「高校三年生」079

昭和38年に大ヒットした、学園ソングとも呼ばれる分野の代表的な曲です。時代背景などは、現在とは違うので、想像しにくい部分も多いかもしれません。
軽快なテンポの18小節の前奏の後、中音域の第五音から、跳躍も含めていきなり曲の最高音に近い第三音まで駆け上がり、短めのロングトーンを挟みながら、第二音のロングトーンに落ち着く歌い出しは、ヒップホップ的な歌いまわしに慣れている世代には、かなり難しく、呼吸のコントロールや支えが身についていないと、難易度が高いものになります。
続く2フレーズ目は、すぐ下の主音から少しずつ下降しながら、第五音のミニロングトーンを経て、最低音の主音のロングトーンになります。ここをきれいに歌うのは、高音流行りのポップスの中で育った男性には、かなりハードルの高いものでしょう。3フレーズ目も、ロングトーンは多用され、ロングトーンの無い短めの4フレーズ目の後は、低めの第三音のロングトーンで始まり、少しだけ高めの主音のロングトーンで終わります。このように、狭くはない音域の中で、最高音近くだけではなく、中音域の高めと低め、さらに、最低音まで、きれいにある程度力強くロングトーンで聴かせられないといけない、なかなか難易度の高い曲だということをしっかり意識して、取り組みましょう。([E:#x266D]Ξ)

昭和歌謡というべき旋律とリズムですが、この時代、この作品から学ぶべき点は多いと思います。最近のポップスには少ない母音で動く部分が多いので声を持続させるというトレーニングはとてもよい教材になるかと思います。
「赤い」「そめて」などの母音で音がが変わるとろです。このような場所では基礎のトレーニングとして、脱力しながら口の中や喉のフォームはかえないで呼気圧で持って行くことをおススメします。慣れてくるとここに音色として明暗をだしたり強弱をもっていくと、より音楽的に効果的かと思います。
「あ」で歌う下降形がありますが、下降形は上昇形よりも音程の幅をせまくとりましょう。狭くとらないと音程も悪くなりがちですし声もどんどん重たくなっていきますから注意してください。
音楽的に少し暗めな印象ですが、声は明るくだしていってよいと思います。([E:#x266D]Σ)

おそらく、若いころに聞いたり歌ったりした経験のある人にとっては、歌詞もメロディーも入っており歌いやすく思われるかもしれません。ここから先は、カラオケレベルを脱して、より魅力的に歌うためにできることは何かという視点でお考えいただければと思います。
まずは、舟木一夫の歌真似にならないということです。本人に似せるのではなく、歌われる方ご自身の声と表現で歌うことを心掛けましょう。鼻歌のようになんとなく歌っても、一応歌ったような状態になるとおもいます。ですが、この状態というのは、気をつけないと鼻声になりすぎて、音程が非常に悪く聞こえます。また、言葉も聞き手にわかりにくくなります。ある程度しっかり歌うイメージが重要になると思います。
特に、冒頭の「あかい」、「こうしゃをそめて」、「ニレの」という言葉は鼻声になりやすい部分だと思いますので、気をつけて歌いましょう。「こうこうさんねんせい」の「ん」も音がついています。日本人の苦手とする部分です。鼻声ではなく、音を保てる部分で歌うように研究していきましょう。([E:#x266D]Я)