総合 目次

タイトル一覧 
1.歌唱力をつける耳と歌づくり(複数トレーナーの同曲アドバイス) 
2.アーティスト論 
3.おすすめアーティスト・作品(投稿による)
4.プロのアーティスト論
5.スタンダード曲 同曲異唱での学び方[同曲異見]
6.カンツォーネの歌い方
7.日本の名曲の歌唱ポイント
8.コンコーネ50での学び方[同曲異見]
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V057「More(モア)」 アンディ・ウィリアムス/ナット・キング・コール/トム・ジョーンズ

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.「世界残酷物語」というおどろおどろしいタイトルの映画の、テーマソングとは思えない、愛に溢れた曲です。

 

2.3人を比べてみると、皆、一世を風靡しただけあって、3人共に安定した発声で、その限界を感じさせない、うまい歌いぶりです。

アンディ・ウィリアムスは、それほどには熱くなく、自然に歌い上げる感じで、少しオシャレな感じです。

ナット・キング・コールは、ジャズシンガーらしい、クールな感じで、まとめています。

トム・ジョーンズは、身体をうまく使って、一番歌い上げています。

 

3.キーの設定によって、熱く歌ったり、クールに歌ったりできるので、自分の声に合わせて、いろいろ取り組んでみるとよいでしょう。(♭Ξ)

 

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1.この曲は全体的に付点二分音符全音符が多く7度の飛躍も度々あるので、テンポが停滞しやすい傾向にあります。4/4拍子でModerato(中くらいの速さ)ですが、テンポは常に前に流れていく感覚で、7度の飛躍も軽やかに歌い進めることがポイントです。

 

2.ウィリアムスは癖のない美声で、全体的に旋律をレガートで歌っているのでその滑らかさも相まってとても聞きやすいです。

それとは対照的に、キングは語るような感じでフレーズを短く切り、リズムもより弾んだ取り方で特に歌い出しの印象がガラッと変わります。

トム・ジョーンズはレガートな歌唱に加えて、より情熱的な感情を乗せた歌だと感じます。例えるとウィリアムが大人の男性なら、トム・ジョーンズは彼よりも若く青年の等身大の表現のような印象を受けました。

 

3.歌手によって歌い方は様々ですが、キングの真似をしてフレーズを短く切ると息の流れを邪魔するので歌いにくい(声が進みにくい)です。歌詞の内容に沿いながら、必要な箇所ではブレスも入れますが、フレーズはなるべく大きく捉えて歌いましょう。この曲はテンポが停滞しやすいので、息の流れを促すためにも、いったん歌詞を外して子音Zだけで歌う練習をお勧めします。(♯α)

 

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1.非常にロマンチックであり情熱的な内容の歌詞を歌った曲です。三者ともアレンジや歌い方が全く異なっていますが、歌い手によっていろいろな解釈やメッセージ性を活かしながら歌うことによって、同じ曲でも非常に幅広い違いが生じるでしょう。

 

2.ウィリアムスは、基本的にはしゃべるような音域の声を使っていますが、ところどころファルセットに抜く歌い方にしている印象を受けます。

キングは、多少リズムも崩して、語るような歌い方をしていますが、少々跳ねたような歌い方をしているのが特徴的です。

トム・ジョーンズは、力強い印象を受けますが声が揺れており、これは正しいヴィブラートではありません。いわゆる「ちりめんヴィブラート」すなわちトレモロ状態です。

 

3.先にも述べたように、曲の内容は非常にロマンチックであり情熱的でもあるので、きれいに歌おうとしたり消極的に聞こえるような歌い方はしない方がこの曲には合うでしょう。ただし、無理に張り上げたり、ヴィブラートがヴィブラートではなく「揺れ」になってしまっていてはもったいないので、自分自身の楽器をしっかり活かして、「情熱的で甘く語ることのできるような歌い方」を研究して歌ってみるとよいのではないでしょうか。歌い手それぞれの解釈と表現が、この曲の持つ表現の幅を広げることに繋がると思います。(♭Я)

 

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  1. ウィリアムスは、ボレロのようなパーカッションのリズム、激しさ勇ましさを感じさせるオケに乗せて歌っています。後半はコーラスも加わり、最後にはティンパニも加わって力強く終わります。

キングは、ジャズアレンジでしっとり歌われています。後半はトランペットのコーラスが華やかさを加えています。

トム・ジョーンズは、ミドルテンポのアレンジで、ウィリアムスとキングの間ぐらいの激しさ具合です。トランペットの合いの手はミュートしていて楽器はそれほど激しくはないですが、歌唱は大変情熱的な表現になっています。

 

2.ウィリアムスは、レガート歌唱で歌っています。時に抜く声、ささやきのような表現です。

キングは、語る感じで歌っているのが特徴的です。文章の最初「more」「i」だけ話し声のような表現をしているので耳に詞が入ってきやすいかもしれません。音の伸びと張りが強めなウィリアムスとは異なり、フレーズの切れ目がはっきりしています。

トム・ジョーンズは、胸声を張り上げて歌うというよりも頭声を少し混ぜたような発声なので柔らかさがプラスされています。音の伸ばし、語尾の張りも他の二人に比べて一番強いです。曲後半からのアレンジが独自性があり魅力的です。

 

3.どのバージョンで歌うにせよ、まずはフレーズの始まりと終わりを頭に入れたら、そのフレーズの最後まで言い切るように表現してください。文章の途中で気持ちが途切れることのないように注意しましょう。そして永遠の愛を誓う強い気持ちを歌い上げる歌ですので、意志の強さを歌にも込められるよう、身体でしっかり支えられた声で歌えたらいいですね。(♯β)

 

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1.3曲ともアレンジがかなり違います。イントロだけに注目してみても、ウィリアムスは、コード進行が特徴的で、これから何が始まるのか、不気味な印象すら与えます。

キングは、ピアノと弦楽器のアコースティックなイントロが心にしみわたります。トム・ジョーンズのイントロは、リズムがかなり強調されていて面白いです。曲として共通していて印象に残るのは、サビに入るところの半音階です。またサビの1回目からの2回目に行くときのコード進行が「暗い感じ」で印象に残ります。

 

2.まず3人とも音域が違うことにお気づきでしょうか。

ウィリアムスは普通、キングは低め、トム・ジョーンズは高めのキー設定です。それぞれ自分の声の魅力が一番通じる音域を設定しているといえるでしょう。

ウィリアムスは、もっとも一般的な「歌のうまさ」があるので、通常の音域で美しい声を聞かせるように歌います。

キングは低めの声で、語りかけるように始めます。低い魅力的な声で魂が震えます。

トム・ジョーンズは、シャウトが情熱的でヴィブラートの幅が広く、豪快です。

 

3.一番練習に使いやすいのは、低い声のキングの歌いだし「more」を真似してみることです。以降、各フレーズの頭を語りのように歌っていますので、そこを取り出してコピーしていきましょう。薄っぺらい自分の声に愕然とするでしょう。そこからトレーニングと接点をつけていきましょう。(♭∴)

 

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1.原曲はイタリア語で「Ti guardero’ nel cuore」ですが、英語の「More」として歌われることの方が多いようです。

ゆったりとしたメロディラインと極めて単純な和声進行ながら、一度聞くと忘れられない浮遊感があります。

英語版の歌詞は、世界で一番偉大な愛よりもさらに大きな愛をあなたに捧げよう、といった内容です。

 

2.ウィリアムスは伸びやかな声でレガートが美しい。ハンサムな歌といった印象です。

キングはリラックスムードで優しく語るような歌い方です。

トム・ジョーンズは自在に高音を操るが、高い音を歌っているように聞こえないほど自由闊達です。

 

3.浮遊感の正体は7度の跳躍です。これが途切れずに滑らかに歌えるまで練習しましょう。z~などで練習すると切れずに歌うコツがつかめるかと思います。(♯∂)

おすすめアーティスト・作品 No.399

「声楽つきオーケストラ曲」バッハ、ベートーヴェンブラームスマーラー

クラシックの声楽曲を聞いてみようかなと思う人も、オペラや歌曲までで、なかなか「声楽つきオーケストラ曲」までには手が伸びないのではないでしょうか。

このような分野ではまずはバッハの「カンタータ」があります。カンタータは本来「歌われるべきもの」とでもいう意味で、歌の曲は何でも「カンタータ」といいます。(これに対してソナタは本来、「楽器で演奏されるべきもの」というほどの意味で、歌のない曲は何でも「ソナタ」といいます。この意味ではこの世にはカンタータ(つまり歌のある曲のこと)とソナタ(つまり歌のない曲のこと)しかありません。)教会カンタータは教会での典礼用に作られた宗教歌曲、合唱曲で、バッハの本領はここにある、という人も多いです。ドイツ語の歌詞であり(ラテン語ではなく)一曲20分程度なので、気軽に聞いてみてもいいでしょう。一方でバッハは世俗カンタータという「教会カンタータ以外のカンタータ」も書いています。これは当時新興の飲み物であったコーヒーのCMソングである「コーヒーカンタータ」など聞いていて楽しいものが多いです。

ベートーヴェンは何より交響曲第9。人類の文化遺産として(好き嫌いはともかく)一度は聞いたり、合唱団の一員として歌ったりしてみてはいかがでしょうか。

ブラームスにも意外に歌の曲が多いです。ドイツレクイエムはとてもよい。また少しマニアックですがシラーの詩に曲をつけた「ネニエ」という小規模な合唱曲もきれいだなと思いました。

マーラー交響曲1番はもとは歌曲。2番は歌つきの「復活」、そして交響曲第9番として計画された「大地の歌」。これは李白の詩のドイツ語訳にオーケストラ伴奏がつけられています。なんとなく「吹奏楽」的な雰囲気で、マーラー入門として最適だと思います。

 

「歌心りえ」

最近ネットで話題の人を聞いてみて下さい。

 

「9つの性格」鈴木秀子(本)

エニアグラムをご存知ですか。

エニアグラムは「すべての人は9つのタイプにわけられる」という考え方です。

血液型占いや占星術の類ではなく、あらゆる時代、地域、民族、性別、年齢に関わりなく、生まれ持った9つの性格パターンはおおよそ均等な割合で存在しているという、古くから検証されてきた説です。オカルティックなきらいもありますが、大切なのはこの説の正誤ではなく、自己と他者は違っていて当たり前なのだという考え方そのものです。

9つの性格パターンを簡単に挙げておきましょう。

 

(1)完全でありたい人

(2)人の助けになりたい人

(3)成功を追い求める人

(4)特別な存在であろうとする人

(5)知識を得て観察する人

(6)安全を求め慎重に行動する人

(7)楽しさを求め行動する人

(8)強さを求め自己主張する人

(9)調和と平和を願う人

 

どのタイプが優れている、劣っているということではなく、どのタイプにも等しく長所短所があること、自分にとって相性のいいタイプ、つき合いづらいタイプがあること、読み進めるにつれ、自分や周りの人がどのタイプなのかが見えてきます。

他人は変えられない、ただ理解を深めることは可能だと示唆してくれる一冊です。

他人を許せないと感じる人、劣等感に苛まれている人、職場などで何かを統一しようとしてうまく行かず悩んでいる人、SNSで自分の発信に賛同が得られず面白くないと感じる人にお勧めします。きっと気持ちが楽になり、人付き合いのヒントが得られると思います。

 

「海と毒薬」遠藤周作(本)

太平洋戦争末期、アメリカ兵捕虜に対する生体解剖実験をめぐる話です。戦争によって思考を停止し、投げやりに生きる人々。権力闘争のために良心に蓋をする医師たち。治る見込みのない病のなか、何とか今日1日生きようともがく患者たち。

大変重い内容で、一度読んだだけでは消化しきれない小説でした。

 

「呪術廻戦展」芥見下々(展覧会)

呪術廻戦というジャンプの漫画についての展覧会で、原画展ではなく漫画作成の流れや背景アシスタントの紹介、ネームや下書きの展示、〇〇編での作者の考えていた事などが美術館のように展示されていました。

展開が結構大雑把な漫画だと思っていましたが作者は色々たくさん考えた末で描いているんだなと思いました。担当編集者やアシスタント等いろんな人の協力によって作品がつくられていてジャンプで連載するとは凄いことだと感じました。

 

箱根ラリック美術館」(美術館)

週末に箱根で美術館巡りをしました。三つ行ったなかで特におすすめなのが、箱根ラリック美術館です。フランスのガラス工芸家ラリックの作品が展示されていましたが、主に香水瓶や宝飾品、インテリアなどがありました。どれも精巧に彫刻がほどこされ、見とれてしまいました。また、セミやバッタなどの昆虫の装飾が意外でした。

 

「野球中継」

TVやネットで野球中継を観ますが、実況アナウンサーの話し方、語彙力、データや知識と感情豊かに話すバランスなど、プロの技はすごいなと思います。2時間以上、長い休憩もなく話し続け、聴こえづらいとか、噛んだり言い間違いもほとんどなく、どんなトレーニングをしているのか気になります。

 

「麻布台ヒルズ」

東京を旅行して日本橋や赤坂周辺をまわっていたのですが、麻布台ヒルズは雰囲気がとても良いと思いました。男女共に雑誌に載っているようなおしゃれで綺麗な人がたくさんおり、さらに笑顔で楽しそうな人が多かったです。

幸せなお金持ちの世界だと思いました。

六本木ヒルズ虎ノ門の方の商業ビル等にも行きましたが麻布台ヒルズが断トツで雰囲気が良かったので不思議でした。

V056「ガリオーネ(バンビーノ)」 アウレリオ・フィエロ 

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.まだうら若い美少年が、背伸びをして大人の仲間入りをしようと、夜の街で必死にもがいている様子を、大人たちの目線で、コミカルに歌い上げている曲です。メロディはもちろんですが、伴奏部分も、なかなかコミカルで、思わず笑顔になってしまいます。

 

2.アウレリオ・フィエロは、俳優ということもあり、声の美しさなどよりは、表現を大切にしているようで、とても好感の持てる歌い口になっています。それにもかかわらず、声のチェンジが自然にうまくできていて、高音域も無理なくよい声を使えています。チェンジの苦手な人はぜひ見習うべきでしょう。

楽譜としては、メロディの終わりはほとんどが2分音符や全音符ですが、アウレリオ・フィエロは、特に低音部分のフレーズ終わりを、短い音符で歌いきっています。それがまた、コミカルさを増していて、味のあるところです。ただ、作曲者の意図とは反するので、ずるい表現方法ともいえます。

 

3.まずは、楽譜どおりに歌ってみましょう。そのためには、他の歌手が歌っている音源を参考にした方が、よいかもしれません。特に、日本人のカンツォーネ歌手や、イタリア人でもオペラ歌手が歌っている音源があれば、楽譜に忠実に歌われていることが多いので、参考になるでしょう。

(♭Ξ)

 

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1.Moderato,un poco mosso(中くらい速さで、少し速く)とありますが、2/2拍子で歌詞の発音も多いので、実際に歌ってみるとかなり慌しく感じると思います。むしろテンポに乗れないと追いかけて歌っているように感じるくらいなので、演奏にあたってはしっかりと自身のテンポ感を確立しておくことが必要です。

 

2.フィエロは歌い出しからマルカート気味に歌っており、歌詞の発音にも弾みをつけているので音が途切れて(音が短く)聞こえるのですが、あえてそのような歌い方で表現をしているのでしょう。

表現は自由ですが、あまり音が途切れると息苦しく聞こえてしまうので、もう少しフレーズに流れがあってもいいように感じました。転調してからはフレーズ感が出てきて聞きやすくなったのは確かです。

 

3.フィエロのように弾みをつけて歌詞を発音すると、口が狭くなり母音がつぶれやすくなってしまうので、ナポリ語が不慣れな人は歌い方を真似しない方がいいかもしれません。

2/2拍子ですが、始めは1小節を4つ取りにしてゆっくりめのテンポで練習しましょう。歌い慣れてきたら、最終的に2つ取りに戻して歌うと旋律が流れやすくなります。(♯α)

 

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1.男子も、小学校の高学年から中学生くらいになると恋をしたくなるでしょう。そんな、まだあどけなさも残るような男の子に対して、恋するにはまだ早いんだから、恋人じゃなくてお母さんのもとで慰めてもらいなさいと歌われている曲です。

 

2.基本的に語るような声で歌われているのが特徴的ですし、そのため、比較的聞きやすい印象を受けます。表現からなのでしょうが、最後の方で鼻にかけすぎているような部分があり、その部分以降は鼻声の要素が目立ってしまっている印象を受けます。

 

3.歌い始めるよりも前に、音もリズムもつけずに文脈を活かして読む練習を繰り返し行うことが望ましいと思います。言葉のニュアンスを活かすことなく楽譜のリズムで歌うことに専念してしまうと、この曲のようなナポリターナの持つ叙情的なニュアンスが出なくなってしまうと思います。鼻にかけるような歌い方のマネはせず、自分の声で自然に語れる部分を最大限活用して歌うとよいでしょう。曲自体は歯切れのよい語りの要素もあった方がよいと思います。歌いすぎず語りに音とリズムがついたような状態で歌えると理想だと思います。(♭Я)

 

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1.民謡的な要素を残しているせいか、短調になったり長調になったりを繰り返して構成されているところは「帰れソレントへ」にもみられる傾向です。最後のコーダは短調で、今まで出てきていない音型で締めくくられます。

 

2.見慣れないイタリア語のように思われるかもしれませんが、ナポリの方言で書かれています。素朴な表現で子供を諭すように表現しています。

声もはったり大げさなフォルテなどせず、語るように諭すように歌っています。こぶしや、音の最後の処理で味を出しています。こぶしの回し方が民謡を彷彿とさせます。

 

3.おどけたような表現、かわいらしく揶揄するような表現で歌えるといいですね。細かい音符は言葉がしっかり回るようによく発音練習して言葉のリズムの楽しさを音に乗せられるように練習しましょう。(♯β)

 

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1.リズムがかわいらしいイントロです。フルートのトリルもアクセントになります。ちなみに、どの曲でもイントロと間奏をよく聞くことを勧めます。楽器の音をたくさんインプットすることが表現のヒントになります。また、イントロだけからどういう曲なのか想像するのも大切です。「何だか楽しそうだけど物悲しい」みたいな陳腐な言葉でもよいのです。想像するだけで、表現が変わってきます。

 

2.語尾を短く切る歌い方ですね。淡々と歌っているようですが、高い声から低い声まで、完全にコントロールできていて均一な音質です。とても音域の広い曲なので、それはとても難しいです。

この曲は、短調から、長調、また短調の切り替えが急なので、そのタイミングが難しいのです。普通の歌手なら、伴奏が先行し引きずられるように歌が遅れて転調についていくのですが、この曲では歌手が先導して変えていきます。ほんの一瞬の絶妙なタイミングをつかまえていくのです。何も変わっていないようなのに、変わって聞こえますよね。最後遅くなるところも、何事もなかったように、自然に変わるのが凄いです。

 

3.長調短調と変わるところをよく聞いて、真似してみてください。伴奏よりも先に変わらないといけません。自分の歌を録音して比較してみると、この歌手の凄さがよくわかると思います。(♭∴)

 

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1.「ガリオーネ」とはナポリ方言で少年、男の子という意味です。バンビーノは同じ意味の標準イタリア語です。セレナータ(意中の女性の窓辺で男性が歌う恋の歌)を歌う少年を「まだお子様のクセに」とからかって「ママのところに帰りな」とあしらう内容です。

 

2.フィエロの声は女声アルトのような妖艶な音色です(はじめ女性歌手が歌っているのかと思いました)。こちらの録音は若いころのもののようで、晩年の演奏はどっしりした男性らしい声です。やや鼻にかかった声でシャンソンのような軽やかさもあります。

 

3.アップテンポで言葉を捌くのが大変ですが、余裕綽々で歌うことが大前提の音楽です。よくしゃべる練習をした後で、軽さを意識してメロディに乗せてみましょう。(♯∂)

 

おすすめアーティスト・作品 No.398

「鳩の栖」長野まゆみ(本)

日常の出来事や風景を、言葉だけでイメージできるような語彙力、時間の流れと、描写と、登場人物の気持ち、行動などをバランスよく並べられ、考えられた構成、ストーリーにそっと入りこめるような世界作りが素晴らしいと思いました。

 

人質の朗読会小川洋子(本)

地球の裏側の国で反政府ゲリラに拉致されたバスツアーの観光客7人と添乗員、特殊部隊の隊員の9人による朗読会、という形で物語が進みます。3ヶ月以上も人質になっている間、退屈や紛らわすためにそれぞれが過去の出来事を朗読していきます。

過去というと、「過去は変えられないが、未来は変えられる」などどちらかと言うとネガティブな印象がありましたが、「自分の中にしまわれている過去。未来がどうあろうが決して損なわれない過去について語る」という言葉が新鮮でした。そして

誰もが持つ「今まで生きてきた証」がとても尊く感じられました。

 

「羊男のクリスマス」村上春樹佐々木マキ(本)

佐々木マキさんが描いた絵のイメージから、村上春樹さんが文章を書き、その文章に合わせて佐々木マキさんが絵をつけてできた本です。世界観の作り方が非常に参考になります。

 

「還暦から始まる」谷川浩二、山中信弥(本)

将棋の谷川名人とノーベル賞科学者の山中信弥氏の対談です。私も還暦を過ぎたので題名に惹かれて読んでみました。

偉業を成し遂げた2人なので、凡人と比べるべくもありませんが、大変力づけられる内容でした。

特に、研究にしろ将棋にしろ若い人に技術ではかなわないと認め、若い人に教えてもらうべきところは教えてもらい、自分が後世に残すべきところはしっかり伝えていく、という姿勢が素晴らしいと思いました。

 

「夜が明ける」西加奈子(本)

高校時代に出会い、家庭の問題や貧困、過重労働、パワハラ、セクハラなど現代社会の問題の真ん中で必死でもがいている2人の男性の生き方が描かれています。

読んでいる途中から見過ごせない何かが迫ってくるような気がしました。

特に「自己責任」という言葉は強く心に引っかかりました。

また、「ほんとうに助けてほしいときは助けを求めていいんだ」という言葉は救われたような気がしました。

 

「人を惹きつける技術」小池一夫(本)

子連れ狼」の原作者が、キャラクターについて書いた本です。キャラクター、漫画がヒットするには理由があり、常にアンテナを立てて、同じ物事でも好奇心を持って深掘りしていき、メモしていき、そこからアウトプットに繋げていくということは、どんな表現をしたいかと考えるときの参考になりました。

 

「つるかめ助産院」小川糸(本)

夫が急に蒸発し、どうしようもない気持ちで南の島へ行った主人公。思いがけず妊娠していることを知るが、そこで出会った助産師の女性や島の人々と生活していくうちに、自分と向き合い、これから生まれる赤ちゃんと生きる決意をします。

助産院が舞台なので、出産の場面が何度も出てくる中で、出産というのは自然の営みだと改めて感じました。

少子化対策が叫ばれていますが、自然で神秘的な側面のある出産を人間の知恵やお金でコントロールしようというのには無理があるような気がしました。

V055「愛の讃歌」 セリーヌ・ディオン

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.セリーヌ・ディオンも最愛の夫を、2016年に亡くしています。そのあたりも、今回の熱唱につながっているのでしょう。

曲の始まりが、第5音から順次進行で第3音に下がり、そのまま第3音を繰り返してから第5音の#を通過しながら第7音、高い第2音と進んで高い主音のロングトーンへ。それを模倣して、第6音から第4音へ順次下行して第4音を繰り返し、第6音、高い主音、高い第3音へ進んでから、高い第2音のロングトーンへと。このドラマティックな上行音型を、さらに発展させて、高い第3、4、5音から高い主音へもどり、第7、6音から高い第4へ跳躍し、高い第5、4音を飾りにして、高い第3音、高い主音、高い第4、3、2音のロングトーンに落ち着く、絶妙なメロディです。このような落ち着きのあるドラマティックな前半とは対照的に、細かい音符でまるで語りのように構成されているのが中間部分で、不安感さえ漂いそうな部分を歌ってから、冒頭のメロディにもどり、さらに歌い上げることになります。

 

2.セリーヌ・ディオンは、ピアフに比べると、少しクラシック風で、オールマイティな安定感が漂います。通常は、もっとクラシック風なイメージがありますが、ピアフに敬意を表してか、ピアフ寄りに歌っているようです。中間部のレシタティーボ風の部分は、さらに言葉を大切にしていますが、ベースにはクラシック風なオーソドックス感が、にじみ出ています。

 

3.まずは、セリーヌ・ディオンよりもさらに、クラシック風に歌うことが、発声も伸ばしてくれます。その後で、シャンソン風に取り組みたい人は、まねしてみましょう。 (♭Ξ)

 

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1.歌い出しから上行形の旋律で始まりますが、この曲の主題のような部分であり、この旋律で最初の印象を左右するため正確な音程が求められます。その直後には、下にも上にも音幅のある旋律が続きますが、声が階段のように途切れないよう極力レガートを意識して演奏したいです。

 

2.ディオン自身の声に合うように原曲よりも調を高くしたことで、声の伸びやかさがより引き立ったように思います。口腔内が開いていることや、フレーズ末尾の息が途切れず次のフレーズに向かっていることで、聞き手も一緒にブレスをしながら歌が進んでいくように感じられます。また声を張るところは張り、緩めるところは緩めるという緩急も絶妙なバランスで歌っていることもより聞き手を歌に惹き込みます。

 

3.出だしから上行形の旋律があるので、正確な音程の上に歌詞を乗せたいです。いきなり音程と歌詞を同時に歌うのではなく、音程の確認と歌詞のリズム読み(音程を外し、リズムに合わせて歌詞の発音をする)をそれぞれ別に行うと効率よく練習できます。また、始めの段階ではややゆっくりめのテンポでていねいに練習し、音程やリズム、歌詞の発音が馴染んできた後で元のテンポに戻すと曲全体が安定します。(♯α)

 

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1.シャンソンの代表作で、作詞はピアフによるものです。日本語版では越路吹雪などによって歌われていますが、複数あります。原語のフランス語を訳してみてみると、細かい部分で日本語版とは異なることがわかると思います。ぜひ、フランス語をよく調べて、原語の内容を理解して歌ってみてください。

 

2.ディオンのこの歌唱では、彼女の解釈、ことば、音楽性を活かした歌唱になっているように思います。彼女の持ち歌として充分通用するでしょう。彼女自身も難病に侵されているという中での経験やさまざまな要素が、この歌唱に表れているのかもしれません。

 

3.この曲はピアフの歌っているイメージを強く持っている方が多いのではないでしょうか。彼女の持つ表現力や音楽性はすさまじいものがあると思いますが、その一方で、発声面では少々「揺れ」が目立つのが気になるところです。この曲を歌おうとする人の中には、その「揺れ」までマネしようとする人がいるかもしれませんが、それは学ぶべきことではありません。この曲を自分自身がどう解釈してどう語りたいか。それを追求してまとめたものがディオンのように、自分の声と表現で演奏できるとよいですね。

中間部に関しては特にセリフのように語る要素、ドラマティックな要素が見えないと非常につまらない歌に聞こえてしまうと思います。語りで進めていくことを大切にしてみましょう。(♭Я)

 

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1.ABAの構成です。Bの部分は語りのように歌われます。「空が落ちてきても、地面が割れても、どんなことがあっても私はあなたを愛する。あなたが望むなら髪をブロンドにも染めるし、祖国も捨てる」と深い愛を歌った曲です。

 

2.圧巻のパフォーマンス、素晴らしい復帰の舞台だったと思います。フランス語話者とのことで、とても説得力のある語りの素晴らしい演奏だと思いました。(私がそう評価するのもおこがましいくらいの。)オペラの発声と共通する面も多いのですが、あきらかに違うのは、高音で声が開いている、girareしていないことです。そのため音が広がってしまいマイクなしで広い会場をオーケストラを突き抜けて通る声というよりも、パワフルさを感じさせる迫力のある声かと思います。

 

3.フランス語をしっかり発音練習し、ディオンのドラマティックな語りを、表現力をもって読めるようになることが近道かと思います。最後に驚くほどのロングトーンが聞かれますが、横隔膜をしっかり広げてそれを維持する体感部の筋肉が必要かと思われます。(♯β)

 

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1.雄大な曲です。言わずと知れた、シャンソンのスタンダードナンバー。苦しいほどの一途な愛。あなたのためなら地の果てまでも。歌詞の情熱的なメッセージが、音域の広い旋律とともに心に突き刺さります。

 

2.パリオリンピック開会式での歌唱。難病と闘っているディオンの久しぶりの舞台とのことです。エッフェル塔で歌っているそうです。感動的な歌唱で、無理がありません。感情的な表現は見当たりません。むしろ、すべての声が正しく使われているという印象を受けました。正しく響き、正しく身体を使っています。このような「正しい」歌い方がこのように深い感動を呼ぶのだ、ということが意外でした。

 

3.せっかくなのでフランス語で練習しましょう。ディオンになった気持ちで、オリンピックで歌っている気持ちになりましょう。思い込みも大切です。

いつもスタジオでレッスンをしていると、音量というより、空間の使い方が「狭く」「みみっちく」なってしまいます。イメージを大きく持つ練習にいいでしょう。そしてフルヴォイスでフランス語で冒頭を熱唱してみてください。うまくいかなくてもいいのです。自分の理想に近づける努力を続けていきましょう。(♭∴)

 

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1.「あなたの燃える手で私を抱きしめて」という日本語の歌詞がよく知られているラブソングですが、原詩の内容は、どんなに望んでも戻ることのない故人への愛を高らかに歌ったものです。

 

2.ディオンの歌唱は大変力強く、宇宙を感じさせるような壮大さがあります。力いっぱい歌っているにもかかわらず余計なことは一切していないため、聞いていて心地よいものとなっています。

 

3.徹頭徹尾、熱いものを絶やさないように意識しましょう。そのために重要なのは、休符で休まないことです。声を出している間にいろいろ表現するのは当然のことですが、休符の間に想いやエネルギーの流れが切れないように意識しましょう。(♯∂)

おすすめアーティスト・作品 No.397

「ショア」(映画)

「ショア」はドキュメンタリー映画です。ナチスドイツによるユダヤ人大量虐殺、ホロコーストの生き残りをインタビューした映画です。10時間近くあります。ほぼ未編修で、つっかかっても、言葉が出てこなくても、そのままフィルムを回しています。(ホロコースト、という言葉は本来「(避けることのできない、必要な)いけにえ」という意味なので、正式にはヘブライ語で「大惨事」という意味の「ショア」というらしいです。)

絶滅収容所を生き残ったユダヤ人の床屋が語るシーンがあります。有名で衝撃的なシーンです。(ちなみに絶滅収容所にはユダヤ人の床屋さんが必ずいたそうです。殺す前に収容所内で髪の毛を切って、さまざまな用途に使うのですが、ガス室に入れるまで怪しまれないために、ユダヤ人を配置したそうです。それゆえ、床屋など、特殊技能を持ったユダヤ人は生き残っています。)

戦争が終わって何十年も経って、インタビューを受けた床屋は「友人の妻と子供が入ってきたとき、」と言ってから無言に。そして、何も語ることはありませんでした。

本当にひどいトラウマは言葉にできない、と聞いたことがあります。このインタビューを受けた彼は本当は「友人の」ではなく、「自分の」妻と子供の髪を切ったのではないのか。

戦争は悲惨です。先輩兵士の死体を食べて生き残った話。泣き声がうるさいからとわが子を殺さなければいけなかった話。

二度の世界大戦で「大きいことは、強いことはよい」ということからやっと脱却したかと思いきや、今度は経済競争であくなき欲望を満たすために戦い続けた人類。̬やっと今頃になって、やっと人類は、もう競争は、拡大は無意味であると悟り始めたのではないでしょうか。

これからやっと文化の時代が始まる、またそうあらねばならないのではないでしょうか。

 

「Tomorrow」 Sydnie Christmas(ミュージカル)

Britain's Got Talentの優勝者のSydnie Christmasがとても素敵だったので、お時間ある時に是非流してみて下さい!

 

「マネー シーズン2」(appleTVドラマ)

以前より、俳優さんの衣装が好きで視聴していました。シーズ2になり、自分の見方も変わったようで、俳優さんの豊かな表現力、特に顔の表情と声のトーンが、それぞれ個性的でとても学びになります。

 

「スーパーモデル」(appleTVドラマ)

スーパーモデルのインタビューで、モデルになったきっかけなどを思い出して語っているのを観て、魅力や才能がある人は、誰かに紹介されるということなど、仕事が人からの紹介や推薦で運ばれてくることを改めて知りました。

 

「和議」(YouTube

江戸時代の人たちの歩き方。なんば。江戸時代の日本人は無駄な体の筋肉をつかわずに、省エネで歩いていた。飛脚は江戸から京都まで3日で移動した。その時代の履物は草履。西洋から靴が入ってきて、かかとからの着地となり、日本人はかつての歩き方を失った。右足が出たら左腕が出るという、上半身をねじる動きに変わった。狂言の歩き方(腕はふらない、すり足)から、本来の歩き方を取り戻す。家では草履で歩いている。

 

「うつくしい人」西加奈子(本)

いつも他人の目を気にしている主人公は会社でもうまくいかず、やめてしまい、思いつきで離島のホテルに数日間滞在することにしました。

そこで出会ったドイツ人旅行者とバーテンダーと過ごす時間が心地良くなり、次第に自分を取り戻していきます。

そして小さい頃からの姉に対する思い込みが自分の感情を歪んだものにしていたことに気づき、姉と素直に向き合おうと決心します。

社会で生きている以上、多かれ少なかれ人の目を気にせざるを得ないので、人の目を気にせず自分を出せる自分だけの世界を持つことが大事なのでは、と思いました。

 

「無名」澤木耕太郎(本)

脳溢血で倒れた筆者の父を看取るまでの日々を描いたノンフィクションです。

幼い頃からの父と自分の関係を思い出しながら、父の生き方や心情、自分との関係に思いを馳せます。

父が読んだ俳句集を出版しようと思いたち、父の俳句と向き合ううちに更に無名であった父の人生について考察します。

世の中のほとんどの人は無名ですが、一人ひとりに豊かな人生があるものだと感じました。そしてここまで深く見つめてくれる人がいることは幸せなことだと思いました。

 

「開業医の正体」松永正訓(本)

大学病院や一般病院を経て、小児科を開業した著者が開業の方法、収入、良い医師、困った患者など、なかなか知ることが出来ないことが書かれています。

医師でもその専門と言えるまでに10年くらいかかる、というのは印象的でどの職業でも常に勉強しなければならないと感じました。

また、医師と患者、その家族とのコミュニケーションが1番大事だという言葉が心に残りましたが、進んでコミュニケーションをとってくれるお医者さんに出会うのは難しい気もしました。

 

「ミシンと金魚」永井みみ(本)

主人公は認知症で介護を受けている老女。

母は自分を産んですぐ亡くなり、夫は子供を置いて蒸発、その上子供に先立たれ幸せとも思えない人生を歩んで来ました。この認知症の主人公の視点で物語が進みます。

壮絶な人生を歩んできたのに、読んでいてあまり悲壮感を感じず、誰かを恨むわけでもなく、自分が出来ることをたんたんとやる主人公。認知症の人の思いが伝わってくる小説でした。

 

「働くということ 能力主義を超えて」勅使川原真衣(本)

能力によって選ばれた人だけが、高い地位と収入を得る、という選ばれた人とそうでない人双方にプレッシャーを与える能力主義から脱却し、様々な個性や得手不得手のある人々が互いに補いあいながら組織の中で生きていくことを提案しています。

そして今リスキリングがブームになっていますが、無理に新しいことを学ばなくても自分が今持っている力を生かすことが大事とも言っています。

私も収入や地位、生産性がある、ないだけで判断する世の中は生きていて楽しくないなぁ、と思います。ただ、実際に会社の中で実践していくのはかなり大変なのでは、とも思いました。

 

「はじめての目標達成ノート」(本)

原田メソッドの入門ノートです。目標設定や、本当にやりたいことの関連付けが結びつかず、これだから進む方向があやふやで、努力が闇雲になるのだと、思いました。いかに自分が、生活に流されて、考える力を使わず思考停止していたか思い知らされました。

 

「京都駅」

京都駅には多くの人がおり、乗り換え、食事、お土産物をみる、買う人それぞれの動線が考えられており、たくさんの人が行き来してもストレスにならないようになっていました。

 

V054「アモーレ・スクーザミ」 ジミー・フォンタナ/トニー・ダララ

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.いきなり高い主音への解決で始まる、恋の歌です。トニー・ダララは、何気なく曲が始まっていますが、参考曲では、大々的に曲が始まって、いかにもサビですという趣を、前面に出しています。

ジミー・フォンタナは、ややガツンと始まりますが、すぐにトニー・ダララよりもさらに優しく、甘い声で歌い始めます。

低い第5音まで使って、サビ以外の部分は切なく歌われていきますが、途中からは3連符もまじえて、さらに切ない心が伝えられます。そして後半は半音高い調へ転調して、さらに盛り上がる形になっています。

歌詞の内容は、つい女性の心情かと思ってしまいますが、強いイタリア人女性に対するイタリア人男性なら、ありがちな歌詞かとも思えます。

 

2.トニー・ダララは、息混じりの声も使うためか、少し艶の少な目の声ですが、うまく曲を歌いあげています。ただ、後半の転調した部分の音程が、上がりきっていないのは、少し残念です。

ジミー・フォンタナは、息混じりがメインのソフトな中高音で、曲全体を歌っていきます。あくまでもナチュラルな声が好みのようで、せっかく低音域が強そうなのに、口の奥を開けて、声の低さや太さを強調することもなく、しぜんな発音の低音で歌っていて、中間部でほんの少しだけ、張りのある低音域をのぞかせています。低音域の強い美川憲一やピーターのように、もう少し低音域を強調すれば、さらに人気は高くなったのではないかと思ってしまいます。

 

3.低い第5音から高い高い第3音までと広い音域のうえに、後半は転調してさらに半音高くなるので、かなり広い音域が要求される曲です。うまくキーを考えて、取り組みましょう。低音域が強い方は、ジミー・フォンタナのキーで、しっかり低音域を強調する歌い方も、試してみましょう。(♭Ξ)

 

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1.ゆったりめのテンポなのでイタリア語の歌詞も歌いやすく、音の進行もシンプルなのでカンツォーネが初めての人でも入りやすい曲だと思います。この曲は出だしからこの曲の主題となるフレーズで始まり、さらに曲名であるamore scusamiと歌います。曲始めの印象がとても重要になるので、躊躇することなく明瞭な声を乗せてしっかりと歌い出してください。

 

2.フォンタナは、美声なのはもちろん息のコントロールにゆとりがあるのでとても聞き心地のよい歌唱です。また表現も豊かなので聞いているとよい意味で余白が感じられます。それが聞き手の想像を膨らませるのだと思います。

ダララは、フォンタナよりハリのある若い声という印象を受けました。歌い方に関してはscusamiなどのフレーズ末尾でポルタメント気味に歌うのが特徴的で、意図的に行った表現のひとつだと思いますが個人的にはあまり好みません。また曲終わりのche amo teでは、cheやteを強調し過ぎている感があり、発音が跳ねているのがやや子供っぽい感じに聞こえてしまいました。

 

3.4/4拍子で小節内に8分音符が多いですが、楽譜を見ながらフォンタナの歌唱を聞くと8分音符の長さが均等ではないことに気づくと思います。歌詞のアクセントのままに発音すると、自ずと音符の伸び縮みが生じるものです(1小節内が4拍なのは変わりません)。それが結果的にまるでしゃべっているかのように歌詞が聞こえてくるのです。楽譜で曲の大枠を確認しつつも、フォンタナの歌詞の発音や旋律の歌い方をそのまま模倣してみるとイタリア語の息の運び方を感じられてとても勉強になると思います。一つ発音に関しての注意点は、scusamiをs"u"cusamiのように子音Sと子音Cの間に母音ウを入れて発音しないように気をつけてください。(♯α)

 

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1.別れに際して、まだ相手を愛している気持ちなどを歌っている曲です。いかにもイタリア人の感覚らしい恋愛・失恋を語っているように感じます。

 

  1. フォンタナは、穏やかに甘く語るような歌い方が印象的です。ですが、穏やかさや甘さの表現に寄りすぎて、声の揺れ(ちりめんヴィブラート状態)が出てしまっている部分は、好ましいことではありません。

ダララは、語るように歌っている部分は、ある意味では参考になるかもしれません。

Che amo te の発音の仕方や歌い方が、やや癖があるように感じます。ところどころ、文脈よりも音を優先して見得を切るような歌い方をしている印象を受けます。最後のロングトーンでeを3回ほど言い直すように歌っているのが印象的で、賛否両論あるかもしれませんが、声が浮いたり流れが止まったりということの抑制には効果があると思います。

 

3.歌詞の内容ひとつとっても、歌手の解釈や歌い方によって非常に差が出るものだと思います。穏やかに歌おうとする人もいれば、熱く歌おうとする人もいます。歌う人それぞれが、どのように内容を解釈しどのように語りたいかでアレンジは変わりますし、人の感情は千差万別ですから、十人十色の歌い方があっていいのではないかと思います。ただし、自分の楽器と合わない歌い方をすると演奏効果が充分に発揮できないことにつながってしまいますから、その点は気をつけましょう。もし、穏やかに歌いたいのであっても、息が漏れすぎてロングトーンができない(揺れてしまう、息が持たない)というようなことがある場合は注意が必要です。穏やかであっても、ある程度の楽器のなりは保ち、自在に表現できるようになるとよいでしょう。

歌詞を語る要素が土台にありつつ、そこを崩さずに歌えると効果的になるでしょう。あくまでも日本語風にならず、イタリア語のアクセントや文脈を活かしてそれを土台にしましょう。日本語風に、要するにカタカナが飛び交って見えるような歌い方になってしまうと、間が抜けた曲に聞こえてしまうと思います。歌い上げる部分は歌い上げてもいいと思いますが、歌詞の内容とリンクした表現で違和感なく歌えるとよいですね。(♭Я)

 

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  1. a a' b b' a a コーダで構成でされています。

 

  1. フォンタナは、細かいこぶしをとてもたくさん入れて歌っています。そのためは、声は軽めに喉でぎゅっと押さないように軽く歌っているのが特徴です。発音を軽やかにかつ明瞭にしています。しかし、口の中の筋肉も弛緩しているので音程が不明瞭なときがあります。

ロングトーンは、最後の音まで拍を感じ、意識を保ち続けて歌っています。

ダララは、伸びやかなロングトーンが美しく、表現としての泣きの声を随所に入れているのが特徴的です。フレーズの最後をポルタメントでずり下げて、涙を流し自分の非を許してもらいたい気持ちで歌っているかのようです。

サビのaメロとbメロの明暗のつけかたがはっきりしており、また、高音のハリが美しいです。

 

3.フォンタナは、言葉のはじめを、あえて話し声のトーンで発音してから歌にする表現を用いています。そうすることでより語り掛け、聞いているものに訴えかける効果を発揮しています。こぶしを入れるためには軽く歌うことをお勧めします。ロングトーンを歌うには拍感を失わないように気をつけましょう。

ダララは、思い切り息を吐くイメージで長いフレーズを歌いあげてみましょう。フレーズの始まりだけではなく、フレーズのゴールをめざして歌い始めるといいと思います。棒歌いにならないように、この歌手のフレーズの最後のメロディのおろし方を学んでみるといいでしょう。(♯β)

 

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1.アレンジの違いについてです。ダララのアレンジにあったような急なリズムの変更がなく、大きい拍の裏に一貫して3つ割が入ります。またストリングスの響きが素敵です。

フォンタナのアレンジは落ち着いて聞け、ダララの方は個性的だといえるでしょう。

ダララのは、遅いテンポの曲です。そのため、構成は単純で、サビ→Aメロ→サビとなります。サビに入るときのコーラスの粘り方がよいです。インテンポでないことに注目してください。面白いのはアレンジのリズムパターンです。サビの部分は2つ割、Aメロは3つ割が基本リズムとなります。なお、こういう遅いテンポの曲は、声、フレーズやリズム感など、あらゆる点でごまかしがきかず、思ったより難しいです。

 

2.フォンタナのほうが音域が低いこともあり、低い声がよく響きます。また、ダララより自由にリズムを伸ばし縮みさせるようです。転調後の「アモーレ・スクーザミ」の伸びが特に素晴らしいと思いました。

ダララの母音の伸びが素晴らしいです。また音域によって声質が変わらず、統一ができています。高い音が高く聞こえないのは、息が深いから。低い声が低く聞こえないのは、息が流れているから。また、ヴィブラートの使い方がうまいです。いつもかかっているわけではなく、かかるときは、感情とマッチしています。

この歌手の母音の伸びを身につけてほしいと思います。歌い出し近く2箇所で顕著なので、よく聞いてまねしてみてください。1つめは、歌い出してすぐ、scusa miの母音の伸び。2つめは、そのすぐ後の、io soffriroの跳躍です。またアレンジのリズムを叩いてみてください。2つ割が3つ割になるところ、こんがらずについていけますか。ヴォーカリストはリズム感がなければいけません。伴奏に置いて行かれるととてもかっこ悪いのでこれも練習してみてください。

 

3.テンポも遅いし音域も高くないので「簡単な曲」だと思うかもしれません。そういう方にはぜひこの曲を練習して、録音して、自分の声をよく聞いていただきたいのです。「普段話す高さ」で歌うことになりますが中音域は一番難しいのです。薄っぺらく聞こえるでしょう。高音でシャウトするとそれっぽく聞こえる人でも、苦戦するでしょう。後で聞きなおすと落ち込むと思います。いったん落ち込み、そこからまた成長していってください。(♭∴)

 

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1.タイトルは「愛しい人よ、許してください」といった意味。戯れの恋だったはずなのに、別れてから後悔に苛まれ許しを乞うという内容。とはいえ、音楽に深刻な要素はなく、甘くリラックスしたスローナンバーとなっています。

 

2.ダララは、シルキーな発声と情感たっぷりの語り口が特徴的です。突くような激しい表現もあるものの、柔軟な声なので耳当たりが損なわれません。

フォンタナは、肩の力の抜けた歌唱が身上。甘く囁くような歌い方で、ところどころ母音を短く処理することよってまるで話し言葉のように聞かせています。「許してください」といいながらも、まるで許されることが揺るぎない前提であるかのように自信たっぷりです。悪い男ですね。他の歌手ならばきっと声を張り上げて歌うであろう箇所を、フォンタナはそんな必要はないとばかりにあっさりと通り過ぎていきます。それでいてさりげない装飾を聞かせたり…やっぱり悪い男の歌です。

 

3.何度も同じ言葉、同じフレーズが出てきます。どれだけ違うふうに表現できるか是非研究してみてください。歌でうまく変化をつけられないと感じたら、先にせりふとしてさまざまなパターンで練習(小さく言う、大きく言う、目の前の人に言う、遠くの人に呼び掛ける、耳元で囁く、呻くように言う等)してみるといいでしょう。

また、許しを乞う内容とはいうものの、暗く歌うとこの曲らしさが出ないと思います。あくまでもカラッと風通しよく歌ってみましょう。(♯∂)

おすすめアーティスト・作品 No.396

運命の力ヴェルディ(オペラ)

オペラの常ですが、非常にドロドロしています。「運命」に翻弄される恋人の数奇な人生を描きます。

主人公はアルヴァーロという没落貴族。彼は牢獄で生まれました。両親はもともと王家でしたが、侵略され、謀反を企て、捕らえられたのです。のち両親は殺されますが本人は生き延びます。出自がばれなかったから何とか生き延びたようです。

彼と愛し合う恋人のレオノーラ。父はカストラーヴァ侯爵です。アルヴァーロが王家の生まれと信じない侯爵は、身分が釣り合わないからと、結婚に反対しています。アルヴァーロとレオノーラは駆け落ちする約束をします。父の手前なかなか決心がつかないレオノーラですが、とうとう駆け落ちを決心した深夜事件が起きます。

示し合わせた通り、深夜侯爵家に忍び込んだアルヴァーロ。警戒していた侯爵の警備兵に見つかってしまいます。お互いに鉄砲も構えた険悪な雰囲気ですが、口論の後、アルヴァーロは降伏します。そこまではよかったのですが、なんと手放した鉄砲が床に落ちて暴発し侯爵に命中し、侯爵は死んでしまいます。死の直前にかっと目を見開いた彼は娘をにらみ「お前はもはや娘ではない。呪われろ!」と叫んで死にます。

紆余曲折あって、アルヴァーロもレオノーラも出家するのですが、まさかの結末です。ぜひ見てみてください。

 

「エンド・オブ・ライフ」佐々涼子(本)

末期のすい臓ガンであることがわかった訪問看護師の男性をはじめとして、人生の終わりに直面した人たちと家族の在宅による終末医療を描いています。

死にゆく人はただ世話をされるだけ、助けてもらうだけの無力な存在ではなく、彼らが教えてくれることもたくさんある、という言葉が印象的でした。

 

対岸の彼女角田光代(本)

大学の同窓生だが、境遇が全く違う2人の女性が主人公。1人は最近仕事を始めた3歳の女の子がいる主婦。もう1人はその主婦が勤め始めた小さな会社の独身の社長。

主婦の視点からの現在と社長の視点からの過去が交互にえがかれています。

2人とも中高生の頃から友だち関係が上手くいかず、今も生きづらさを抱えています。

ママ友との付き合いや、夫や義母の嫌味に

辟易したり、他方社員たちから総スカンをくらい会社をたたむことを余儀なくされたり。

それでも「ひとが歳を重ねるのは、人と出会うため」と前に進もうとする姿に勇気をもらいました。

 

「小説8050」林真理子(本)

中学生のときのいじめが原因で7年間引きこもっていた息子と両親、姉の家族の物語。歯科医の父は息子とそして自分と向き合わなければいけないと気づき、いじめの相手を訴える裁判をおこします。

同じ家族でも立場によって感じ方が違うということを痛感し、また夫と妻がいくら話してもお互い相容れないところはとても興味深かったです。

 

サッシャさん」( ジオDJ、ナレーター)

F1の実況を聴くのですが、知識の豊富さと、解説者とのやりとり、聴いている人への語りかけ、同時通訳など、頭を使いながらも機械的ではなく、それでいて聞き取りやすく、テンポもいい話し方だなと思いました。与えられた原稿ではなく、自分の持っている知識や想像力、語彙力をいかして、人に伝えることができることの素晴らしさを感じました。

V053「愛のめざめ」 ウィルマ・ゴイク

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.驚いてしまうのは、参考曲伊東ゆかりとのアレンジの違いです。最初に聞いたときは、とても同じ曲想の歌とは思えず、何度も聞き返してしまいました。当時のイタリア人と、日本人の情緒感の違いなのでしょう。

 

2.ウィルマ・ゴイクは、なかなかパンチのある高音域を持っているのに、中低音域で、息混じりの声を多用しているのは、時代の流れか、曲想のためなのか、もったいない気がします。立派な声で歌っている曲も有りますが、ヒットした曲はどれも、中低音のウィスパーヴォイス的な声と、高音域の張りのある声を少しだけ出した構成になっていて、やはり必要とされる声を使うようになっていったようです。

 

3.まずは、息混じりの声を使わずに、きれいな声で歌えるように練習していきましょう。(♭Ξ)

 

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1.この曲は4/4拍子ですが、1拍目に休符がある小節が多く、3連符の拍頭にタイがかかっているフレーズを中心に曲が構成されています。逆に中間部分になると、1拍目にも音が入って3連符やタイが全くないフレーズが現れることで、より積極性のあるフレーズになり、聞き手にもさっきまでとは少し違う雰囲気を感じさせます。演奏の際には歌詞の内容はもちろん、その旋律の違いにも注目すると表現の幅が広がると思います。

 

  1. ウィルマ・ゴイクの声は、癖がなく伸びやかで、歌い方も余計な力みがなくとても聞きやすい歌唱だと感じました。声を抑えるフレーズ・声を張るフレーズのメリハリもダイナミックで、それが歌詞の表現をより引き立たせていると思います。ただ声を抑えるフレーズでは、フレーズ末尾で歌詞の発音が聞き取りにくいと感じる箇所がありました。イタリア語に限らずですが、表現は歌詞の発音が聞き取れる範囲でするものと捉えた方がいいと個人的には思います。

 

  1. ウィルマ・ゴイクの歌唱ではフレーズ末尾の音がどれも短く切れていましたが、それはウィルマ・ゴイクの歌い方なので、自身の練習では楽譜にあるように末尾の音を伸ばして歌ってください。拍頭にタイがあったり、ひとつの音符で2音節分の発音をする箇所では発音が遅れやすい傾向があります。まずは音程をつけずに、リズム読みで発音を入れるタイミングを練習しておくことをお勧めします。

(♯α)

 

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1.タイトルを直訳すると「あなたを愛していることが分かった」となります。「愛している」と一言にいっても、この曲の内容としては、どうしようもないくらい「あなた」を愛しすぎてしまっているように感じますね。

 

2.ウィルマ・ゴイクの歌い方は、語るように歌っているように聞こえ、声を張る部分も囁く部分も使い分けており、表現に長けているように聞こえます。また、声を張る部分も、声を無理に出しているわけではなく、しっかり楽器を活かしているように聞こえます。

 

3.この曲にはいろいろな内容が含まれています。基本は「あなたを愛している」なのですが、愛しすぎてしまっているが故に不安になってしまっている部分や、それを理解しつつ訴えるような部分などがありますね。それらを同じ色で歌ってしまってはつまらなくなってしまいますので、それぞれの内容に即した語り方を研究してみるといいでしょう。訴えかける部分は声を張ってよいと思います。ただし乱雑になりすぎないように気をつけましょう。また、切々と語る部分は日本人よろしく内向的に消極的にするのではなく、外に向かって切々と語るようにしてみるとよいでしょう。(♭Я)

 

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  1. aabba間baの構成でできています。

 

  1. 軽く浅めの明るい声です。軽い囁きに近い声と、しっかり張った声でコントラストをつけて表現しています。軽く声を出しているのでこぶしもまわりやすく、表現のアクセントになっています。

 

  1. 休符の度におやすみしてしまうとフレーズがぶつ切りになってしまうので、フレーズを長く捉え、休符であっても、気持ちは繋がっているようにフレージングしてみましょう。低音はそんなに頑張らずにだし、高音では、しっかりお腹を使って声を張って歌いましょう。頭蓋骨やおでこや頬骨に声を当てるイメージで歌うと、いい響きが得られると思います。(♯β)

 

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1.けだるいテンポでスローバラードのようですが、意外にリズムが鋭く入ってきます。リズムパターンが面白いです。歌の始まりと、最後だけ、唐突にリズムがなくなって、インパクトがあります。フレーズが長く、構造がわかりにくいです。どこがサビなのかよく聞いて考えてみてください。音域も狭いように聞こえるかもしれませんが意外に広く、歌いづらい曲と言えると思います。

 

2.自然に歌っています。この、自然に、というのが難しいのです。どうしても力んでしまったり、喉にかかってしまいます。歌い出しは自然にヴィブラートがかかっていますが、そのあとはほとんどなく、そのために歌声に透明感があります。

 

3.歌い出しHo capito che ti amoをフレーズコピーしてみましょう。大きな声を出す必要はありません。息をよく聞いて、ヴィブラートの感覚を身につけましょう。出てくるたびに少しずつ変わっています。その微妙な差をよく聞いて、再現できるようにしてみてください。この曲はリズム練習にも使えます。苦手意識がある人は、伴奏をよく聞いて、手拍子で構わないので真似してみてください。(♭∴)

 

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1.自分の胸の内に芽生えた愛の大きさに気づく様子を繊細に描いた歌。音楽はブルース調ですが歌はポップで、そのバランスが洒落ていると思います。エレキギターが切ない音で奏でる間奏が印象的です。

 

2.ウィルマ・ゴイクの語り口はキレがよく、言葉がパラパラと小気味よくはじけていくさまが気持ちのいい歌い方です。だからといって息の流れがプツプツ切れているわけではありません。ひとつのラインの上を迷いなく歩いていくような音運びです。発声は軽めで喋るのと同じように歌っているように感じます。

 

3.弱拍から歌い始めるフレーズばかりでできている歌です。歌い始めは重くせず、どこを目掛けて声を運んでいくのかを整理してから歌ってみましょう。そのためには歌詞を何度もリズム読み(音程は無視して、しかし音符の長さは守って歌詞を音読する練習)をしてみて下さい。(♯∂)

おすすめアーティスト・作品 No.395

即興曲第三番」フォーレ(クラシックピアノ)

トレーナーとのレッスンでのお話の中で、大学の頃にどの作曲家の曲を演奏したかという話になり、レッスンの後で大学時代に弾いた曲の楽譜をみて、弾いてみたのですが、記憶が戻って来ず、初見で弾く状態でしたので、音源を聴いてみようと思います。

 

「魂のリズム Count in」(映画)

ドラマー達のドキュメント映画。ハードロック、パンク、ジャズ、フュージョンなど様々な分野のドラマーが、自分の幼いころや現在の活動について語る。台所のあらゆる鍋を叩いた子供時代が語られ、そんな経験のない自分は、驚きと憧れを感じる。この映画を観ていると、音楽はまず、リズムだ、と思えるし、こうした子供時代から、リズムを生活の中で作り出しているって、ミュージシャンの基本だなぁと思う。叩くことが好きと、はっきり言うその姿が眩しい。そんなドラマーたちにも失業の危機があった。シンセサイザーがドラムのビートを記憶し、ドラムなしでもバンドが組める、CDが作れるようになった時代だ。しかし、今でもドラマーはいる。その理由を女性ドラマーはこう語る。「だって、人間だもの。人間の作った音を聞きたいわ」。今は音楽の世界にもAIが進出してきて、そのうちに、歌声を記憶させれば、その声で音源が簡単に作れるようになるかもしれない。それは、歌い手の失業の危機だ。でも、完璧な歌でなくても感動することだってある、その予測不能のところが、人間の作る音楽なのだろう。しかし、AIがどんどん進化してAIの社会をつくり、人間と共存するようになると、「AIだもの。AIの作った音を聞きたいわ」なんてことになるのだろうか。

 

「処方箋のないクリニック」仙川環(本)

有名病院の離れにある総合内科でさまざまな相談にのるちょっと変わった医師と看護師の話です。

サプリ信者、遺伝子検査、民間療法など現代医学だけでは解決出来ない問題をすっきりと解決していくので、読んでいても気持ちがいいです。頑固な患者の気持ちを解きほぐすのは、医学的な知識よりも相手の気持ちを汲み取り共感する力だと感じました。

 

「神童」谷崎潤一郎(本)

小学校の頃から成績優秀で、漢詩哲学書などを読みこなし、神童と呼ばれていた少年。中学入学と同時に奉公に出され、勉強以外の世の中のことを知り、様々な欲望を抱く。そして自分のこれまでの生き方に疑問を感じる。小説はそこまでで、少年が将来どうなったかはわからない。神童がどうなるかと楽しみに読み進んだので、途中の挫折は少しがっかりしましたが、わき目もふらずに学問の道をまっしぐらに進むより、より深みのある人間になるのではと感じました。

 

「エンジェルフライト」佐々涼子(本)

海外で亡くなった方のご遺体を故国へ送り届ける国際霊柩送還士の話です。

単にご遺体を送り届けるのではなく、遺族の心情を汲み取り、出来るだけ生前の顔に戻すという強い信念のもと、昼夜を問わず働いています。

プロフェッショナルたちの感動の物語だが、小さな会社の社長以下数人の社員による献身的な働き無しでは成り立たない仕事であり、持続性という点ではどうなのかという疑問も感じました。

 

「つまらない住宅地のすべての家」津村記久子(本)

ある住宅地の10件の家の住人をめぐる話です。どの家にも様々な事情があったり、闇があったりします。ある日、刑務所を脱走した女性受刑者がこの住宅地に向かっているというニュースが入り、住人たちは少しずつ関わりあうようになります。

その少しの関係から各家庭の状況が少しずつ良い方向に変化していき、犯罪をおこそうと思っていた若者は思いとどまったりします。決しておせっかいをやくわけではないのに、各人が前とは違う方向に動き出すところがおもしろく、気持ちの良い読後感でした。

V052「ナポリは恋人」 ジリオラ・チンクェッティ

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.ご当地ソングのはしりでしょうか、イタリアの都市ナポリを題材にした曲です。歌のメロディは、いきなり主音の連続で、とても安心感のある始まりです。無駄に元気をあおったりするわけではなく、じわじわと元気の湧いてくる曲です。伴奏は小気味よいテンポで、ややあおり気味に進みますが、メロディは、どのフレーズも終わりはロングトーンが多めで、むしろ落ち着いた雰囲気さえ、かもし出しています。主音の連続で始まったメロディは、少しずつ下行していくため、さらに落ち着いた印象をあたえます。そのあとに続く3回の分散和音のメロディも、大きく変化せず、少しずつ音を変えているので、バタバタした様子にもならず、適度なインパクトで、再びの主音の連続に、うまくつながっていきます。

 

2.ジリオラ・チンクェッティは、イタリア人らしく、子音と母音のバランスがよく、楽に声が出ているので、日本人にも好まれたのでしょう。

 

3.キーもそれほど高くないので、女性ならこのまま取り組めるかもしれません。それでも、ジリオラ・チンクェッティのようには、楽にはいかないかもしれません。特に、子音も母音もバランスよく前に出すのは、キーを下げないと難しいかもしれません。うまくチャレンジしてみましょう。男性は、ハ長調辺りに移調して、取り組んでみましょう。 (♭Ξ)

 

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1.イタリアのカンツォーネというか、イタリアンポップスらしい明るく伸びやかな曲です。イタリア語のアクセントは伸びます。その特徴を活かした歌という印象です。

 

2.聞いた録音だと、声が若々しいという印象を受けました。ジリオラ・チンクエッティは明るい母音と伸びやかな長母音。そしてとても明瞭なイタリア語で歌う歌手という印象です。昔からイタリアの声を形容する「Recitar cantando」(語るように歌う)をそのままやっているような印象。

 

3.イタリアの歌手達の声のよさのポイントの一つは、イタリア語の文法がカギになっています。イタリア語の言葉は語尾の母音の変化で決まります。誰に言っているのか、何人にいっているのか。語尾の変化でわかることがとても多い。つまり、語尾の母音がしっかりと発語できて飛ばないと成立しないです。その意味で、歌うということよりもしゃべるということに意識をもって歌っていくと声が発達していきます。しゃべるのも日本語のようにではなくイタリア人がしゃべっているのをまねしてハッキリとしゃべっていくとよりよいと思います。長母音が短くなりすぎないように気をつけつつ、長母音も歌うのではなくしゃべりの一環だと思って発声していけるとよりよくなっていくと思います。(♭Σ)

 

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1.歌詞はイタリア語ですがナポリの方言が入っています。最初の歌い出しから曲名の「Napoli fortuna mia」で始まって曲中にも何度となく出てきますが、この曲の主軸であり耳に残りやすい旋律となっています。ぜひよい音程で伸び伸びとした声を乗せ、聞き手にとって印象的なフレーズとなるよう演奏したいです。

 

2.チンクェッティの声は癖もなく伸びやかで、とても聞き心地のよい声だと思います。彼女の明るい声の響きが、この曲のメロディや歌詞の内容をより引き立たせているように感じます。

 

3.歌い出しから短いフレーズですぐにブレスもあるので、最初のフレーズがぼやけないようはっきりと一音目から入ることを意識しましょう。特に出だしが苦手な人にはよい練習になる曲です。また歌詞の発音で遅れが生じる場合は、シンプルにLaやSaなどの発音を使って練習してみてください。(母音だけより、子音を含めた方がやりやすいです)その後で歌詞に戻ると、言葉の運びもよりスムーズになり遅れが解消します。(♯α)

 

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1.邦題では、「ナポリは恋人」と訳されていますが、オリジナルタイトルの「Napoli fortuna mia」を直訳すると「ナポリ、私の運命よ」となります。イタリア南部の都市ナポリに対する愛しさを歌った曲だと思います。

 

2.ジリオラ・チンクェッティは、声のポジションがコロコロ変わらずに歌えていることや、レガートで歌えることに長けた人だと思います。地声になったりファルセットになったりという変化が少ないこととレガートで美しく歌えていることから、聞きやすい印象を受けます。

 

3.歌詞を語る要素を土台にしつつ、愛しい街ナポリに思いを馳せるという曲の内容も相まって、全体を通して朗々とレガートに歌うことを心がけてみるとよいでしょう。この曲の特徴として、二重子音(nuttateの「tt」、stelleの「ll」、terraの「rr」が比較的目立ちますが、これらの発音を明確に行なうことを心掛けましょう。また、表現を行なう際にはこの二重子音を上手に使って表現ができると、演奏効果が高くなると思いますし、何よりも歌いやすくなるので一石二鳥です。(♭Я)

 

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1.4小節だけAメロの歌入りイントロ、Aメロ8小節、Bメロ8小節、半音上げで転調し、Aメロ、Bメロ、コーダで終わります。フルートの16分音符の細かなオブリガードが華やかで、この曲の高揚感を出すのに効果をだしており、打楽器の合いの手も軽快なリズムで聞くものをあおります。

 

2.発音がとても明瞭で,特に母音がクリアな歌唱です。ところどころ南部の方言のような発音で歌っています。泣きの入った声で表現をして語頭を際立たせています。その、泣きのせいなのか、ちょっと音程がフラットぎみに聞こえるところがあります。サビに戻るとき、つまりBメロからAメロに戻るときには、極力メロディを繋ぐイメージで、ノンブレスで歌っています。

 

3.この曲を歌いこなすには、まず、カンツォーネならではのフレーズの長さを最初から頭に入れて歌いだす必要があります。2小節刻みに似たようなリズムが反復されていますが、2小節単位でフレージングしてしまうと、聞いている方は何度も同じリズムを聞かされ単調に感じてしまうので、なるべくAメロ、Bメロの8小節を視野に入れたうえで歌いだしましょう。その方が息ものびやかに歌えるはずです。(♯β)

 

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1.まず曲を聞くときには「この曲の変なところ(特徴)はどこだろう」という耳で聞いてみてください。はじめのコーラス「ミア」のコードが変わっています。途中でマイナーコードがメジャーコードに変わります。構成が変わっています。コーラスがサビを歌うのですが、その後にまたソロがサビを繰り返すのです。ソロのサビからコーラスのサビという順番はよくあるのですが。よく聞かないと、同じメロディであるにもかかわらず、別のメロディに聞こえる(Aメロが始まったように聞こえる)ので注意しましょう。

サビとAメロは歌い方が違います。サビはテンション高く始める。(ベートーヴェンの「運命」など。)一方Aメロは静かに語るように歌い始めるべきなので、ヴォーカリストはどちらかをわかっておく必要があります。また、伴奏をよく聞いてみましょう。工夫に満ちています。リズムパターン、たまに入ってくる笛、ストリングスの速い音型。

 

2.つやのある声。大きな声は伸びやかに前に進むし、ささやく声は控えめで表現力がある。全体に伴奏に対して、やや遅れ気味に入ってくるのが、これ以上だとやりすぎだが、ちょうど「ていねいな感じ」でよい。

 

3.息がよく聞こえる箇所として「ファム~」のフレーズコピー。すべての呼吸とパターンが入っている。息をよく聞いてまねしてみましょう。(♭∴)

 

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1.ナポリの街の美しい夜の光景や幸せな雰囲気を描いた底抜けに明るいナンバー。星降る夜、サンタルチアの歌声、懐かしい光景といった歌詞は、少し古い時代のカンツォーネナポリターナへのオマージュでもあります。そのままナポリ観光のCMに使われそうな、ナポリに今すぐ行ってみたくなるワクワク感にあふれています。ダンスのビギンのリズム(タタータ、タタタタの2拍子)で書かれており、疾走感があります。

 

2.チンクェッティの歌声は少し甘えるように鼻にかかった音色で、とても伸びやかです。耳に柔らかく当たる声ですので嫌味がありません。

 

3.おそらく誰でも気軽に口ずさめることを念頭に作られた歌だと思います。一度聞いたら覚えてしまうメロディで、音域は狭いです。ぜひカンツォーネ初心者にチャレンジしていただきたい曲です。「ナポリ」の「a-o-i」という母音の変化が美しく歌えるように、母音間で響きのムラが生じないように研究しましょう。(♯∂)

 

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「福島英のヴォイストレーニングとレッスン曲の歩み」より(https://www.bvt.co.jp/lessonsong/

 

21.ジリオラ・チンクエッティ 

 

 ヒットを連発、16歳でのこの歌唱力は、天才としかいえません。

 「ナポリは恋人」弘田三枝子のと比べるとよいでしょう。リズムに注目。

「夢見る想い」は日本語版もあります。伊東ゆかり弘田三枝子がカバー。

 

 他にチンクエッティの代表作は「ローザ・ネーラ」「雨」「落葉の恋」「薔薇のことづけ」「太陽のとびら」と美しいメロディの曲が並びます。

おすすめアーティスト・作品 No.394

「流浪の月」凪良ゆう(本)

父と死別し、母に捨てられた10歳の女の子。伯母の家に引き取られ、自分の居場所をなくしていた時に、19歳の大学生に声をかけられ、家について行き、かけがえのない2ヶ月間を過ごす。しかし大学生は誘拐犯として逮捕され、2人は離ればなれになるが15年後に再会する。

この小説のなかで「事実と真実は違う」という言葉が印象的です。

本当の事は当事者しか知らないはずなのに、世間ではねじ曲げられた事が真実として広まっていく。当事者はそれをどうにも出来ずに諦めていくことに衝撃を受けました。そしてそれを助長するネット社会の恐ろしさを痛感しました。

そして、幸せかどうかはその人にしかわからないものだ、と改めて感じました。

 

「首都防衛」宮地美陽子(本)

地震を中心に日本を襲う可能性がある災害に対してどう備えるべきか、についてデータをもとに書かれています。

特に約320年前、わずか4年の間に関東の大地震南海トラフ地震、富士山噴火が続けて起きていることに驚きました。

ただ怖がるだけでなく、今できる備えをきちんとやらなければいけないと実感しました。

 

「円卓」西加奈子(本)

主人公こっこは小3。祖父母、両親、三つ子の姉の8人家族。決して裕福ではないが、愛情にたっぷりに育てられています。そして多様なクラスメートとの交流を通して成長していく様子を描いた物語です。

このクラスメートたちは、元ベトナム難民、在日韓国人、シングルマザーの子、吃音の子、など一般的には「ちょっと普通と違う」と思われる子供が多いが、皆、卑屈になることなく自分の境遇を受け入れ、お互いを認め合いながら日々過ごしています。そういえば、私が小学生の頃はどんな子も皆学校での立ち位置みたいなものがあり、変に周りに同調したり空気を読むことなく、もっと自由に過ごしていたなぁ、と思い出されました。

 

リア王」(舞台)

役者さんたちの熱量が素晴らしく、圧倒されました。

400年前の物語ですが、衣装や舞台、小道具が現代風だったのには驚きました。

また、場面転換の方法が斬新でした。

 

千と千尋の神隠し」(舞台)

ジブリ映画の舞台版を観ました。アニメの世界が舞台の上でも再現されていて驚きました。主要キャストだけでなく、出演者全員の力の結集が感じられました。また、舞台装置やパペットの動きも素晴らしかったです。

 

「スポーツ」

侍ジャパンの試合を観に行きました。プロの中でも選ばれた選手、サッと足を上げるだけでも美しかったです。ファインプレーも観ることができ、とても刺激を受けました。また、大学生が活躍し、プロではなくてもこんなに活躍できるのだと驚きました。

また、これはネット配信で観たのですが、F1で、ドライバーの体調不良で、急遽F2の選手が出たのですが、その選手が結果を出したことが、凄く刺激になりました。この2つの事例から、準備できていることの大切さを改めて強く思いました。今の時点で活躍できていなくても、ステージに立てる準備ができていることが必要、それを目指そうと思いました。

V051「待ちましょう」 リナ・ケッティ

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.戦地に出かけている恋人の帰りを待つ、女性の歌です。明るく穏やかで、少しコケティッシュな曲調です。低い第五音、低い第7音から、主音へと進む、いきなり解決感の高い音の進行が、異なる楽器で1回ずつ前奏で弾かれ、そこに細かい音の飾りが施され、歌い出しも同じ低い第五音、低い第7音から、主音へと始まります。

 

2.リナ・ケッティは、地声の音域もミックスヴォイスのように、柔らかく優しい声で歌っています。声だけを取り上げれば、クラシックの声楽家のような声ですが、歌詞は流行歌に寄せた、しぜんな発音なので親しみやすく、オペラ歌手がポップスなどを歌うときのような違和感は、ほとんどありません。あまり、口の中を空けていないことが、大きな要因です。しぜんな歌詞の発音を大切にしているからです。

やや、ちりめんビブラートがありますが、それもある意味、魅力のひとつになっているかもしれません。そのあたりも、好かれた理由でしょう。

 

3.女性の皆さんは、ぜひリナ・ケッティのまねをしてみるとよいでしょう。ミックスがどうしてもうまく出せない場合は、キーを下げて、全て地声で取り組んでもよいですが、息を混ぜて柔らかい音色をめざしましょう。

男性でミックスヴォイスを習得したい人は、歌詞の意味は考えず、キーを5度位変えて、主音を、高いeやfにして、息を混ぜて歌ってみると、コツが見えてくるかもしれません。(♭Ξ)

 

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1.古いシャンソンの音楽の形のイメージです。しかしメロディックで美しい。

メロディラインがレガートなので歌い手の力量が目立ってしまう曲だなという印象です。

 

2.かなり鼻にかかった甘えるような声は好みがわかれるという印象です。そして今の時代ではやりすぎかなという印象のポルタメント。ここは評価が時代で変わるところかなと思います。ポルタメントはやりすぎるといやらしく聞こえてしまうのですが、レガートの基本としてはポルタメントは必要です。その意味でもこのポルタメントは評価がわかれそうです。

 

3.リナ・ケッティをまねるのであれば、鼻を意識して鼻の先で声を出すようなイメージをもって歌うとよいでしょう。多少の鼻声はいいと思います。レガートな声のラインを高い響きで訓練するとよいでしょう。(♭Σ)

 

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1.フランス語の歌詞で明るい曲調ではありますが、大切な人の帰りを待つ気持ちを切々と歌っています。ゆったりめのテンポなのと穏やかな旋律の動きも相まって、きっとあの人は帰ってくる、そう希望を持って待ちたいのだという心情が伝わってきます。

 

2.リナ・ケッティの声は細めで高く明るい響きを持っているのが特徴ですが、他にもどことなく現実離れをしたような、メルヘンの世界を想像するような声の響きにも感じられました。相手が帰ってくるかもしれないという希望を、明るい声の響きがしぜんとその表現に加わっています。ビブラートが細かい気はしますが、力みもなくよく息が流れている歌い方だと思います。

 

3.原調のままだと人によっては高くて歌いにくいかもしれません。声の高さは人によってさまざまなので、その場合には少し下げた調で無理なく練習してください。フランス語に不慣れな人でもケッティの発音は聞き取りやすいので、フレージングも含めて一度模倣するつもりで歌ってみるのも勉強になります。(♯α)

 

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1.明るい曲調にのせて愛しい人が帰ってくる(戻ってくる)のを待っているという内容を語った曲です。一見シンプルで可愛らしい曲に聞こえるかもしれませんが、切望しているような熱い思いを感じます。

 

2.音と言葉をずり上げずり下げで歌っている部分が少々気になりますが、表現方法の一環ということでしょう。全体的な発音が明るめである点、閉口母音がよい意味で暗すぎないのは、一つの参考になるのかもしれません。また、滑らかに歌うのが得意なように聞こえます。

 

3.リナ・ケッティの発音が明るめであることは参考になると書きましたが、軽く聞こえてはいても、彼女の声は通常の日本人よりもしっかりと発音できる部分を使えているでしょう。日本人が歌うということに関しては、まず、声がしっかりと鳴る部分を使えているということが前提です。声がしっかり鳴って歌詞を語れるという状態で、なおかつ、開口母音は特に明るく、閉口母音は籠らせず発音できると歌いやすくなるでしょう。また、リズミカルな曲なので、音やリズム優先にならず言葉のフレーズを意識して歌うことができるほうが、より音楽的に聞こえるようになると思います。(♭Я)

 

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1.1番、語り部分、2番、の構成で成り立っています。戦時中に作られたこの曲は、「戦争に行った恋人や家族の帰りを、昼も夜も待ちましょう、心は悲しいけれど、帰りを待っていましょう」という内容で、詞としてはとても悲しく重い物ですが、とても明るく、さわやかで、軽やかなメロディで作曲されています。

 

2.クラシックの発声で、古きよき時代ということでしょうか、頭声を重視した美しいしぜんな声の出し方をしています。細めのソプラノで、軽く明るい音色で歌っています。時々、ポルタメントを使って、でもいやらしくない範囲で表現しています。

 

3.レガート唱法で、音と音のつながりがとても美しいので、ぜひ参考にしてみてください。日本人はフランス語を暗めの音色で歌いがちですが、この歌手の母音はとてもクリアなので、それぞれの母音の違いをよく聞き、発音を習得してみましょう。鼻母音がこもり過ぎていない、曖昧母音が暗すぎないというのも、この歌手の声が明るく爽やかに耳に心地よく聞こえる特徴かもしれません。(♯β)

 

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1.イントロが面白いですね。歌いだしのメロディが2回、1回目はビブラフォン。の、2回目は弦楽器。の修飾があるだけなのですが、シンプルなだけに、どんな歌が始まるのかとても興味がわきます。終始シンプルなアレンジのうえ、歌詞は簡単なフランス語。率直な言葉を並べるため、却って心情がストレートに伝わります。「あなたが帰ってくるまで、いつまでも待っていよう。」強い意志を感じる歌詞です。歌いこむのではなく、語るように伝えたいところです。

 

2.率直なゆえに心に迫る歌詞。その歌を、リナ・ケッティはあくまで淡々と歌っていっています。中間部、言葉を切々と投げかけていく感覚が見事です。

 

3.簡単な単語が続くので、シャンソンの志望者でなくても、フランス語の曲の入門として学んでおきたいところです。歌詞カード、つづり、対訳を見ながらよく聞き、フランス語の独特な音に慣れましょう。たとえば、歌いだし「ジャッタンドゥレ」最後の「レ」はかなり口を横に開きます。必要なら先生に確かめながら、レパートリーにしてみてください。(♭∴)

 

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1.恋人の帰りを待つ女性の歌。歌の中では明言されませんが、第二次世界大戦下という時代背景から考えて、戦場へ行った恋人への思いを歌ったものと思われます。とはいえ重苦しい音楽ではなく、ゆったりとした二拍子はチークダンスに最適といった風情ですし、甘いメロディは愛らしい雰囲気です。だからこそ暗い時代の大きな慰めとなったのでしょう。

 

2.リナ・ケッティは、実に可愛らしい声です。蜜のような甘い音色と鈴を振るような軽いビブラートが魅力的です。男性の庇護欲を掻き立てるような歌唱の秘密は、語頭の力加減の自在なコントロールにありそうです。声の入りも語尾の抜き方も、一切、角のないまろやかなタッチです。

 

3.音域は狭く、そんなに難しい曲ではないと思います。その分、伸びやかなレガートを作ることや、意味に即した言葉の発し方に細やかな気配りをしてみましょう。美しいレガートで歌うためには母音唱での練習が欠かせませんし、繊細に言葉を扱うためには歌詞の朗読の練習が必要です。(♯∂)

 

おすすめアーティスト・作品 No.393

「とわの庭」小川糸(本)

目の見えない少女が主人公。母と2人で家に閉じこもり暮らしていたが、ある日突然母が出て行ってしまう。その後何年か1人で暮らし、やがて保護される。

保護された後は周りの助けにより自立して生きていく。

保護されるまでの前半部分は母とのいびつな関係や育児放棄など心がざわついたり、やり切れない気持ちになりましたが、後半は周囲の人や盲導犬との出会い、そして太陽の光、木々や、草花などの息づかいに支えられて力強く生きる姿に人間の力、自然の力のすごさを感じました。

ただ、盲目の少女がなぜ誰にも発見されずに1人で生きられたのかが不思議です。

 

「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている 再生 日本製紙石巻工場」佐々涼子(本)

東日本大震災津波に呑み込まれた日本製紙石巻工場の再生の物語です。

いつも読んでいる本の紙がこんなにいろいろな人の手を介し、用途によって最適な紙になるよう心血注いで作られていることを知って驚きました。

また、震災後の避難や避難生活の様子など、報道で伝えられているものよりはるかに生々しく、美談だけでなく、人間の汚いところも描かれています。

壊滅的な状態からわずか半年後に工場を復活させた工場の従業員の方々の紙に対する熱い思いには感服しました。

電子書籍に押され、本は売れなくなっていると言われていますが、紙の本は無くならないでほしいと改めて思いました。

 

オデッサ」(舞台)

三谷幸喜脚本の舞台です。演じるのは3人だけで、複数の言語が飛び交うコメディです。3人の役者さんたちが、2時間近く出ずっぱりで喋り続ける熱量に圧倒されました。

 

「ダンスライフ  エピソード1」(Amazon prime Video)

ダンススクールのドキュメンタリー番組。私は大学時代に音楽にもっとのめり込んでいればよかった、と反省しています。彼らの躍動感や努力にエネルギーをもらって情熱を持ってトレーニングします。

 

イアン・ボストリッジテノール)コンサート」

イギリスの名歌手ボストリッジの来日公演。演目はシューベルト白鳥の歌」、ベートーヴェン「遙かなる恋人に寄す」。

歌手になる前はイギリス近代史や科学哲学史の分野で大きな功績を上げた学者で、殊に魔術についての論文で高い評価を得ています。歌手としても学者としても超一流。そしてテノールには珍しい長身痩躯。異色づくしの歌手です。

生で聞くのは初めてでした。極めて知的な詩と音楽の解釈。鮮烈で繊細な美声と、蜜も毒もある表現にアトラクトされました。 案外力強い声と、ほぼ無音まで持っていくピアニシモ。

驚いたことにボストリッジは舞台上で激しく動き回ります。 それも表現としての動きではなく、発声のための動き。 つま先立ちで歩いてみたり、片足に体重かけて伸び上がってみたり、ちょっとしゃがんだり。体幹が決まって声がコントロールしやすくなる方法と同じですが、ここまで本番で遠慮なくやる人ははじめて見ました。

そしてボストリッジは客席に一瞥もくれません。多分、彼はお客さんに向けて歌っているのではなく、彼の芸術のために歌っているのだなと感じました。 普通の歌手が本番ではやらない不思議な動きにも得心がいきました。よりよい声でよりよい演奏をするためには、どう見えるかなんてまったくもってどうでもいいのだと。 実際、彼の歌はほぼ完璧でした。 極めれば誰も文句言わない! 動き回ることについては万人にはお勧めしませんが、こういう歌手もいていいのだと大きくうなずいた体験でした。

ところで能楽というのは観客に対して演じているのではなく、神への捧げ物なのだそうです。ボストリッジはまるで能役者のよう。彼と彼の神との対話を、観客はただただ固唾を飲んで見守るのみ。それは神聖で幸福な時間でした。

V050「限りなき世界(イル・モンド)」 ジミー・フォンタナ

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.第3音から、半音高いキーの高い第5音までの、やや広めの音域で、サビは、高い主音を中心に歌われます。初期の録音では、キーが半音高く、低い主音から始まり、低い第5音も使って、後半には半音上のキーに転調して、高い第3音まで使うので、2オクターブに近い音域をそれなりに使わなければなりません。

ただ、始まりは低い主音なので、落ち着いてしっとりとした始まりで、次第に盛り上がっていきます。しかし、この録音では、始まりが高い主音なので、無理に張っているわけではありませんが、声のよさが目立ち、余裕も感じられます。

 

2.ジミー・フォンタナは、ハイバリトンか、低めのテノールのようで、無理のない発声で、初期の録音では、無難に歌いあげています。この録音では、キーを半音下げているため、使う音域も少し狭く(最高音は全音高いですが)、余裕があるためか、気持ちもかなり込めて、少しだけ声に無理をしているようです。

 

3.高音域が比較的苦手ではない男性は、これに近いキーで、練習してもよいでしょう。

女性は、地声高音域を少しがんばれば、ジミー・フォンタナと同じ音域で歌うことができます。ただ、低音域は、無理があるかもしれません。キーを少し変えて、楽な地声から、少し高めのミックスヴォイスを使えば、よい練習になるでしょう。(♭Ξ)

 

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1.イタリアンポップスというか、カンツォーネというか、失恋をここまで明るく、素敵なメロディで仕上げてしまうところがいかにもイタリアの歌という印象です。しゃべるAメロと歌い上げるサビ。この二つの対比がとても印象的です。サビの部分には声の力がとても必要という印象です。発声の基礎力がないと面白味にかける曲になってしまうかもしれません。その意味では歌手の力量が試される曲という印象です。

 

2.甘い声で明るい発音がとても印象的な歌手です。そして言葉を「しゃべるように歌う」というイタリアの昔からの歌唱法をそのままやっているような歌手という印象です。歌っているよりしゃべっているという印象の方が強い。日本人にはなかなかここまでの明るさのaの母音は難しい。最終的にAの母音が一番難しくなっていくのは明るさと浅さがリンクしやすいからなのですが、ジミー・フォンタナのAの母音は学ぶべきところが多いと感じました。またRの子音の巻き舌がとても聞こえる。Rが2~3個あるくらいの巻き方なので、この辺りも歌うよりしゃべっているように聞こえる要因かもしれません。

 

3.言葉をよく読むということでしょうか。しかし読むというレベルをこだわってみるとよいかもしれません。普通の倍くらいの音量と距離感をもって、お腹をつかって読んでください。難しい場合は、胸を鳴らすことを意識して読んでみるとよいでしょう。(♭Σ)

 

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1.曲の展開としては穏やかな語りのフレーズから始まり、少しずつ気持ちが高鳴り、サビで盛り上がるという流れで、盛り上がったまま終曲します。ただ一辺倒に歌うのではなく、歌い出しからサビのmondoに向かっていく様を、声・表現ともにメリハリを持って演奏したいです。

 

2.ジミー・フォンタナの声は癖もなく一般的には聞き心地のよい声だと思います。歌い出しのまるでしゃべっているかのような歌詞の運びや、mondoに向かっていくクレッシェンド、サビに入ってからの声の伸びなどからとてもうまく息のコントロールをしていることがわかります。

 

3.歌い始めの部分は、歌詞は正確に発音しながらもできるだけ滑らかに声を進めて語っているように歌いたいです。音程をつけずに、リズムに合わせて歌詞の発音をする「リズム読み」の練習がおすすめです。予め発音を口に馴染ませておくと、音程をつけた際にもスムーズに発音が進みます。

この曲のキーワードであるmondoは伸ばす音符の上で歌うのですが、子音Nの発音が落ちやすい(聞こえにくい)です。子音Nが欠けると違う意味になるので、moと同じ音程のまま子音Nも有声子音として発音してください。またverràの発音も、berràと聞こえやすいのでしっかりと子音Vを意識したいです。(♯α)

 

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1.失恋ソングですが、決してジメっとなんかせずに、高らかに歌い上げることが特徴の曲だと思います。この辺りは日本人的感覚と対照的な部分ですね。

 

2.ジミー・フォンタナの歌い方から感じるのは、表現にこだわってせりふのように語る印象を受けます。歌い手的というよりも、俳優的に聞こえるのは、彼がもともと俳優であるからかもしれません。

「Il mondo」のイの発音がやや詰めて押したような発音になっているように聞こえます。表現に寄せているのかもしれません。この辺りが歌手的ではなく聞こえる原因かもしれません。

 

3.語るように歌うということは、本来であれば演奏効果が高くなる方法なのですが、表現によりすぎてしまうと、声を犠牲にする部分が出てきてしまうと思います。曲として歌う以上は、歌手として、歌手の仕事の範囲で聴衆を魅了する方がよいでしょう。語り方と歌い方のバランスをどう取るか、よく研究が必要です。語る上で、声を犠牲にするところまでは必要ではないでしょう。(♭Я)

 

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1.イントロ部分はC majorで「ラララー」というボカリーゼ、そして語りのような部分を経て、サビ×2コーラス、C♯ majorに転調し、サビがインストゥルメンタルで演奏され、サビ、コーダで再びイントロと同様の「ラララー」で歌いあげるという構成で成り立っています。

 

2.明るい声質で、基本的にはクラシックな発声をベースに、伸びのよい声で歌っています。いかにもイタリア人が歌う英語という感じで、母音がとても明瞭で聞きやすく、英語で声がなりにくい人は彼の英語の母音歌唱を参考にすると声が伸びやすくなると思います。

最初のラララーで少し鼻にかかった発声が見られますが、鼻にかけることでピッチの正確さを狙っているようです。こぶしを入れたり、泣きを入れたような声を用いて表現しています。低い声より高い声に輝きがある音域をもっています。最後のロングトーンでは、6秒後ぐらいに声の支えが抜けてしまったのが残念です。

 

3.西城秀樹が「ローラ」と歌いだすときのような、泣きの声を語頭に入れることで、切なさ、切実さなどの感情表出を効果的に出せています。

この歌手の声の伸びを是非真似てみてください。イールモーンドの「ド」でフレーズが終わることなく、次のフレーズ、次のフレーズと、どんどん繋がっています。

低音の語り、高音の声の張り、そして泣きを入れることで歌唱にメリハリを与えていますので、この歌い分けも参考になるでしょう。

泣きの声に関しては、How I loveの「H」、 your love soの「s」、 Let tender kissの「L」 、そしてとうとうIl mondo「I」(冠詞)、Happyの「H」 、promiseの「p」、you stay の「s」など感情的なワードに主についています。Il mondo のIlは冠詞なのにもかかわらず泣きがついているのが感情の高ぶりを感じさせます。(♯β)

 

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1.「限りなき世界」を雄大に表現しています。つまり、月並みな言葉で言うと、「長い」、と感じます。1つのフレーズも、サビまでの距離も長い。音域も広いです。それだけに処理も難しいです。

 

2.長さを感じさせず、フレーズは徐々に盛り上がっていき、サビの「イルモンド」にスムーズに繋がります。このフレーズの持続力が素晴らしいです。そもそもはじめのナンバーから、尋常ではありません。深い息と声。語るように魅力的な歌い出し。また音域の広さを感じさせない統一感での「イルモンド」のシャウトの見事なこと。

 

3.歌い出しのナンバーをフレーズコピーしてみましょう。いかに深い息と声が必要かがわかると思います。余裕があれば、全曲を歌ってみてください。「息とフレーズがもたない!」と感じるはずです。そこからトレーニングに落としていきましょう。(♭∴)

 

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1.きっといろいろな些末事に悩まされているにもかかわらず、廻る世界を大きな視点で眺めるという内容。スケール感が大きく、青空のように壮大で爽快なナンバーです。歌唱部冒頭の楽譜にはStrofa(Liberamente)つまり「語り(自由に)」との記載あり。次第に語りは歌へと移行していき、順次進行で上昇。そして浮遊感のあるサビへと到達します。

 

2.音域が広く、どんどん高くなっていく曲ではありますが、ジミー・フォンタナは同じギアのまま気楽に歌い続けているように聞こえます。実際にはいろいろ工夫があるのでしょうが、それがまったく見えない(見せない)歌手です。気負いのない伸びやかな歌唱が魅力です。

 

3.冒頭は何度も朗読して韻律や語感を掴みましょう。それができてはじめて音に乗せて歌えるようになるのです。サビ前はどんどん上行していきますが、まだがんばるところではありません。ペース配分を考えましょう。サビは大きなメロディラインを意識してレガートを心掛けましょう。(♯∂)