No.383

「生きるLIVING」(映画)

真面目に、しかし空虚にお役所仕事をこなしていた公務員が自分の余命を宣告され自分の生き方を考えるというストーリー。

これまで棚上げにしていた面倒な仕事を精力的に行い亡くなる。同僚は彼の行いに胸を打たれ、その生き方をひきついでいこうと考えるが、やはりもとの日常に戻る。

たとえ余命宣告されなくても、日々大切に生きたいと思う。雑多な生活の中でなるべく流されずに。

 

「切り捨て御免」中村吉右衛門(TV)

時代劇チャンネルを楽しみにしている母に付き合って、なんとなく見ていたが、中村吉右衛門の殺陣はスキがなく、動きがシンプル。斬り終わり、懐紙で刀を拭い、半身で腰を割り刀を鞘に納め、すっと正面に立つ、その一連の所作が美しく、見入ってしまった。動きの美しさに感動するとは、思わなかった。また、ドラマの中では、血はドバドバッと容赦なく出る。最近のドラマには見ない出血量の多さ。罪もない人々の殺され方も息を飲むほど無惨。それが正義の怒りになるという単純なお話だけれど、ひと昔前はこういうものがカタルシスの一翼を担っていたのではないか、と感じる。

 

ブラフマンの埋葬」(小説)

私の大好きな小川洋子さんの小説です。

主人公とブラフマンという名の小動物の触れ合い。ワクワクしたり刺激的なことが起こるわけではないのに、引き込まれてしまう物語です。

 

「巨大おけを絶やすな!」岩波ジュニア新書(本)

小豆島の醤油蔵のご主人が、自社の木桶が壊れたことをきっかけに、日本で最後の木桶職人が引退してしまうことを知る。木桶は百年以上持つと言われ、次に注文する自分の子どもの時代には木桶を作る人がいないという現実に直面し、一年発起。親友の大工と、妹の知り合いの大工との三人で木桶職人に弟子入りする。そして、毎年木桶を製作するイベントを発案、普段はライバルの醤油蔵に声をかける。参加者がどんどん増え、木桶サミットは毎年お祭り騒ぎ。ひとりの熱い思いが回りを動かし、ライバルを巻き込んで、食文化が守られる様を一気に読んでしまった。普段の調味料は、良いものを使おうと心がけて、醤油と味噌は木桶仕込みを買っているが、ステンレスが一般的とは知らなかった。購入することで木桶文化に貢献したいと思った。