John Lennon Joshua Ledet 「Imagine」

心臓の音、大地を踏む音のように安定したピアノの低音のイントロ。この伴奏が大地であるとしたら、メロディはその上を通り抜ける静かな風だろうか 空から降ってきたインスピレーションがJohn Lennonによって、素直に曲として描かれこの世に作品の命を授けた。
Aメロは、少し間をおくような感じ、何気に話しかけるようにフレーズが入っていく。確かにそこに聞こえる声の中で、そのメロディの存在の中には、蜘蛛の糸が風に揺れるような極まりない繊細さが感じられる。そこにimgaine there`s no heaven(もし天国がないと想像して...) と歌詞が入り、そのメロディと言葉が重なることで、その繊細さの深さをより受け止め、そこにみえない何かが感じられてくる。
ミニマムといっていいほど、音が少なく、動きも静かで、一つ一つのフレーズに余韻も漂い、フレーズとフレーズの間に、間が音と同じくらいあり、そのたった数秒の静寂も、本当に空間が丁寧に作られていると感じる。
曲は流れ続けていると同時に、そこには静寂も流れているような印象を受ける。シンプルな曲でありながら、他にはないものがある。音楽は精神を、みえないその何かを描いているということを改めて感じる瞬間でもあり、また作品は命であると感じた。
その詩のメッセージをより理解を求めるように、与えるように、imagine all the people~とBメロへ入っていく。それまで、静かな動きで3音くらいしか使われなかったメロディも、半オクターヴ、そして次のCメロのかけ橋のようなyou~までのところまでみると、1オクターヴ近くまで使われる。ハーモニーの色合いも現実を問うような色合いをここでは感じさせ、そこに今日の世界の様子が映し出されているようにみえてくる。
またLiving のところで、間にもより変化がつき、より核へと近づいていくところにも、そういった部分の必然性が感じられる。そういった距離感やyou~、そしてCメロ(サビ)に入っていくが、いわゆるA、Bメロ、サビというわかりやすい感じでもなく、大きな跳躍や高音を強く見せるといった感じでもなく、このイメージを育てるように、永遠に何度も歌い伝え続けていくように、その間やその繊細さや静寂さを大事にしながら、and the world will be as oneとより明確に確信したメッセージへと完結していく。ゴスペルの歌い手ならば、このサビ、2番へと向けて、より上に昇りたいという想いが重なるような跳躍や高音をより聴かせるフレージングをつくるかもしれない。
先日フィナーレが行われた今年2012年のアメリカンアイドルで3位となったゴスペル教会で生まれ育ったJoshua Ledetも、この曲を取り上げて、そのパワーある大きな楽器で歌い、とてもすばらしいが、今までの彼の最高のパフォーマンスやレコーディングに比べると、まだ完全にこの歌をどう自分のものとして表現してよいのか、戸惑いや困難もどこか感じられた。しかし、いつかきっとJoshuaもまたこの曲をどこかで歌う時、より最高のものへといくのだろう信じている。
一人ひとりが何を信じるか、作品は今日の社会に、一人ひとりに訴
えてくる。何を信じるか、いつの時代にも大事で、どれほど深いものが、大きな力がそこにはあるかを探求し、熟知することに意識が届いていかなくなっているように社会の中で、自身の中で、感じることもあるかもしれない。作品を理解することも、物事をより深く理解することも、そのプロセスの中で、より心は解放され回復されていく。人を気付かせ、心を開き、強くし、真理を、確かに感じられる何かを、何を信じるか、感じているか、歴史に残っていく作品は、そうした基礎を私たちに問い続けている。