いい耳(by Ei)

いい耳 目次

1.「海の中で聞こえた音」 2.「動物の声」 3.「あたしたちは生もの」 4.「ブレーキ音」 5.「はじめてのテープレコーダー」 6.「糸電話」 7.「無防備な耳」 8.「音の恐怖」 9.「新聞紙」 10.「大きな耳」 11.「軍靴の音」 12.「地…

16.「無音」

音が消えた世界にいきましょう。 そのときにはじめて、私たちは音を取り戻せます。(ジョンケージ「4分33秒」) 私は流れ星をみるために、東北の山中を訪れたことがあります。星を見るには、山や広大な田園がお勧めです。

15.「音の集まり」

音はたくさん集まると、まるですべての色が交じり合ってダークな星になるように、闇となります。そこでは、すべてが聞こえているがために、たった一つの声も聞こえないのです。都会は音があってもなくても、ひときわ孤独を感じるのは、そのせいかもしれませ…

14.「サウンドエスケープ」

音風景というものがあります。表参道ヒルズは、カランコロンと、音がBGMです。(あそこはヒルズでなく、バレーでは…) 声や音は、それがないところでこそ、よく聞こえます。 人は、多くの人の中で孤独を感じるといいます。 一人、山の中に暮らしていても、自…

13.「南こうせつ 神田川」

団塊の世代、定年を前にした大の男がワーワーと泣きます。 イントロで黙り込み、そして、「あなたは、もう・・・」で詰まり、「若かったあの頃」で涙腺にたまり、「やさしさが恐かった」で涙があふれだしたら、2番はもうボロボロです。 私が深夜ラジオで聞…

12.「地下室のカギの音」

私は学生時代、金がなく、銀座のビルの宿直のバイトをしていました。夜中に8階から地下室まで看守のように、大きな金属輪のついた10個以上のカギをならしてまわるのです。 今、思うと、冬はその鉄が冷たく重くさえ感じました。地下の階段からは、カツコツ…

11.「軍靴の音」

ある映画で、軍靴のひびく音だけを延々と聞かされたことがあります。軍隊の行進のように、ただ、ただ、四角形の回りを、靴音をそろえて行進するのです。「ガチャ ガチャ ガチャ ガチャチャッ・・・」と。 ここは、ならえ右。ここは、かかとを合わせ、向きを…

10.「大きな耳」

マギー審司さんのネタに「大きな耳になっちゃいました」というのがあります。最近は「小さい耳になっちゃった」というバージョンもあるのですが、「大きな耳」という、アラジン・アシュー氏の名著があります。 私の親友が脚本に「ライオンの声」を例に引くと…

9.「新聞紙」

新聞紙を丸めて、声を拡大してみましょう。 インクの匂いと、両手の感触が今も、生々しくよみがえります。 メガホンがあれば、もっと声は大きくなります。 でも、新聞紙の包みの中を通る息、そのふくらみ、そして声、その振動を両手で感じてみましょう。

8.「音の恐怖」

私がもっとも怖かったのが、中国のホラー(お化け屋敷)でした。 暗いところでヘッドホンの音を聞くのです。 ことばがわからなくても、そこでの風の音、物音、足音に、恐怖はつのりました。 ことばがわかったら、もっと怖かったでしょうか。 あるいは、たい…

7.「無防備な耳」

耳は無防備です。目のように閉じません。 もちろん、両手で防ぐことはできます。 でも、遠くで鳴っている音でさえ、私たちの耳は、敏感にキャッチしているのです。 自分の意思とは別に・・・。

6.「糸電話」

糸電話を使っても遊んでみましょう。 父親「もしもし、聞こえますか」 子供「何にも、聞こえないよ・・・」 父親「もしもーし、もしもし、聞こえますかあ・・」 子供「・・・ううん、何にも」 父親「もしもーーーし、もーしもし、もしもーーし・・・、おーい…

5.「はじめてのテープレコーダー」

幼い頃、私は、自分の小さな力が他のものに大きく働くことがとても驚きでした。たこあげ、独楽まわし、おもちゃの車、ゴムで動く糸車や水鉄砲もありました。 しかし、それは同時に脅威でもありました。両親や大人の世界のまねごとが好きなのは、そのせいかも…

4.「ブレーキ音」

そういえば、現代の人間を殺す車の急ブレーキの音。 あれも耳を突き刺します。その音で助かった人もいるかもしれないから、静かに制御されたブレーキより、すぐれているといえるかもしれませんね。 「混んでいるところでは、ローでエンジン音をわざと立てて…

3.「あたしたちは生もの」

止まっていた心臓が電気ショックで生き返るのをみるとき、 止まった呼吸機能がマウストゥマウスで、 他人の息を吹き込むことで生き返るのをみるとき、 私は、“なんて人間は生ものなのか”と、思わざるをえませんでした。

2.「動物の声」

動物の鳴き声は、声といってよいのかと迷うほどに、私たちにさまざまな思いをもたらせます。 古代人類は、猛獣の声に怯えたことでしょう。 狼に襲われた体験があれば、その遠吠えは、何よりもの恐怖だったはずです。 黒板やガラスのキィーという音を多くの人…

1.「海の中で聞こえた音」

人々が声を愛するのは、そこに精神の奏でる音楽を聞くことからです。 人間はかつて、海の中にいました。そして、母親の胎内も海でした。そして、そこでさまざまな音を感じてきました。その波動を取り入れてきたのです。 そのリズムの中で心臓は息づきます。…