フィル・コリンズ

白状すると小生、U.Kのミュージシャンにはトンと疎いのですが、知っている中ではやはりこのひと、フィル・コリンズがもっともフェイバリットと言えます。
1951年、ロンドン生まれといいますから、もう60歳還暦ですか。1970年、すでにピーター・ガブリエルらによって結成されていたプログレッシブ・ロックバンド「ジェネシス」のドラマーとして参加。ガブリエル脱退後はバンドのヴォーカルをも勤め、以前のプログレ色は後退してポップロック的なニュアンスが強くなってゆきます。
このパターン、たとえば「ザ・ドゥービーブラザーズ」などもオリジナルメンバーのギタリスト、トム・ジョンストンが抜けて、キーボード奏者のマイケル・マクドナルドが加わることでそれまでのゴリゴリのサザン・ロックから一転してソフィスティケイトなAORみたいになっちまって、古くからのファンを失望させたものの、逆に時代に乗ってグラミー賞まで獲ってしまう大出世を遂げたのと「同型」といえるんでしょうか。「産業ロック」的で。
ま、結局1980年代というのはアメリカンポップス最後の黄金時代であった、ということなのかもしれませんね。
フィル・コリンズは80年代以降はソロ活動も平行して行い、数々のヒット曲を生み出しました。
その最大のヒット曲1984年「Against All Odds(邦題:見つめてほしい)」は、全米チャートナンバー1のスーパーヒットとなりましたが、イギリスチャートでは2位どまり。このあたりに「時代」を感じます。
小生もこの曲が大好きでライブで歌ったことがありますが、かなりな「難曲」ですね。
この曲、「カリブの暑い夜」という映画の主題歌だったんですが、今となっては映画のほうはほとんど記憶されてませんね。
続いて「アース・ウインド・アンド・ファイヤー」のヴォーカル、フィリップ・ベイリーとのデュオでこれまた大ヒットしたのが「イージー・ラバー」です。
声質の違う男性二人が、見事な掛け合いで奏でる名曲です。
この曲ではプロデューサーも勤め、ドラムの名演奏も聴くことができますね。
ダイアナ・ロスの名曲「恋はあせらず」のカバーや、ディズニー映画「ターザン」のテーマ「You'll Be in My Heart」(1999年)なども記憶に新しいところです。
もともと子役で5歳から映画にも出演しているそうで、なんと「ビートルズがやってくる ヤア!ヤア!ヤア!」にエキストラで出ていたとか。
マルチな才能とサービス精神が彼の真骨頂ですが、そのヴォーカルテクニックは非常に高度なもので、「聞きやすいけど歌えない」歌手の典型みたいな人だと思いますね。
よくたとえに出るのですが「サーカスと器械体操」の違いというか、サーカスというのは見た目にいかに難しそうに見せるかが勝負、器械体操は見た目にいかに簡単そうに、スムーズに行うかが勝負です。
フィル・コリンズは明らかに後者だと思います。
そしてその部分がアメリカン・ポップス全盛の80年代の音楽シーンにおける彼のキラりと光る「個性」ではないかと思います。