V040「明日に架ける橋」 ジョルジア

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

--------------------------------------------------

 

1.「明日に架ける橋」は、サイモンとガーファンクルの大ヒット曲です。ジョルジアは、かなりのアレンジをしています。

原曲は、第4音から始まる、落ち着かない不安な導入で、歌詞の「君が生きるのに疲れて ちっぽけな存在に思えて 涙がこぼれそうなとき…」によくマッチしたメロディになっています。

途中、第5音から高い第3音への跳躍が印象的で、特に、中高音域では、美しい順次進行が多用されているので、この部分の跳躍が目立ちます。

サイモンとガーファンクルは、男性2人のグループで、やや息混じりのハイトーンで、優しく歌い上げているのに比べて、ジョルジアは、力強く、張りのある高音域を、自由自在に使いこなしています。もちろん、中音域では、息混じりの声なども使って、楽に歌っていますが、それでも原曲に比べれば、とても明るく元気に、自由奔放に、歌い飛ばしていて、ファンにとっては、たまらなく楽しい空間なのだろうと、想像できます。

 

2.ジョルジアは、とてもよい発声で、声域も広く、息混じりの声から、しっかり張った艶のある声まで、うまくコントロールしています。

 

3.ジョルジアの発声は、なかなかよいので、真似をしてみましょう。ただ、この曲は、ジョルジア用にアレンジされていて、とても難しいので、原曲を練習してみましょう。(♭Ξ)

 

--------------------------------------------------

 

1.サイモン&ガーファンクルのイメージが強い曲のイメージです。いろいろな歌手に歌われているので聞き比べしても面白い曲という印象です。ラブソング的な印象ですが、ジョルジアが歌うと、情熱的な曲に聞こえてきます。

 

2.ジョルジアの声の印象はなんといってもパワフルな高音域だと思うのですが、聞いた印象としてかなり音域が広いのだろうなと想像できます。もっと余裕が見える歌い方と言ってもよいかもしれません。甘い声からのパワフルな声量のある音は、日本人にはなかなか大変だと思います。なによりも身体の支えと声道がとても広くつながっているなという印象です。ジョルジアが歌うとこの曲がとてもパワフルで情熱的な曲に聞こえます。カンツォーネとも違いますが、英語を歌っているのに、どこかイタリアンポップスのように声で聞かせるというような曲に聞こえます。

 

3.歌を歌うというだけなら音域的にも広すぎない曲なので歌えると思うのですが、ジョルジアのような歌唱をめざすとなるなら、歌詞を身体で支えて前に飛ばすことをまずは訓練する必要があるかと思います。しかしそれは顎の脱力と舌の脱力がセットの上で行う必要があります。

日本人の場合、あごや舌が固く、あごが下がりづらいです。結果的に空間が狭いのです。それではパワフルな声ではなく頑張って固めて力んだ声となってしまいます。「押している声」と言われることもあるでしょう。顎や舌が柔らかくなくてはお腹を使っての支えもパワフルな声も生まれません。(♭Σ)

 

--------------------------------------------------

 

1.オリジナルの曲にアレンジを加えてカバーした演奏です。前半部分はオリジナルのゆったりしたテンポで、中間部分からは前半よりもアップテンポでアレンジした旋律を付け加えており、後半部分でまた元のオリジナルのテンポに戻ることで、大胆なアレンジでありながらも、しっかりとこの曲の骨組みの中でアレンジを施しているという印象を受けます。

 

2.ジョルジアはオリジナルのテンポと、アレンジを加えて歌うアップテンポとの歌いわけがうまく、とてもメリハリのある歌唱だと感じました。ゆったりのテンポで歌詞の発音もゆとりがある、アップテンポで歌詞の発音も忙しい、この対照的な歌唱を難なく歌いこなす技術力と声の柔軟性によって、曲をカバーする中でもちゃんと彼女のオリジナリティが出せるのだと思います。

 

3.ジョルジアのアレンジは難しいので、最初はオリジナルの曲を勉強することをお勧めします。オリジナルの調だと低音域が苦しく感じる人は、無理をせずに自身の歌いやすい調に上げましょう。また、テンポがゆったりめの曲は息の流れが停滞しやすい傾向にあります。音程に慣れてからでよいので、Z(ズ~)で歌う練習を入れると効果的です。息が停滞してくると、比例して子音Zも減りウ〜と母音だけになってしまうので、そうならないよう子音Zを維持しながら歌い進めると、結果的にその音域に必要な息を促すことができます。(♯α)

 

--------------------------------------------------

 

1.サイモン&ガーファンクルを代表する曲として、多くの人によく知られている曲です。もともとゴスペルに影響を受けて作った曲だといわれているようです。原曲がフォークロックなのに対して、この音源の場合はロック要素がかなり強くアレンジされています。

曲の内容を簡潔に表すと、「君が辛い時に、僕が橋のように寄り添い支えるよ」という内容ですので、相手を勇気づけるよう、時にやさしく、時に力強く語りかけるように歌えるとよいですね。

 

2.ジョルジアはイタリア人ということもあって、ていねいに歌う部分でも音域の低い部分でも、母音の発音が日本人のように奥まらない、明瞭であるということは参考になるかと思います。また激しく歌う部分でも、息を押し出したように歌うようなことはしておらず、怒鳴ったり叫んだりした歌い方との違いの参考になるかと思います。

 

3.歌詞の内容に沿った声と表現で、歌詞を語ることができる状態であることが第一段階として望ましいのではないかと思います。その上で、原曲のようなフォークロックとして歌う場合でも、ジョルジアのように歌う場合でも、曲としての本質を見失わないように、伝えたいことや曲としての核となっているものが何なのかを理解したうえで歌えると、表面上はいろいろなバージョンで変化していても、聞き手に訴えかけたい大切な部分を失わずに歌うことができると思います。(♭Я)

 

--------------------------------------------------

 

1.サビの「like a bridge over troubled water 」で楽器が入らない声のユニゾンで歌っているアレンジが特徴的です。多くの歌手がこの曲を歌っていますが、原曲のサイモンとガーファンクルでは出てこない歌詞を用いているのもユニークなアレンジです。曲が進行するにしたがってアップテンポになり、エネルギーも増していきます。聞く人を鼓舞していくかのようなアレンジと歌唱で誰もが心をつかまれることでしょう。もともと、ゴスペルやフォーク調である曲に、ロックのテイストも加え、大変魅力的なアレンジになっています。

 

2.2コーラス目の終わりで「I will lay me down」を非常に弱々しい表現で、まるで自分が元気をなくして横たわるという意味であるかのように表現しますが、(本来は「洪水にかかる橋になろう」という強い意味)ここでエネルギーを一気に下げておいて、「I will lay me down, whenever you need me, I will be there, to hold you, to touch you, to love you, to comfort you」と原曲のサイモンとガーファンクルのバージョンにはない歌詞を畳みかけて、聞くものを一気に感動に引き込んでいきます。

 

3.まずは、この歌唱の構成をしっかり分析してとらえてみてください。静かな部分、アップビートで盛り上がる部分、再びサビをゆったり歌う部分、この構成をわかったうえで練習しましょう。この3つの異なる雰囲気をメリハリをつけて表現するように気をつけましょう。特に難しいのは、アップビートのロック調の部分かと思います。言葉が早く畳みかけるようなところは、しっかり歌詞を発音しつつ、音程も正確に歌えるよう、そしてテンションも高く保てるよう練習しましょう。(♯β)

 

--------------------------------------------------

 

1.みんなが知っている有名な曲で、アレンジに特徴がある。長いが、通して聞くと盛り上がっていくのが順番にうまくいろいろ仕掛けられており、気持ちよいです。だから、イントロが長いが聞き応えがあり、ギターが工夫を凝らしています。ライヴならではの指板と指がこすれる音、残響とさまざまな音色に注目したいところです。最初のサビのところであえてアカペラになるところが素敵で、ドラムの音がクリアで冴えています。特に最後の盛り上がりのロールがうまいので、テンションが上がります。そこからのリットで終わるのかと思いきや、もう一度のサビへのテンポの運び方も、ドラマーの力でしょう。最後のギターのグリッサンドも粋です。

 

2.息がよく聞こえ、声に芯があって、キャンバスに油絵の具を塗るように、よく伸びて、質感や色がクリアに見えます。最後の盛り上がりに向けての3連符のリズム感がよいです。高い声も完全に身体でコントロールできているため、高い音に聞こえません。伸ばす音がたまにフラット気味のことがあります。

 

  1. 息と声との接点ということでは、真ん中くらいの「ハー」と歌っているところを取り出してみましょう。ここをまずは息でとってみます。そして少しずつ声の割合を増やしていき、最後はコピーしてみます。身体から息を吐くことの難しさがわかると思います。(♭∴)

 

--------------------------------------------------

 

1.言わずと知れたサイモン&ガーファンクルの世界的ヒットナンバー。原曲はフォークですが、これはロック調のアレンジ。困難な状況に置かれても、未来に向かって進めるという希望に満ちた歌詞は、数えきれない歌手のカバーで歌われています。しかし、ここでは、サビの部分以外はほとんど原曲の形をとどめず、かなり自由に展開されていきます。

 

2.ジョルジアは、イタリアのポップスシーンを牽引する実力派アーティストですが、幼少から日本で言うところの「洋楽」やジャズを歌っており、その英語にはイタリア臭さがまったくありません。のちにクラシックの発声やカンツォーネを学んだということが、彼女の歌声に振り幅の広さを与えていると思われます。冒頭のハスキーなバラード調の語りと、サビのなめらかなメロディ、ロック調にアレンジされた中間部の激しく力強い声。同一人物とは思えない引き出しの多さに脱帽です。

 

3.いかに声を開放できるかが鍵となります。遠くに飛ばした先で声が自由に動き回れるように考えましょう。凧揚げやドローンの操作を想像してみてください。操作自体は手元=自身の身体で行うのですが、声の到達地点を遠くに設定するわけです。広い場所で練習してみると発見があると思います。(♯∂)

 

 

 

1.歌詞と曲と演奏 ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど

2.この歌手自身の声、歌い方、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと(VS比較歌手)

 

1.よく知られている曲なので、このようなジャズバージョンになってしまうと、ジャズ愛好家でない私には(ジャズは嫌いではなく、むしろ好きな曲もありますが)全く違う曲として楽しむしかありません。何回聴いても、原曲のイメージが頭から離れず、楽譜と違い過ぎることが、まず拒絶反応として浮上してしまいました。オペラの世界でも、主役の歌手が、メインの曲の最後で、楽譜には無い歌い方・音符を歌って、絶賛されたり、少しガッカリされたりしますが、それが、曲全般にわたって起きているようなものと解釈するべきなのでしょう。

 

2.ジョルジアという歌手は、この曲を聴いただけでもわかるように、低音域から高音域まで、全く無理のない発声で、艶と張りのある声だけに頼らず、張らない声も綺麗に使い分けていて、さすがオペラ歌手に師事し、バックコーラスの経験も積んでいて、経験も豊富な百戦錬磨の歌手という貫禄まで感じさせます。このように、自分の音域の中で、ほとんど無理をせず、良いパフォーマンスを組み立てることが、長く歌い続けるためにも、ぜひ必要なことです。(♭Ξ)

 

1.メロディやリズムがとても複雑かというとそうは感じないです。むしろシンプルに聞こえます。シンプル故に歌う歌手によって全く違う曲に聞こえるのだろうなという印象をうけます。ロングトーンが多い曲ですから、歌手の声の力や表現のしかたがより鮮明になると感じます。

 

2.子音のさばきかたが短く、母音の伸ばしに声の魅力があるのでイタリアやスペインの人という印象です。声門閉鎖がしっかりとおこなわれていることと、ベルティングとよばれる胸声の高音がしっかりと行われているので聞いていても心地よいですし、パワーがあり力強いです。声門閉鎖、ベルティングがしっかりと行われているからこそ、高音域でも胸声のまま音が突っ張らずビブラートがかかります。単に地声で叫んでいるだけだと音がつっぱりこのような声にはなりません。また、ビブラートがかからないので聞いているほうには心地よくはないと思います。単に叫んでいるだけの声と、技術がついている力強い声は違うという見本の一つになる声だと思います。(♭Σ)

 

1.始めの方ですぐにアカペラが差し込まれることで、聴き手を一気に引き寄せ、音楽と聴き手に一体感を生まれさせる効果が出ていると感じました。

中間部では、歌手のオリジナルの歌詞に加えて原曲にはない多様なリズムも入れています。裏拍から入るリズムや三連符、シンコペーションなどをつけ、それらのリズムを連続することでより畳み掛ける(メロディが迫ってくる)印象を与え、さらに聴き手を引き込んでいます。

 

2.個人的にですが、素直で澄んだ声だけど力強い歌唱という印象で、声や表現にも緩急があり、ぜひ他の曲も聴いてみたいと思わせてくれます。

高音域が伸びやかで通る声なので、上に飛躍する音型を多く取り入れることでご自身の特徴を存分に活かしたアレンジになっていると感じます。

また声に瞬発力があるからか、力強い歌唱の中にも声が軽やかに動く印象もあり、そのことで重々しくならずにメロディが聴き手にどんどん流れ込んでくるのだと思いました。(♯α)

 

1.きれいに歌うことや、声にこだわること、歌い方をまねすることをしないほうが、この曲を歌う上では有効的なのではないかと思います。きれいに歌おうとしたり、声(発声)にこだわってしまうと、歌い方がコンパクトにまとまりやすくなるか、逆に力み過ぎるかのどちらかになることが考えられます。また、この歌い手の歌い方をモノマネのようにしたところで、自分自身の歌いたい歌い方と合致するとは限りません。歌う人がこの曲に対して、詞や音楽から感じるものを大事に、それをどのように魅せたいのかを最優先にしたほうがいいと思います。

 

2.声量もありますし、非常にスケールの大きい歌い方をする方だと思います。大きく歌い上げる部分は歌い上げていますが、前半の部分などは語りかけるように穏やかに歌っていますし、幅広い表現ができる方だと思います。表現方法の勉強として、ひとつの参考にしてみるといいと思いますが、ただまねをするのではなく、自分の気持ちとしてどのように歌いたいか、どのように魅せたいかをある程度持っている状態で参考にしてみるといいと思います。また、声を聴くというよりは、フレーズ感だったり、音楽の持っていき方の参考にしてみるといいと思います。声だけマネするとつまらない音楽になると思いますよ。(♭Я)

 

1.7分にわたり、原曲からバリエーションが展開されていきます。テンポもアップするので聞いている人を興奮に導く効果が絶大です。

その構成は、前奏、Aメロ、Bメロ、サビ(アカペラを織り交ぜて)、Aメロ、Bメロ(少しバリエーションを利かせています)、サビ(アカペラを織り交ぜて)、間奏、スキャットのようなバリエーション、8ビートでスキャットのようなバリエーション、オリジナルのサビ、エンディング。

ポップス歌手は大体のバリエーションを考えて歌う人が多いかと思いますが、これがジャズになってくると、完全にインプロヴィゼーションです。そのための練習を何度も重ねます。また、作曲の勉強をすると、このように原曲をアレンジして構成することも可能になると思います。

 

2.息交じりのウィスパリングボイス、弱い音だけど、芯のある声で歌っています。そして、さすがイタリア人だからなのでしょうか、母音をしっかり伸ばすという歌の基本が自然にできています。イタリア語話者の特徴なのでしょうか。

ロングトーンもよく伸びます。さらにポップスシンガーとしては必須のエッジ6ボイスも効果的に使えています。ホイットニーヒューストンなど黒人歌手の声の伸びを要求されるような曲を歌うのに応用できるかもしれません。(♯β)

 

1.語りかけるようなルバートではじまり、ライブ感あふれるなかにも計算されたアレンジが印象的です。

 

2.有名なメロディ部分はオリジナルのメロディを大切に、他の部分は自由にかつコントロールされたフェイクが知的な印象です。(ON)

 

2.ジョルジアに対しては、多くの人が様々な賛辞を書くでしょう。疑いようのない歌唱力、高音の伸び、つや、深さ。しかし私はあえてここで、主に歌いだしの彼女のフレーズ感とリズム感について述べてみます。イントロに関してこのアレンジでまず印象的なのは、ドラムが拍を刻むことが少ないということです。そのギターだけのとりとめがないともいえるイントロの後に、ジョルジアがぽつぽつ、と言葉を紡ぎ始めますが、一見ぞんざいに言葉を置いているかのように見えて、見事にフレーズがつながり、高まっていっています。人によっては「フレーズの最後の音をのばしている」と聞こえるかもしれませんが、実はそのフレーズの間、何も聞こえていないところのブレス、タイミングが絶妙なのです。「リズム感がいい」のです。後半でドラムが入ってきたり裏打ちのところでみごとにリズムに乗っているということはたぶん誰が聞いてもわかるでしょう。その前、このすかすかの伴奏で、完璧なフレーズ感を出せるということがそれよりもすごい一流のリズム感なのです。(♭∴)

 

2.ジョルジアはイタリアのポップスシーンを牽引する実力派アーティストですが、幼少から日本で言うところの「洋楽」やジャズを歌っており、その英語にはイタリア臭さが全くありません。のちにクラシックの発声やカンツォーネを学んだということが、彼女の歌声の振り幅の広さの理由でしょう。冒頭のハスキーなバラード調の語りと、サビのなめらかなメロディ、ロック調にアレンジされた中間部の激しく力強い声です。同一人物とは思えない引き出しの多さに脱帽です。(♯∂)