スタンダード曲 同曲異唱での学び方[同曲異見]
歌い手のための鑑賞から歌唱へのプログラム
アーティスト論
プロアーティスト論
いい声
いい耳
日本の名曲の歌唱ポイント
コンコーネ50での学び方1番~[同曲異見]
おすすめアーティスト・作品
カンツォーネの歌い方(準備中)
1.歌詞と曲と演奏など
(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)
2.歌手のこと
(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)
3.歌い方、練習へのアドバイス
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1.メリスマ的な箇所がとても多く、歌う部分のほとんどを占めています。小刻みに音程を変えなければならないので、力づくで声を出していると、ほとんど歌えない音形が随所に出てきます。
2.曲中の全ての声が、前に出ているわけではなさそうですが、マイクが有るので、問題なく聞こえます。そこを逆手に取って、うまく表現に結びつけている部分も少なくないようです。チェンジは見事で、地声高音域から裏声はもちろん、かなりの低音域までを使いこなしているのは、圧巻です。
3.全く力を入れないで、声を前に出せなければ、このようには歌えないので、まずは力を抜いて、音程だけを気にして、歌ってみましょう。それでも歌えない部分は、テンポも落として、ゆっくり歌ってみます。音程自体は、順次進行や、コードに沿ったアルペジオや、装飾音がほとんどなので、コツさえ解れば、それほど難しくはありません。難しいのは、その脱力加減で、美しい声・お気に入りの声を出すことです。なんとか歌えるようになったら、是非、そこを目指してみましょう。(♭Ξ)
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1.言葉がなくスキャットを多用していて、楽器との言葉のない声のセッションともいえるような曲です。この曲だけの分析でいくなら信じられないほどの音域を必要とします。かなりの低音から高音までをカヴァーしなければならないでしょう。その意味では、このようには簡単に歌える曲ではありません。
2.単純に音域の広さに驚愕します。そして胸をしっかりとならした低音、中音からファルセットをつかっての高音というのは、日本人ではちょっと難しいかもしれないと思えてしまいます。リズム感やスキャットの躍動感、言葉がない状態でのこの印象を与えられるというのも驚かされます。低音がしっかりと低音歌手のような重量感をもちつつファルセットへの移行というのも驚くべきことです。
3.高音もファルセットへの切り替えと低音、中音の地声・胸声の太さ、鳴り方は難しいでしょう。日本でも素晴らしいジャズ歌手やタンゴ歌手などがいて、胸声とファルセットを多用していますが、サラヴォーンの場合、そこにある程度の音量や音圧があるように感じられます。ある程度の音量や音圧を声に加えるとファルセットへ移行しずらかったり、低音の声が重たくなりすぎて喉に負荷を与えがちなのですが、そのような感じには、聞こえません。
素晴らしい歌唱で学ぶべきところは多いとわかりつつ、真似をしすぎるリスクも高い歌唱だと思います。共鳴だけではなく、声の基礎力の部分がとても重要なのではないでしょうか。話す声、日常の声のポジションから意識する必要があるかもしれません。逆説的にいうとトレーニングを重ねていくことで日常の声が変化してくるくらいのイメージが必要です。そうすることで、中低音にも充実度が増し、高音域へのアプローチが楽になるでしょう。(♭Σ)
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1.かなりテンポが速い曲で、歌詞が一切なくスキャット(ダバダバなど)だけで歌われているのが大きな特徴です。スキャットというものは、一般的には歌詞の合間に即興(アドリブ)でつけるものなので、曲全体がスキャットのみで構成される曲というのは、とても珍しいと思います。
2.幅広い音域において力強い声を持ち、さらに声の動きもとても柔軟です。スキャットだけで歌っているのでまさに「人間の声という楽器」を聞いているような感覚になります。アップテンポな曲ですが、どんどん先を捉えているので息がスムーズに流れて、苦しそうな感じも全くなく、技術的にも音楽的にもベテラン歌手だと感じられます。
3.スキャットは即興でつけるものなので、この曲の歌唱でもスキャットのつけ方を変えて歌ってみるのも表現の勉強になるかもしれません。全く同じではない、あなただけのスキャットで「枯葉」を歌うという挑戦も、感覚を磨く上では学びがあると思います。とはいえ、ジャズ自体を歌い慣れていない人は、すでにできあがっているこの曲をそのまま模倣して歌ってみてください。アドリブのつけ方の感覚であったりジャズのリズム感を垣間見ることができるはずです。(♯α)
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1.全てスキャットで歌われていて、言葉が一切ないにも関わらず、聞くものを興奮に導く素晴らしい演奏だと思います。構成としては、インストゥルメンタルで始まり→声のスキャットでコーラス→インストゥルメンタル→スキャットが合流し、終わります。
原曲は大変ゆったりしたテンポで、ときにテンポルバートで歌われることもありますが、サラヴォーンの演奏はとても高速でアグレッシブで一気に駆け抜けます。
次にこのスキャットを真似するには何度も音源を聞いて、それらしいフレーズを歌えるように練習してください。全体の構成を捉えたら、1コーラスずつどのようなメロディーがつけられているのか、どのように盛り上がっていっているか、メモしながら聞いていきます。最後に音源に合わせて歌ってみてください。(♯β)
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1.全曲が歌詞というよりもスキャットで演奏されており、これだけ長い時間をスキャットだけで演奏される曲も少ないのではないでしょうか。ジャズならではのリズム感であったりノリのよさといった部分も必要とされる曲です。
2.日本人にはなかなかいないような、低音域から高音域まで幅広い音域で歌うことができる歌手です。パワフルな声の持ち主です。
3.全曲にわたって、ほぼアドリブのスキャットで演奏されています。スキャットを使ってどのようにこの曲を演奏するのか。音楽から感じたままに、型にはまらず演奏するというのが必要になります。型にはまってしまうとつまらない演奏になってしまうので、お手本はお手本ですが、この模範解答に近づけることだけでは演奏できない曲でしょう。ノリよく、スキャットを巧みに活用して、オケとともに独自の世界観を創り、それを聞き手に提供できるように歌唱できるとよいですね。(♭Я)
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1.有名なシャンソンですが、原曲をとどめないスキャットです。販売当時、激しい賛否両論だったそうです。一見よくわからない曲だと思うでしょうが、表面に惑わされないで左手をよく聞いてください。一定のコード、リズムのパターンが聞こえてくると思います。同じパターンを繰り返している部分(ストップしている部分)と進んでいる部分と2つにわかれることがわかると思います。このようにして少しずつ聞こえる部分を増やしていきましょう。(いつでも、よくわからない曲だと思ったら、伴奏とリズムをよく聞くようにしてください。)
2.これが女性の声に聞こえますか。凄すぎてよくわからないかもしれませんが、低い深みのある声です。また信じられないリズム感です。伴奏との掛け合いを聞いてください。
3.音源にあわせて自由にスキャットしてみましょう。恥ずかしさを捨てて、楽器になったと思って自由に声を出してみましょう。いろんな音が出せるように、声の幅を広げるために、いろんな音真似を練習しておきましょう。また、フレーズコピーをしましょう。比較的ゆっくり歌っている部分は低音です。自分の声と比べやすいということもありますので、低い声を真似してみましょう。そして自分の声を録音して聞き返し、比較してみましょう。(♭∴)
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1.シャンソンの「枯葉」は、晩秋の情景と過ぎ去った愛を重ねたセンチメンタルな名曲です。サラ・ヴォーンの「枯葉」もこちらを元にしていますが、原型を留めていない自由な演奏です。
ヴォーカルによるスキャット、ピアノ、ギター、ベース、ドラムという編成で、火花が散るようなセッションを繰り広げるフリージャズです。
2.サラ・ヴォーンのスキャットはあまりにも自由です。低音から高音までトランペットやベース、ホイッスルといった何種類もの楽器の音が聞こえるように感じますが、しかしそのすべてが紛れもなく彼女の声なのです。ザラッとした手触りの音色が息に乗って淀みなく展開していく様は、歌唱芸術の極致と言ってよいでしょう。
3.私はこんな演奏を真似できる歌手をちょっと思いつきません。まずは普通の「枯葉」をちゃんと歌えるように勉強するべきだと思います。フランス語版ならイヴ・モンタンのしっとりした歌唱やコラ・ヴォケールのいかにもシャンソンな歌唱、英語版ならナット・コング・コールの端正で甘い歌唱を聞いて勉強することをおすすめします。(♯∂)
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「福島英のヴォイストレーニングとレッスン曲の歩み」より(https://www.bvt.co.jp/lessonsong/)
サラヴォーンの「枯葉」は、音程やリズムを強化したい人には、毎日10回聞いたら、4年くらいでよくなると言ったことがあります。上っ面の音感、リズム感でなく、実践で使えるものとして身についていくでしょう。
この中の1つのフレーズをこなすのも、最難関でしょう。コピーできる箇所がかなり限られますね。声の使い方、男性以上の太い低音からヴォリュームたっぷりの高音、シャウトから共鳴まで、まさに声を楽器レベルで使い、アドリブ、フェイク、セッションとは、こういうものかと見せつけます。(ボビー・マクファーリンなどよりもお勧めしています。)
こういうのを聞くと、どうしても日本人のフェイクやアドリブは楽譜に書かれたような形にしか見えなくなってきます。つまり、自分のデッサン、色と線があり、それにあらゆるパターンに対応できる種類や応用力があり、はじめて表現が成り立つのです。
セッションというのも、日本では、楽器のプレイヤーとどっぷりと組み合えている例は、ほとんどありません。バラバラに走っているというか、バンドもヴォーカルにセッションしていないで、バンド内だけで成立させているようで、そこに入る歌がのっかっているだけで不快なことが多いです。バンドをリードできるようなデッサン力をもつヴォーカルが少ないのです。
「枯葉」は、イヴ・モンタンの創唱で、ジャズにも広く取り入れられました。サッチモで大ヒットした「バラ色の人生(ラビアンローズ)」と並ぶ名曲です。
1.歌詞と曲と演奏など
(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)
2.歌手のこと
(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)
3.歌い方、練習へのアドバイス
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1.4/4拍子で書かれた楽譜ですが、楽譜通りに歌うと、全く違う曲になってしまいます。もともとロカビリー歌手だった坂本九が、本番当日に楽譜を渡され、自分らしく歌い回した結果、できあがった曲が大ヒットにつながったそうです。低い第五音から高い第六音という広くない音域も、多くのカバーにつながったのかもしれません。
2.坂本九は、ロカビリー歌手ということもあるのか、レガートで歌うことが苦手かもしれません。ただ、この曲の大ヒットは、そんな8ビートに乗せたメロディの歌い方が、支持されたからなので、レガートでなくてもしっかり声が飛ばせる点は、是非マネするべきでしょう。ところどころに、ちりめんビブラートが聞かれるのは、彼の特徴です。
美空ひばりは、さすがに、見事に坂本九の作り上げたこの曲の世界観を、しっかり再現・カバーしています。さらに、途中では、スローテンポにして、レガートでこの曲を歌い上げて見せていて、圧巻です。
マリーナ・ショウは、ジャズシンガーなので、中盤手前から、アレンジを加えて歌っているので、曲想としては、違和感を覚えますが、発声としては、無理のないよい発声のようです。
3.まず一度、楽譜通りに歌ってみて、この曲との違いを表現してみるのも、よい譜読みの練習になるでしょう。その後は、坂本九の歌をよく聴いて、リズムの感じ方をマネして、8ビートで歌い、声が飛ばせるように、練習しましょう。また、歌詞でよく間違えられるのが、「ひとりポっち」を、「ひとりボっち」と、濁点にしてしまうことです。くれぐれも、気をつけましょう。(♭Ξ)
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マリーナ・ショウもとても味わい深い歌になっていますが、美空ひばりとの一番の違いは高音域のアプローチでしょうか。美空ひばりは少し頭声の雰囲気をもたせながら、軟口蓋などをうまく操作して、鼻声のように柔らかく、せまい道を声がとおるような歌い方をしていますが、マリーナ・ショウは低音の声のままの音色を保ってパワフルに声をだしています。胸声のままのアプローチといっていです。より支えが必要なのが後者のアプローチです。
3.この曲は様々な歌手がカバーしてきているので、耳のトレーニングとしてもいいと思います。どのような表現方法が自分にあっているか 、自分の好みか。自分にあっているやり方と自分がやりたいものはイコールではないことが歌の場合多いので注意しましょう。どちらを選択するかは歌い手しだいです。
曲としてはけっして難易度は高くないですが、鼻声で処理する日本字歌手が多い歌でもあるので、体を使って歌うことを忘れないように気をつけましょう。外国人もたくさんカバーしているのでそのようなアプローチもたくさん聞いてみるといいと思います。(♭Σ)
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オリジナルでは曲中に口笛が入っており、割と珍しい構成ではあると思います。あまりに有名な曲で多くのアーティストが演奏しており、曲のテンポ感やアレンジもさまざまある中で、さらにアレンジを試みるのもいいのですが、逆にオリジナルに沿って演奏するというのも聴衆には新鮮に聞こえるかもしれません。
美空ひばりは独特の歌いまわしがよい意味で個性が出ている一方で、曲に合わせて声色を使いわけ、明るめで軽やかな歌声にしてこの曲を引き立てているのだとも感じます。
マリーナ•ショウは、オリジナルの旋律にかなり手を加え、ゆったり目のテンポと声量のメリハリでまた違った雰囲気の曲に歌い上げています。声がややハスキーですが、それも含めてこれはこれで素敵だなと思わせる歌い方、曲の仕上げ方だと思いました。
3.この曲は真面目に音をなぞって歌うと、ついリズムが縦割りになってしまいがちです。そうなると声が前に進みにくくなり、伸ばす音符も息が続かなくなってしまいます。テンポを急ぐということではなく、前へ前へと進めるつもりで歌う、ということを意識的に行ってみるのも手です。また、いったん休符を取っ払って歌うという練習も効果的です。
例えば「なみだが(休符)こぼれ(休符)ないように」や「おもいだす(休符)はるのひ」では、休符をなくして1フレーズとして歌ってみるのです。リズムを縦割りにしていた感覚が一気に解消され、息の流れも促されるので休符をもとに戻した後も歌いやすくなっているはずです。(♯α)
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美空ひばりは、やや音楽の作り方が重たく聞こえますが、全体の印象としては鮮やかに聞こえます。また、声色を変化させることができるのも、美空ひばりの特徴だと思います。
マリーナ・ショウは、英語の詞ですが、語るように聞こえるのが特徴的だと思います。歌おうというよりも、「詞を語る」ということを土台としながら、それに音とリズムを載せているという印象を多く受けます。それゆえ、言葉の流れがしぜんに聞こえます。
3.坂本九の歌い方が好きな人は、歌い方や声の質も含めてマネをしたくなるかもしれませんが、喉が上がったり下がったり不安定になりやすくなると思いますので、個人的には、マネをするのではなく、自分自身の楽器の特徴を活かして歌えることを大事にした方がよいと思います。
そして、歌詞の内容自体は非常にわかりやすいものだと思いますので、聞き手に言葉や内容が伝わりやすいように、言葉のフレーズの作り方などを大事にしているとよいのではないかと思います。(♭Я)
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「泣きながら」を、泣いている表現だけど明るい音色で歌っているところに聞く人の哀愁を誘うのかもしれません。
美空ひばりは、ドラマがエイトビートで刻んでいます。言葉の頭の歌い方が非常に特徴的です。これだけでひばり節とわかります。そして、テンションをかけて張る音と、それを抜いて歌う音のコントラストが如実です。しゃくりあげる表現を多用しています。よく聞くと一語一音、音色を変えて歌っているのがわかるでしょう。
マリーナ・ショウは、 恋人に向けたバラード調の曲になっているので、 伴奏もストリングスと、ジャズアレンジのピアノで、ドラムがリズム刻んでないのでしっとりしたイメージです。日本語の曲のようなスイング感はなく、切実に歌い上げています。時々泣き声のような表現を入れています。「あなたが私と共にいてくれたらいいのに」で歌が終わっていて、恋人への切なる思いを歌いあげていて、日本語の曲調とは全く違います。
3.3人とも全く音の捉え方が異なるため、どのようなスタイルの演奏を求めるかで 歌い方も異なるでしょう。
楽譜だけ見れば4分音符の羅列のように記譜されているので、音符一つ一つを歌って止まりがちになってしまいますが、これに騙されてはいけません。言葉からくるニュアンスをしっかり歌いあげてください。
「うえをむーいて」の「むーいて」はミドラソと下降してくる4分音符が4つ並んでいますが、4つの音符がすべて平等ではないですね。また「涙が」「こぼれ」「ないように」の語頭もしっかり印象づけて発音してみましょう。シンプルだからこそできることはたくさんあると思います。(♯β)
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1.Aメロ、Aメロ、サビ、で一番。もう一度Aメロ、Aメロ(この前半は口笛)、サビ、で二番。もう一度Aメロが一度出てきて、これがコーダ。以上が曲の構成です。
この曲のように、Aメロ、Aメロ、サビ、が最も基本的な音楽のフレーズの形です。Aメロをただ繰り返すのでなく、一回目より二回目のほうが盛り上がっているように、その盛り上がりのままサビに突入してください。同じように、一番より二番のほうが盛り上がるように、その盛り上がりのまま、コーダに突入してください。(コーダは半音高く転調しており、自然に盛り上がって聞こえます。)
この明るい曲ですが、サビの途中で一度陰ります。(短調、マイナーコード。)そこが表現の肝です。サビの前半の第三音はやや高めに、後半の第三音は低めに取ります。(全員そのように歌っています。)
美空ひばりは、アカペラの部分を聞いてください。「上を向いて」のアグレッシブなまでの吐き方。下行音形でテンションが下がらずに、上げながら次につなげます。
マリーナ・ショウは、フレーズを自由に展開していきます。声ももちろんですが、このフレーズを展開する感覚、同じメロディを繰り返さない。全く同じ楽譜でも(クラシックのように)、一回目より二回目のほうが「高い状態」になっていないといけません。この演奏では実際にメロディが変わっていくので、その感覚がもっとわかりやすいと思います。声は、転がるようでいて、それでも深い声。
3.美空ひばりのアカペラ部分をフレーズコピーしましょう。フレーズをぶつ切りにしない、「上を向いて」「歩こう」「涙がこぼれないように」が短短長、これで一つのフレーズです。「上を向いて」でフレーズが終わってしまわないように、「歩こう」が高い状態になるように。そうならないように3人歌手がどういう工夫をしているか、聞き取ってみましょう。(♭∴)
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美空ひばりは、アカペラ部分で軽くコブシを混ぜた歌唱で、時折4分の1音ほど下げた絶妙の和声感を見せてくれる。これはちょっと真似できません。
マリーナ・ショウは、息交じりの豊かな声で、高い柔軟性を見せる歌唱。原曲とは違ったスケールの大きい世界観を歌い上げています。
3.本質的には行進曲なので、遅れないように、重くならないように歌うことが肝要です。シンプルさ故の難しさはありますが、衒わず素直な声を心がけるとよいでしょう。(♯∂)
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「福島英のヴォイストレーニングとレッスン曲の歩み」より(https://www.bvt.co.jp/lessonsong/)
カバー曲も入れ、1500曲以上残したひばりのなかで「上を向いて歩こう」では、途中、アカペラでペースダウンして歌いあげています。
ふつうにこなしてしまうだけでは、終えられない女王の意地とともに、そのメロディとリズム、ことばの融合性ミックス、支える声と呼吸のレベルの高さは感嘆ものです。
私のところではすぐに何人ものプロの歌手やハイレベルの歌い手にコピーさせてみられるので、その差や違いが誰よりも明確に確証を得られるのです。そして同時に、その歌い手の才能、能力、実力とともに不足点、欠点も明らかになります。自分一人でやるのと客観性がまったく違います。☆
歌詞と音楽性の両立を日本で安定してどの曲でも成したのは、美空ひばりです。それには7つの声、なかでも、日本人にはめずらしく低く太い声の存在、芯のある声の存在です。これが裏声や高音の発声と伴っている歌手は日本では稀有です。
その秘密は、少女時代にすでに大人の声をもっていたことにあります。そこでは、時代劇のような芝居浪花節のような語り、腹から声を出す少年役から男役が多くて、女優としてもそういう声を使えるのは他になかったでしょう。
日本の女優の声は、清く美しく正しくとつくられ飾られていました。宝塚歌劇団が男役として身長が高く低く太い声の出る大スターを輩出しながら、初期のレベルを越えられないのは、花嫁教育指針と先輩のコピーにあったと思います。
ひばりは身長150cm台、高音向きのようですが体形や首からみると中音向きです。高く細い声-低く太い声を自由に行き来できることで、歌をことばとして扱える条件を満たしています。高く太い声-低く太い声、この太いは、深いという方が合っています。ひばりは、高く太い声もあるのですが、それほど使っていません。世界の一流の歌手は、深い声で高低を感じさせずに一本化し、一体化しています。ひばりがそうしなかったのは、日本の歌の伝え方、端唄や小唄、清元の歌唱イメージ、あるいは日本人の感性かもしれません。最終的には、ことばの語りを選んだのでしょう。
「貧しい人々」ドストエフスキー(本)
ドストエフスキーの20代の処女作。晩年は早書きで有名だったドストエフスキーですが、この作品は推敲を重ねています。10代の少女と40代の中年のおじさんの書簡という形式です。2人ともさまざまなことがあって、今は貧しい境遇で暮らしています。とはいってもそこそこの教育は受け、一応召使もいる身分ですので、本当の貧困層というわけではないでしょう。今の日本にたくさんいる「ちょっと生活が苦しい」という感覚だと思います。また英語と同じで、タイトルで「貧しい」と訳されている言葉は「かわいそうな」という意味がかぶるそうです。そう考えると逆に親近感がわいてきます。
主人公の一人、10代の女性ワルワーラは、もともとは中流階級でしたが、父親の解雇、病死から、運命が暗転し始めます。今は内職で細々と生活しています。この小説は謎めいていて、(2人の書簡以外には何の説明もないので)、ワルワーラがなぜ中年男性マカールと出会ったのか、なぜ文通するようになったのか、よくわかりません。家は近いようなのですが。あとは皆さんが実際に読んで、いろんな伏線を発見して見てください。
推敲を重ねただけあって、(もちろん翻訳ではあっても、)音読に最適な名文です。書簡とは、要するに会話文なので、登場人物に入り込んで音読できるでしょう。論理的な説明文ではないので、音読して体で読まないとわかりにくい部分もあると思います。ちなみに発表当時、ドストエフスキーの友人作家2人は、この作品を交互に音読して読んでいったら、夜通し読み進めて、読み終わるまで、気づいたら朝の4時になっていた、とのことです!
「現代思想入門」千葉雅也(本)
著者はテレビにもよく登場する新進気鋭の哲学者です。難解な思想をわかりやすく説明することに定評があります。ところでなぜ哲学なのか。混迷を深める時代には、思想を学ぶとよいです。哲学者というのは「世の中のあらゆること」を考え抜いている人たちです。薄っぺらいハウツー本にあふれている今日この頃ですが、じっくりと哲学者の本に取り組んだ方が、生きるヒント、生活のヒント、ピンチのときに、またうまくいっているときに、ものを考えるきっかけを与えてくれます。
また、哲学者は現代のことを考えて書いているつもりなのでしょうが、実際には時代が思想家の後からついてくることが普通です。それゆえ哲学書を読むと、これからの時代がどうなるのかがわかります。個人的には現代は、150年ほど前に生まれた哲学者、ニーチェが予言したとおりになっていると思っています。「肥大した自己」ががんじがらめになっている状況です。(「有名になりたい」「イイネがたくさんほしい」など。)
そこで現代思想を学ぶ必要が出てきます。これから世の中はどこに進むのか。もちろん初めから原典に当たれればいいのかもしれませんが、初めは本書のような概説書で十分です。この本ではジャック・デリダ、ジル・ドゥルーズ、そして、ミシェル・フーコーを主に学びます。
現代思想の前までは「複雑なことを単純化して考える」ことがよいとされていました。今の現実社会でもそうだと思います。ところがこれら3人の思想では「複雑なことを単純化しないで、複雑な現実の難しさを、そのままクリアに理解する」ということに主眼が置かれます。詳しくはぜひ本書を手に取ってみてください。
「青年」森鴎外(本)
小説家を目指して上京し、葛藤する話。自分と共感できる部分も多く、リアルに青年像を描いているなと思った。またワードセンスの勉強になった。
「スパイ」板東忠信・青林堂(本)
日本にはスパイ防止法がない。なので、スパイ天国だ、と、聞いたことがある。ロシアや中国のスパイに自社の資料を提供した日本人の話は時々、報道されるが、先進7ヵ国いわゆるG7でスパイ防止法がないのは日本だけ。お隣の中国には、スパイやテロリストを見つけ出す防諜組織「国家安全部」がある。そういえば、何人かの日本人がスパイ活動をしたとの理由で中国内に留め置かれていると思い出しながら、本書をめくった。ポケットの中のスパイともいえるスマホ、文化交流を偽装した活動家の拠点、政治家に接近する工作員など、へえーっと思う内容。日本は本当に無防備だなと思った。
「リトルマーメイド」(劇団四季)
あまり今まで着目していなかった口の動き、口がとてもみんな縦に開いていたし、口輪筋をしっかり使ってクチバシみたいになっていた。色んな海の生き物が再現されていて、綺麗で楽しかった。ワクワクした。悪女役の人の歌唱がすごかった。パワーがあった。聞いていて、すごいなぁと圧巻だった。あんな声を出してみたいと思った。彼女がカーテンコールで最も拍手をあびていた。出演者みんなキラキラ生き生きしていた。
1.歌詞と曲と演奏など
(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)
2.歌手のこと
(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)
3.歌い方、練習へのアドバイス
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1.歌詞を、言葉として大切にし過ぎて、曲が、メロディではなく、語りばかりになってしまいそうな部分もあるシャンソンですが、この曲は、とても綺麗なメロディと、歌詞でできています。
2.随所にジャック・ブレルの思いが溢れ過ぎていて、せっかくのメロディを、充分に活かしきれていないのが、残念です。音程で歌詞を語っている部分も多く、音程よりも歌詞が目立ち、ときには音程を崩す語り(シャンソンではよくあるようです)になってしまっています。
語りとしての声にこだわって、歌声としての声をあまり使っておらず、歌詞が声に乗っていないので、さらに綺麗なメロディが、判りにくくなっています。作詞の美しさや声そのものの表現が、特に評価されていることも、あるかもしれません。
ブレンダ・リーは、語りの部分も少なくありませんが、うまくメロディを壊さないようにしているので、歌声も多く、曲としてとても聞きやすくなっています。
ダスティ・スプリングフィールドは、息混じりの声と艶のある声の使いわけが、曲のドラマを盛り上げていて、とても心地よい構成になっています。また、語りの部分も少なめで、曲としてわかりやすくなっています。
3.まずは、ダスティ・スプリングフィールドのように、歌声でメロディを歌えるようにしましょう。(♭Ξ)
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1.ラブソングの一種なのですが、聞いていると個人的には重たい印象を受けてしまう曲ですね。ブレルの歌いまわし、しゃべり方、ピアノ伴奏、フルートのメロデイがとても暗く聞こえてしまいます。
特にピアノのトリル奏法とフルートの旋律、歌手の語り調の歌いまわしが余計にもの悲しさを演出しています。
聞き手によっていろいろなとらえ方ができてしまう曲だなという印象です。
2.歌手というよりも歌う俳優、歌う表現者というような印象を受けます。歌が歌に聞こえない。歌っているのに語っているように聞こえてきます。しかし、その分言葉のもつ内容がダイレクトに入ってきます。音楽のもつもの悲しさは楽器が担当していて、楽器とのセットとしてこの曲は考えるべきなのだろうと考えます。
声についても舞台俳優が台詞にメロディをつけたような印象です。呼吸や響きというよりも台詞を発する力というべきかもしれません。しかし、この部分が日本人が弱い部分なので、学ぶべきところは多いです。声のレッスンとなると響きや音域ということになりがちなのですが、その前に歌詞を発するだけで心を動かすだけの力のある声というものがあるということです。
ブレルの声は決して美声ではないです。しかし、その分、内容が直接的に入ってきます。声の美しさに隠れない言葉のもつ力を出せる方です。
3.歌手のことでも書きましたが舞台俳優のような力が必要な楽曲です。広い音域や美しい声よりも言葉のもつニュアンスや内容を伝えられる声と体の結びつきが必要です。その意味では台詞をお腹を使って読む。その体の使い方のままメロディを乗せるというトレーニングがよいでしょう。(♭Σ)
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3.歌詞が長くて発音する単語もかなりあるので、もしフランス語での歌唱に挑戦するのであれば、始めにしっかりと歌詞に向き合い、発音はもちろんのこと歌詞の内容も理解した上で練習に入って頂きたいです。「Ne me quitte pas(行かないで)」は、常に三回続きますが、同じ発音をただ繰り返すのではなく、あなた自身の表現をそこに乗せることです。そのためにも、歌詞や単語一つひとつの内容を把握することは必須です。(♯α)
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ブレンダ・リーは、英語で切なく語る部分と朗々と歌い上げる部分の使いわけが印象的です。語る部分は少々個性的な声に聞こえますが、歌い上げる部分ではしっかりと歌われている印象を受けます。
ダスティ・スプリングフィールドも英語で、冒頭、少々ウィスパーヴォイス的な語り方で切なさを表しているのが特徴的だと思います。中間部の歌い上げるような部分も、そこまで派手にはせず、ウィスパーヴォイスのような息交じりの声はここでは使わず、比較的おとなしく歌い上げている印象を受けます。
3.歌うというよりも、切なく語るニュアンスが必要とされる曲だと思います。ときに切なく、ときに大胆に思いの丈を伝えるように語るなど、歌い方を使いわけることや、思いが込み上げて言葉がつまってしまったような歌い方、語り方も必要になると思います。どのように語りたいのかをよく研究してみるといいでしょう。(♭Я)
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1.悲しい曲。歌詞の細かい内容がわからなくても、なぜか通して聞いていると、悲しい秋の、ヨーロッパのさみしい公園の風景が浮かんでくる。歌いだしを2回なぞるイントロ。歌いだし少し音を外しているのが逆に切ない。シンプルなピアノの伴奏。切々と語るような歌。途中から入ってくるフルート(。)の不気味な旋律とピアノの執拗なトリル。何度も聞いていると耳に残る「ヌムキットパ」(僕を捨てないで)。大胆に感情を出すところと抑えるところ。抑えるところが切々と心に迫る。かと思うと思い出すように急に感情が前に出てきます。
2.「ヌムキットパ」と同じ歌詞が何度も出てくる。だが、一度として同じ表現はない。この歌詞以外の場所でも、ささやく声にはたくさんのパターンがある。弱さと強さ、息の混ぜ方。ほとんど語るような歌い方で低い声が魅力。「声」と「歌」に区別をしてはいけないことがわかる。後半の朗々と歌う声。声に芯があります。
3.「ヌムキットパ」を練習しましょう。まず歌いだし、息の感じ、言葉の出し方、つまり方、吐き方、すべてを習得しましょう。次に「ヌムキットパ」と何度も言うそのパターンがすべて違うことを聞き取りましょう。また練習しましょう。(♭∴)
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何度も繰り返される「Ne me quitte pas(私を置いて行かないでくれ)」という言葉がまるで相手にぶつける呪いの言葉のようですらあります。
3.涙をこらえたようなブレルの歌唱をそのまま真似すると、浅い声に陥りやすいかもしれません。嗚咽するときのお腹の動き(横隔膜が激しく動く)を研究して歌に取り入れると、泣く表現と深い声が結びつくかと思います。(♯∂)
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「福島英のヴォイストレーニングとレッスン曲の歩み」より(https://www.bvt.co.jp/lessonsong/)
24.ジャック・ブレル 「愛しかないとき」「行かないで」
「行かないで」岸洋子のと比べる。
「愛しかないとき」荒井恍子のがよいです。
「アムステルダム」新井英一のも参考に。
「リリー・マルレーン」ミルバ(CD)
実家に忘れてきてしまったが、昔、リリー・マルレーンの入ったミルバのを持っていた。
大学生の頃に聞いていたが、バンドの音が静まった後の独唱部分、静寂の中に響く感じが圧巻だった。
第二次世界大戦中に、故郷を思う兵士たちが、ラジオから流れるこの歌を聞いて涙したという。
他の歌い手もたくさん歌っているので、聞き比べてみたい。
「常識として知っておきたい裏社会」懲役太郎、草下シンヤ」(本)
ヤクザや薬物などの裏社会のことは、ほとんど知らない。だからこそ、タイトルに惹かれた。詐欺電話や闇バイト、わけありアカウントなど、表社会と裏社会の境界線が消失しつつある今、身を守るためにはある程度、知識を身に付けなくては、と思う。裏社会取材歴20年以上の草下シンヤさんと、元ヤクザの懲役太郎さんの対談形式。ヤクザ、半グレと外国人マフィア、闇バイト、薬物、警察と刑務所、ヤクザと子どもの全六章。いずれも興味深く、楽しく読めた。今後、裏社会にグレーゾーンがどんどん増えていくかもしれないけれど、生き抜いていかなくちゃ。
「King and Prince コンサート」(大阪城ホール)
ダンスがとてもかっこよかったし、演出、舞台、衣装どれにしても楽しませてくれた。
「筑波山」(山)
久しぶりに、登山に出掛けた。日本百名山の中では最も低い877mの山。
比較的楽なイメージがあり、険しいルートを選択した。アップダウンが激しく、テンポよくいくとすぐに汗と疲労で足が上がらなくなった。顔を上げてもごつい岩と泥。呼吸を整えほかの登山客に影響されることなく自分のペースで行けるかだった。自分はカメと心の中で唱えながら、二つの山頂分岐に到達。そこから一つ目を終え、二つ目の山頂に到達しようとしたとき、ブヨに刺された。痛みと怒りを感じた後、喜びとのギャップでテンションが格段に落ちた。その後も3回刺された。熱いからとフックを開けたところから服の中に入っていたらしい。
山はよりダイレクトに物事を教えてくれる。今回、環境に順応するのはとても大切であるが、そこから生まれるわずかな慢心が生み出す恐ろしさを実感した。振り返ると事前に山の情報を良く調べておけばどうだったろうか。
備えあれば患いなし。一つ成長できた。
「ポケモンカード」(ゲーム)
コンビニでポケモンカードが購入制限されていて調べると、大人気らしい。様々な店舗での買い占めやフリマアプリでの高価な取引が行われているらしい。
トレーディングカードゲーム系全般で、遊ぶことから、いかに高価なカードを手に入れられるのかという指向が強くなっている気がする。YouTuberや投資家の参入等が大きく影響しているらしい。自分の幼少期には友達と遊ぶツールとして、純粋に楽しんでいた記憶がある。今は、スマホやインターネットのような手軽なものがあるからカードで盛り上がるようなことはないのかもしれない。少し悲しくなったのと同時に年月の変化を感じる年齢になったことを感じた。
1.歌詞と曲と演奏など
(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)
2.歌手のこと
(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)
3.歌い方、練習へのアドバイス
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1.前半は、ゆったりとした素朴な順次進行の下向音型の繰り返しで、声のコントロールなど、歌手の力量に大きく左右される曲です。後半の分散和音に乗った、軽やかな動きは、慣れるまでは少し大変ですが、いかにも恋心の起伏を表しているようです。
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1.シャンソンの中でもとても有名な一曲ですし、宝塚やミュージカルの人もよく歌います、近年では声楽家もよくうたっている、とても甘いラブソングです。
早くない、ちょっと甘くゆるい三拍子のかわいらしい曲です。日本語のタイトルを見ると少し重い感じがするのですが、実際には隣に座っている男性に歌うようなもっと甘いカップルの歌だと思います。
2.イタリアのカンツォーネを歌う歌手などとは違い、とても声を持っている歌手というよりも甘い歌い回しで愛らしいという印象でしょうか。ただこの歌の愛らしさ、ささやくような歌詞を考えるとこのような歌い回しがあっているのだと思います。少し鼻にぬけたような声が印象的です。この歌手独特の甘い声もありますが、フランス語からくる独特の歌詞の流れがこの歌をより甘くしています。多くの日本人が歌っていますが、テンポももっと重たく歌っている人が多いです。
3.歌詞の流れと、3拍子を意識した音楽づくりが重要だと思います。表現としてどれだけゆれても3拍子の形はとても美しく残っています。これがキープできるような練習を考えてみたほうがよいでしょう。歌い方はボワイエの声真似をすると日本語の場合、浅い声に近づいて行ってしまうリスクがありそうなので、自分の声で歌うよう意識して歌ってみるとよいと思います。(♭Σ)
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1.愛の言葉を聞かせてと女性目線で語りかける内容の歌詞で、フランス語で歌われます。曲の構成は、A-B-A-C-AとなっていてAには同じ歌詞が歌われています。BやCでは、フレーズが右肩上がり(末尾の音が上がる)が多く、まるで甘いささやきを表現しているかように聞こえます。
3.発音やフレージングなど、参考のためにリュシエンヌの音源を聞くのはよいと思います。ただ歌い方としてはポルタメント気味に歌う箇所がわりとあり、それは彼女の表現であって必ずそう歌うべきということではありません。耳コピーのようにするとただの歌まねか、雰囲気まかせの歌になりかねません。練習の始めは、まずしっかりと音程を確認し、骨組みを整えた上でフランス語の歌詞を乗せ、表現をつけていくことをおすすめします。(♯α)
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1.「愛の言葉をささやいて」、「君を愛していると言って」と、恋人に対して甘えながらかわいらしくお願いする内容の曲です。甘さやかわいらしさなどの語り方が表現として大切になると思います。音楽的にも、語り方の部分で速度的な変化や間の取り方などが必要になってくると思います。
2.特徴的な声の出し方、歌い方をされる方という印象を受けます。声の出し方をマネするというよりは、この人の歌い方、語り方、言葉の緩急など、表現の部分を参考に活用してみるとよいでしょう。
3.よい声で歌っていただきたいと思いますが、立派すぎる声の出し方や歌い方というのは、この曲の内容と合わなくなってしまうと思います。恋人に甘く語りかけるような表現が必要とされると思います。お茶目に語りかける表現や甘えたように語る表現、積極的に訴えかける表現や朗々と思いを語る表現など、まずは言葉の語り方をいろいろ研究してみましょう。その上で音楽と融合させ、効果的に演奏できるとよいですね。(♭Я)
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1.ピアノと歌だけのアレンジ。ピアノは古典的なシャンソンの伴奏といった風情で、クラシックのピアノ伴奏に近い雰囲気です。アルペッジョで奏され、ジャズの即興性のような感じではありません。
曲の構成は、Aレガートで落ち着いたテンポ→B音の跳躍、動きのあるパート→Aに戻る→B→Aここでバイオリンのオブリガードが付されます。
2.細く軽やかな声。言葉をしっかり発音して、言葉による音のレガートを作り出しています。よく日本人のシャンソン歌手にありがちな、音だけでレガートを作ったり曲を表現するのとは異なり、言葉がそのまま表現になっています。細い声だが、ウィスパリングヴォイスではなく、芯のある声です。
3.まず、フランス語の読み練習をしっかり行い、美しくスムーズに発音できるようにしましょう。母音を引きのばして、言葉と言葉のレガートを意識して歌いましょう。AメロとBメロのメリハリをしっかりつけて歌ってください。Aメロではレガートを意識、Bメロでは跳躍、躍動感を意識。
録音では、音と音がどのような関係性になっているか注意して聞いてみましょう、ポルタメント、音がまっすぐではなく下降、上行しているのをよく聞きわけてみてください。(♯β)
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1.はじめのイントロのピアノ伴奏をよく聞きましょう。アゴーギク、テンポの進み方がとても自由なことがわかるでしょう。この自由さは歌が入っても続きます。ピアノ、途中からオケが入る、というシンプルなアレンジです。伴奏の音楽の進め方も、よく聞いてみましょう。
2.やや古い録音で音質が気になるかもしれませんが、奥に聞こえるボワイエの深い息を聞いてみましょう。特にフレーズが変わるときに、短くしかし深く、ブレスが聞こえます。歌唱と言葉の比重が絶妙です。歌い手はいつも、「語ること」「レガートで母音をつなげること」の比重をどのくらいにするか考える必要があります。よく聞くと言葉を置いているように見えて、レガートで母音がつながっていることがわかるでしょう。途中軽快な部分では、駆けるように言葉を投げます。伸ばすところでは(やや癖がありますが)ヴィブラートで母音を響かせています。自在なテンポがこの曲の魅力です。よくテンポの移り変わりを聞きましょう。
3.音域が比較的狭いので、歌いやすいと思います。レパートリーにしてみましょう。自在なテンポ感をこの録音から学びましょう。録音を流しながら、鼻歌で歌ってみましょう。(♭∴)
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1.恋人に甘い愛の言葉をせがむ女性の歌。軽快なワルツのリズムで、主にピアノが伴奏をつとめます。
ボワイエがモデルをつとめた藤田嗣治の絵(「カフェにて」)があります。頬杖をついた所在なさげな黒衣の女性が誰かを待っている情景です。まさにこの絵のような歌。今の音楽のような爆音や激しいリズムとは対極にある、ベル・エポックの繊細な感性(淡い色彩や柔らかなレースの装飾など)を漂わせる声。現代人の感覚からすると浅薄な少女趣味に思えなくもないですが、これが20世紀初頭「美しい時代」の美しいミューズだったのでしょう。
3.3拍子の回転しながら進むようなリズム感を大切に、停滞しないように歌いましょう。ラララで練習してみて、その感覚のまま歌詞で歌えるように持っていくといいと思います。(♯∂)
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「福島英のヴォイストレーニングとレッスン曲の歩み」より(https://www.bvt.co.jp/lessonsong/)
この曲シャンソンにのめり込んだ人は、日本人の歌手に少なくありません。淡谷のり子、高英男、石井好子など。1930年の唄です。
私はピアノを習っていたとき、「河は呼んでいる」が、その出会いだったと、かなり後に知りました。