ヴォーカルの耳づくりと歌唱の学び方

ブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナーや受講生によるライブラリー

総合 目次

タイトル一覧 
1.歌唱力をつける耳と歌づくり(複数トレーナーの同曲アドバイス) 
2.アーティスト論 
3.おすすめアーティスト・作品(投稿による)
4.プロのアーティスト論
5.スタンダード曲 同曲異唱での学び方[同曲異見]
6.カンツォーネの歌い方
7.日本の名曲の歌唱ポイント
8.コンコーネ50での学び方[同曲異見]
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比較鑑賞のために 目次

1 「愛の別れ」(日本語)クラウディオ・ビルラ       
2 「さよならをもう一度」尾崎紀世彦
3 「アドロ」(日本語)グラシャラ・スサーナ
4 「暗いはしけ」アマリア・ロドリゲス/村上進
5  ―
6 「サイレント・ナイト」マヘリア・ジャクソン
7 「ヴォラーレ」ドメニコ・モドゥーニョ
8 「愛の讃歌」エディット・ピアフ
9 「リリー・マルレーン」マレーネ・ディートリヒ
10 「カルーソ」村上進

 

11「この胸のときめきを」エルヴィス・プレスリー/ピーノ・ドナッジョ/ダスティン・スプリングフィールド/ブレンダー・リー
12「キサスキサスキサス」テレサ・ガルシア・カトゥルラ&オマーラ・ポルトゥオンド/坂本スミ子

13「バナナボード」ハリー・ベラフォンテ/浜村美智子

14「タイムトゥセイグッバイ」アンドレア・ボチェッリ&サラ・ブライトマン /中島啓江&布施明

15「君に涙とほほえみを」ボビー・ソロ/布施明
16「神の思いのままに」ジルベールベコーと堀内
17「帰り来ぬ青春」 シャルル・アズナブール/今陽子

18 ―
19「マック・ザ・ナイフ」エラ・フィッツジェラルド/渡辺えり
20「ハンブルクにて」エディット・ピアフ/ 金子由香利
21「ソモスノビオス」(「It's Impossible」)クリスティーナ・アギレラ/ 夏川りみ(デュエット:アンドレア・ボチェッリ)/ペリーコモ(ソロ)
22「インシャラー」サルヴァドール・アダモ/ アマリア・ロドリゲス

 

23「アモール・モナムール・マイ・ラブ」クラウディオ・ビルラ/岸洋子
24「アル・ディ・ラ」ベティ・クルティス/岸洋子
25「去り行く今」セルジオ・エンドリゴ/中原美紗緒
26「愛は限りなく」ジリオラ・チンクェッティ/ドメニコ・モドゥーニョ
27「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」トニー・ベネット/ブレンダ・リー
28「ラヴィアンローズ」ルイ・アームストロング(サッチモ voとtp)
29「ラスト・ワルツ」エンゲルベルト・フンパーディンク

30「生命をかけて」オルネラ・ヴァノーニ
31「黒い鷲」バルバラ
32「ギターよ静かに」ニコラ・ディ・バリ
33「聞かせてよ愛の言葉を」リュシエンヌ・ボワイエ
34「行かないで」ジャック・ブレル

 

35「上を向いて歩こう」美空ひばり/坂本九/マリーナ・ショウ
36「枯葉」サラ・ヴォーン
37「人生よありがとう」メルセデス・ソーサ
38「心遥かに」イヴァ・ザニッキ 
39「Who wants to live forever」ジョルジア

40「明日に架ける橋」ジョルジア

41「ある日恋の終わりが」 ジョルジュ・ムスタキ

42「暗い日曜日」ダミア

43「ガラスの部屋」ペピーノ・ガリアルディ

44「涙のさだめ」ジャンニ・モランディ/ボビー・ソロ/イヴァ・ザニッキ

45「愛は君のよう」サルヴァトール・アダモ

46「エ・ヴェーロ」ミーナ

 

47「愛遥かに」ミルバ

48「そして今は」ジルベール・ベコー

49「死ぬほど愛して」アリダ・ケッリ

50「限りなき世界(イル・モンド)」ジミー・フォンタナ

51「待ちましょう」リナ・ケッティ

52「ナポリは恋人」ジリオラ・チンクェッティ

53「愛のめざめ」ウィルマ・ゴイク

54「アモーレ・スクーザミ」ジミー・フォンタナ/トニー・ダララ

55「愛の讃歌」セリーヌ・ディオン

56「ガリオーネ(バンビーノ)」アウレリオ・フィエロ

57「More(モア)」アンディ・ウィリアムス/ナット・キング・コール/トム・ジョーンズ

58「ジェルソミーナ」カルメン・マキ

59「悪女」 シルヴィ・バルタン

60「アネマ・エ・コーレ」 ジリオラ・チンクエッティ

61「アリヴェデルチ・ローマ」 ランド・フィオリーニ

62「ラ・ノヴィア」 トニー・ダララ

63「リコルダ」 ミルバ(参考 オルネラ・ヴァノーニ)

64「青空に住もう」 クラウディオ・ビルラ

65「あなたに口づけを」 フェルッチョ・タリアヴィーニ

66「忘れな草(デ・クルティス)」 ベニャミーノ・ジーリ

67「悲しき愛のテーマ」 ピノ・ドナッジオ

68「君を歌う」 セルジョ・エンドリゴ

69「愛の詩」マッシモ・ラニエリ

70「この愛に生きて」 ミルバ

71「落ち葉の恋」 ジリオラ・チンクエッティ

72「アンケ・セ」 オルネラ・ヴァノーニ

 

 

1~11は、

1.歌詞と曲と演奏 ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど
2.この歌手自身の声、歌い方、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと(VS比較歌手)

 

12~は、

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

V072「アンケ・セ」  オルネラ・ヴァノーニ

V072「アンケ・セ」 

オルネラ・ヴァノーニ(歌手の評価) 

 

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.4/4拍子の4拍目の、低い第3音からの上行音型から始まる曲で、高い第5音までを使います。音域としては1オクターブと3度なので、広すぎないところが、安心して聞くことができます。細かい音符も適度にしか入っていないので、さらに歌いやすくなっています。そして、奇をてらった進行も避けられていて、A-A-B-A’の形式になっているので、曲全体も、把握しやすくなっています。カンツォーネによくある、StrofaとRitornelloの形式ではないようです。

 

2.オルネラ・ヴァノーニは、中尾ミエさんの声によく似ています。中尾ミエさんの方が10歳ほど年下なので、彼女がオルネラ・ヴァノーニの声を気に入って同じような声になったのか、たまたまなのかはわかりませんが、ところどころ、中尾ミエが歌っているのかと、錯覚してしまいます。この曲の音域がそれほど広くないということもありますが、低音域から高音域まで、艶のある安定した声をベースにして、無理なく楽に歌っているので、とても好感が持てます。

 

3.音域がそれほど広くないとはいっても、男性や地声だけで歌いたい女性には、なかなかシビアな音域です。なるべく低音も高音も無理なく使えるように、うまくキー設定をして、取り組みましょう。(♭Ξ)

 

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1.曲名の「アンケ・セ(anche se)」は、直訳すると「それでも」という意味で、もしあなたに他の女性がいたとしても「それでも」生きるためにあなたを愛することが必要なの、と情熱的な思いを女性目線で歌っている曲です。

 

2.ヴァノーニの歌唱は音楽的なのはもちろん、発音がとても明瞭で歌っているのに歌詞をしゃべっているかのように聞こえてきます。言葉が立体的に見えるような感覚になります。ただ、dici a me やtremi oggiの箇所では音程や発声的な部分で少し気になりました。

 

3.che tu dici a me(ミ♭ファソシ♭ラ♭)の部分は、旋律が上行していく中で-ci(シ♭)に力みが入りやすいので気をつけましょう。ここは縦割りのように音を一つひとつ取る歌い方だと息の流れが停滞します。che tu dici a meでひとつのフレーズとして捉えて、a meまで身体の支えを維持してください。

曲後半の同じ旋律では、ヴァノーニはe non mi importa di sapere altroまでをひとつのフレーズとして歌っています。同じ旋律でもブレスの位置を変えることで聞き手に与える印象が違ってきます。やや長めのフレーズですが(無理のない範囲で)ぜひ一度、同じブレスの位置で歌ってみてください。(♯α)

 

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1.タイトルの「アンケ・セ」は「anche se...」というイタリア語であり、「たとえ...だとしても」や「もし...にしても」という意味になります。「あなた」を愛している気持ちが溢れ出てしまって収まらないような気持が歌われています。

 

2.オルネラ・ヴァノーニは、イタリア語を「語るように歌う」ということが、とても上手な歌手であると思います。おそらく、話し声と歌声がそれほど乖離していないと思われます。声も自然で、他の歌手にあるような変な揺れも少なく、イタリア語の持つ言葉の発音発語の特徴を活かしているように思います。それゆえに、この力強い歌い方や微細な表現に活かせているのではないかと思います。

 

3.日本人がこの手の曲を歌おうとすると妙に湿っぽくなってしまうことが多いかと思いますが、そのような湿っぽさはイタリアの文化を歌おうとする場合不必要です。しっとりと語る部分でも湿っぽく内向きにならず、よくない意味での「演歌調」を出さずに、もっと壮大なドラマチックに語るイメージを大事にしてみるとよいように思います。ラテンの血を感じるドラマを語れるように工夫してみましょう。(♭Я)

 

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1.ストリングスに、チェンバロのような音でイントロが始まります。ピアノが分散和音でリズムを刻みます。サビはピアノは和音でリズムを刻みます。

 

2.高音でほんの少し支えの伴わない声の揺れが気になります。それも味としてとらえる方もいますが、しっかり支えられた声を出せることもトレーニングとしては必要かと思います。母音が少し不明瞭なので、言葉を発するのに使うべき筋肉が弱いのかと思います。でも低音の語りの部分はそれは気にならないです。

 

3.歌詞をしっかり読み、どこが伸びる母音なのかを聞き取ったら、しなやかな母音の伸びを真似してみましょう。(♯β)

 

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1.イントロの途中からテンポが急に上がります。音楽のリズム感って一定ではなく、特にアコースティックな伴奏が普通だった昔は、結構テンポが伸び縮みしました。そういうところも、おもしろいと思って聞いていただくとよいと思います。全体的に伴奏がいろんな仕掛けがあって面白いです。最後まで飽きずに聞けます。

 

2.低い声の語るような歌が深いです。息そのものが深いのです。高い声は少し線が細く感じますが、のびやかで上質の絹のようです。息の量・声帯の締まり・共鳴の位置を微細に変え、色彩を作り分けている、ということです。特筆すべきはリズム感です。サビに向かうとき、かなり伴奏とずれ、食い気味に入っていきます。その高揚感はとても素晴らしいです。また伴奏が急にリズムパターンを変えるときも、ぴったりくっついていきます。

 

3.少し難しいですが、冒頭のフレーズコピーをしてみて下さい。息は吐けているか。きちんと話せているか。リズムは取れているか(遅れてないか)。この3つをまずは徹底的に確認してみて下さい。(♭∴)

 

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1.「たとえあなたに他の相手がいたとしても」という仮定の話なのに、見えない相手に対して嫉妬してみたり、そんなことは知りたくないと耳を塞いだりと、なかなか忙しい一人相撲が繰り広げられます。それでも「あなたを愛さずにはいられないのよ」という内容です。いじらしい女性ですね。

ゆったりとしたオーケストラに乗ったナンバーですが、3連符を刻むスネアドラムが時折「我慢できない」と言わんばかりに加速して、心情を反映しているようです。

 

2.オルネラ・ヴァノーニの声はリラックスしていて、歌声であるのにまるでせりふを聞くようです。話す言葉の延長線上に歌が生じたといった風情です。心地いいビブラートが耳を揺さぶります。

 

3.歌詞を音読してみましょう。次に自分の言葉としてしゃべってみましょう。歌詞になっていない行間も、自分の言葉にして(日本語で構いません)発してみましょう。それで8割完成する、そんな歌です。(♯∂)

おすすめアーティスト・作品 No.414

「果てしなきスカーレット」(映画)

アニメは見ませんが、細田監督の作品は今の自分を少し超えたいなぁと思ったときに、ふっと背中を押してくれるので見ます。前作の「竜とそばかすの姫」が声を題材にしていたので、いつもアドバイスいただいている言葉と重なり、レッスンで活かしました。

 

「ロッキンフェスの動画配信」(フェス)

以前に観に行ったフェスの動画配信があり、観ました。リアルでライブで観るのと、動画配信で観るのとでの違いがありました。ライブでは、冷静に聞こうとしていたものの、会場の雰囲気の影響も大きいと感じました。

V071「落ち葉の恋」  ジリオラ・チンクエッティ

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.クラシックギターのアルペジオ(コードなどの音を単音づつ鳴らす奏法)で、とても静かに始まる片想いの失恋の曲です。曲の2/3を過ぎてから、やっとドラムから始まる管楽器のドラマティックな演奏から弦楽器も加わって、サビに進んでいきます。音域としては、低い第5音から高い主音までの、1オクターブ半のやや広い曲です。曲想のとおり、前半はひくめの音域の中で進み、サビは高い主音をメインに、少し力強く歌われますが、あくまでも控えめな感じで進みます。静かに切々と歌うメロディになるように、細かい音符はあまり使われていません。また、どのフレーズも、その思いをかみしめるように、長めの音符で終わります。激しく情熱的な曲ではないところが、日本人には合うのでしょう。

 

2.ジリオラ・チンクエッティは、日本でもとても人気の出た歌手で、日本語でも多くの曲を出しています。同じ曲でも、日本語になると声も微妙に変わり、少し自由さが抑えられ、それがまた日本人の気質に合って、人気だったのかもしれません。

 

3.音域が広いので、うまくキー設定をしましょう。特に最高音は、無理のない余裕のある声で張らないと、曲想を壊してしまうので、あまり高くしないように気をつけましょう。(♭Ξ)

 

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1.イタリア語の歌詞で女性目線からみた恋人への心情、落ち葉のような儚い恋を歌っています。語るような歌い出しで、短調の旋律に乗って切々と歌われます。「Finiro' con il tempo」でやや音域が上がるものの、曲全体としては中低音域で旋律の大きな動きは少ないです。フレーズの間に休符も多いので、このような曲はそのまま音をなぞる歌い方ではまとまりのない音楽になりかねません。曲全体を俯瞰してみながら、フレージングをどうするかをしっかりつくりあげてください。

 

2.この曲に限りませんが、チンクエッティは息のコントロールが卓越していると思います。たとえば吐息交じりのような部分があってもフレーズの流れは停滞せず、音域が上がってしっかり歌う部分では無理なく(力みなく)声を張れています。

 

3.語るような感じで歌い出す曲は息の流れが停滞しやすい傾向があります。始めからチンクエッティの歌い方をめざすのではなく、音楽的な表現はいったん外して、まずはどのフレーズもしっかり声を乗せて歌う練習をしてみてください。または、全部の音を子音Zで歌う練習も息の流れを促すのに最適です。その後で歌詞をつけると、息のコントロールが格段にやりやすくなります。(♯α)

 

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1.少し抽象的な歌詞に感じるかもしれませんが、自分が「あなた」を愛する気持ちになかなか気づいてもらえないことを歌ったものだと思います。歌い出しが「Tardi troppo tardi」(=遅い、遅すぎる)ですから、気づいてもらえない期間が相当な長さに感じていることが伺えます。

 

2.寂しく語る部分は様子がよく表れていると思います。また、決して無理をした声の出し方などをしていないので、全体を通して聞きやすい印象です。汚い声の出し方をしなくても内容は伝わると思いますし、過度な派手さを用いなくても歌えることを示しているように思います。

 

3.寂しさを語る部分は寂しさを出しつつも日本人的な消極的さや湿っぽさが出すぎない方がよいように思います。あくまでもカンツォーネですからラテンの香りを失わないようにしましょう。そして、訴えかけたい部分は乱雑にしない程度にしっかりと訴えかけるように歌ってみると望ましいのではないでしょうか。繊細さと力強さをラテンの香りにのせて語るように心がけてみるとよいかもしれません。(♭Я)

 

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1.「私は木の葉のよう、何かを期待し流れ落ちる。あなたが私を拾ってくれないなら終わるだろう、はるかに風に運ばれていくだけ。遅いのよ、もう遅いのよ。もう私は離れられないこの愛からは。」

冒頭から前半部分はギターのみ、アルペッジョの伴奏で歌われ、後半はピアノとストリングス、パーカッションが加わり華やかに曲を終えています。

 

2.少々ハスキーな声が特徴です。本当に話すポジションで歌っているので言葉が明瞭です。低い声は少々ウィスパリングにヴォイスで語るように歌います。話すポジションのまま歌っているので、力むことなく、自然に、明瞭な語りに音楽をのせて歌っています。

 

3.単語の意味、一つ一つをしっかり理解して歌うことが重要です。落ち葉が風に乗って遠くへ、という歌詞で「lontano(遠く)」という単語を何度も繰り返しますが、この情景を描き出すように歌うことがポイントです。何度も歌詞を読んでスムーズに朗読できるようになると歌も一段とよくなると思います。(♯β)

 

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1.ライヴ感あふれる演奏です。ギターがかすれていることも、味があっていいです。最後までギター一本でいくのかと思いきや、途中から急にたくさんの楽器が入ってきてゴージャスな伴奏になります。

 

2.高い音に行くときに「入れる」ときと「抜く」ときがあって、その采配が絶妙です。このように透明感のある美しい声は、かえって一本調子になってしまうことも多いのですが、いくつもの声の扱いのバリュエーションがあるので、豊かな表現になっています。リズム感も抜群です。盛り上がるところの伴奏との掛け合いを聞いてみて下さい。

 

3.歌いだし「tardi」のフレーズコピーを勧めます。このたった4度の跳躍の中に、いったいどれだけの技術があるでしょう。抜けないように、かすれないように。ぜひ録音して比べてみて下さい。(♭∴)

 

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1.まるで落ち葉が為す術もなく運ばれていくかのように、ままならぬ恋心を静かに歌うナンバー。ギターの分散和音だけが伴奏の大部分をつとめます。「lontano lontano(遠くへ、遠くへ)」と何度も繰り返される言葉のリズム感が印象的です。

 

2.チンクェッティの声はしっとりと美しく、愁いを湛えています。しかし決して暗くはならず、むしろ健康的です。この絶妙のバランスが、聞き手が安心して耳を傾けることができるポイントだと思います。

 

3.長いフレーズを静かに歌ういい課題だと思います。力任せにならないよう、ていねいに紡ぐことを意識して練習しましょう。(♯∂)

おすすめアーティスト・作品 No.413 

「NHKイタリア語会話 」「NHKテレビ英会話」(テレビ)

「EASY ITALIAN」「ジュディ[英語]」(You tube)

イタリア人やアメリカ人の口の使い方や、発声の仕方、目力や表情を見たくて、テレビやYouTubeで現地の方が出ている番組を見ています。イメージをふくらませることで、少しは近づいてくるかなぁと思っています。学生時代は、国際交流ボランティアに没頭していて、国費留学生に日本文化を英語で教えたりしていたので懐かしく楽しんでいます。

 

「哲学入門」バートランド・ラッセル(本)

入門書ですが、けっして内容は入門的ではなく読み応えがあります。「声」は哲学に通ずるものがあると感じます。

 

「ヴォーカルの達人 歌唱・カラオケ&総合トレーニング編」福島英(本)

研究所の10月号の会報「論点」をマーカーで線を引きながら拝読しました。「うん、うん」とうなづくことも多く、「でも、まだまだだなぁ」と振り返ることも多く。そこで会報にも書かれていた福島先生の本を手に入れました。情報満載だったこともあり楽しんでいます。

 

「福島先生の本」

いろいろ少しずつ読み始めてますが、気づきがあって勉強になります。

 

「ハムレット」シェイクスピア(本)

「息吸って、あごおろす」を即興でもできるように、自習用の音読教材として使っています。

 

「愛がなんだ」角田光代(本)

一気に読みました。本当は読まねばならない本が他に山積みですが、そちらを後回しにして、こうゆう本ならすぐ読めちゃうものだなぁと、苦笑。

健気なくらいひたすら片想いしてる女の子が主人公で、いい歳の私でも色々共感する部分多々ありました。皆が日常の中で思っていることを、このように文章にできるところが作家なのだなと改めて感心。こんな風に歌の詩も書けたら、と歌い手の端くれとして思いました。

映画化するなら誰がいいかな、と頭を巡らせていたら、既に映画化されてるようで、役者を聞いてなるほどと、思いました。

 

「レオ・ヌッチ、最後の来日」サントリーホール(コンサート)

80歳を越えてなお、声力と歌唱フォームを維持したまま、深い感情表現ができると聞き、門外漢ながら、足を運んだ。途中から、歌っている彼の頭がぶあーんと大きくなって、響いてきたように見えた。これが、トレーナーのいう、胸の響きが上に上がってくるということか? そのあとは頭で歌っているというか、頭の回りが大きく響いている感じがした。上にまとまってきたら存分に使う、という感じだった。また、共演の女性歌手エンケレーダ・カマーニのドレスがタイトだったので、他のトレーナーからよく言われる高音は鼠径部を使うという感じが見てとれた。しかし、これは自分でやってみるといつも、身体が固くなるだけだなので、何か他の条件が必要なのだろうと思う。アンコールの三曲めは、忘れな草、立ち上がって拍手する紳士に、杖をつく高齢が目立った。今日は強く雨が降り、足元の悪い中来るのは大変だったろうと思うが、きっとヌッチに別れを告げに来たのだろう。ヌッチもいつまでも手を振っている。ひとつの時代の終わりみたいなものに、立ち会えた気がした。

V070「この愛に生きて」  ミルバ

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.基本は4/4拍子の曲ですが、前奏では3/4拍子や2/4拍子も入り混じり、そこに3連符も重なって、独特な始まりになっています。歌は4/4拍子で固定されていますが、曲の始まりの3フレーズだけは、通常の8分音符で始まるのが特徴的です。他は、全て3連符で進んでいきます。第5音の連続から始まるフレーズは、ほぼ順次進行で低い主音までを繰り返し行き来します。

音域の低い部分で歌った後は、残りの高い音域を使って、高い主音から高い第3音までを、続けて、第6音から高い第3音までを、特に高い第3音を強く使うことで、繰り返し畳み掛けるように盛り上げ、最後には高い第2音から、半音上げた高い第2音を、特徴的な進行にして、盛り上げます。さらに半音高く転調し、高い第3音を繰り返し出して、最後にはロングトーンでとどめをさします。残念ながら、この転調を歌っているのは、カルメン・ヴィッラーニだけのようです。

 

2.ミルバは、オリジナルよりも3音低いキーにして、無理のない地声で、低音から高音までうまく歌い上げています。さすがに低音は強くはありませんが、中高音は力強く歌っていて、余裕も感じられますが、後半で転調していないのは、少し残念です。カルメン・ヴィッラーニは、オリジナルのキーで、後半の転調もしっかり地声で歌い上げているので、聴衆の拍手喝采がうなずけます。ただ、歌としては、ミルバに軍配が上がりそうです。

 

3.後半の転調もあるので、音域は1オクターブ半と微妙な広さです。全て地声で歌うには、慎重なキー設定が重要です。(♭Ξ)

 

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1.イタリア語の歌詞で、愛する人への情熱的な想いを歌った曲です。歌い出しはアウフタクトで始まるので、歌詞の発音で重くならないよう、guar-dar-miの2音節目にアクセントがくることを意識しましょう。曲中に3連符が多くありますが、4分音符と8分音符の組み合わせ(3連符内に音符が二つ)の部分では、付点のリズムにならないように気をつけてください。

 

2.ミルバの歌唱は、柔らかい声で語るように歌う部分とサビで声を張る部分とのメリハリがしっかりとあります。どちらも息がよく流れているので全体的に見ても声が伸びやかです。

 

3.ミルバの歌唱でみると、サビに入る部分でブレスを入れずに”che non so più  capire cos'è... ma... Io per amore ”をひと息で歌っています。サビに向かってより盛り上がりが感じられるので、実際に模倣してみるのはよい勉強になります。もちろん、息が続かない場合は”~cos'è”の後でブレスを入れて、音楽的には途切れずに繋がりを持ってサビに入ってください。(♯α)

 

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1.邦題だと「この愛に生きて」となっていますが、原語のタイトル「Io, per amore」を直訳すると、「私は愛のためなら」となります。冒頭ではやや否定的な内容をいっていますが、この「愛のためなら」何ができるのかというところが、本心の部分だろうと思います。

 

2.冒頭の「Non guardarmi con quegli occhi」のあたりは音域も低いですし、内容的にも「そんな目で見ないで」とやや否定的なことをいっているので、派手にならずに語っている印象を受けますが、特に「Ma io per amore」からは本音を語るような力強く歌い上げている印象を受けます。繊細な歌い分けというよりも、大胆にドラマチックに歌うことによって表現しているように思います。この辺りはポップス的な要素だと思います。

 

3.先にも述べたように、冒頭の「Non guardarmi con quegli occhi」のあたりは音域も低いですし、内容的にも「そんな目で見ないで」とやや否定的なことをいっているのに対し、「Ma io per amore」からは本心・本音の部分になるのでそのあたりの歌い分けは必要になるだろうと思います。どのように歌い分けるのかは、歌い手それぞれのセンスによるものになってくると思いますので、各々どうしたいのか研究をしてみてください。(♭Я)

 

 

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  1. 8小節の冒頭部分(strofa)と、8小節のサビ(ritornello)から成り立っていて、最後は言葉にならない表れなのか「ラララ」で歌われます。愛を賛美するかのような内容で、さびの部分では音域も高めで愛を歌い上げています。

 

2.ミルバの曲は短調で、ドラマチックな内容の曲が多い中、めずらしく明るめの曲シンプルな曲です。高音部分は、とてものびやかに、レガートで歌い上げています。ハスキーな声ですが、その声のざらつきさえ彼女の魅力として聞かせています。

 

3.フレーズが長いので、息をしっかり流すことが重要です。最初は2小節単位で練習して、それができるようになったら長いフレーズを意識して歌ってみましょう。横隔膜をしっかり張って、身体から声が出る訓練にいい曲だと思います。(♯β)

 

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1.イントロ、伴奏をよく聞いてみてください。多彩なリズムの変化と、たくさんの楽器の音が聞こえて楽しいです。

 

2.低音のハスキーな語り方と、高音のつややかなレガートがさすがです。後半オクターブの跳躍がありますが、身体の中で完全に処理していて、「跳躍」しているように聞こえません。あまりいわれませんが、リズム感がものすごいです。3連符を伴奏と一緒に歌うところ、またそのあと一瞬の間でふわっと出てくるところをよく聞いてみてください。0.01秒の誤差もなく完璧です。

 

3.ミルバはすごすぎて、接点がつきにくいのが難点です。最後の「ラララ」ができれば充分です。つややかで力強い声で、張りのある声で「ラララ」と歌いきることができますか。つながって聞こえていますか。声は均一に聞こえていますか。(♭∴)

 

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1.「愛とは何か説明できないが、愛の為なら全てを投げ捨てられる」と、強い愛を歌い上げます。印象的なイントロに始まり、沈思のAパート、高らかに愛を歌い上げるBパートと続きます。

 

2.ミルバの声には迷いがなく確信に満ちており、生への力強い肯定が感じられます。少しざらっとした質感の声でありながら、ハリがあるため不思議と艶やかに聞こえる唯一無二の声です。

 

3.静かに歌う部分は理知的に、豊かに声を聞かせる部分は情熱的に。可能な限り落差を大きくつくってみましょう。(♯∂)

おすすめアーティスト・作品 No.412

中村雅俊さん」(歌手・俳優)

昭和時代に青春ドラマの主演で人気を博した他、ヒット曲も膨大な数で、その後も多種多様なドラマやCMに出演し、実績を積み重ねています。

若い頃は「青春ドラマのヒーロー」ということもあり、ガサツで男っぽい演技が目立ちましたが、齢を重ねた今の方が優しくわかり易く語り掛ける話術になったように自分は感じています。

 

英美里」(モデル)

F1の配信の実況をされていました。落ち着いた自然体で飾らない感じの声がとても好感が持て、テンポよく話を展開するので聞いていてとても楽しい気持ちになれます。

 

「ビストロボイス」(TV)

俳優さんや声優さんなどがゲストで出てきて、声について談義します。以前は不定期の番組でしたが、レギュラー番組となりました。こういう番組がNHKのレギュラーになるということは、声を仕事にしていない方でも、声に関心がある方が多くいるということでしょうね。

 

アメトーーク!」(TV)

声のリレーを見ているようで面白いです。

 

「カルテット」「大豆生田とわ子と元3人の夫」(TV)

坂本裕二さんの脚本なのでセリフが洗練されていること。その本を超える演技を俳優さんたちが立体的に作品にされていることが印象的でした。何よりも松たか子さんの声の音色とか質感は全然、私とは違うと思うのですが、声の出すときの息の吐き方みたいなものが何か私が学びたいものに近い気がしました。再度、じっくりと見て、セリフを1つずつマネして研究してみたいと思います。

 

「脳が認める勉強法」ベネディクト・キャリー(本)  

記憶する事を俯瞰的に考えられるおすすめの本です。

 

「対岸の家事」「わたし、定時に帰ります」朱野帰子(本)

家事が苦手な人をターゲットに仕事をしてきているのに、この小説を読んだことがありませんでした。ドラマにもなっていたようですね。対岸の家事を読んで、朱野さんが文章に落とし込んでくださっていることを嬉しく思いました。私も文章化しようと思った時期もあったのですが、あまりにも家事と仕事と子育てが好きすぎて、朱野さんのように優しい視線で書けませんでした。あぁ、もう家事のことは文章に書くことはやめようと思った作品でした。

 

「カラー版日本美術史」株式会社美術出版社(本)

日本語を学ぶということは、日本の歴史を知ることも大切だと思います。

この本は、古墳時代から現代までの美術史がカラーで載っており、パラパラとページをめくる楽しみがある一冊です。

 

「言葉の達人」(サイト)

作詞家の方々にインタビューされているWEBサイトです。演技論や、歌を歌うときの歌詞の捉え方につながるヒントがたくさんあったので、一気読みしてしまいました。

 

おすすめアーティスト・作品 No. 411

陸上自衛隊の歌姫」鶫麻衣(つぐみ・まい)三等陸曹(陸 上自衛隊音楽隊所属の声楽家

今回のレッスンで十数年前に教わった「ロの中にピンポン 玉を含んだような」口の開き方を思い出すことができましたが、そのような顔の動きを実地に見ることができる事例を見付けました。

YouTubeで見た、歌を唄っているときの鶫三等陸曹の顔の動きはまさしく 口腔内にピンポン玉が入っていて、ロを開くときには本当にロからピンポン玉が出てきそうなぐらい自然にロが開き、顎も自然にスーツと下がっています。同時に、目は輝きを増し、声は周囲に伸び伸びと響き渡り、歌を唄えることの喜びが周囲の人々にも伝わってくるような気がします。)

 

「藤井風」

日本語なのに洋画を聞いているみたい。キャラも歌も外国 人のような壁がなくて、ユーモアがある。同じ岡山県人とは思えない。すごい。

 

サッシャさん」(MC)

F1の配信実況の際に、直前に別のレースの実況があったようで、それを終えてからの実況で、サッシャさんが到着するまでは別の方が実況をして到着次第チェンジしました。連続しての実況でも、声が乱れることもなく、原稿を読む わけでもないのに豊富な知識と自然な感情の入れ方、解説の方とのやりとりでも盛り上げて、聞いていて学ぶことが 多いです。

 

「家政夫のナギサさん」(ドラマ)

家事に関する映画やドラマは全てチェックしています。こ のドラマはナギサさんの家事ができない人へのセリフが優 しくて好きでした。ナギサさん役の大森南朋さんはロック ミュージシャンで、普段の雰囲気が家事とは程遠い感じです。表情豊かに言葉を使われるのは、歌で表現活動もされているからなのでしょうかね一。

 

「ジヴェルニーの食卓」原田マハ(本)

マティス、ドガ、セザンヌ、モネの4人の巨匠たちについ て、その周りの人達の目を通して描かれた物語です。作者 によるフィクションの部分が多いかもしれませんが、才能と努力、信念を貫き通す意志、そして周りの人々を惹きつけ惜しまぬ協力を得る力など様々なものが絡み合って作品が出来るものなのだと思いました。

 

「楽園のカンヴァス」原田マハ(本)

ルソー研究家の2人がある大物コレクターが所有するルソ ーの絵の真贋を判定し勝った方がその絵の権利を得る、というストーリーです。その判定のために2人はルソーがそ の絵を描いた当時の物語を読む、という設定でルソーやピカソの時代と現代を行き来してストーリーは続きます。登場人物のそれぞれの思惑が交錯しますが、最後は絵に対する情熱や愛情がお金儲けに勝るのだということが心に響きました。また過去から現代まで人も物も受け継がれていくものだと感じさせられました。

 

「ロッキンジャパン1日目」(フェス)

マイクに乗る声や音響、ステージでの表現を観察しました。コンテンツ、作品として動画や音源で聞いている曲と、ライブで聞く、観る曲の感じ方の違いに改めて学ぶことがありました。

 

「ME:Iのバックバンド」(バンド)

フェスでME:Iを観た際、バックバンドの演奏がとても学びになりました。ライブ感の出し方、演奏としての安定、メインの演者ではないながらも演奏でメインの演者をサポートすることなどです。

 

ルノワールXセザンヌ展」(美術展)

同じ時代を生きた2人の巨匠の作品が並んで展示されていました。似たようなモチーフでもそれぞれ違う色遣いや筆遣いであることが素人の私にもよくわかり興味深かったです。

丸の内ある美術館でしたが、レンガ造りのオシャレな建物 で美しい庭もあり、高いビルが建ち並ぶオフィス街の一角にこんなに素敵な場所があることに驚きました。

 

ブレゲ「Les Tiroirs du Temps〜時の引き出し」」(企画展)

先日、高級時計メーカーのブレゲ社のとある懐中時計を鑑賞しました。

ブレゲの160番目の作品であるその時計は、通称マリー ・ アントワネット。ブレゲ社の創業者である天才時計師アブ ラアン=ルイ•ブレゲが、かのマリー・アントワネットの ためにつくった懐中時計です。今回は、約240年前に作ら れたその時計を部品のひとつから手作業で忠実に再現した No. 1160の展示でした。

金と水晶でできた世にも美しいその時計はスケルトン仕様 になっており、当時の技術の粋を集めたムーブメントが見 られました。一般的な時計機能はもちろんのこと、使用者の日常の動きを動力に変えることによってネジの手巻きが 不要となる自動巻き(ペルペチユエル)、閏年まで計算に入れた永久カレンダー、澄んだ鐘の音を奏でるミニッツリピ ーター、温度計、月の満ち欠け、ストップウォッチ、南中 時刻の補正機能等々、信じられないほど精巧な機能が詰め込まれていました。当然クオーツではなく、すべてが歯車で制御されている機構です。この気の遠くなるような小宇宙は、現代の技術でも作成が大変困難なものです。もちろ ん値段などつけられません。

さらに、この時計が辿る数奇な運命(正体不明の注文者、完成はマリー・アントワネットの死後となったこと、盗難にあったものの犯人の死後返却されたこと等)が、歴史的 価値を高めています。

驚くことに、今も「マリー・アントワネット」は正確に動くのだそうです。

恐ろしいほどに素晴らしいブレゲの至宝を目の当たりにして、ただただ圧倒される幸福な時間でした。

V068「君を歌う」 セルジョ・エンドリゴ

1.歌詞と曲と演奏など 

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、 メロディ、リズム、演奏、アレンジなど) 

2.歌手のこと 

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス 

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1.低い第 5 音から高い第 7 音までの 1 オクターブあまりの 曲です。 

始まりは低い第 5 音から高い第 5 音への跳躍ですが、この 始まり方のフレーズは、繰り返し何度も登場します。ホ短 調で始まったフレーズは、やがて同主調ホ長調のフレー ズに変わります。そしてこれまでは、細かい音符の組み合 わせで始まっていたフレーズが、第 5 音や第 7 音、第 6 音 のロングトーンで始まるフレーズに変わります。再び冒頭 のホ短調のフレーズが登場し、また、ホ長調のフレーズも 登場しますが、さらに半音高いヘ短調で冒頭のフレーズを 歌って、第5 音のロングトーンで終わります。 

4/4 拍子の曲ですが、短調の部分には 16 分音符も多く、3 連符も出るだけでなく、2/4 拍子の二分音符相当の長い 3 連符も登場します。一方、長調の部分には、3 連符も 16 分 音符もなく、しっかりと対比がなされています。 

2.作詞作曲ともセルジョ・エンドリゴです。そのため、特 に細かい音符は正確ではなく、楽譜からはけっこう逸脱し た歌いまわしになっているので、楽譜通りに歌う練習とし ては、参考にはなりません。しかし本人の作曲なので、楽 譜よりも音源が正しいと言われれば、納得するしかありま せん。また、本人の作曲なので、声にはまったく無理がな く、発声のお手本にするのは、悪くないでしょう。 

3.高音域はもちろん、低音もしっかり使えないといけない 曲なので、キーの設定を慎重にしましょう。楽譜通りに歌 うか、音源通りに歌うかは、どちらもよいかと思います。 (♭Ξ) 

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1.イタリア語の歌詞で、別れた恋人に対して今もなお持ち 続ける想いを歌った曲です。短調で過去を語り始め、未来 の話になると長調になり、現在の話に戻るとまた短調にな ります。転調の流れと歌詞の内容をよく観察すると、演奏 する際のヒントになると思います。 

2.エンドリゴの歌唱は、特に長調になったサビの部分はレ ガートな母音の流れや伸びやかさがあってとても聞き心地のよい声だと感じました。同じサビのメロディでも、1 回目 では~a te (ブレス)ma oggi~ですが、2 回目は~a te ma  oggi devo dire che(ブレス)~というふうにブレスの位 置を変えています。それだけでもフレーズの印象が違って くるので、それも彼の音楽的表現なのだと思いました。 

3.短調では歌詞や音の動きも多いので、流れを停滞させず に語るように歌い進めていきましょう。一方で、長調にな ると音の動きが穏やかになるので、その分母音はレガード に伸びやかな声を乗せて歌ってください。特にフレーズ末 尾で声を伸ばす箇所(prende-rà やdi-rò)は母音が潰れな いよう、口腔内の空間を保って明瞭な母音で歌いたいです。 (♯α) 

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1.カンツォーネによくある失恋ソングのひとつです。別れ た恋人に対する熱い思いを語っています。 

2.エンドリゴの歌い方は繊細に語るような印象が強いです。 言葉のアクセントが明確でわかりやすい印象を受けます。 

3.冒頭をはじめ十六分音符で書かれているところが何ヶ所 かありますが、まずは言葉を語るというところから練習し てみるといいでしょう。結果的にそれが自然に聞こえるこ とに繋がると共に歌いやすくなることに繋がると思います。 

特に、アクセントとなる母音は長さを充分保って発音する ことを心がけましょう。 

イタリア語のアクセントの基本は「高い」ではなく「長い」 です。また、1 オクターブの跳躍などもありますが、低い音 を頑張って歌ってしまうとそこに照準が合ってしまい、全 体がよいクオリティーで歌いにくくなってしまうと思いま す。「低音は力まずに語る」ということを心がけてみるとよ いのではないかと思います。 

なお、二拍三連符のところなどは、「ただリズムがそうだか ら」というのではなく、言葉の内容・語り方と記譜のリズ ムが自然と結びつくような意識をもって歌ってみましょう。 (♭Я) 

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1.emoll →Edur のサビ→ emoll →間奏→ Edur サビ→ fmoll  

主音が半音上がって終わります。去っていった恋人を思っ て歌う歌です。 

2.ロングトーンが、とても自然にのびやかに聞こえます。 決して声を張ったり、押したりする歌い方ではなく、話し 声の延長のような力みのない歌い方です。とはいえ、母音 がとてもよく流れていて、しっかり息が流れており、それ を身体で支えて歌っているという印象を受けます。

3.短調の言葉や音が細かい部分と、長調の長い音符が多く 

朗々と歌い上げる部分の雰囲気を歌いわけましょう。2 種類 の 3 連符が出てきますが、これも堂々と、リズムがくずれ ないように歌ってください。長調に入ってから、フレーズ がとても長くなりますが、これがノンブレスで歌えるよう になるとかっこいいですね。ロングトーンができるという ことは、発声がとても効率よくうまくいっている証拠です。 (♯β) 

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1.前奏が面白いです。少しずれたアコードの後、もの悲し い弦楽器の旋律が流れます。同時にかなり特徴的なリズム がかなり大きめなバランスで入れられています。歌が始ま ると同時に静かになり、また感傷的な静かな伴奏に代わり ます。どんどん盛り上がっていき、明るくなります。ふと 静かになり、また暗い旋律に戻ります。ドラマのようです。 

2.歌いだしの優しい声に引き込まれます。誠実で温かい印 象が特徴です。高い音のシャウトでは上ずっているように 聞こえることもあります。そういう意味では歌手として高 い技量を持つとは言えないかもしれません。それでも「真 実を語る人」という印象を与えます。息を聞いてみてくだ さい。ストーリーを淡々と語るなかに情熱を感じます。 

3.練習では、まず歌詞を朗読し、自然なアクセントとリズ ムを確認するとよいです。その上で、息を長く保ち、フレ ーズの最後まで声を安定させる練習を繰り返すと、技巧的 な力みを捨て、歌詞の意味を伝えることを第一に考えるこ とが、この歌を生かす最良の方法です。(♭∴) 

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1.未練たっぷりの失恋ソング。しかしながら筆致はあくま でも淡く、上品なペーソスが漂います。「始まったばかりの 祝祭がもう終わってしまった」「君がくれた孤独を私は花の ように育む」といった美しい表現が印象的です。短調で始 まる曲は、上述の「花のように」ということばをきっかけ に長調へと花開きます。 

2.エンドリゴは声を張り上げたり強く使ったりといった表 現をすることなく、終始淡々とした声で身を切るような痛 みを歌っています。それでいて溢れ出す情感は薄いどころ か、とても豊かです。ソフトな感触の声がかえって悲しみ を際立たせる歌唱です。 

3.フレーズの頭は6度あるいは8度の跳躍となっています。 これを何でもないかのように歌えると、この曲の表現にマ ッチすると思います。暑苦しくならないように、抑制の効 いたレガートの美を研究しましょう。その奥にチラリと悲 しみが見えるくらいがちょうどよいかと思います。(♯∂) 

おすすめアーティスト・作品 No.410

象の消滅村上春樹(本) 

マンション建設のために廃園になった動物園の象。他の動 物と違って象は身体が大きく手間がかかる上、かなり年老 いているため、引き取り手がおらず市が引き取って老飼育 員と共に暮らしていたが、ある日突然消えていなくなった、 

という話です。かつて輝いていたものが時代の変遷と共に お払い箱になったり、邪魔者扱いされたり。経済が成長し ていたときに建てたマンションが老朽化しているが、建て 替えも出来ずにいるニュースを最近よく聞きますが、この 象の消滅の話と重なりました。

「脚本家 倉本總さん」(本) 

倉本さんの本20 冊以上、読破しました。演技のこと、歌の こと、脚本のこと、など。今の自分に足りていないことや、 今まで大事にしてきたことでよかったなぁと思えたことな ど、改めて自分の今を整理することができました。 

 

「BUTTER」柚木麻子」(本) 

高齢男性の連続不審死事件の容疑者の女を取材する女性週 刊誌記者が主人公です。拘置所で容疑者と話すうちに次第 に容疑者に翻弄されるようになり、身も心もボロボロにな り、周りの人達の助けを借りながら再生していく様子が描 かれています。 

料理は誰のために作るのか。自分を認めて、受け入れて生 きること、人に助けを求めることの必要性など考えさせら れる小説でした。 

蜷川幸雄さんに関する書籍」(本) 

蜷川さんが何を大切にしながら演出をされていたのかを知 ることができたので、自分がこれまで注意されてきたこと に上乗せできるお話もあって参考になりました。 

 

「入国審査」(映画) 

スペインからアメリカに移住しようとニューヨークに到着 したカップルが入国審査で別室へ連れて行かれ、有無を言 わせない尋問を受ける、というストーリー。見ているこち らが尋問されているような気持ちになり、ハラハラ、ドキ ドキしました。途中から何でこんな情報まで、知っている のか。何でこんなことまで聞くのか、と疑問を感じながら 見ていました。トランプ大統領の移民政策に対する反発で しょうか。 

 

「侍タイムスリッパー」(映画) 

自主映画が口コミで人気が広がり、日本アカデミー賞の最 優秀作品賞を取ったことで話題になった映画です。幕末の 会津藩士と長州藩士が剣を交えているうちに現代の時代劇 撮影所にタイムスリップし時代劇俳優として活躍する、と いうストーリーです。低予算のためか、壮大なセットや現 代の技術を駆使した映像ではありませんが、シンプルで 清々しく、その分真剣勝負の場面が際立っていたように感 じました。 

 

高校野球・甲子園」(TV 番組) 

甲子園の高校野球では大舞台でも笑顔で楽しんでいる選手 たちや、応援に使われている曲のメロディの良さを再認識 したりと、学びがあります。 

V067「悲しき愛のテーマ」ピノ・ドナッジオ

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.楽譜上では、前奏は、始まりのフレーズの出だしをなぞっているので、その点では歌いやすい曲ですが、全体的に3連符が多用されているだけでなく、その種類もひとつではないのが、この曲の難しいところです。2/2拍子で書かれていますが、12/8拍子で書かれていれば、まだわかりやすいのではと思います。始まりの7小節のフレーズの、3小節目までは、8分音符の3連符ですが、4小節目の1拍目は、8分音符と4分音符と8分音符で、2拍目は4分音符の3連符です。このきれいな歌い分けをして欲しいものです。この7小節のフレーズが2回くりかえされた後は、8分音符の3連符の中に、16分音符が頻繫に登場し、6連符になる部分もあります。それでも、数種類のパターンしかないので、慣れてしまえばそれほど大変ではありません。むしろ、最初のフレーズの4小節目の1拍目と2拍目の歌い分けの方が、難しいかもしれません。

 

2.ピノ・ドナッジオは、クラシックのヴァイオリニスト出身ということもあり、この曲は彼の作詞作曲ですが自由に歌っています。

 

3.まず始めは、楽譜どおりの演奏を心がけてみましょう。低い第6音から高い主音(♭が付いているので半音低いですが)までの、1オクターブ半に近い音域なので、キー設定も重要です。(♭Ξ)

 

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1.歌詞はイタリア語で、邦題に「悲しき愛のテーマ」とあるように、別れてもなお”一緒に過ごした日々を忘れないで”と、別れた恋人への想いを歌った曲です。出だしはIo ti ringrazio perche' te ne vaiというフレーズの間に休符が4ヶ所もありますが、途切れ途切れに聞こえないように、ぜひフレーズ感を持って歌い出したいです。

 

2.ドナッジオの歌い方は、歌詞のときとラララで歌うときの声が違ったのが気になりました。ラララの方はやや子供っぽい声に感じたのですが、それまでの歌詞の内容に沿わない声だったように個人的には感じました。もし意図的に出した声だとしたら、それとはまた違う表現をぜひ聞いてみたいと思いました。

 

3.曲の始めの方は短いフレーズが続きますが、息の流れが滞ると長いフレーズがきたときに歌いにくくなってしまいます。例えば休符をいったん外して、Io ti ringrazio、 perche' che te ne vai、 hai capito che nostro amore、e' finito come tanti、でそれぞれをひとつのフレーズとして歌ってみると息の流れがつかみやすくなります。その練習の後で休符を戻して歌うとよりフレーズ感が出てきます。(♯α)

 

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1.端的に言えば「失恋ソング」です。ですが、ただ別れて終わりではなく、「去ってくれてありがとう」といいながらも、「どこへ行っても忘れないで」とどこかに未練があるような詞が続くところがいかにもラテン的な愛と失恋という感じがしますね。

 

2.ドナッジオの歌い方は、「言葉の語り」を活かして表現を活かしているように思います。もともとヴァイオリニストであるという経歴から、楽譜を読む力やソルフェージュ能力はかなり高いと推察されます。音程は正確に聞こえます。

 

3.普通に歌うだけでは、この曲のもつニュアンスが活かしきれなくなってしまうと思いますので、最初は歌詞を語る訓練を繰り返し行うとよいと思います。歌詞の内容と表現が結びついた状態でセリフのように語れる状態までもっていくと、その後、歌ったときに表現のニュアンスが活かしやすくなっていくように思います。物悲しく語る部分も、情熱的に語る部分も、日本人よろしく湿っぽくなりすぎず、ラテンの香りの語り方ができると理想的だと思います。湿っぽくなりすぎるとストーカーの歌に聞こえてしまいます。(♭Я)

 

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1.恋人が去っていった情景を悲しく、名残惜しく歌います。ハミングやラララのボカリーゼが特徴的に挿入されています。転調も独特でGminor で始まった冒頭のメロディはBmajorでさびを迎えます。普通Gminor からB♭majorに移調するのがよくあるパターンで、スムーズなのですが、とてもイレギュラーな転調が行われています。そしてBmajor から2小節かけて半音ずつ基音が上昇して橋渡しをしてG minorに戻ります。

 

2.ビブラートの少ないまっすぐの声、明るいテノールの声だと思います。音と音の間にあまり抑揚や陰影をつくらず、まっすぐ歌っている印象です。

 

3.この声の出し方をまねするといいと思います。基礎を学ぶ際にこのように、明るく、まっすぐ声を出すというのは変な癖がつかずにとても基礎的な声づくりの役に立つと思います。この歌手は、音を身体でしっかり支えて、音のぶれを防いで声を運んでいます。この出し方をまねしてみましょう。(♯β)

 

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1.冒頭のもの悲しいピアノに引き込まれます。センチメンタルに子供のことを回想してしまうような、懐かしい感じのする音楽です。おそらく失恋の歌だと思うのですが、最後は明るく「ラララ」とうたって終わります。伴奏もすぐに陽気なリズムが加わってきます。感情の幅が広い曲です。

 

2.ドナッジオの声は細くて軽やかですが、どこか芯があり、聞く人の記憶に静かに寄り添います。押しつけがましさがなく、飾り気もないけれど、そこにしかない真実味がありました。技術ではなく、人柄や人生がそのまま歌になっているように感じます。

 

3.最後の「ラララ」は思いっきり歌ってみましょう。恥ずかしさを感じてはいけません。頭を空っぽにして、笑顔で全力で「ラララ」を歌うこと。それが、「何があっても明るく生きていく」というエネルギーになります。感動を呼ぶのは、声の大きさではなく、心の姿勢です。(♭∴)

 

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1.終わった恋愛。最後にかける言葉と余韻。結局、一番伝えたい想いを表すに足る言葉は見つからず、「ラララ」というスキャットになる。「ラララ」は力強くも哀愁に満ちた、しかしどことなく投げやりな雰囲気もある印象深いメロディ。

ゆったりとした2拍子は3連符で刻まれ、淡々と音楽を運んでいく。

 

2.ドナッジオの歌い方(というより「語り口」と表現した方がしっくりきます)には、「歌を歌っています」という気負いや力みがありません。ごく自然に話した言葉に音程がついたり、伸び縮みしたり、それがそのまま音楽になっているように聞こえます。高音も非常に自然体です。歌がうますぎて、うまく歌っているように聞こえない歌手だと感じます。

 

3.悲しみも喜びも過ぎ去ったものです。そういった感情を生々しく扱わず、一歩引いて俯瞰した場所で歌ってみましょう。

長調に転じるPero ricordaのあたりから盛り上げたくなると思いますが、まだパワー全開にはせず60%ぐらいに抑えておき、一番いい声は「ラララ」のために取っておいてください。(♯∂)

おすすめアーティスト・作品 No.409

「the Covers」(TV)

名曲と言われる曲をそれぞれのアーティストがカバーする番組。自分の歌ではない歌をどうやって表現するのかを観るといろいろな気づきがあります。

 

「オールスター」(TV)

オールスターの第一戦をTV視聴しました。野球が好きな情熱が、選手の表情や全身から滲み出ているのが画面からもわかり、プロ野球界の中でも特に選ばれる選手には、何があるのかの学びになりました。ホームランパフォーマンスの揃い方も、練習しているわけでもないと思うのですがダンスチームをみているような感覚でした。身体の能力の凄さを改めて知りました。また、試合中にマイクをつけてインタビューするなど、エンタメとしても工夫がされており、楽しませることと、結果を出すことの両方を求められ、厳しい世界にいることを辛いと思わず、もちろん影では努力をしているのだと思いますが、その環境を楽しめる人が活躍できるのだと学びました。

 

ジュリー&ジュリア」(映画)

20代のころに栗原はるみさんを知ってから、こんな老後になるといいなぁと思ってコツコツと準備してきました(料理研究家になりたいわけではありませんが)。この映画も結婚している2人の女性の実話で、まさに私が目指している形そのものの成功例を作品にしたものでした。とっても参考になり嬉しくなりました。それにしてもメリル・ストリープさんは、このテンションの高さで声を出し続けて演技をされているのも楽しかったです。また、非常に背も座高も高くて大柄な女性だったということに、この作品で初めて気が付きました。和田アキ子さんは大柄だったので嫌な思いをされて女優が難しく、歌手になったと言われていたので、人それぞれですね。

 

「お坊さんのお経」

普通の会話の時と、読経の時の声が大きく違います。

読経の時の声の艶はどのようにしてだしているのでしょうか。

また、とてもよく響き、広がる声です。お坊さんはその声を練習によって習得するのでしょうか。疑問が次々に湧いてきて、お経を集中して聞いてしまいました。

 

「ハリー杉山さん」

フジロックの配信を視聴した際に、インタビューの司会などをされていました。インタビューするアーティストの音楽を聞き込んでいること、過去のフジロックに関しても言及し、英語でのインタビューもし、通訳の方との連携もスムーズで、落ち着きすぎず明るすぎず、心地よい声や表情で学ぶことがたくさんありました。

 

騎士団長殺し 顕れるイデア編上下」村上春樹(本)

肖像画を描く画家として生計をたてている主人公は妻から離婚を言い渡され、友人の父のアトリエに1人住むことになった。そこで「騎士団長殺し」という絵を発見してから不思議な人たちと出会い、不思議なことに巻き込まれていく物語です。これまでのこの作者の小説同様現実と夢の世界が交錯したり、歴史的な大事件との関わりがあったりと面白いだけでなく、奥が深い小説です。

 

騎士団長殺し 遷ろうメタファー編」(本)

「顕れるイデア編」に続く後編。妻から離婚を言い渡された主人公がもとの平穏な生活に戻るまでの激動の9ヶ月間の話です。様々な不思議な試練や悪と正面から対峙しながら進む主人公。本の内容はとても奥深く一回読んだだけでは理解できない部分が多い小説です。現実の世界でも戦争など様々な悪がありますが、自分はどう向き合うべきか、考えさせられる内容でした。

 

ギリシャ語の時間」ハン・ガン(本)

声にとって、感性を磨くことはとても大切です。ぜひ優れた小説を読んで、感性を磨いてください。今回お勧めする小説は、韓国の作家ハン・ガンによる「ギリシャ語の時間」です。

声を失った女性と、視力を失いつつある古典ギリシャ語教師との静かな交流が描かれます。語ること、聞くことが不可能になりつつある二人が、死語となった古代語を通して、言葉の根源、沈黙の意味、そして存在そのものに触れていく姿が印象的です。

感情を直接表現しない文体の中に、痛みや優しさがにじみ、読み手の内側に静かに響いてきます。言葉が奪われた者たちが、それでもなお言葉を求める——その姿は、声を使う私たちにも大きな示唆を与えてくれます。

訳文も簡素で美しいです。音読の練習としてもぜひ使ってみてください。

V066「忘れな草(デ・クルティス)」 ベニャミーノ・ジーリ

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.同主調短調から始まり、Ritornelloは長調に転調する曲です。

低い第5音から高い主音までの1オクターブ半の曲ですが、低い第5音もわりとしっかり声を出さなければならず、最高音の高い主音は、曲の最後にロングトーンで強く伸ばさなければならないので、2オクターブ程度の音域の中で、無理のないところに納めなければ、歌いにくい曲です。

 

2.かつて、パバロッティ、ドミンゴ、カレラスが、三大テノールと呼ばれ、もてはやされていました。学生の我々は、三大テノールもそれほど悪くはないけれど、もうひと昔前の伝説のマリオ・デル・モナコや、ステファノ、コレルリを、目標にしており、ジーリは弱々しい声のイメージで、イマイチという感じでした。今回、改めて聞いてみると、意外にしっかりとした声で、むしろ堂々とした発声で、当時はジーリの女々しい感じの曲ばかりが注目されていたようです。

 

3.音域の広い曲なので、特に男性は微妙なキー設定が必要でしょう。曲の最後の最高音のロングトーンを、無理なくしっかり出せるようにして、最低音もそこそこ使える音にしなければなりませんが、まずは最高音を余裕を持って出せるキーで、練習していきましょう。(♭Ξ)

 

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1.歌詞はイタリア語で、ツバメが去っていく描写に恋人を重ねて、私の元を去ってもあなたを愛し続ける、といった内容の歌詞です。短調で始まる前半では情景描写を、ト長調に転調した後半では立ち去った恋人への想いを歌っています。

 

2.この曲はカンツォーネですが、テノール歌手であるジーリの声とその歌唱力で、まるでオペラのアリアを聞いているような錯覚を抱きます。高音で母音エを伸ばすのは意外と大変なのですが、顎が下りて良く喉が開いている声であること、力強い歌唱でも喉の力みはない、とても聞きやすい歌声だと感じました。

 

3.ト長調に転調してから、”~di me”や”~a te”という発音によってフレーズ末尾で母音エを伸ばす場面が多くあります。顎が力むと声が進みにくくなるので、顎の力みが入る前に、拍頭ですぐに顎を下ろす(顎を緩める)ことがポイントです。

前半の”La mia piccola rondine~”はrit.しながら高音に向かい、後半の”C'è sempre un nido~”は高音でフェルマータがあるので、どちらもしっかりとした身体の踏ん張りが必要です。身体の横で手首を思い切り振りながら歌うと、自ずと踏ん張りが発動し、喉まわりや上半身の力みも解消します。(♯α)

 

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1.とても有名な曲のひとつといってもよいでしょう。

原語のタイトル「Non ti scordar di me」を直訳すると、「私を忘れないで」という意味になります。

「勿忘草」にはとある伝説が元になっていると言われています。中世のドイツでのお話です。

騎士ルドルフが恋人のベルタに捧げるために、ドナウ川の岸辺に咲く花を摘もうと岸を降りたものの、足を滑らせて川へ飲み込まれてしまいます。ルドルフは最後の力を振り絞って手に持っていた花を岸辺に投げると共に「私のことを忘れないで」という言葉を残して水中へ消えてしまいました。

ベルタは、彼の残した言葉を元に、この花に「勿忘草」と名づけたというお話です。

 

2.戦前を代表するテノールの中でも人気のある一人だと思います。

語るように歌うのが上手に聞こえます。フォームを崩さず言葉の連続が巧みに行われているような印象です。結果的にとても美しくレガートに聞こえているのだと思います。

そして、「U」の発音がとても美しい印象を受けます。

 

3.全般的にレガートに語るところから始めてみると良いでしょう。口形の変化を最小限に抑えるという意味では、ジーリから学ぶことはたくさんあるのではないかと思います。ただし、音のずり上げずり下げは無意識に多用しすぎず、できる限り清潔に歌うことを土台とした方がよいかと思います。(♭Я)

 

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1.A、サビ、サビ前半の間奏、サビの後半から歌入り、高音で伸ばして終わるという構成です。

 

2.身体をしっかり使った歌い方で、アクセントを身体と息の鋭さで歌い上げているのが特徴です。 

母音の繋がりが滑らかであるがゆえに、各母音が明確に聞こえないときもあります。泣きを入れたような表現で歌詞を表しています。声は単にブライトな(chiaro)明るさだけではない暗さも(scuro)併せ持つイタリア的なすばらしいテノールの声だと思います。

 

3.この歌手の音符の揺らぎ、動かし方、伸ばし方を研究されるといいと思います。どの言葉のときに伸びているのか、どのように揺らいでいるかをまねしてみましょう。partironoの「pa」 や、rondiniの「ro」の伸びをよく聞いてみてください。全体的にすべての音節が止まらないように歌いましょう。(♯β)

 

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1.時代を感じさせるアンニュイな前奏に引き込まれます。「忘れな草」という題にふさわしく、冒頭から漂う懐かしさとほのかな翳りが魅力的です。

 

2.出だしから力強く、統一されたオペラ的な美声が響きます。ジーリの声には揺るぎのない芯があり、「Non ti scordar di me」の甘い語りかけとのギャップが非常に印象的です。

 

3.出だしの一声を重点的に練習してみてください。身体全身体で響いているか、響きに芯が通っているかをていねいにチェックすると、歌の全体像も自然と整ってきます。

(♭∴)

 

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1.原題「Non ti scordar di me」は直訳すると「私を忘れないで」という意味で、なおかつ植物のワスレナグサを指す名詞でもあります。文章がそのまま花の名前になっているのは不思議な感じがしますが、これはイタリア語に限らないことで、ヨーロッパの各言語でワスレナグサは同じような言い回しで呼ばれています。

去っていった恋人への思いを歌う内容ですが、恋人は「ツバメ」という言葉で表されています。歌詞にはこのような隠喩がたくさん散りばめられており、だからこそ誰の心にも響くような普遍的な歌となっています。

短調で始まる音楽の中に時折日が差すように長調の和音が挟まり、その後同主の長調へ転調してからは、陰りを見せるような短調の和音が混ざります。この狭間を行き来するような構成は、見事な色合いを見せる織物のようです。

 

2.ジーリはリッチで強靭な声を極めて柔らかく使っています。猛禽の羽毛が如き稀有の声です。すごすぎてまねできません。そういう意味で、参考にならない歌手の一人だと考えます。また、「泣き」の表現が絶品だと感じます。

 

3.前半の短調の部分はあまり悲壮感を出さず流れるように、後半の長調の部分で泣くという、一見逆に思える表現をするのがおすすめです。この曲の独特の陰影が生きてくると思います。(♯∂)

おすすめアーティスト・作品 No.408

「エリッククラプトンのドキュメンタリー NOTHING BUT THE BLUES」

ブルース初期の映像がとてもよかったです。

ブルースとジャズのつながりを再確認。

 

栄光への脱出エディット・ピアフ

なんと壮厳な事か。まず声がものすごい濃縮されたかなりの密度を感じるし、もし神が声を持つならきっとこういう声をしているのではないかと思うぐらいに神々しい。これは大げさではなく本当にそう感じる、この感じは2回目だ。まるで、大きな礼拝堂教会、よくわからないが、マリア像なんかがあり、ステンドグラスにかこまれた大きな建物が背景として浮かびあがってくる。リコルダを初めて聞いた時も同じような感覚だった。もはや人に対してではなく、もっと大きな何か、生とか死とか神とか大地とか宗教的なものとかに対して心や、その体感の中で声が発しられているようだ。ピアフ独特の巻き舌や、豚鼻、地声、ファルセットの手前、おもいっきり頭声などがフレーズの途中で区切れとして変化するのではなくたえずそれらがミックスされた状態でものすごい濃度で発しられているようだ。

 

アフターダーク村上春樹(本)

深夜12時ごろから翌朝7時ごろまでの短い間の話です。正反対の性格の2人の姉妹の視点から交互にかかれています。たった7時間なのに何日間かのことかと錯覚してしまうほど濃密な内容。現実と夢の世界が交錯するような不思議な話です。最後のこの2人の姉妹の様子を見て、もしかするとこの2人は表と裏、光と影なのではないかと思ってしまいました。

 

海辺のカフカ村上春樹(本)

自分の居場所がないと感じ家を出た15歳の少年カフカと猫と話せるが読み書きができない60歳のナカタさんの2人を軸に進む物語。夢か現実かわからない世界での出来事や外の世界と遮断された町があらわれたりと、この作家の他の作品を思わせるような展開がありますが、一見関係無いような2人がだんだん重なってくる展開に引き込まれました。日本の社会で普通でないと思われている人、挫折や喪失を味わった人々が自分の場所を見つけ自分らしく生きていくことの大切さを感じました。

 

細田高広さん」(世界的クリエイティブディレクター)

YouTubeでの、話し方を観て、言葉の選び方や、丁寧さ、相手が話すときは声を出さずに、顔を動かして大きく頷くなど、コミュニケーションの参考になります。

 

「ラムセス大王展」(展覧会)

エジプトの最も偉大な王の1人と言われているラムセス2世を中心とした展示でした。精巧な壁画を施した神殿、棺、豪華な宝飾品、きちんと保存されたミイラなど3000年前にこんな技術があったのかと驚くばかりでした。一方で周辺国と領土争いをし、自分/*hjの権力を誇示することは古代から現代に至るまで変わらないのだなあ、と感じました。

V065「あなたに口づけを」  フェルッチョ・タリアヴィーニ

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.同主調短調から長調に転調する曲です。低い第5音から高い主音まで(装飾音としては高い第2音まで)の、1オクターブ半の少し音域の広い曲で、最後は高い主音のロングトーンでおわります。6/8拍子なので、Andantinoというテンポのためもあり、少し優しい雰囲気になります。8個の短調のフレーズは、どれも1小節目は同じ音の繰り返しで2小節目は装飾音を含めた細かい音符の後に7拍のロングトーンが続きます。最後の8フレーズ目だけは、第5音を3回繰り返した後は、第4、2、3音の後、同様に細かい音符の後にロングトーンの主音で、同主調長調に転調します。

転調した後は、第5音の連続から順次進行で高い主音の装飾音の後第6音のロングトーンという高音域のフレーズを2回繰り返し、5フレーズ目には、高い主音の3連続から、順次進行で第4音まで、2フレーズを使って下りてきます。曲の最後まで、8割は順次進行で歌われているので、とても美しいフレーズで溢れています。

 

2.フェルッチョ・タリアヴィーニは、有名なイタリアのオペラ歌手なので、全く無理のない余裕のある声で歌っています。テノール歌手なので、あと1~2音高いキーで歌い上げても、よいのではないかと思わせます。これが、パバロッティなら、3~4音は高いキーで、オペラアリアのようにドラマティックな表現にしているでしょう。

 

3.音域が狭くないので、しっかりキーの設定をして取り組みましょう。曲の最後のロングトーンは、充分に余裕のある表現ができないといけないので、高過ぎるキーは厳禁です。(♭Ξ)

 

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1.このカンツォーネは歌詞がナポリ語で歌われています。内容は恋する女性への心情を綴ったもので、男性の溢れんばかりの気持ちが表現されています。歌い出しから前半はヘ短調で彼女の描写や男性の心の揺れ動きを歌い、後半からヘ長調に転調するとやや音域も上がり、口づけをしたい、そばで眠りたい、と彼女へのストレートな想いを歌い上げます。

 

2.タリアヴィーニはテノールとして美声の持ち主であり、歌い出しからカンツォーネというよりは、オペラのアリアを聞いているかのような印象を受けます。情熱的な歌詞の内容からすると、彼のダイナミックな言葉の運びが表現としてもマッチしていて聞きごたえがあります。

 

3.一般的な楽譜と見比べると、タリアヴィーニの歌唱は装飾音符のつけ方が少し違いますが(6小節や8小節など)、まねをして歌ってみるのはよいと思います。全体的にシンプルな旋律で、たとえば歌い出しの1小節は同じ音だけを歌っています。ただ同じ音を並べるような歌い方にならずに、いかに魅力的に歌うかという部分においてはタリアヴィーニの歌唱はとても参考になります。(♯α)

 

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1.オーソレミオと同じ作曲家で、カンツォーネに属する楽曲ではありますが、クラシックの歌曲とさほど差がないぐらいクラシカルなメロディ、構成の曲だと思いました。1番、2番で構成されています。2番の後半8小節が伴奏のみになり、その後歌が入って、ラストの高音をフォルテで歌い上げるという構成です。

 

2.声を張り上げて美声を強調するという歌い方ではなく、曲の内容を切々としっとりと歌い上げています。声を張るときもあれば、弱々しく表現するときもあります。1番の最後の高音はピアニッシモで歌っていますが、それに対し2番の最後はしっかり張って声を出し、ディミヌエンドできれいに終わります。

 

3. 声がただまっすぐに伸びているのではなく、次のフレーズに向かってフレーズが前に進んだり、ゆっくりになったりしていることに着目して練習してみましょう。棒歌いにならないように気をつけましょう。(♯β)

 

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1.曲のタイトルを直訳すると「あなたにキスをしたい」となります。愛する人と共に寝ていて、自分が先に目覚めたのでしょうか。さわやかな朝を迎えた中で、まだ寝ている相手に対して「キスをしたい」と思うけれど勇気が出ない。なのでもう1時間一緒に寝たい、と幸せに満ちた内容が歌われています。

 

2.タリアヴィーニの持つ声は非常に甘美でとても定評があります。また、子音の扱い方がとても上手で発音がとてもクリアであり、レガートもとても美しく聞こえます。

歌い方が清潔でありながら曲の持つ甘美さを上手に表現している印象です。

 

3.タリアヴィーニの歌い方からさまざまなことを学ぶことができると思います。よい意味で滑舌がよいが決してしゃべりすぎない。口形の変化を最小限に抑えつつ子音を明確に発音することや、音を保てる子音ではポジションがぶれない。それゆえに母音や子音の連結がうまく行えるようになり、レガートが美しく聞こえ、ひびきも一定の状態をキープできているということがあげられると思います。このテクニックを駆使したうえで甘美に語るように、歌い手の語り方によって歌うことができると美しく聞こえるように歌えるのではないかと思います。(♭Я)

 

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1.曲の内容は実に直球で、タイトルの通りです。日本人の感覚からすると、こういった直球のものに触れる機会は少ないかもしれませんが、こういったところがイタリア的でカンツォーネらしい曲のように思います。音楽も曲の内容にふさわしく甘美にロマンチックに書かれています。

 

2.メロディックなので比較的歌いやすいのではないかと思います。音楽の持つ甘美さやロマンチックさを活かしながら歌えると演奏効果が高くなってよいと思います。そのためには、発音・発語を工夫した言葉の滑らかさを活かして、レガートに歌える状態になると理想的だと思います。

 

3.前半の部分は歌い上げることよりも甘美に語るニュアンスを活かして歌えるとよいのではないかと思います。語り方が内容にふさわしくなるとそれで音楽が成立するように思います。「I'm me vurrià addurmì」からは特にこの曲の山場だと思いますので、たっぷり歌うとよいのではないでしょうか。甘く語るところは甘く語り、しっかり歌いこむところは甘美さを伴いながらしっかりと歌いこむことができると、この曲のよさを活かしやすくなっていくのではないかと思います。(♭И)   

 

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1.まるで一篇の短編映画を観ているかのような音楽体験でした。冒頭は繊細で甘美なメロディが漂い、リズムはゆるやかに情景を描き出します。異国情緒にあふれています。愛を打ち明ける瞬間の緊張と高揚が、曲の中盤で一気に盛り上がり、テンポも語り口も熱を帯びていきます。オリジナルのイタリア語の韻律が、感情を直接ひびかせるような力を持っています。

 

2.タリアヴィーニの声はまろやかで、芯がありながら決して押しつけがましくないです。ふわっとした心地よい声で低音も優しく包み込むようにひびきます。一方でサビでの力強いシャウトは情熱的に耳に残ります。息のコントロール、言葉の緩急、そして高音への滑らかな跳躍に彼の高度な技術が光ります。彼が「語るように歌い、歌うように語る」名手であることがよくわかります。

 

3.歌い方のポイントとして、最初の一声から「息とともに語る」意識が重要です。音を張るのでなく、柔らかく投げる。中盤以降の盛り上がりでは、身体をしっかり使って共鳴を感じながら大胆に歌ってみましょう。最初と最後の静かな部分との対比が際立つほど、この曲の美しさが引き立ちます。(♭∴)

 

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1.カンツォーネ・ナポレターナの名曲。前半は短調、後半は長調で甘く恋心を歌っています。眠る女性を見つめ、口づけを熱望しながらも実行できずにいるというシチュエーション。8分の6拍子で、舟歌のように心地よく揺れ動きます。オーケストラはカンツォーネには珍しい木管楽器群と、ハープやマンドリンが印象的に使用された香り高い仕上がりです。

 

2.タリアヴィーニの歌声は甘美そのもの。リッチな声質のテノールであるものの、必要以上にはひけらかさないあたり、非常に知的で上品だと感じます。余白のある歌とでもいいましょうか、美声を垂れ流すだけのテノールとは一線を画す歌唱です。

常にマスケラから外れず、力強い部分も力ずくではなく、余裕があります。細く歌っている結果がこのように豊かな音楽になっていることは驚嘆に値します。

 

3.眠り姫を起こさぬよう、静かな内にも情熱を秘めた表現で歌っていただきたい曲です。力いっぱい歌うのも悪くないとは思いますが、この曲に関しては、下品にならないギリギリのところを見極める必要がありそうです。(♯∂)