V039「Who wants to live forever」 ジョルジア

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.プッチーニのオペラのアリアのようなメロディです。オーケストラの伴奏ということも、そう感じさせるのかもしれません。

 

2.ジョルジアは、なかなかよい声で、中低音はまったく無理がなく、地声高音域も広めの音域で、きれいに出せています。ただ、高音域が少し硬い声になりがちのようで、一か所シャウトさせているのも、それをカバー・リセットするためかもしれません。何度も何度も、地声高音域を出しているうちに、少しずつきつくなっていくようです。ただ、聞く側は、その、がんばりに、心を動かされたりするのでしょう。

 

3.うまく真似してみましょう。もちろん、キーを下げて、自分の声域に合わせて練習しましょう。無理にオリジナルに合わせても、あまりよい練習にはなりません。高音域は、なるべく楽に自由に、しぜんなビブラートが失われないように、気をつけましょう。曲の最後の最後まで、楽に自由に高音域を伸ばせるように、コントロールしていきましょう。それができるようになったら、はじめて、曲の最後だけ、がんばる意味が出てきます。それが無理ならば、さらにキーを下げて、練習するべきです。(♭Ξ)

 

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1.どこということではなく全体的に声の魅力が必要な曲だなという印象です。ロングトーンの多い曲であり、そこにのせた甘い言葉が声の魅力なしには語れないといった印象でしょうか。言葉の強さを引き出す声の魅力が必要な曲といってもいいかもしれません。

 

2.声の魅力、音域の広さ、鮮明な発音。とにかく素晴らしい歌手です。声というよりも言葉を支えるバランスが素晴らしいという印象です。そして日本人はなかなか難しい舌の脱力と下あごの開閉。高音域になればなるほど舌が平になり、下あごが落ちていく。この状態は喉の開きとパワフルな高音域には欠かせない状態なので、それがしぜんに行えているのは本当に素晴らしい。

 

3.同じように歌うには、単純なロングトーンの訓練をしっかりやらなければいけないと思います。実は充実したロングトーンは基礎の中でもとても難しい。もっと言えば実力がとても見えてしまいます。力まず、支えられて息も流れていなければいけない。この訓練をしっかり行い、そのうえでこの楽曲を教材としてとりいれると基礎力を高められると思います。

できるならばあごを下げて高音域を歌う訓練をやってみてほしい。開けることで痛くなってはいけませんが、徐々に開けられるようにトレーニングしてください。(♭Σ)

 

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1.オーケストラの演奏と共に、終始ゆったりとしたテンポでの歌唱になるので、全体を通して息のコントロールが求められる楽曲です。特に、歌詞の中で問いかけ(疑問形)の部分では音が上行し、上行した先で音を伸ばす、というパターンが何度も出てきます。また「forever」という単語に音の動きや長さを持たせており、強調したい部分であることがうかがえます。そこをどう表現するのかも歌い手がしっかりと吟味した上で演奏する必要があります。

 

2.高音域でのロングトーンが多い曲です。息がしっかり流れているので、張り上げる声ではなく、力強い中に伸びやかさがあります。高音域ではよく口が開いているという聞こえ方です。ジョルジアの歌唱力の高さが垣間見られます。

 

3.ゆったりとしたテンポの曲で意外とあるのは、ブレス開始が遅くなることです。ロングトーンが多いことの他に、ブレスの遅れも息が足りなくなる原因となります。練習方法のひとつとして、拍を取りながら歌い、音入りの1拍前からブレス、つまり1拍分の時間をかけてブレスをしてみましょう。発音の遅れも鑑みて、始めは歌詞の母音部分だけで歌い、慣れてきたら歌詞に戻すと効果的な練習ができるでしょう。(♯α)

 

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1.もとは、映画「Heilander」の主題歌で、クイーンによって演奏されましたが、その後、数々の歌手によってカバーされている曲です。永遠に生きる命を持つ者の孤独、苦悩、生命の意味など、壮大なテーマを歌い上げている曲です。

 

2.低音から高音に向けてムラのない力強い声、こぶし回し、とても卓越した技術が随所に見られる歌唱です。技術はあるのかもしれないですが、音だけで中身が伴ってない、歌詞の重みが感じられないように感じるのは私だけでしょうか。若い歌手に、この傾向がよく見られます。本当に歌詞の内容を理解して歌っているのか、とさえ思わされます。

途中に入れているシャウトはフレディーマーキュリーとまったく同じところで入れており、ただ音だけを模したように聞こえ説得力にかけ、また、who wants to live foreverの歌詞が2回続く箇所では、まったく同じ歌い方を2度繰り返しており、表現の深み、円熟ということに関しては、課題なのかもしれません。

 

3.まずは、映画を見て、この曲の世界観を味わってください。「Heilander」1~3まで出ています。なぜか日本が舞台になるという面白い経過も見られます。400年も生きているという設定ですから、場面はいろいろなところに移るのでしょう。主人公の悲しみを自分の中に入れ込み、お腹の底から力強い声で歌ってみましょう。ときに外ではなく自分の内側に表現したい気持ちがあれば、大きな声を外に出さずとも、その心に寄り添いウィスパーリングヴォイスで小さく歌っても構いません。(♯β)

 

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1.「誰が永遠に生きたいなんて望むんだ?」という少し重たい内容の詞を、美しくも切ないオーケストラの音楽と共に書かれています。Queenの曲で、映画のために書き下ろされた曲ということもあって、かなりメッセージ性の高い曲になっていると思います。

 

2.ジョルジアの持ち声は素晴らしいものだと思います。語るような歌い方も実にしぜんで、表現の幅も広く感じます。力強さと繊細さを兼ね備えた声が、この曲のドラマを見事に表現しているように感じます。

 

3.歌詞の内容から、やりきれないような苦しみや切なさなどを訴えかけるような歌い方が必要になると思います。詞をしっかり情感込めて語れることが、歌う前の下準備としてとても大切になるのではないかと思います。きれいに歌うということよりも、言葉一つ一つからフレーズに至るまで、しっかりドラマを出せるような語り方、そんな歌い方を研究してみてください。(♭Я)

 

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1.悲しげなイントロで雄大な曲想で、アップテンポの部分が続くのかと思いきや、ずっとスローテンポが続く。これを持たせるにはかなりの歌唱力、そして絶妙なリズム感が必要。間奏の不安定なコードと美しいオーケストレーションが魅力的です。

 

2.スケールの大きな歌唱、深いブレスも是非、聞きとってほしい。リズムに乗れていて軽く言葉を処理するのもよいです。深く響くが、たまに抜き気味に処理する声がとてもチャーミング。音域も広く「うまいというのはこういうことか」と目の覚める思いのするはずです。

 

3.who wants to live forever のところを取り出してみましょう。2回続きますが、その間のブレスの取り方、フレーズの重ね方。短い間だったり、少し時間を伸ばしたりをよく聞いて、フレーズコピーしてみましょう。

(♭∴)

 

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1.「誰が永遠の命など望むものか」という内容で、一瞬の生命のきらめきこそ価値あるものだと歌われます。原曲はもちろんロックですが、このアレンジでは、重厚なオーケストラに、歌もしっとりと声を聞かせるようなテンポ感になっています。

 

2.ジョルジアの素直な歌声はソウルフルでどこまでも伸びていきます。細かくくすぐるような箇所は繊細で、文句なしに歌がうまい!と言わざるを得ません。「love must die」という部分でかなり強い表現を用いていますが、それさえも心地よいものです。決して凡百の歌手が真似できる歌唱ではありませんが、歌を歌うという行為の一つの頂点だと思いました。

 

3.ジョルジアの声の伸び方を研究してみましょう。私は弦楽器の名手の奏でる音のように感じました。右手でヴァイオリンやチェロの弓の動きを真似しながら歌ってみるといいかもしれません。強靭で無謬な音の連続性を感じられる方法です。(♯∂)

 

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「福島英のヴォイストレーニングとレッスン曲の歩み」より(https://www.bvt.co.jp/lessonsong/

 

6.ジョルジア 「明日に架ける橋」「リヴ・フォーエバー」

 

 2曲ともに、こんなアレンジができるのか、こんなアレンジで歌えるのかというのを実現した曲です(研究所でのかつてのパートナーが、それを詩にしたのを、ブログに入れています)。

 

 後者の曲を私は、一番は息を聞いてくださいと、呼吸、息の深さの差を伝えることに使ってきました。そして、コーラス間の「ハァ―」と息を声にするところの繰り返しをデッサンとしてみて、そのデッサンで、この曲のテーマで「私はこう表現するよという展開をしていると。つまり、音楽ということばにできない世界を、絵画というたとえを通じて、私自身に「ことば」の使い方を教えてくれたと思っています。

 

 デッサン練習は、線、音楽のフレーズであり、そこでの色は音色、声のトーン、タッチですから、それを基礎の勉強としましょうという説明も、彼女のこの曲から生まれました。「私にはこの線と色があるから、このデッサン、このフレーズで、歌を料理するの」というスタンスが、歌い手の持つべきものです。悲しいかな、日本にそれほど創造的な歌い手は、ほんのわずかしかいないのです。