれいに出せています。ただ、高音域が少し硬い声になりがちのようで、一か所シャウトさせているのも、それをカバー・リセットするためかもしれません。何度も何度も、地声高音域を出しているうちに、少しずつきつくなっていくようです。ただ、聞く側は、その、がんばりに、心を動かされたりするのでしょう。

 

3.うまく真似してみましょう。もちろん、キーを下げて、自分の声域に合わせて練習しましょう。無理にオリジナルに合わせても、あまりよい練習にはなりません。高音域は、なるべく楽に自由に、しぜんなビブラートが失われないように、気をつけましょう。曲の最後の最後まで、楽に自由に高音域を伸ばせるように、コントロールしていきましょう。それができるようになったら、はじめて、曲の最後だけ、がんばる意味が出てきます。それが無理ならば、さらにキーを下げて、練習するべきです。(♭Ξ)

 

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1.どこということではなく全体的に声の魅力が必要な曲だなという印象です。ロングトーンの多い曲であり、そこにのせた甘い言葉が声の魅力なしには語れないといった印象でしょうか。言葉の強さを引き出す声の魅力が必要な曲といってもいいかもしれません。

 

2.声の魅力、音域の広さ、鮮明な発音。とにかく素晴らしい歌手です。声というよりも言葉を支えるバランスが素晴らしいという印象です。そして日本人はなかなか難しい舌の脱力と下あごの開閉。高音域になればなるほど舌が平になり、下あごが落ちていく。この状態は喉の開きとパワフルな高音域には欠かせない状態なので、それがしぜんに行えているのは本当に素晴らしい。

 

3.同じように歌うには、単純なロングトーンの訓練をしっかりやらなければいけないと思います。実は充実したロングトーンは基礎の中でもとても難しい。もっと言えば実力がとても見えてしまいます。力まず、支えられて息も流れていなければいけない。この訓練をしっかり行い、そのうえでこの楽曲を教材としてとりいれると基礎力を高められると思います。

できるならばあごを下げて高音域を歌う訓練をやってみてほしい。開けることで痛くなってはいけませんが、徐々に開けられるようにトレーニングしてください。(♭Σ)

 

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1.オーケストラの演奏と共に、終始ゆったりとしたテンポでの歌唱になるので、全体を通して息のコントロールが求められる楽曲です。特に、歌詞の中で問いかけ(疑問形)の部分では音が上行し、上行した先で音を伸ばす、というパターンが何度も出てきます。また「forever」という単語に音の動きや長さを持たせており、強調したい部分であることがうかがえます。そこをどう表現するのかも歌い手がしっかりと吟味した上で演奏する必要があります。

 

2.高音域でのロングトーンが多い曲です。息がしっかり流れているので、張り上げる声ではなく、力強い中に伸びやかさがあります。高音域ではよく口が開いているという聞こえ方です。ジョルジアの歌唱力の高さが垣間見られます。

 

3.ゆったりとしたテンポの曲で意外とあるのは、ブレス開始が遅くなることです。ロングトーンが多いことの他に、ブレスの遅れも息が足りなくなる原因となります。練習方法のひとつとして、拍を取りながら歌い、音入りの1拍前からブレス、つまり1拍分の時間をかけてブレスをしてみましょう。発音の遅れも鑑みて、始めは歌詞の母音部分だけで歌い、慣れてきたら歌詞に戻すと効果的な練習ができるでしょう。(♯α)

 

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1.もとは、映画「Heilander」の主題歌で、クイーンによって演奏されましたが、その後、数々の歌手によってカバーされている曲です。永遠に生きる命を持つ者の孤独、苦悩、生命の意味など、壮大なテーマを歌い上げている曲です。

 

2.低音から高音に向けてムラのない力強い声、こぶし回し、とても卓越した技術が随所に見られる歌唱です。技術はあるのかもしれないですが、音だけで中身が伴ってない、歌詞の重みが感じられないように感じるのは私だけでしょうか。若い歌手に、この傾向がよく見られます。本当に歌詞の内容を理解して歌っているのか、とさえ思わされます。

途中に入れているシャウトはフレディーマーキュリーとまったく同じところで入れており、ただ音だけを模したように聞こえ説得力にかけ、また、who wants to live foreverの歌詞が2回続く箇所では、まったく同じ歌い方を2度繰り返しており、表現の深み、円熟ということに関しては、課題なのかもしれません。

 

3.まずは、映画を見て、この曲の世界観を味わってください。「Heilander」1~3まで出ています。なぜか日本が舞台になるという面白い経過も見られます。400年も生きているという設定ですから、場面はいろいろなところに移るのでしょう。主人公の悲しみを自分の中に入れ込み、お腹の底から力強い声で歌ってみましょう。ときに外ではなく自分の内側に表現したい気持ちがあれば、大きな声を外に出さずとも、その心に寄り添いウィスパーリングヴォイスで小さく歌っても構いません。(♯β)

 

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1.「誰が永遠に生きたいなんて望むんだ?」という少し重たい内容の詞を、美しくも切ないオーケストラの音楽と共に書かれています。Queenの曲で、映画のために書き下ろされた曲ということもあって、かなりメッセージ性の高い曲になっていると思います。

 

2.ジョルジアの持ち声は素晴らしいものだと思います。語るような歌い方も実にしぜんで、表現の幅も広く感じます。力強さと繊細さを兼ね備えた声が、この曲のドラマを見事に表現しているように感じます。

 

3.歌詞の内容から、やりきれないような苦しみや切なさなどを訴えかけるような歌い方が必要になると思います。詞をしっかり情感込めて語れることが、歌う前の下準備としてとても大切になるのではないかと思います。きれいに歌うということよりも、言葉一つ一つからフレーズに至るまで、しっかりドラマを出せるような語り方、そんな歌い方を研究してみてください。(♭Я)

 

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1.悲しげなイントロで雄大な曲想で、アップテンポの部分が続くのかと思いきや、ずっとスローテンポが続く。これを持たせるにはかなりの歌唱力、そして絶妙なリズム感が必要。間奏の不安定なコードと美しいオーケストレーションが魅力的です。

 

2.スケールの大きな歌唱、深いブレスも是非、聞きとってほしい。リズムに乗れていて軽く言葉を処理するのもよいです。深く響くが、たまに抜き気味に処理する声がとてもチャーミング。音域も広く「うまいというのはこういうことか」と目の覚める思いのするはずです。

 

3.who wants to live forever のところを取り出してみましょう。2回続きますが、その間のブレスの取り方、フレーズの重ね方。短い間だったり、少し時間を伸ばしたりをよく聞いて、フレーズコピーしてみましょう。

(♭∴)

 

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1.「誰が永遠の命など望むものか」という内容で、一瞬の生命のきらめきこそ価値あるものだと歌われます。原曲はもちろんロックですが、このアレンジでは、重厚なオーケストラに、歌もしっとりと声を聞かせるようなテンポ感になっています。

 

2.ジョルジアの素直な歌声はソウルフルでどこまでも伸びていきます。細かくくすぐるような箇所は繊細で、文句なしに歌がうまい!と言わざるを得ません。「love must die」という部分でかなり強い表現を用いていますが、それさえも心地よいものです。決して凡百の歌手が真似できる歌唱ではありませんが、歌を歌うという行為の一つの頂点だと思いました。

 

3.ジョルジアの声の伸び方を研究してみましょう。私は弦楽器の名手の奏でる音のように感じました。右手でヴァイオリンやチェロの弓の動きを真似しながら歌ってみるといいかもしれません。強靭で無謬な音の連続性を感じられる方法です。(♯∂)

 

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「福島英のヴォイストレーニングとレッスン曲の歩み」より(https://www.bvt.co.jp/lessonsong/

 

6.ジョルジア 「明日に架ける橋」「リヴ・フォーエバー」

 

 2曲ともに、こんなアレンジができるのか、こんなアレンジで歌えるのかというのを実現した曲です(研究所でのかつてのパートナーが、それを詩にしたのを、ブログに入れています)。

 

 後者の曲を私は、一番は息を聞いてくださいと、呼吸、息の深さの差を伝えることに使ってきました。そして、コーラス間の「ハァ―」と息を声にするところの繰り返しをデッサンとしてみて、そのデッサンで、この曲のテーマで「私はこう表現するよという展開をしていると。つまり、音楽ということばにできない世界を、絵画というたとえを通じて、私自身に「ことば」の使い方を教えてくれたと思っています。

 

 デッサン練習は、線、音楽のフレーズであり、そこでの色は音色、声のトーン、タッチですから、それを基礎の勉強としましょうという説明も、彼女のこの曲から生まれました。「私にはこの線と色があるから、このデッサン、このフレーズで、歌を料理するの」というスタンスが、歌い手の持つべきものです。悲しいかな、日本にそれほど創造的な歌い手は、ほんのわずかしかいないのです。

 

No.381

「食堂のおばちゃん」山口恵以子(小説)

嫁と姑2人が切り盛りする食堂を舞台にした話。栄養たっぷりの定食をリーゾナブルな値段で提供。

読むとホッコリ気分になり、元気になる物語です。

 

メガバンク銀行員ぐだぐだ日記」目黒冬弥(本)

大変面白いおすすめの本。銀行の世界って、こんな? 理不尽がいっぱい、絶望しつつも生き残ってきた作者はすごい。うちのダンナ様に見せたら、面白いといって、食らいついて読んでいた。私もいろいろなことがあるが、元気だして頑張ろう、と励まされる本です。生き残ったものが勝ち、きっとどの世界でも。

 

浅草演芸ホール寄席」(古典芸能)

初めての寄席。前回神田伯山の表現に感動して近い距離感で聞いてみたいと思い向かった。芸というのは様々なジャンルがあるのだなとまず思った。人を前にして表現するということを利き手という立場で体感した。自分や他のお客さんの反応を受け取って次の言葉や芸が行われる。聞いているだけなのに近い距離で会話しているように感じられた瞬間が何度かあった。伯山に関しては一度聞いたことのある演目であったため鮮度は感じなかったが、迫力と身体を使って消費して表現しているというのを感じた。相当の修練を積んでこの形になっているんだなというのが近くで見て理解した。近い距離で表現を感じることは学びが多いと確信できた日だった。

 

「天の岩戸」

古事記で天照が隠れたとされる洞窟。

奥に行くほどこれは生きて戻って来れるのだろうかという不安(熊や場所の雰囲気)を持ちながら登った。とても静かで良い運動になった。行ったことのない場所に行くのは大事だなと感じた。

 

熊野本宮大社」 (神社)

熊野本宮を含む熊野三山は浄土への入り口として平安時代から有名で、浄土へ参って、帰ることが死と再生という意味で、「よみがえりの聖地」として知られているらしい。急な階段の上にある神社で良い雰囲気の場所だった。今回は車での移動だったが、また機会があったら熊野古道を通って一人で歩いて向かいたいと思った。

V038「心遥かに」  イヴァ・ザニッキ

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.日本語のタイトルだと、少し分かりにくいですが、失恋の曲です。

イタリア語では、頑固な私、かたくなな私、というタイトルで、失恋はしたけれど思い出はまだ消えないでほしい、という切ない曲です。

曲の前半はイ短調、後半は同主調イ長調の曲です。

高い主音から順次進行で高い第三音(この曲の最高音)に、いきなり上がるフレーズで、とてもドラマチックな始まりです。

二つ目のフレーズは、低い第四音から跳躍して、高い第二音からの下向の順次進行になりますが、最初のフレーズのように、途中で導音に進みながらの、ためらいがちな下向型から始まります。

三つ目のメロディは、低い第五音から跳躍して、また最高音の高い第三音からの順次進行の下向型で、最初のメロディとまったく同じように、途中何度も導音に進みながらの、ためらいがちな下向型です。これに続けて、主音と低い主音の1オクターブの間でフレーズが歌われます。上向は順次進行で、下向は分散和音で、感情の揺れを現すかのようです。

曲の後半は、同主調へ転調しています。

低い第三音から、第五音、高い第二音へと分散和音的に上向して、続く下向は曲頭の短調のように、ためらいながらの下向順次進行です。二つ目のフレーズは、音域が一つ上がって、低い第四音から分散和音的に、曲の最高音の第三音に上がってからの、ためらいがちの下向順次進行です。続いて、後半頭と同じフレーズに間髪入れず3連続の山型のフレーズで、たたみかけるように曲が終わります。

 

2.イヴァ・ザニッキは、無理のない発声で歌いあげていて、曲のよさも、もちろんありますが、彼女が歌ったことで、ヒットしたのだろうと思います。

 

3.ぜひ、イヴァ・ザニッキの真似をしましょうと言いたいところですが、キーがやや高いかもしれません。歌いやすいキーに下げて、チャレンジしましょう。(♭Ξ)

 

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1.単純なリズムと広すぎない音域なので、多くの方に歌いやすい曲ではないだろうかという印象です。イタリア語を聞いていると「follie per la mia gelosia(嫉妬で変になる)」のように、直接的でわかりやすい言葉が多発しています。感情表現としても熱いものがあるのでしょう。

 

2.第一声の「non so mai perche」から声の素晴らしさを堪能できます。決して高い音域ではないのですが、力強い声と明瞭な発音、しゃべるように歌えるので感情表現がとてもダイレクトです。イタリアの発声法に「Recitar cantando」という考え方があります。演じるように歌う。語るように歌う、歌うように語るといった意味合いでしょうか。まさにそれを体現している歌手という印象です。

ザニッキの声の特徴はその深さにあると思います。胸に押さえつけすぎてはいないが、胸の音がないわけでもなく、音だけなのですが、顎の脱力と開きがよく聞こえてきます。顎の開きと喉の開きがよくリンクしている歌手という印象。

 

3.メロディ、リズムはとても単純です。それゆえにイタリア語の特徴である母音が伸びることをとても意識して歌う必要があります。まずはイタリア語をしっかりと喋って、その声が身体から遠くへ飛ばせるくらいの明瞭さと支えが必要です。歌う前にこのしゃべるレベルを上げることを理解しトレーニングすると歌いやすくなると思います。喉で怒鳴るのではなく、深いポジションを意識して遠くへ飛ばすイメージです。(♭Σ)

 

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1.歌詞は3節までありそれぞれ前半は短調、後半は長調へと転調します。内容は女性目線での歌詞で伊語で歌われています。「私の孤独は貴方だ」と言いながらも、旋律のダイナミックな動きや転調する中で歌詞を聞くと、今もなお相手への愛がほとばしる、そのさまがよく表現されているように感じられてきます。

 

2.ザニッキの声は、少しハスキーに感じることがありますが、歌い方に癖もなく伸び伸びとした歌声はとても聞きやすいと感じました。また歌詞の発音や音の捉え方が情熱的なのも彼女の魅力なのだと思います。

 

3.この曲は音の飛躍がかなりあります。1オクターブまではなくても「ドミシラ」「レファドシ」という音の飛躍が何度も出てきます。音幅が広い部分は遅れが生じやすいので、音だけの練習・リズム読みの練習に分けてていねいに取り組んでください。リズム読みで子音の入れ方を整えておくと、音程をつけても歌詞の運びがスムーズになります。(♯α)

 

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1.Aパート、Bパート(サビ)の繰り返しの構成の曲です。Aパートは短調、Bパートは長調に変化します。邦題は「心遥かに」ですがイタリア語では「私は頑固者」で、なぜイエスと言ってしまうんだろう、なぜあなたのことを聞いてしまうんだろう。馬鹿なあなたのことを思ってしまう、嫉妬から。あなたは私の孤独、あなたは私の怒り。なぜなどと問わないで、と歌っています。日本人的なしんみりした感情で歌うより、怒りに任せた感情表現で歌えるのではないでしょうか。

 

2.声を聞いた感じでは、大変よく身体から声が出ているなという印象です。息もしっかり吐けていて、その息に声がのって、大変伸びやかな声です。ですが、イタリア人がイタリア語で歌っているということは、彼女の普段からの話し声も、このように大きなよく響く声なのでしょう。表現も大きく、感情豊かに、ときには怒りを表現して劇的に歌っています。

 

3.まず歌詞の内容、単語の意味を正確にとらえないと、この曲を真に迫る表現で歌うことはできません。「嫉妬、地獄に落としてやりたい、私の孤独、怒り、それはあなた。」とても熱情的な言葉がたくさん出てきます。そして声は、口と横隔膜がつながっているかのように感じてみてください。口の上部は目のあたり、口の下部は横隔膜のあたり、そこまで口が開くかのようなイメージで、出す声はおなかとつながっていると思って歌ってみましょう。(♯β)

 

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1.平たく言えば失恋の曲です。自分の心が相手から離れていってしまうことを、相手に対して、ときに情熱的に、ときに悲しげに歌うような曲だと思います。気持ちをぶつける部分や、悲哀に満ちつつも消極的に聞こえないで歌えるような表現が必要になるかと思います。

 

2.情熱的に歌い上げる部分や、悲しげに歌う部分の差を表現できているのが特徴的だと思います。そのため、感情の起伏が分かりやすいと思います。やや声を張りすぎているように聞こえる部分もありますが、母音がはっきり聞こえて情熱的に聞こえるという意味では、表現がつまらなく歌ってしまうような人にとっては参考になるかもしれません。あくまでも力み方ではなく、発語方法という観点で見てみるとよいかもしれません。

 

3.この手の感情表現は、どこか生ぬるい歌い方になってしまったり、ただわめき散らすような歌い方になってしまったりと、日本人としては苦手な人が多いかもしれません。声は叫ばずに、表現として相手に気持ちをぶつけるような歌い方であったり、悲しくても内にこもった消極的な表現にせず、聞き手に悲しさが伝わるような歌い方が必要になると思います。(♭Я)

 

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1.悲しげなイントロ。「なぜあなたにいつも『はい』と言ってしまうのか」と切々たる自分への怒りで始まる歌。急に転調して明るくなり、落ち着く。憂いは怒りは希望になり始めたのだろうか、これは和解したのか、他人とあるいは自分と。過去の回想なのか、未来への希望なのか。もとは映画の主題歌のようですが、やや抽象的な歌詞とともにいくらでも解釈の可能性がある歌のように思います。

 

2.歌いだしの絶叫。やや食い気味に入る。感情が爆発したかのようだ。それなのになんと説得力があるのだろう。ハスキーで、身体から離れていず、怒りと悲しみが表現しつくされている。途中で長調に変わるところも見事だ。ピタッと一流のバレエダンサーのように、伴奏と一体に動く。歌いだしとはうってかわって、低い声で切々と語る。低い声の深さと、パワーのあるシャウトが両立できているのがこの歌い手のすごさだ。

 

3.歌いだしをフレーズコピーしてみましょう。はじめの一言だけでよいです。照れずに、自分の感情を前に出しましょう。まずはそこから始まります。自分の感情を爆発させること。そしてそれを、他者に対する説得力を持たせること。途中、長調に転調するところの深い声もとってみましょう。どれだけ、支える深い息が必要か、感じてみましょう。(♭∴)

 

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1.終わりかけた恋の歌。相手のワガママに、つい「うん」と答えてしまうものの、虚しさや怒りを感じている。しかしまだ気持ちが残っているから辛い思いもする。そんな女心の機微を歌っています。4ビートのゆったりしたリズムで、前半は短調の下降、後半は長調で上行と下降を繰り返します。

 

2.ザニッキは特別な美声や個性的な声の持ち主ではないと感じます。若干息の混じった、極めて普通の声です。すごく歌がうまいとも思いません。でも聞いていて、楽な、ちょうどいい感じの歌手です。最近日本ではそういう歌手が多いですが、ザニッキは気楽に聞ける歌手というジャンルの先駆者のように思いました。

 

3.フレーズを大きく捉えてレガートで歌うとよいと思います。言葉は大きなフレーズの上下を妨げないように、でもはっきりと喋るようにしましょう。前半と後半の色彩の違いが表現できるとよいです。(♯∂)

 

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「福島英のヴォイストレーニングとレッスン曲の歩み」より(https://www.bvt.co.jp/lessonsong/

1.イヴァ・ザニッキ 「心遙かに」

 

 カンツォーネの曲には、「はるか」がつくものには「愛遥かに」「瞳はるかに」「心遥かに」と3つありますが、なぜ、一つだけ、「はるかに」とひらがななのでしょう。今では、「遥かに」とは、あまり使わなくなりましたね。

 

さて、出だしの「冷たいことば聞いても」のところを原語Non so mai perche ti dico sempre si で繰り返しましょう。ここだけで2年、学べるものがあります。イタリア語で言い切って、そのままメロディをつけるのです。

サビのLa mia solitudine sei tu  la Mia rabbis Vera sei sempre tuも、同じく日本人の音程感覚と違い、芯のある声で音質をまっかく変えずに声で処理しています。あなたが歌うと高いところは、細く薄くなりませんか。ギリギリ、キーを下げて練習してください。

この二つのフレーズは、私が音楽的展開の条件として、フレーズを「メロディ処理」することと名付けたことのもっともわかりやすい実例です。1オクターブほどのメロディで、まったく声質が変わらないことを学んでください。

そこは、日本のポップス歌手と大きく違うところです。歌わされてはいけない、言葉をいうように処理するという感覚です。

そこから、日本語で入れてみるのにも、徹底して時間をかけてください。

「冷たい」を「tumetai」のように音楽的に処理したうえで、日本語らしく切り替えていくのです。このプロセスでの二重性が、日本語の歌を音楽的かつ言葉としても伝わるようにする難しさですが、解決策でもあります。高低アクセントにとらわれず、強弱アクセントでグルーブ処理するということです。

 

参考曲として、ザニッキは、「愛の別れ」をクラウディオ・ビルラと張り合って歌っていますが、正面で争わず、彼女なりのもっていき方をしています。スキャットの「ラララー」あたりも、ビルラとは違う形です。本当の歌い方というのを教えてくれた一人です。

No.380

「鉄のバイエルー鉄道発車メロディ楽譜集 JR東日本編」松澤健(本)

ポップスや民謡などの場合は、楽譜の存在価値はオマケ程度かも知れませんが、それでもパッと見たときに「この曲は3拍子だな」「このパターンは前にもやったな」などと視覚的に捉えられると、何も情報がない状態よりはアドバンテージが大きくなり、練習効率が上がります。

しかしながら、今まで楽譜を見る習慣がなかったり、ピアノやギターを弾いた経験がない方にとっては、楽譜そのものが苦手意識を刺激する存在かも知れません。

そこでお勧めするのが、こちらの楽譜です。

山手線や中央線の発車メロディ約100曲がピアノで弾ける曲集です。

耳で覚えている曲の楽譜を見て、演奏で再現する体験は楽しいものです。バイエル(子どものための有名なピアノ練習曲集です)というタイトルからも分かる通り、子どもが無理なく弾ける曲が中心となっており、難易度別マークがあるのでピアノ初心者でも気軽に挑戦できます。

鉄ちゃんにもそうでない方にも是非、手に取ってもらいたい一冊です。

 

「三千円の使い方」原田ひ香(小説)

三世代の女性がお金の使い方を通して生き方を考える物語です。

ほとんどの人が何かしらのお金についての悩みを持っていますが、どう使うべきか、何が幸せかは人と比べず、自分で決める事だと改めて思いました。

 

「野田愛実」(YouTube

最近、たまたまオススメに出てきたインディーズシンガーを聴いています。この方はご自身のオリジナル曲も出していますが、YouTubeで主に出しているのはカバーです。最新の流行曲から昭和平成の名曲、アイドル曲、アニソン、韓流など幅広く歌うのですが、まさに変幻自在。中島みゆきを唄えばいかにも中島みゆきらしく、ミスチルを歌えばミスチルの世界が立ち上がり、サザンを唄えばサザンの匂いがする。それでいて単なるモノマネでなく、野田愛実さんの核たる部分は確固として残り続けるのが素晴らしく、一曲聴いただけでファンになりました。

 

「劇場版ごん」八代健志(映画)

こういう二次と三次の境のような作品には惹かれる。リアルな表現でありながら、現実にない絶妙な距離。繊細な作品ゆえに一人一人の生きた芝居が伝わってきた。

 

「new year musical concert 2023」真彩希帆他(宝塚、ミュージカル)

雪組トップ娘役真彩希帆さんの歌が素晴らしかったです。

V037「人生よありがとう」メルセデス・ソーサ 

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.タイトルどおり人生への感謝の歌詞ですが、人生謳歌というよりは、喜びだけでなく、しみじみと悲しみや苦しみも含めて人生を抽象的に思い返す歌詞です。そのためか、短調で書かれていますが、自然短音階も使われていて、悲しさ一辺倒ではないメロディです。

最初のフレーズの出だしの音が、ほぼ最高音の第五音で、次のフレーズは第四音から、次は第三音からと、下降しながら始まり、メロディ全体が下向が多く、上向がかえって目立つ作りになっています。

音域はやや狭く、低い第七音から第六音までの1オクターブに満たないのが基本なので、歌手によっては、何とか高めの音を追加して迫力を出そうとして、メロディーラインの美しさを損ないかねません。

1節はそれほど長い作りではなく、歌詞は6節まで有ります。

 

2.メルセデス・ソーサは、口の中が無理なく開いていて少し太目の声で楽に声を使っている様子です。この曲に限っては、ほとんど強く張った声を使っていません。他の曲では強く張った声も使っていますが、ロングトーンでは、ほとんど使っていないのです。フレーズのところどころに前打音的な、控えめで小さなこぶしが入るのも魅力的なのでしょう。

また、あえて高い音をつけ加えていないので、メロディ本来の美しさが引き立っています。

外国人の我々がなんとなく聞いてしまうと、淡々と繰り返されているように聞こえる曲ですが、各節それぞれの歌詞に合わせて声の表情を変え、ネイティブの人々には、たまらない表現力なのでしょう。

 

3.メルセデス・ソーサを、お手本にするのは、お勧めです。ただ、他の歌手は、けっこう張った声も使って、曲を盛り上げようと努力しているので、試してみるのも悪くないでしょう。また、5節、あるいは6節を、単語の意味なども調べて、歌詞を噛みしめながら歌いわける練習は、是非、トライしましょう。(♭Ξ)

 

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1.ギターの伴奏と声がメインの音楽がシンプルがゆえに声の魅力をより一層引き立ててくれる印象です。歌手の力量がとても高くないと成立しない世界観のようにも思えます。タンゴのようにもシャンソンのようにも聞こえ、しかしスペイン語特有の明るさがより声の世界を堪能させてくれます。

 

2.声の深さと発語の明るさ、そして喉、顎などの脱力感が見事の素晴らしい歌手です。私は今回初めてこの歌手を知り、声を聞きましたがナチュラルな部分のすごさを感じさせてくれる歌手です。

 

3.この歌手を聞いてしまうとまずは声の魅力がとても重要だと思ってしまいます。まずはお腹を使って支えられた声をトレーニングしましょう。しかし、支えを感じようとして胸、喉、顎などが力んではいけません。深さと脱力というのはリンクしづらいものですが、それをトレーニングしていくとうまく歌える曲だと思います。

(♭Σ)

 

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1.スペイン語の歌詞で歌われており、同じ旋律に歌詞が6節まであるという構成です。歌詞の内容が物語として続いていくのではなく、1節ごとにそれぞれ内容を提示しています。演奏にあたっては、6節とも歌詞の始めにある「Gracias a la vida(人生よありがとう)」をどのような表現で歌うのかが問われます。また旋律もリズムもシンプルな音の流れであるがゆえに、そこをどう表現するのかも含めて歌い手自身が歌詞としっかり向き合うことが必要です。

 

2.ソーサの歌い方は、まるで語っているかようで歌詞の運びも滑らかで、語る中でも強調したい部分は(わざとらしさがなく)自然と音量が上がるという感じなので、聞き手の耳にスッと歌詞が入ってきやすいのだと思います。また、曲が進み後半に行くにつれて感情が高ぶっていくさまも、そこから彼女の生まれ持った感性や素質のようなものを感じました。

 

3.音取りとスペイン語の発音はわけて練習した方が効率がいいです。ただ単に発音だけマスターするのではなく、ちゃんと歌詞内容や単語それぞれの意味をわかった上で歌うのは大前提です。またせっかく音程は取れていても、発音が口馴染んでいないと息の流れを妨げてしまうので、まずは音程をつけずに、歌詞のリズム読みで発音練習することをお勧めします。(♯α)

 

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1.ギターと歌のみの演奏です。何度も同じメロディを繰り返す中で、歌詞の変化や歌唱の盛り上がりに伴って、ギターのアレンジが細かい音符になってリズムを刻んだり、音量を上げたり弱めるなどして繰り返すメロディに変化を与えています。人生で、たくさんのものをもらったと、感謝を歌い上げる曲。

 

2.スペイン語で歌っています。スペイン語の歌といえばフラメンコの歌がありますが、そこでありがちな地声で喉に力を入れたような歌い方ではなく、頭声を主としています。声楽的な発声アプローチで、とてもよくコントロールされた発声で歌っています。喉に変な力みをいれることなく、歌詞をていねいに心を込めて歌唱しているのが伝わります。

 

3.人生の壮大なテーマを歌い上げる曲なので、声も表現も小さく収まることなく朗々と歌えるといいですね。同じメロディが何回も続きますが、キーワードになる言葉「目」「耳」「足」「心」などを中心に、各連に込められた思いをしっかり歌っていただきたいです。ただ漫然と歌ってしまっては、同じメロディの連続でマンネリになってしまいますが、それぞれの連の歌詞を、その都度しっかり表現することで、マンネリを免れることができるでしょう。(♯β)

 

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1.人生の末期を悟って語っているような内容です。自分の命・人生に対して感謝を語る一方、音楽自体は短調で書かれています。これが何を意味しているのか興味深いところです。

 

2.叙情的に語るように歌うことができる人という印象を受けます。スペイン語の言葉の持つ抑揚を巧みに利用しているように感じます。濃淡や温度など色彩が鮮やかに聞こえるので表現豊かに感じます。声自体は美声というわけではありませんが、発音や語り方が美しいように感じます。

 

3.歌い方よりも語り方をどうするか。詩の内容から自分なりに解釈した叙情的な語り方を活かすことを大事にしてみるとよいと思います。その際、「歌詞では人生への感謝を語っている。しかし、音楽は短調で書かれている」という内容から、明確に書かれていない部分で何を感じるかはとても大事になると思います。この歌詞と音楽からどのようなドラマを展開できるかが、歌い手としての資質を問われる部分だと思います。聞き手を満足させられるよう工夫して歌ってみてください。(♭Я)

 

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1.シンプルなアレンジで聞きやすい。コードが意外に進むところが多く、飽きない。後半のリズムパターンも複雑で、アレンジの伴奏をよく聞くだけでもリズムのトレーニングになると思います。完成度の高さから聞いていると忘れそうになるが、どうやらこれはライブ録音のようなので、その掛け合いの楽しさ、凄さを感じられるとよいでしょう。

 

2.伸びやかな声、息の混じり方がちょうどよい。脂の乗ったようなつややかな声、しかし嫌味ではない。アレンジが興奮してくるにつれ少しずつ、前に話し、投げかけるような歌い方になっていきます。下降音形の処理がうまく、下がるにつれて、歌いこんで深く盛り上がっていきます。日本人にこのような歌い方ができる人は少ないのではないでしょうか。ヴァイオリンの低い弦のような振動です。

 

3.歌いだしをよく聞いてみましょう。よく息の動きを追ってみましょう。gracias a la vida 最後の伸ばし方に注目。フレーズコピーして歌ってみましょう。いかに自分の声がスカスカで貧弱だということに気がつくと思います。そういう場合は、思い切って大きい声で前に向かって歌ってみましょう。一般に歌いだしのフレーズコピーは弱い声になりがちなのですが、大きくとらえて大きく出しましょう。(♭∴)

 

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1.ものを見る目、音を聞く耳、言葉、歌など、さまざまなものを与えてくれた人生に感謝するという内容。アルゼンチンのフォルクローレに分類される音楽で、ギターとボンボ(打楽器)によって伴奏されています。短調で書かれた音楽は内容に反して陰鬱な雰囲気を醸し出しますが、単純な西洋音楽長調=明るい、短調=暗いという枠組みには収まりきらない性質の歌でもあります。

 

2.メルセデス・ソーサの持ち声は、おそらく相当強靭なものだと思われます。それをフルでは使わず、時折、上唇~鼻腔にかけての一歩引いた共鳴を使いながら繊細に歌い上げるあたり、余裕綽々です。ピアニシモで歌っても一切ブレない声。

細かく震わせるような装飾は、ポルトガルのファドにも通じると感じました。

 

3.この曲は是非とも原語のスペイン語でチャレンジしていただきたいです。このくすぐるような繊細さは日本語にはないからです。試していただきたい練習法は、うがいをする位置で喋ったり歌ったりしてみることです。冒頭の「Gracias」で実験してみてください。(♯∂)

No.379

「ライオンのおやつ」(小説)

若くして余命宣告された主人公が瀬戸内海の島にあるホスピスで過ごし、人生の中で大切なものに出会う物語です。

何気ない日常の1コマ1コマがとても感慨深いものだと感じさせてくれる小説です。

主人公が朝食のお粥を身体中で味わいながら食べる場面がとても印象的でした。

 

「THE FIRST SLAM DUNK井上雄彦(映画)

質の高さを感じた。キャラクターの息の描写がリアルな世界観を作っていたなと感じた。写実的。原作を読むときに感じる無駄のない表現が立体的に伝わってくる作品だった。

 

「土を喰らう十二ヶ月」(映画)

信州の山中で自給自足する主人公の生き方を見て、なにかホッとするものを感じました。そして1から手作りの食べ物がほんとうに美味しそうでした。

ドライブマイカー、ジュラシックパークなと話題の映画を結構観ましたが、この映画が1番良かったです。

 

「神田伯山独演会」神田伯山(講談)

初、生での鑑賞。身体全体で表現を感じたい。

YouTubeと生との差も感じられたら良いなと思う。

 

ほぼ日手帳

文字として頭の中を可視化したいと思い購入した。予定以外にも自由に書ける欄があり、活用したいと感じた。

V036「枯葉」  サラ・ヴォーン

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.メリスマ的な箇所がとても多く、歌う部分のほとんどを占めています。小刻みに音程を変えなければならないので、力づくで声を出していると、ほとんど歌えない音形が随所に出てきます。

 

2.曲中の全ての声が、前に出ているわけではなさそうですが、マイクが有るので、問題なく聞こえます。そこを逆手に取って、うまく表現に結びつけている部分も少なくないようです。チェンジは見事で、地声高音域から裏声はもちろん、かなりの低音域までを使いこなしているのは、圧巻です。

 

3.全く力を入れないで、声を前に出せなければ、このようには歌えないので、まずは力を抜いて、音程だけを気にして、歌ってみましょう。それでも歌えない部分は、テンポも落として、ゆっくり歌ってみます。音程自体は、順次進行や、コードに沿ったアルペジオや、装飾音がほとんどなので、コツさえ解れば、それほど難しくはありません。難しいのは、その脱力加減で、美しい声・お気に入りの声を出すことです。なんとか歌えるようになったら、是非、そこを目指してみましょう。(♭Ξ)

 

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1.言葉がなくスキャットを多用していて、楽器との言葉のない声のセッションともいえるような曲です。この曲だけの分析でいくなら信じられないほどの音域を必要とします。かなりの低音から高音までをカヴァーしなければならないでしょう。その意味では、このようには簡単に歌える曲ではありません。

 

2.単純に音域の広さに驚愕します。そして胸をしっかりとならした低音、中音からファルセットをつかっての高音というのは、日本人ではちょっと難しいかもしれないと思えてしまいます。リズム感やスキャットの躍動感、言葉がない状態でのこの印象を与えられるというのも驚かされます。低音がしっかりと低音歌手のような重量感をもちつつファルセットへの移行というのも驚くべきことです。

 

3.高音もファルセットへの切り替えと低音、中音の地声・胸声の太さ、鳴り方は難しいでしょう。日本でも素晴らしいジャズ歌手やタンゴ歌手などがいて、胸声とファルセットを多用していますが、サラヴォーンの場合、そこにある程度の音量や音圧があるように感じられます。ある程度の音量や音圧を声に加えるとファルセットへ移行しずらかったり、低音の声が重たくなりすぎて喉に負荷を与えがちなのですが、そのような感じには、聞こえません。

素晴らしい歌唱で学ぶべきところは多いとわかりつつ、真似をしすぎるリスクも高い歌唱だと思います。共鳴だけではなく、声の基礎力の部分がとても重要なのではないでしょうか。話す声、日常の声のポジションから意識する必要があるかもしれません。逆説的にいうとトレーニングを重ねていくことで日常の声が変化してくるくらいのイメージが必要です。そうすることで、中低音にも充実度が増し、高音域へのアプローチが楽になるでしょう。(♭Σ)

 

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1.かなりテンポが速い曲で、歌詞が一切なくスキャット(ダバダバなど)だけで歌われているのが大きな特徴です。スキャットというものは、一般的には歌詞の合間に即興(アドリブ)でつけるものなので、曲全体がスキャットのみで構成される曲というのは、とても珍しいと思います。

 

2.幅広い音域において力強い声を持ち、さらに声の動きもとても柔軟です。スキャットだけで歌っているのでまさに「人間の声という楽器」を聞いているような感覚になります。アップテンポな曲ですが、どんどん先を捉えているので息がスムーズに流れて、苦しそうな感じも全くなく、技術的にも音楽的にもベテラン歌手だと感じられます。

 

3.スキャットは即興でつけるものなので、この曲の歌唱でもスキャットのつけ方を変えて歌ってみるのも表現の勉強になるかもしれません。全く同じではない、あなただけのスキャットで「枯葉」を歌うという挑戦も、感覚を磨く上では学びがあると思います。とはいえ、ジャズ自体を歌い慣れていない人は、すでにできあがっているこの曲をそのまま模倣して歌ってみてください。アドリブのつけ方の感覚であったりジャズのリズム感を垣間見ることができるはずです。(♯α)

 

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1.全てスキャットで歌われていて、言葉が一切ないにも関わらず、聞くものを興奮に導く素晴らしい演奏だと思います。構成としては、インストゥルメンタルで始まり→声のスキャットでコーラス→インストゥルメンタルスキャットが合流し、終わります。

原曲は大変ゆったりしたテンポで、ときにテンポルバートで歌われることもありますが、サラヴォーンの演奏はとても高速でアグレッシブで一気に駆け抜けます。

 

  1. サラ・ヴォーンは、とても音域が広く、下はcis3〜上はfis5までと、驚異の広さです。話し声に近い音声で歌っていますが、その話声が喉に負担のない発声なのでしょうか、下の声はそれほど地声で張ったような声でもなければ、高音はきちんと頭声にしており、ジャズシンガーとはいえ、基本を押さえた発声を身につけていて、声に厚みがあり、少しハスキーな魅力があります。

 

  1. この曲を歌いこなすには、テンションを最初から最後までキープするエネルギーがまず必要でしょう。高速でエネルギッシュな演奏を5分間、継続しないといけません。

次にこのスキャットを真似するには何度も音源を聞いて、それらしいフレーズを歌えるように練習してください。全体の構成を捉えたら、1コーラスずつどのようなメロディーがつけられているのか、どのように盛り上がっていっているか、メモしながら聞いていきます。最後に音源に合わせて歌ってみてください。(♯β)

 

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1.全曲が歌詞というよりもスキャットで演奏されており、これだけ長い時間をスキャットだけで演奏される曲も少ないのではないでしょうか。ジャズならではのリズム感であったりノリのよさといった部分も必要とされる曲です。

 

2.日本人にはなかなかいないような、低音域から高音域まで幅広い音域で歌うことができる歌手です。パワフルな声の持ち主です。

 

3.全曲にわたって、ほぼアドリブのスキャットで演奏されています。スキャットを使ってどのようにこの曲を演奏するのか。音楽から感じたままに、型にはまらず演奏するというのが必要になります。型にはまってしまうとつまらない演奏になってしまうので、お手本はお手本ですが、この模範解答に近づけることだけでは演奏できない曲でしょう。ノリよく、スキャットを巧みに活用して、オケとともに独自の世界観を創り、それを聞き手に提供できるように歌唱できるとよいですね。(♭Я)

 

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1.有名なシャンソンですが、原曲をとどめないスキャットです。販売当時、激しい賛否両論だったそうです。一見よくわからない曲だと思うでしょうが、表面に惑わされないで左手をよく聞いてください。一定のコード、リズムのパターンが聞こえてくると思います。同じパターンを繰り返している部分(ストップしている部分)と進んでいる部分と2つにわかれることがわかると思います。このようにして少しずつ聞こえる部分を増やしていきましょう。(いつでも、よくわからない曲だと思ったら、伴奏とリズムをよく聞くようにしてください。)

 

2.これが女性の声に聞こえますか。凄すぎてよくわからないかもしれませんが、低い深みのある声です。また信じられないリズム感です。伴奏との掛け合いを聞いてください。

 

3.音源にあわせて自由にスキャットしてみましょう。恥ずかしさを捨てて、楽器になったと思って自由に声を出してみましょう。いろんな音が出せるように、声の幅を広げるために、いろんな音真似を練習しておきましょう。また、フレーズコピーをしましょう。比較的ゆっくり歌っている部分は低音です。自分の声と比べやすいということもありますので、低い声を真似してみましょう。そして自分の声を録音して聞き返し、比較してみましょう。(♭∴)

 

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1.シャンソンの「枯葉」は、晩秋の情景と過ぎ去った愛を重ねたセンチメンタルな名曲です。サラ・ヴォーンの「枯葉」もこちらを元にしていますが、原型を留めていない自由な演奏です。

ヴォーカルによるスキャット、ピアノ、ギター、ベース、ドラムという編成で、火花が散るようなセッションを繰り広げるフリージャズです。

 

2.サラ・ヴォーンスキャットはあまりにも自由です。低音から高音までトランペットやベース、ホイッスルといった何種類もの楽器の音が聞こえるように感じますが、しかしそのすべてが紛れもなく彼女の声なのです。ザラッとした手触りの音色が息に乗って淀みなく展開していく様は、歌唱芸術の極致と言ってよいでしょう。

 

3.私はこんな演奏を真似できる歌手をちょっと思いつきません。まずは普通の「枯葉」をちゃんと歌えるように勉強するべきだと思います。フランス語版ならイヴ・モンタンのしっとりした歌唱やコラ・ヴォケールのいかにもシャンソンな歌唱、英語版ならナット・コング・コールの端正で甘い歌唱を聞いて勉強することをおすすめします。(♯∂)

 

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「福島英のヴォイストレーニングとレッスン曲の歩み」より(https://www.bvt.co.jp/lessonsong/

  1. サラ・ヴォーン 「枯葉」

 

 サラヴォーンの「枯葉」は、音程やリズムを強化したい人には、毎日10回聞いたら、4年くらいでよくなると言ったことがあります。上っ面の音感、リズム感でなく、実践で使えるものとして身についていくでしょう。

この中の1つのフレーズをこなすのも、最難関でしょう。コピーできる箇所がかなり限られますね。声の使い方、男性以上の太い低音からヴォリュームたっぷりの高音、シャウトから共鳴まで、まさに声を楽器レベルで使い、アドリブ、フェイク、セッションとは、こういうものかと見せつけます。(ボビー・マクファーリンなどよりもお勧めしています。)

 

 こういうのを聞くと、どうしても日本人のフェイクやアドリブは楽譜に書かれたような形にしか見えなくなってきます。つまり、自分のデッサン、色と線があり、それにあらゆるパターンに対応できる種類や応用力があり、はじめて表現が成り立つのです。

 セッションというのも、日本では、楽器のプレイヤーとどっぷりと組み合えている例は、ほとんどありません。バラバラに走っているというか、バンドもヴォーカルにセッションしていないで、バンド内だけで成立させているようで、そこに入る歌がのっかっているだけで不快なことが多いです。バンドをリードできるようなデッサン力をもつヴォーカルが少ないのです。

 

 「枯葉」は、イヴ・モンタンの創唱で、ジャズにも広く取り入れられました。サッチモで大ヒットした「バラ色の人生(ラビアンローズ)」と並ぶ名曲です。