エルビス・プレスリー

アメリカで最も有名なスターの一人であるエルヴィス・プレスリー
ロック、ポピュラー音楽の歴史、文化に大きな影響を与え、
重要な役割を果たした。反抗する若者を象徴した時代のロックンローラーから
エンタテーナー的アイドル、俳優として一気に人生を駆け抜けていった。

1935年、ミシシッピー州に生まれる。
幼年時代から教会の聖歌隊の一員としてゴスペルを歌っていた。
人種差別がひどい時代の流れに反して、黒人のブルース、R&Bに
魅せられていく。青年時代には工場やトラックの運転手として働きながら、
黒人が使うポマードをつけ、彼らのファッションをまね、
ギターをもって、当時ブラックカルチャーのメンフィスの歓楽街を徘徊した。

50年代に白人でR&Bが歌える歌手を探していたプロデューサーの目にとまり、
プロとしての人生が始まる。反抗する若者を象徴する彼の存在は、
同世代の白人青年たちを惹きつけ、一気にアイドル的存在となっていく。

しかし、そのスタイルや腰を振る姿に、白人でありながら、
黒人の文化に取り憑かれていると、大人たちから叩かれていた。
そのような状況に、一時期は当初のエルヴィスにテレビ局も消極的であったものの、
あまりに多くの若者たちに熱狂的に支持をされ、やがてロックンロールは、
白人社会にひとつの文化として定着していく。

多くのヒットソングを出し、熱いタフガイなイメージがアメリカ中の
女の子たちを惹きつけ、いつしかアメリカのマスコット的な存在、
エンターテーナーとして華やかなショービジネスの世界を歩んでいく。
時に派手すぎるくらい明るく、パワフルでドラマチックな歌い節、
太い豊かな熱い声。
アメリカ人がもつ特有の雰囲気や気質が、彼の声から思い浮かんでくる。

アイドルとして、エンターテーナーとして商業的な音楽業界に操られ、
ハムのようにされながらも、幼年期に黒人の音楽にあこがれていた
隔たりのない純粋な思いが歌の奥につねに潜んでいる。
120パーセントの超人的な体力とパワーで飛ばしに飛ばした人生。
42歳の若さで他界してしまったが、
まるで90歳くらいまで生きたかのような強烈な印象をこの世に残した。(E)