Q. コンコーネ50の3番の歌い方について教えてください。

A.1番と2番は、ともにModeratoですが、3番はAndante conmotoです。テンポは遅くなりますが、ダラダラしないで活き活きと歌いましょう。1番は24小節、2番は28小節ですが、3番は41小節といきなり1.5倍近く長くなっています。テンポが遅くなったことを加味すると、ゆうに2倍以上の長さになります。(1番は1分あまり、2番は1分半足らず、3番は3分足らずです。)

遅くなったテンポのために、さらにブレスが大変になります。つまりこの曲は、支えや呼吸のコントロールがしっかりしていないと、ただ苦しいだけで終わってしまうということです。本来は、そのあたりをある程度クリアしてから、取り組むナンバーです。

曲としては解りやすい構成になっていて、表情記号を適度に守って(ディミヌエンド以外)歌い進めていけば、なかなかの大曲を歌いこむ気分も味わえ、いろいろな工夫をする余地も残されています。そういう意味では、やりがいのある一曲です。(♭Ξ)

 

A.2小節3拍目のドの音が生の音、開き過ぎた詰まった声にならないよう気をつけましょう。例えばオの母音で訓練する場合、ウに近くしたり、アの母音で訓練する場合はオに近くしてみると効果的でしょう。

4小節3拍目のソの音が響きから落ちすぎないよう気をつけましょう。1拍目のドよりも音量を落とすと丁寧に聞こえます。

11小節~12小節にかけてのドの3連続は一つ一つ歌いなおすつもりで丁寧に歌ってあげたほうがよいでしょう。

25小節のミの音は前後の高いミの音と同様な高い響きになるよう気をつけてください。

30小節4拍目~32小節にかけての下降形、38小節の下降形は声が落ちすぎないよう高い響きを意識してください。(♭Σ)

 

A.曲中に様々な幅の“音の飛躍”が多く含まれています。“音が飛躍するのにデクレッシェンド”という箇所もいくつかあります。「飛躍する音の捉え方」について集中的に練習することができます。音が飛躍するときは、次の音を歌う少し前に「お腹の支え」を今一度踏ん張ってあげる(または支え直してあげる)ことで、体が先に次の音を歌う体勢になれるので、唐突ではなく“ほんの少しゆとりをもって”次の音を捉えるようになります。そうすることで、音が飛躍しても(どんな音の幅でも)フレーズがつながってくるでしょう。

例えば最初の2小節目で「ソド」と4度の飛躍があります。テンポがきたら唐突に「ド」を歌うのではなく、「ソ」をのばして「ド」に飛躍する少し前にお腹を支え直します。(これをしっかり歌うには、まず「ミファソ」で息を使い過ぎてしまわないように、一音目からしっかり「お腹の支え」をつけて歌い出すことも必要です。)

1オクターブの飛躍を歌うときにも助けになります。同じ音型を繰り返すとき、隣り合った音でどちらも高音のときなど、さまざまな場面で応用できます。(♯α)

 

A.全体的な曲の構成で特徴的なのは、音の順次進行が比較的多いこと、同じ音が続くことが多いこと、順次進行の中で時々跳躍があること、スラーで書かれている部分が目立つこと、<>(クレッシェンド ディミヌエンド)が比較的多いことです。

歌い方としては、できる限りレガートに歌うことを全体にわたって心がけると、テクニック的にもよい勉強になるのではないかと思います。特に音の跳躍があるような部分では、レガートに歌うことが難しいと思いますが、音を点でとらえ過ぎず、フレーズに中で処理できるとやりやすくなると思います。ので、少し俯瞰してみてください。

同じ音の連続や<>(クレッシェンド ディミヌエンド)のコントロールは、とてもテクニックを要します。基本的には、声を押し出し過ぎないことと、レガートに歌うことが大切になってきますので、この点を大事にするとよいと思います。

練習するときは、母音唱法で、オやウを用いるとよいと思います。ウは特に難しいですが、レガートに歌うことや、高音域の処理のためには有効でしょう。(♭Я)

 

A.フレーズの構成を見ると、2段ずつ、つまり、8小節ずつのまとまりになっています。もっと大きく見ると、2段、4段、2段というまとまりです。そのように音楽をまとめていくとよいと思います。

ほぼ2部音符ですが、伴奏は8分音符の刻みなので、このリズムに乗って歌うと歌いやすいと思います。

最初の「ミファソド」の最高音「ド」にディミニエンドがついていますが、息を自分の中に引き込まずにむしろ吐いて、次のフレーズに気持ちをつなげていくように歌うといいでしょう。そうすると4小節まとまりがでます。5、6小節目のアクセントは止めたり固めたりするのではなく、息を流しながら音楽の流れを止めずに大きく出してみてください。3~4段目は4段目の頭に向かって進んでいくように音楽に勢いをつけてみましょう。

5段目からは音が順次、上行していきますので、クレッシェンドするつもりで歌います。6~7段目でオクターブいったりきたりしますので、上の「ミ」にいたまま、下の「ミ」を捉えるようにすると歌いやすいです。

最後の2段はコーダとして終わりに向かっていく音楽のまとめです。最初の小節でしっかり息を流しながらクレッシェンド、デクレッシェンドして音を動かしてください。(♯β)

 

A.Andante con motoで速いcon moto なので動きがあって、そのため5、6小節目のアクセントを利用したいところです。

構成は3部形式でABA’です。Aははじめの16小節、Bはその次の16小節、A'は最後の9小節です。Aは8小節ごとの2つのフレーズにわけることができます。この2つのフレーズは大体同じものです。Bも8小節ごとの2つのフレーズにわけることができますが、この2つのフレーズはどちらもAのフレーズと似ていません。A'の8小節はAのフレーズと同じものとみなすことができます。以上からこの楽曲を8小節ごとに分けるとa a’ b c a’’となるでしょう。

この楽曲の構成上のポイントは、割と転調している部分が少ないことで、転調しているのは唯一Cの初めの4小節間が平行調であるイ短調に転調しているだけです。そこを強調して歌いつつ、この曲の最大の山場であるCの6小節目に突入しましょう。

この曲はドミソが鳴っている時間が多く、全41小節のうちでドミソの和音が鳴るか、低音がドである小節はなんと24小節、半分以上です。(♭∴)

 

A.2小節でクレッシェンド、デクレシェンドが書かれているので、2小節単位で歌ってしまいがちですが、もっと大きく4小節単位で考えましょう。音楽は8小節単位で捉えると見えてきます。8小節の前半4小節が問い、後半4小節が答え、といったふうに対になっています。

書かれている強弱は細やかなフレーズの作り方の指示ですので、これは後にとっておいて、曲全体の大まかなメリハリを作りましょう。

基本は、前半4小節で盛り上げ、後半4小節でクールダウン、これの繰り返しです。21小節目のみはクールダウンせずにさらに高まり、その後8小節使って緩やかに鎮静化するように書かれています。

最後に、細かな強弱に目を向けましょう。2小節目にあるような、上方に跳躍しながらのデクレシェンドには技術が必要です。

こういうのがサラッとできればプロです。ですので、できなくても落ち込まないで、何度でも練習してみて下さい。もし難しすぎるようでしたら、敢えて無視してクレッシェンドにしてもいいでしょう。一旦離れて、数か月後、数年後にもう一度歌ってみると、難なくできるようになっていたりするものです。

小さくするからといって、息を引っ込めないようにするのが大切なポイントです。(♯∂)                                [1907]

Q. コンコーネ50の4番の歌い方について教えてください。

A.  1~3番に比べると、少し長めのフレーズになっています。支えがうまくできないと、歌い難いかもしれません。最初の4小節は、スラーが付いているので、レガートで歌い、最後は4分音符なので、伸ばし過ぎないように気をつけましょう。次の4小節は、2小節ごとのスラーになっているので、最初のように4小節のレガートにはせず、ブレスはしませんが、少し区切る感覚にして、低音が得意の人は、チェンジをしてしっかり深い声にしてみましょう。続く4小節は、スラーに従ってレガートで歌い、最後の臨時記号は、はっきりと音の違いを目立たせ、ブレスはせずに13小節目の第五音に入ります。ここまで付点2分音符でゆったりと流れていたフレーズが、少し動き出します。支えをがんばり過ぎていると、流れに乗れなくなるので、気をつけましょう。

14小節目、頭の高い第七音は、高音の得意な人は、美しい響きで歌うように、試行錯誤してみましょう。低音の得意な人は、無理をせず、支えをしっかり使って、柔らかめに歌いましょう。17小節目からのスキップのリズムの部分は、音程がいい加減にならないように、気をつけましょう。25小節目からの4小節は、高い第六音から低い第七音までと、音程の幅が広いワンフレーズになっているので、歌いにくくても途中でチェンジせず、一定の音色を保ちましょう。

29小節目からの4小節は、高音が得意な人は、前半の高い第六音を、この曲の中で最も綺麗な声で歌いましょう。低音が得意な人は、後半の低い第五音から主音へのフレーズを、深い声で歌い、最後の4小節を、低音を活かして歌いましょう。(♭Ξ)

 

A.  Allegretto cantabileという速度記号が記してあります。「やや快速、歌うように」という意味がありますので、決して音楽が重くならないように気をつけましょう。

これまでの課題よりもフレーズが長いので一つ一つを歌いすぎないで先に進む感覚を常に忘れないで下さい。

12小節のシの音にナチュラル記号がついているので少し高めを意識して歌いましょう。

13小節目のソの音は次に6度という大きな跳躍が待っていますので響きを落とさずソの音を歌うときにはミの音に向かう気持ちで声を出してください。

後半に多く出てくる付点のリズムは重くならず軽やかに歌いましょう。

25小節~28小節にかけては1フレーズで跳躍が激しいので真っ直ぐ歌うつもりで響きがぶれないように。

最後のフレーズは軽やかにdimして終わりましょう。

(♭Σ)

 

A.  Allegretto cantabileとあるのは、allegrettoは快速に・やや速く(cantabileは歌うように)という意味ですので、出だしから3段目までは付点2分音符が多いですが、声が重々しくなったり停滞することなくテンポを前に進めていきましょう。ひとつのフレーズが4小節にまたがっていますので、息の配分を考え、クレッシェンド デクレッシェンドを実践してください。

中間と後半に出てくる付点のリズムは、リズムを機敏に捉えて声の動きを明確に出すことで前半部分との対照をなします。2分音符からタイがかかっている付点のリズムは、どうしても裏拍が遅れやすくなりますので、表拍をしっかり捉えることが大切です。

25小節目に関しては、音の幅が広いために、階名でも母音でも声が途切れやすくなる箇所です。レガートを意識して滑らかに声をつないでください。(♯α)

 

A. 曲のテンポと指定は、やや快速に、歌うようにで、1番~3番とくらべると、歌う旋律のフレージングが長くなるのが特徴です。明確にフレージングの練習曲です。そのための最初の練習曲と位置づけてよいくらいです。音域もそんなに広くなく、最初の音から1音づつ上向するし、下向もまた同じ。4小節のフレージングを歌うために息をコントロールする事が求められます。息の送り方、吐く量、吐く早さを意識して練習しましょう。

楽譜からの勉強する点は、少し長めのフレージングにそって大きくて&長い強弱をしっかり作って歌うことと、展開部と最後の8小節に出てくる付点8分音符を軽やかに歌うことで、音楽表現につながります。

フレージングのポイントも「なめらかに息を吐いて声帯を鳴らす事がとても重要」です。メロディーが上向する部分では息の分量を上げ、下向するときは優しく息を吐いて下さい。意識的にやってみましょう。音楽表現の指示も歌うようにですから、息の流れがそのまま歌につながっていきます。とても可愛らしく親しみやすいメロディーなので、練習しやすく感じるのではないでしょうか。(♯Δ)

 

A. フレーズの作り方と、声の強さの設定を考えてから歌うのが望ましいと思います。声の強さとしては、頑張る必要はないと思います。音がしっかり鳴る状態(抜けない)を大事にしつつ、自分の中の設定値で、全体を通して半分を超えないレベル(10段階中3くらいで十分だと思います)を中心として、クレッシェンド・デクレッシェンドをかけられるように心がけてみましょう。

フレーズの作り方は、4小節をひとまとまりと考え、途中に書かれているスラーやブレス記号、クレッシェンド・デクレッシェンドの強弱記号を忠実に守りながら歌えるとよいと思います。音の跳躍のある部分も何ヵ所か出てきますが、自分から跳躍しにいかないで、ポジションを無意味に変えないことを大事にした方がよいと思います。高音域だけ強くなるとか変に目立つことのないように心がけましょう。付点のリズムも正確に歌う必要がありますが、リズムは正確に歌いつつも過度に跳ねた感じや重たくなる感じは不要です。

ここまで、すべて楽譜に書かれている内容をもとにしていますが、緻密に歌おうとすると、実はハードな練習曲です。ですが、声の癖をとったり頑張り過ぎてしまうような人への練習曲としては向いていると思いますので、よい訓練だと思って、楽譜に忠実に歌ってみてください。(♭Я)

 

A. 3拍子4小節単位のまとまりとなってフレーズが作られています。

構成としては4小節単位が2つセット、つまり8小節ずつが一つの音楽的なまとまりとなってメロディーを構築しています。

1~8小節Fdur

9~16小節Fdur→Cdur

17~24小節 臨時記号がついて少し短調の雰囲気を帯びたFdur

25~32小節 同上

33~40小節 コーダ 音楽の帰結部分

コンコーネ1番~3番にはなかった3拍子の登場です。4拍子より1拍少ないわけですから、ブレスに自信のない人でも少し楽に感じて歌えるかと思います。3拍子、ワルツのリズムに乗って歌いましょう。決して123すべて同じ重さ、同じ価値にしないよう気を付けてください。3拍目を軽くアップビートととらえると次の小節に進めやすいです。

楽譜に記載されているクレッシェンド、デクレッシェンドをしっかり守りましょう。クレッシェンドでは息を増幅させていくように、デクレッシェンドでは、音を小さくするからといって体が必要以上にしぼまないよう気を付けましょう。12小節目のCdurに転調するハーモニーを意識して歌いましょう。クレッシェンドで増したエネルギーは14小節目の高音E5への跳躍に用いましょう。付点音符は重くならないように。スキップをするイメージで軽やかなリズムにしましょう。35小節目のような音型のデクレッシェンドは、短い音符を軽やかにすることで作れます。語尾を重たくしないことです。(♯β)

 

A. 4曲目にして初めて出てくるものが3つあります。1つ目は、Allegretto cantabileという速めの速度表示、2つ目は途中で出てくる付点のリズム、3つめは3拍子であることです。

1つ目の速度に関しては、この曲独特の長いフレーズが関係しています。一つ一つの全音符に気をとられすぎずに、8小節ないし16小節からなるフレーズを意識することです。特に初めの跳躍進行である4小節目の「ファ」が遅れがちであり、また取ってつけたようになりがちなので、長いフレーズの途中にすぎないことを意識するとよいでしょう。

そして2つ目の付点のリズムです。中間部に急に現れます。跳ねるリズム感を、手や体で表現してみましょう。長い音符の後、力を抜くことによって跳ねます。力が抜けない人が多いです。付点とは、バスケットボールのドリブルの感覚です。手首の力を抜いて地面にバウンドするのです。

3つ目の、3拍子の拍子感では、日本人には苦手なことが多いです。リズム感を身につけるにはダンスのステップを踏んでみるとよいです。ワルツは遅いテンポでは拍ごとに足を踏みかえ、速いテンポでは1,2拍は、1踏みです。いずれにしても3拍目で回転し、スカートをくるっと回します。(♭∴)

 

A. 一言で言うと静寂の音楽、声も心も明鏡止水を目指して練習しましょう。

音域も広くなく、跳躍も少ないので、同じポジションで歌うことを心がけてください。

はじめの16小節間は長い音符が続きます。こういった音形は歌が遅くなりがちなので、伴奏のリズムに乗るように心がけます。

17小節から現れる付点のリズムは、1拍目最後の16分音符と2拍目をつなげるつもりで歌うとリズムが立ち、声の流れもよくなります。(♯∂)           [2002]

Q. コンコーネ50の5番の歌い方について教えてください。

A. 最初の2小節単位の2つのフレーズは、スラーに従ってレガートで歌いましょう。冒頭のpを気にし過ぎて、萎縮せずに、ていねいに歌い、どちらのフレーズも、最後の音に重心を置いて、<>を軽くつけましょう。高音域が得意な人は、始まりのフレーズの終わりが、難しいかもしれません。うまく着地して<>をつけましょう。

5小節目からの2小節は、スラーがなく、ブレスの後にはスラーが付いているので、始めはダイナミックに動き、ブレスの後からはきれいにレガートにしましょう。このフレーズの前半は、跳躍が大きいので、慎重に取り組み、フレーズの途中で、チェンジしないように、気をつけましょう。低音域が得意な方は、まだ曲が始まったばかりなので、高音で爆発的な声にせず、しっかり支えて柔らかい高音にしましょう。続く二つのフレーズも、<>をうまく付けながら、ロングトーンの後の跳躍した音程を、きれいに決めましょう。

次の第6音からの長い下向音型は、最後の音以外は、順次進行なので、きれいに音程を外さないように、歌わなければいけませんが、レガートにならないように、気をつけましょう。

続くフレーズの注意点も、これまでと同じです。22小節目の始めのブレスの後は、高音域が得意な人は、一番素晴らしい声でレガートで歌いましょう。低音域が得意な人は、やや爆発してもよいですが、必ずレガートで歌いましょう。

次のブレスの後は、伴奏もないので、楽譜にあるようにテヌートをつけましょう。後は始まりと同じフレーズが続くので、曲の終わりらしく変化をつけましょう。跳躍とレガートとノンレガートを、しっかり練習しましょう。(♭Ξ)

 

A. 伴奏が3連符で流れるように動いていますのでこの流れに逆らわず寄り添うような気持ちで歌ってください。あくまでもレガートのための課題ですので、一つ一つの音がぶつ切りにならないように気をつけましょう。

5小節のレの音から次への跳躍は1オクターブと、とても大変ですので低いレの音を頑張りすぎず響きだけを保って歌い、次の跳躍の準備をすでに始めましょう。

7小節1拍目のファの音は直後のブレスの為に早めに切りましょう。

9、11小節のファの伸ばしは軽いクレシェンドをかけると跳躍しやすいです。

13小節~16小節へは音程が下降していくので響きを失わないようにしましょう。逆に音程が下がるほど響きが増すつもりで行いましょう。

22小節のドミは跳躍が大変なのでその前の21小節からのソの伸ばしがクレシェンドをかけながら次の音へ向かっていく準備を行ってください。

この課題は基本ヘ長調ですが16小節~24小節三拍目まではハ長調に転調しています。24小節4拍目の♭シからヘ長調へと戻るので大事に歌ってください(♭Σ)

 

A. 2分音符、全音符と、のばす音が多いので、息のコントロールがとても大切になります。拍をとり過ぎて縦割りのようになると、ますます息が続かなくなるので、息の流れが停滞しないようにフレーズの先を見据えて歌いましょう。

一つの音でクレッシェンド デクレッシェンドをつける(3段目3小節他)ときは身体を保ちながら、飛躍の音に向かってクレッシェンドをするとき(2段目2小節、4段目4小節)はより身体を踏ん張ることで息をコントロールするなど、フレーズによってアプローチの仕方はさまざまです。歌い方が一辺倒にならないことです。音源があれば、のばす音で伴奏の和音が変化しているので、それを聴きながら歌う練習をすると、実践しやすくなります。

転調から始めの調に戻るときの「シ♭」はテヌートが付いているように、焦らず丁寧に入り「シ♭」の一音でへ長調を感じさせる(自分も感じる)歌い方をしてください。(♯α)

 

A. レガートに歌うための訓練として用いるとよいでしょう。そのために必要な要素が詰まっていると思います。2分音符が目立ちますが、ここで物理的には2拍分の長さを保ちつつ、考え方としては、次の休符までをひとまとまりと考え、そのひとまとまりのフレーズを自分の中で停滞させずに、絶えず進めていくように音楽を作っていきましょう。

途中に出てくるクレッシェンドやデクレッシェンドは、派手過ぎない程度に、意識的にかけていくように心がけることによって、より歌いやすくなっていくと思います。

スラーが使われている部分はより一層歌いこんでいくとよいと思います。歌のパートだけを見ると、どうしても「長めの音符がたくさん使われているから、たっぷり伸ばして歌おう」と思いがちですが、ピアノの右手を見てみるとわかるように、8分音符の3連符が続いています。この部分を感じ取れれば、音楽が絶えず進行していく感覚をつかみやすくなると思います。その中で、ソルフェージュ的には和音の移り変わりを予測して感じられると、より一層音楽的に歌うための練習につながっていくのではないかと思います。和音の変化を予測して感じながら、立ち止まらずに絶えず進んでいくということを大事にしてみてはいかがでしょうか。(♭Я)

 

A. 4分の4拍子ですが伴奏形が三連符×4なので、まるで8分の6拍子のようなリズム感に感じられます。この8分音符の流れに乗って、1小節を2拍のようにカウントしながら歌うと歌いやすいと思います。

17小節目からは短調の様子も呈しながら8小節かけてハ長調に転調しています。そしてまた26小節から再現部が始まり、終結を迎えます。

最初の2小節、次の2小節は一つのフレーズとしてとらえて歌い、次の5小節目から8小節までの4小節を一つのフレーズと捉えるといいでしょう。ほとんどが2分音符で書かれているので、長い音符を、拍感を止めることなく、音楽の流れに合わせて歌うことが重要です。

ロングトーンを練習しているときには、拍感が止まっていることがあると思いますが、この曲では、長い音符も流れをつかんで歌いやすいと思います。

5~6小節目、10小節目、11~12小節、20小節目、22小節目など、音が上向する際にエネルギーをもって上がるように意識しましょう。(♯β)

 

A. 曲の頭にpピアノと書かれています。4番までの曲には松葉(クレッシェンド、デクレッシェンド)はあっても強弱の指示はありませんでした。つまり、音量の増減は曲の中で自然に作るとしても、基本的な音量に関しては歌いやすい音量で歌えばよかったのです。

この曲ははじめから最後まで、静かな音量を保たないといけません。それゆえ、最高音は中声用でレまでであり、4番までの最高音が(中声用で)ミであったことを考えると低く、ピアノの表現を充実させてほしいという作曲家の考えの表れだと解することができます。

曲の中身に入っていきましょう。まず4小節目での急激な転調。かなりショックを感じるはずです。少し速めにその和音に入ることでショックを表しましょう。はじめのフレーズは8小節ありますが、その後は6小節目で広がりを感じながら7小節目を頂点とし、自然に8小節目に向けてフレーズを終わらせます。7小節目の低いファがそこまでの頂点です。

次の16小節が中間部です。中間部はまず初めの4小節が4度調(変ロ長調)になります。転調している間は余り時間をとらずにサクサク進みましょう。

次の4小節で頂点に向けて曲を盛り上げていきます。音形は下がっていきますが決してテンションを下げていかないこと。次の8小節は頂点の中にいるため、やはり低い音域ですが響きもテンションも下げないことが大切です。(♭∴)

 

A. 優美な分散和音に乗って歌う曲です。刻々と色を変えていく和声をよく感じながら歌いましょう。2小節ずつの起承転結を4回繰り返す構成です。その4回が大きな起承転結となっています。テクニックとしては第一に、長いフレーズをぶれずに歌える息の使い方です。まず同音のロングトーンで体の使い方を確認するといいでしょう。

第二に、弱音を中心とした強弱のつけ方です。決して乱暴な声にならないよう、口腔内を柔軟に使ってクレッシェンド、デクレシェンドを練習してください。

10小節、20小節に現れる、フレーズの最後がヒョイと上行する部分は、とても難しいと思います。ここで何かやろうと思うと失敗しがちですので、フレーズの始まりから体を筒のようにまっすぐあけて、自動的に声がその場所に入っていける状態を作ります。

12小節からのフレーズは8番にも和声を変えて登場します。コンコーネには同じフレーズの変化形が至る所に登場します。それを並べて練習するのもいいと思います。(♯∂)

                                  [2003]

 

Q. コンコーネ50の6番の歌い方について教えてください。

A.冒頭にAndante sostenutoと指示があるように、ゆっくり目に歌う練習曲です。1小節が狭く窮屈に書かれていますが、見た目に惑わされて、速くならないように、気をつけましょう。最初の4小節で、1オクターブ上行するので、チェンジをどうするかが、声種によって変わってきます。クラシックを目指していない人は、途中でチェンジして、歌いやすい声で取り組みましょう。最初のフレーズから、2小節以上のロングトーンが、頻繁に使われています。安定して出せるようにしましょう。上級の人は、<>もつけて練習してみましょう。35小節目からの、少しずつクレッシェンドしていく部分は、初歩の人も、しっかり取り組みましょう。

曲全体を通して、ほとんどスラーはないので、スラー以外の部分では、レガートにならないように、気をつけましょう。曲の途中、二重線の前の、41小節目からのスラーは、しっかりレガートで歌いましょう。二重線からの後半は、Majeurになるので、明るく伸び伸びと声を出しましょう。4小節続くロングトーンが2回出てきます。気持ちを込めて、ダイナミックにも歌えるように練習してみましょう。(♭Ξ)

 

A.これまでの課題よりも音の持続力、跳躍が大変な課題です。常にレガートを意識してください。冒頭のsempre sotto voceは、「常に(いつも)柔らかく歌う」といったような意味です。ですから跳躍の音を張り上げたり力んではいけません。

3小節のブレスは柔らかく吸いましょう。このブレスを強く吸いすぎると体が固くなり次の跳躍が大変になります。同様に7小節のブレスも気をつけましょう。以下のブレスも同様です。

14小節の#ソの音は、この調性で特に大事な音なので大事に歌いましょう。音程が下がってしまうことが多いです。

27小節のミ~♭シへの跳躍は減5度という難しい音程なので確実にとれるようにしてください。

35小節からcresc poco a poco「次第に大きくなる」と記してあるので40小節のレの音が一番盛り上がるよう膨らませていってください。

41~44小節までは短調の曲の終りなのでフェルマータに向かって多少rit(ゆっくり)してもかまいません。

45小節からは伴奏も長調になり曲全体が明るくなるので、短調よりも明るく歌おうと思ってください。47小節#ド、初めて長調の音が出てくるので大事に歌いましょう。(♭Σ)

 

A.急がずにゆったりとしたテンポで、息が足りなくならないよう、曲全体においてしっかりと息をコントロールすることが求められます。始めの1、2段目にあるラドミの上行形は、デクレッシェンドをしようとして喉が締まっては逆効果です。その場合にはラドミで声が膨らまないよう維持する(音量を一定にする)というつもりで歌うとよいです。

曲全体において、3小節または4小節にわたってひとつの音をのばす箇所がたくさんあります。クレッシェンド・デクレッシェンドはもちろんですが、声をのばしながら伴奏の和音の変化を聴く練習としても最適です。特に3段目の3小節で短調から長調へ転調し、5段目の5小節でまた短調へ戻る箇所は、同じ音を歌う中で音色の違いを感じてみましょう。また、5段目の6小節からあるcresc. poco a poco- - -f は、少しずつクレッシェンドして、その後明確に強弱記号がある通り、しっかりと「f(フォルテ)」にもっていくことで、曲にメリハリがつきます。(♯α)

 

A.楽譜を見ると、音を伸ばしている部分と、跳躍している部分の2パターンが比較的目立つと思います。「Andante sostenut」は、「歩くような速さで、音を保って」となるので、伸ばしているところも跳躍しているところも、客観的な聞こえ方のところで差がないように、音がスカスカにならない状態で演奏できるとよいのではないでしょうか。その際、声は力み過ぎないように気をつけたいところです。

音を伸ばしている部分では、クレッシェンドとデクレッシェンドが目立ちます。このクレッシェンドとデクレッシェンドは積極的に活用しましょう。単純に音量の問題としてとらえるのではなく、しっかり体でコントロールされた状態で強弱が表現できると理想だと思います。音が上行系で跳躍している部分にデクレッシェンドが書かれています。こちらは体のコントロールを、より一層必要とされる部分になります。

長調への転調の前には、唯一のフォルテが書かれていますが、その前は少しずつクレシェンドをかけるように指示があります。この部分も派手に大きくするのではなく、緻密にコントロールできるとよいですね。このように、音だけを見れば難しいことがなさそうに思える曲ですが、楽譜に書かれていることを忠実に守ると難易度の高い、練習課題としてはとても役立つものになると思います。(♭Я)

 

A.andante(歩く速さで)のテンポ指定ですが、1拍1拍踏みしめるように拍を感じるよりも、3拍子を一つとしてとらえて音楽のまとまりを感じながら歌うと歌いやすいでしょう。構成としては45小節目に「Majeur」とありますように、1小節目から44小節目までが短調で後半が長調です。前半3段目からはFdurになり長調の要素を見せますがすぐ短調に戻ります。次の長調との関係は、同主調といわれるもので、いわゆる主音が同じ短調長調の関係です。どちらもラを主音とする長音階短音階で構成されているのです。長調に入ってからは、音楽をより幅広くおおらかにとらえるとその変化がついていいでしょう。

楽譜に常にクレッシェンド、デクレッシェンドが記載されていますが、音楽が常に動いているという意識を持つのに役に立つと思います。デクレッシェンドは自分の中に音を引き入れて小さくするのではなく、むしろ、自分の外に音を絞っていくようにイメージすると歌いやすいと思います。(♯β)

 

A.前半は短調です。この曲集で初めて短調の歌いだしとなります。短調を悲しく聞かせるためには第三音(中声用では「ド」)を気持ち低めに歌うことです。基本的には静かな声で囁くように歌います。そのためにはしっかりしたお腹での支えがなければなりません。技術的には初めの4小節間にすべての難しさがあります。上行し続ける音形でも、コンコーネ1番は順次進行(音階の順に音が並ぶこと)であるのに対して、ここでは跳躍進行であり、難しさが増します。

まずは復習として順次進行で(間に旋律短音階の音を入れて)歌ってみてください。これだけでも、初めて短調の音階を歌う練習をすることになるため、得るものが大きいと思います。

次に、楽譜通りの音を歌うのですが、音と音の間をグリッサンドで埋めてみてください。ゆっくりとグリッサンドでつなぎます。グリッサンドの練習をしてもらうと、多くの人は動きが速すぎます。まず初めの音を十分響かせて、共鳴の位置を感じてからゆっくり動かし始めます。半音でさえ遠く感じるほどゆっくり。スポーツでもそうですが、ゆっくりやることで筋肉や、普段は意識できない不随意筋を意識していくのです。なお、これらの練習をするときにはsotto voceに拘らずメゾフォルテくらいの自然な音量で練習しましょう。(♭∴)

 

A.初めて短調の曲が登場しました。短調だからといって声の出し方を暗くする必要はないですが、伴奏をよく聴いて、仄暗い和声を味わいながら歌えば十分です。曲の後半は長調です。これもことさら声を明るく変えようとは考えず、雲が晴れるような和音の変化に耳を傾ける余裕さえ持っていれば大丈夫です。

技術的には、3~4小節のデクレシェンドと上行が難しいと思います。ブレスのときに考えるのは次の音ではなく、フレーズの最高音です。そうすれば無理なく体の準備が可能になります。

伴奏は何かを掻き立てるような音型のため、ともすれば興奮して声の制御が効かなくなりがちです。しかしこの曲で最も重要なのは、落ち着いてメッサ・ディ・ヴォーチェ(ロングトーンを小さく始めて大きくし、また小さくしていく)を聴かせることです。恐れずに息を前に進めつつ、横隔膜でしっかり支えながら歌います。そしてクレッシェンドはぎりぎりまで我慢し、デクレシェンドには早めにとりかかるのが、立体的に聴かせるコツです。(♯∂)                        [2004]

 

Q. コンコーネ50の7番の歌い方について教えてください。

A.曲の冒頭に、Moderato cantabile(中庸の速さで歌うように美しく)と記されていますが、現代の私たちの感覚では、少し違和感を覚える部分が、何カ所も出てきます。その部分を、美しく歌えるように練習することが、この曲の狙いです。

最初の2小節は、2分音符が2つ続いた後に、複付点の4分音符と16分音符が現れます。スラーもついているので、なめらかにレガートに歌うなら、複付点ではなく、付点4分音符と8分音符の組み合わせの方が、しっくりときれいになめらかに歌えます。そこをあえて16分音符にしているところが、難しいところです。支えをうまく使って処理する練習が必要です。

3連符が多用され、伴奏も3連符なので、随所に出てくる16分音符が、3連符にならないように、気をつけましょう。7小節目からのフレーズの終わりは、4分音符よりも長く伸ばしたくなりますが、きれいに4分音符で終わらせましょう。

19小節目のスラーは、細かくて大変です。20小節目以降のアルペジオは、音を外さないように、繰り返し練習しましょう。スラーがついているいる部分と、ついていない部分が、不規則に出てきます。しっかり歌いわけましょう。(♭Ξ)

 

A.複付点と3連符が初めて出てきます。これまでのリズムと違いますが始めのうちはあまりハッキリとリズムを出しすぎないことがポイントです。このリズムを正確に出そうとすると喉でリズムをとりやすいからです。

冒頭にもcantabile(歌うように)とありますのでリズムを気にしつつもあくまでも音楽を大事にしてください。

1小節の#ファの音を正確にとりましょう。この音程が低いとその後もあまり音程が定まらなくなることが多いです。

3小節3拍のド、4小節3拍のファは響きが落ちやすいので音量を出しすぎず高い音と同じポジションで歌いましょう。

6小節の細かいリズムは全部をハッキリ歌おうとすると息の流れが悪くなるので全ての拍の最初の音に重みをかけてあげると歌いやすくなります。

9小節~16小節までは臨時記号が多くなっていますのでそれぞれ歌いわけれるように正しく歌ってください。

15小節は次のフェルマータに向かって多少rit(ゆっくり)になってもかまいません。

16小節の半音階は響きが落ちやすいのでしっかりと支えて下さい。

19小節から24小節までは音の跳躍が激しいので一定のポジションは響きで歌えるよう何度も練習しましょう。(♭Σ)

 

A.練習曲ではありますが、cantabile(表情豊かに、なめらかに)とありますので、それを存分に表現して歌いましょう。6番までと違う点は、複付点音符や3連符という新しいリズムが入ったことです。それにより、ひとフレーズ内の音の数が増えたこと、音の進行が速くなったこと、が特徴としてあげられます。

6~7小節にまたがるフレーズは、この二つの特徴がどちらも入っています。3連符が続く箇所は、音が走らずに滑らずにかと言って重々しくならないよう、レガートで声をつなぎたいです。そしてフレーズ末尾に複付点4分音符がありますが、喉で押さずに、お腹の支えでリズムを捉えましょう。

19小節の3、4段目のようにたった2拍で1オクターヴ上行し、その後3拍で1オクターブ下行する箇所があります。ポジションがあちこちに行かないよう、また音程を喉でアタックしないよう、息がひとつのラインとして歌える状態を求めてください。(♯α)

 

A.楽譜上は比較的シンプルに見えますが、テクニックとしてはそれなりの難易度を感じます。全体を通して音符の長さ、拍感は正確に出したいところです。また音の入りをずり上げずり下げなどなく、正確に正しい音程からスタートできることを心掛けたいです。

しかし、細かい音符などで声を頑張りすぎないことや音を必要以上に突きすぎないことに気をつけましょうしっかり鳴る声を大事にしつつ、声の強さだけに頼ったような過度なリズム表現は避けましょう。

2分音符や全音符の部分には、クレッシェンドとデクレッシェンドが書かれています。このダイナミクスを忠実に表現できるように心がけましょう。この部分は小手先の表現ではカバーしきれないので、体と声がしっかりリンクされていることが必要になります。ここは大変ですが、自分の声のコントロールを緻密にしていくのに役立つよい課題です。

最初の部分に強弱記号は書かれていませんが、このクレッシェンドやデクレッシェンドを両立できるレベルのダイナミクスを意識するとよいと思います。部分的に音の起伏が激しいところが出てきますが、声のポジションを変えないことも大事な要素だと思います。楽譜に書かれている指示を正確に演奏することを心掛けましょう。

(♭Я)

 

A.3度、4度、5度の跳躍が多いためいい練習になると思います。ピアノの右手が3連符の刻みになっているので、3連符のリズムに乗って歌うと歌いやすいです。上級者は3連符と16分音符がずれるように歌えると譜面をしっかり読めているということになります。

全体的な構成としては、最初の8小節がFdurで続き、Cdurで半終止します。次の8小節で短調の様子を呈しながらやはりFdurを行ったり来たりしてふたたびCdurで半終止します。最後の8小節で3連符の3度の連なり(分散和音のような形)でコーダに向かいます。

細かく見ると、2小節ずつの対話のようになっているところが多々出てきます。フレーズ感を持って歌いましょう。たとえば最初の1~2小節で問いかけ、3~4小節で解決する、9~10小節で問題提起する、11~12小節でその問題を受け取る、13~14で同じフレーズがバリエーションになる、15~16小節で解決し半終止形でフェルマータするといった具合にです。(♯β)

 

A.符点のリズムが出てきます。符点のリズムを勘違いしている方が(専門家を含め)多いので、そのことについて述べます。符点は1拍を3対1にわけるものでは「ありません」!

モーツァルトのお父さん(レオポルト・モーツァルト)の本「ヴァイオリン奏法」に、符点はテンポが遅い場合は複符点のように演奏するように(つまり7対1で後の音が短かめになる) 、と書かれています。もっと古くバッハの時代から、符点は3連符と一緒に演奏する場合は3連符に合わせる(つまり2対1で後の音が長めになる))という規則があり、この規則は現在でも有効です。結論からいうとこの曲は符点は3連符で通して演奏してよさそうです。

実際に頭からこの曲を見ていきましょう。1小節目3拍目からすでに一時的な転調があり、かなりショッキングです。5小節目の3拍目も同様です。歌は伴奏よりも先にそのことを察知して、1小節のはじめのファの音を次の♯までかなり持っていくイメージで。

5小節目で歌にできることはなさそうに見えますが、伴奏の転調を誘って上げるためクレッシェンドを早めにかけて歌い込んで下さい(実際にクレッシェンド位置が前目に書かれていますね)。カンタービレ(歌うように)は、クレッシェンドやデクレッシェンドを自由にたくさんかけて下さいという意味に取るとよいことが多いです。

(♭∴)

 

A.まず、半音階の進行を正しい音程で滑らかに歌うことです。今までの曲と違って、しばしば臨時記号が現れます。ほとんどが経過音=大事な和音に至る途中の寄り道のような音です。そんなに身構えずに通り過ぎればよいのです。

寄り道というのは人生も音楽も豊かにしてくれる要素です。よき寄り道をするための具体的な方策ですが、頑張ってその音を強調したりしないこと、伴奏の和声をよく聞くこと、前後の音と段差を作らず滑らかに移行する(息の流れを止めない)ことです。そうすればフレーズ全体が自然にまとまります。

次に、付点と3連符の歌いわけに留意しましょう。付点は3:1、三連符は1:1:1です。伴奏はずっと3連符ですので、2小節目の2拍目裏は歌と伴奏がずれるのが正解です。対して、3小節目や6小節目の、タイで前の音と繋がった3連符は遅れがちですので、伴奏ときっちり合わせるように気をつけましょう。(♯∂)            [2005]

 

Q. コンコーネ50の8番の歌い方について教えてください。

A.Andante sostenutoですから、ゆったりと、速くならないようにしなければなりません。そうしないと、この曲の課題は、とても難しくなるので、注意しましょう。

スラーが細かく付けわけられています。まったく同じメロディでも、スラーを付ける部分が変えられているので、よく見て練習しましょう。

始まりの4小節は、2小節ずつスラーが付いているので、2小節ずつレガートにします。続く4小節はスラーがないので、ノンレガートで歌います。そして、続く始まりの4小節と同じメロディは、4小節全体にスラーが付いているので、途中で切らずに、4小節のレガートにします。スラーの始まりが、8小節目の3拍目、ブレス記号の後から始まっていることを、見落とさないように気をつけましょう。次の4小節は、2小節目の3拍目からスラーが付いているので、ノンレガートで始めて、途中からレガートにします。

続く17小節目からの8小節は、ほとんど同じ4小節ずつのメロディですが、前半は3、4小節目全体がスラー、後半は、2小節目3拍目から、4小節目1拍目までがスラーになっています。ブレス記号の有り無しまで変えられていて、ほとんど意地悪問題のようです。

次の25小節目からの8小節は、4小節ずつの下向音型で、臨時記号も付いた、歌い甲斐のある音型です。前半は2小節ずつのスラーで、スラーの中にブレス記号があり、とても歌いづらくなっています。後半部分も同じ箇所にブレス記号がありますが、スラーは4小節全体的につながっているので、前半と同じように歌ってはいけません。

33小節目以降は、通常のスラーになるので、やっと落ち着けます。37小節目と39小節目のスラーに挟まれた、38小節目のアクセント記号は、音程を外したりしないように、繰り返し練習しましょう。(♭Ξ)

 

A.レガートのための課題です。ただしレガートを意識しすぎて音楽が止まらないようしましょう。曲としてはそれほど長くはありませんが難しい課題です。

8小節のド~#ドへの移行をていねいに、ブレスで体がほどけないようにしましょう。

13、14小節で低い音で落ち着きすぎないよう常に前にすすんで下さい。

24小節のファの音の響きを高く、28小節までは響きを保つことを最優先課題としてください。29小節~32小節も同様です。

33~36小節は全て36小節のレのポジションで歌ってください。ファからレへの跳躍はとても大変ですのでポジションを落とさず徐々にcrescをかけながら上降してください

36小節のレから37小節のミへの移行は間に休符がありますが、テンションや流れ、勢いは絶対に落とさないで下さい。

38小節はアクセントがかいてありますが、これは喉ではなく横隔膜での柔らかいアタックだと思ってください。

(♭Σ)

 

A.Andante sostenutoは、andante(歩くような速さで)のテンポより少し遅くという意味なので、それを考慮すると旋律をレガートで歌うために、かなり横隔膜を保って息をコントロールすることが求められます。息が足りないのにひと息で歌おうとして喉が力むことは避けたいのです。(必要な人は)はじめのうちは提示されている以外にもブレスを増やして練習しましょう。

28~29小節は、8分休符の後で1オクターブ以上の飛躍があるので遅れやすく、喉が上がりやすい箇所です。同様に33~36小節も、タイの後の裏拍が遅れやすく、そのせいで喉を押してしまう傾向があります。この2ヶ所が歌いにくいと感じる人はきちんと部分練習をしてください。

37~40小節は8番の山場と言えるフレーズですが、喉でアクセントをつけてしまわないように、はじめは母音ではなく階名や子音を入れた発音(SaやHaなど)で練習すると安全に感覚をつかみやすいです。(♯α)

 

A.レガートに歌う要素が必要な課題です。しかしながら、最初からレガートを意識しすぎると、音程が不鮮明になったり、本来のレガートな歌唱で必要とされる発声のテクニックを使えない状態で歌うことになってしまう可能性があります。客観的に聞いて、声や音程が「うねる」状態になっていたとしたら、それはレガートではありません。

最初の練習としては、声が硬くならない程度に、少し几帳面にソルフェージュをしているくらいの明確さを意識するとよいと思います。歌いすぎないでシンプルに発音しているくらいの声がよいのではないでしょうか。

ダイナミクスに関しては、後半にpp(ピアニッシモ)が出て、少しクレッシェンドをかけつつも、最後はディミヌエンドで終わっていくので、この部分は相当なテクニックを要します。

前半の部分は、後半の制御に耐えうるように派手になりすぎないボリュームではじめるとよいでしょう。ボリュームのコントロールとバランスを大事にすること、うねらず力まず几帳面に発音すること、そのうえで、スラーをヒントにフレーズのまとまりを大事にすること、クレッシェンドやデクレッシェンドに注意しながら歌うこと、そうするとよい課題になると思います。(♭Я)

 

A.曲の構成としては1~16小節、起承転結の「起」のように同じようなメロディが2回続きます。次の8小節は「承」、同じ調のまま少しだけ音形が変化した部分。次の8小節でcmoll d moll というふうにちょっと複雑な転調を4小節ずつ経て、次の8小節は今までずっと下降形だった音形がはじめて上行形に変化し、12度ものアルペッジョでしめくくられます。最後にコーダ4小節で終わります。

基本的に下降形のフレーズなので、上向形に比べれば歌いやすいのではないかと思います。よく息を流して、3拍子のリズムにのって歌いましょう。1小節を3つにとらずに、円を描く感じで1小節1つにとるといいでしょう。

13小節の4度は下から取るのではなく上から音にアプローチするといいでしょう。19小節目の前打音は素早く歯切れよく歌ってください。25小節からの下降音は臨時記号の音程によく気をつけてください。26小節目の「♮シ」の音が低くなりがちなので、高めに、下降すると思わず歌うのがコツです。29小節目の12度の跳躍は、前の音「ド」をその音のポジションで歌わず、次の「♭ミ」のポジションで歌うとよいでしょう。33小節目~2度、4度、5度の跳躍する音程に気をつけてください。(♯β)

 

A.Andante sostenuto(歩く速さで 音をよく保って)ですが、遅すぎるとフレーズを作るのもブレスも難しくなるでしょう。はじめの4小節が1つのフレーズに聞こえる速さでなければなりません。音が下がってきますが、フレーズは「上向き」ですので落ちてこないように。

一般に音楽は始まってから盛り上がっていきますので、下降音形でも曲のはじめなら盛り上がっていきます。曲の盛り上がりが音の高低に一致してしまう日本人特有の現象を「音高アレルギー」といい、よくないことです。

17小節目「ファー」で伸ばしているときにピアノをよく聞きましょう。伴奏との声の扱い方の練習です。よく支えて張りのある声で伸ばします。

33小節目ppはテンションを下げないように。緊張感が高いところです。8分音符が絶対に遅れないように。書かれているより早めに動いて構いません。

37小節目「ミレドシラソ」で絶対に落ちないように!!その次の小節の頭の低い「ファ」がこの曲の頂点なのです。その後のアクセントは大見えを切るように、時間を使っていいでしょう。リットせずに普通に終わるといいでしょう。二部形式で、はじめのテーマが戻ってこないのも特徴です。(♭∴)

 

A.どれだけ滑らかに声を続けられるかが課題となる曲です。表情豊かな経過音がたくさん出てくるので、滑らかさと正しい音程の両立が大切です。

最初にあえて全てスタッカートで歌ってみて下さい。そうやって体の使い方と音が頭に入ってから、レガートで歌いましょう。

コンコーネはアなどの母音唱で歌う人が多いと思いますが、この曲は階名(ドレミ唱)でもやってみましょう。たくさんの母音、子音が入り混じる階名唱できちんと歌えれば、歌詞のある曲を歌うのに役立ちます。

3拍子の3拍目が粘ってしまうとどんどん遅れてくるので、リズム感が弱いという自覚のある人はメトロノームに合わせて練習するのがおすすめです。(♯∂)   [2006]

 

Q. コンコーネ50の9番の歌い方について教えてください。

A.コンコーネは練習曲なので、歌いやすさ、親しみやすさとは、真逆のメロディーやフレーズになっていることが少なくありません。これは3拍子のゆったりと歌う曲です。

全部で32小節ですが、24小節で休符にフェルマータが付き、一区切りした後に8小節が続いて、曲は終わります。

冒頭の小節は、1拍目から始まりますが、次の小節からは、3拍目から始まる小節が続きます。始め2小節は、順次進行で、スラーもついているので、レガートに美しく歌いましょう。

3小節目は、6度の跳躍もあり、レガートもついていないので、音程が甘くならないように気をつけます。4小節目は、第3音に臨時記号がついているので、短調感をしっかり出しながら、スラー通りに、レガートにします。ここでメロディとしては、一区切りつきます。

続く5小節目では、第3音の臨時記号が、ナチュラルに戻っているので、長調感をしっかり出すことを大切に、スラーもなく、6度の跳躍と7度の跳躍があるので、いきいきと歌いましょう。

さらに6つ目の小節も、7度の跳躍から始まり6度の跳躍もあるので、いきいきと続けます。この、5、6小節には、アクセント記号が同じ部分に付いているので、うまくいかさないといけません。続く7、8小節は、ほぼロングトーンの7小節目に、8分音符の多い8小節目がつながっているので、8小節目を出遅れないように、気をつけます。

この曲はヘ長調で書かれていますが、ここからフェルマータまでの小節は、ハ長調として歌うのが、簡単です。フェルマータの後は、冒頭と同じ小節で始まりますが、締めくくりの小節は、スラーと休符の位置に気をつけて、慎重に練習しましょう。(♭Ξ)

 

A.8番の延長上の訓練です。Lentoと表記してありますので決して早くならずレガートを意識してください。伴奏が常に動いていますので伴奏を感じながら歌うと歌いやすくなると思います。

4小節から5小節にかけての下降形の響きを落とさずに歌うわないと次のドへの跳躍で段差がついてしまいます。

10小節1拍の跳躍、12小節1拍の跳躍は低い音を出しているとき既に次の高い音へ向かっているつもりで出しましょう。

16小節の#ファは伴奏がないので丁寧に歌いましょう。

22小節の下降形はラとファの音が2回ずつ繋がるので2回目を上から取り直すつもりで歌いましょう。

28小節3拍目~29小節にかけては跳ねすぎずレガートで歌えるよう心がけましょう。(♭Σ)

 

A.しっかりと横隔膜で支えた上で、曲全体をレガートで歌うことを求めて練習したいです。

特に10小節目の高いレは、飛躍した音で8分音符と短く、さらにアクセントがついています。その音だけを意識し過ぎて喉で押してしまわないように、その直前のミの音で横隔膜が緩まないようしっかり支えておくことが必要です。12小節目の高いレも同じです。

音域はドから1オクターヴ高いミ(又はファ)までの幅で、8番までと比べて頻繁に旋律が上がったり下がったりしています。横隔膜を保つことは、このような旋律でもポジションがあちこちに行かず安定させる役割にもなります。

18、20小節目は、ブレスが()カッコで記されていますが、始めは無理をせずにブレスを入れて練習しましょう。なお、ブレスなしで歌う際には、17小節目のデクレッシェンドで横隔膜が緩みやすいのでしっかりとした支えを意識することです。(♯α)

 

A.速度的にはLentoで強弱的にはpで書かれています。緩やかな速さで、乱雑にならずに丁寧に歌うことを心がけてみてはいかがでしょうか。

pと書いてあると、つい「弱く」ということを思いがちですが、声が弱々しくなってしまうだけでは練習にならなくなってしまうので、弱くというよりは丁寧なイメージを持つといいと思います。イメージがつきにくい場合、慣れるまでは、程よいボリュームで、フレーズのまとまりを感じながら歌っていくといいのではないかと思います。

ある程度慣れてきて、楽譜通りに歌うことに対応できる場合は、書かれているクレッシェンドやデクレッシェンドを丁寧に再現してみるといい練習になると思います。これらのコントロールは体も集中力もとても必要とされますが、声を自在にコントロールできるようになるための練習としてはとても役立つと思います。

音を正確に歌うことはとても重要なことですが、必要以上に狙わないことや、音を当てに行かないことなども重要な課題だと思います。音の跳躍部分で、狙ったり当てに行ったりして、声も音楽も違和感のある状態になってしまう場合は、注意が必要です。楽譜に書かれている内容で、それを正確に再現できるようにすることを基本として、書かれていない歪な音楽にならないように注意しながら歌うようにしてみましょう。(♭Я)

 

A.8分の9拍子で、ゆったりとしたテンポで歌いましょう。しかしゆっくり歌いすぎると息もつらくなるので、8分音符3つで1拍と捉えるといいでしょう。

曲の構成としては、最初の4小節でテーマを提示し、次の4小節で転調しながら受けています。

9~12小節と13~16小節もメロディが対になっています。17~24小節まではそれまでFdurだったのが5度上のCdurに転調しています。18~20小節は冒頭の再現として現れますが、最後の4小節で結びとなります。

クレッシェンドとデクレッシェンドが全体に何度も出てきます。音楽を小さい範囲でとらえると、フレージングがつけづらいので、このクレッシェンド・デクレッシェンドを利用しながら大きくフレーズをとらえましょう。

3連符のようなリズムになっている8分音符の連なりは音程が正確になるよう心がけましょう。

17小節のアウフタクトからCdurに移行しますが、このアウフタクトは音量は小さくともしっかり体で支えて、次の上向するメロディに備えてください。上向した一番高い音で音を支えるのをやめてしまう人がいますが、次の8分休符まで歌うつもりで支えをやめないように気をつけましょう。(♯β)

 

A.うめくような低い伴奏から始まります。Lento(遅く)の指示がありますが、8分の9拍子なので遅すぎないようにしましょう。

一般に分母が8の場合、一小節を一つの単位と感じられるようなテンポ設定をする必要があります。練習として、速めのテンポで歌ってみてください。1小節を1拍と感じ、2小節を1拍と感じ、4小節を1拍と感じられるように練習します。

遅めの曲はこうやってテンポを速めて練習しておくと、構成が聞き手に分かりやすくなります。いずれにしても、伴奏の8分音符がきちんと話せるようなテンポを設定するといいでしょう。

形式は3部形式(ABA)で、Aがはじめの8小節、Bがその次の16小節、Aが最後の8小節です。

新しく曲を見るときは、頭から追っていくのではなく、ざっと楽譜を眺めて、どことどこが同じか、変なところはどこか、大きいところから見ていきます。

そうやって見ると初めに気が付くのは、Aに戻るところのフェルマータです。絶妙によいタイミングにしないと間延びしてしまいます。Bの部分(中間部)に特徴があります。Bの頭、フレーズがアウフタクトから始まるものが続きます。どんどん畳みかけて盛り上がっていくように。また小節をまたぐときに仕切り直さないようにしましょう、フレーズの頭がアウフタクトなのですから。Bの後半八小節、伴奏がスカスカですが、遅くならないように。あまり意味を持たせないように演奏してください。一般に中間部で初めて出てくるテーマには意味を持たせすぎないのがいい演奏のコツです。

この曲の頂点はB最後の2小節、その低い音です。なんと盛り上げの難しいこと!少なくともテンションを落とさずに。(音高が高くなると盛り上がり、低くなると盛り下がることは、最も嫌われることです。)(♭∴)               [2007]

Q. コンコーネ50の10番の歌い方について教えてください。

A.10個のフレーズからできている曲です。始めの6個は2小節単位、残る4個は4小節単位ですが、最後だけロングトーンになっているので、余分に2小節ついています。

始めから8フレーズは、1拍目から始まり、残りの2フレーズは、3拍目から始まります。曲としては、不自然な作りですが、練習曲なので、この不自然さを、自然な流れとして聴かせなければなりません。始めの6個のフレーズには、全てスラーが付いているので、レガートで歌わなければいけませんが、4個目までのフレーズは、長い音符に挟まれて、16分音符が入っています。レガートの中でうまく処理できるように(弾み過ぎてしまわないよう)、練習しましょう。

4小節目の臨時記号は、特徴的な音なので、しっかり決めましょう。5小節目は、フォルテの指示どおりに入って、レガートを崩さないように気をつけましょう。

7小節目は、1小節半の長いロングトーンの後の、8分音符に入り損ねないように気をつけます。ここからのレガートも、見落とさないようにして、続く5度と6度の跳躍を、きれいに処理しましょう。続く小節目の始まりは、最高音のロングトーン1小節半です。

ここからは先は、レガートは一か所しかなく、アタックも出てくるので、ノンレガートで、キビキビと音をさばけるようにしましょう。特に、9小節目の頭は、初めて3拍目から始まるので、入り損ねは厳禁です。曲の最後のロングトーンディミヌエンドは、始まりを早くすると声が持たないので、遅めに始めるようにしてみましょう。(♭Ξ)

 

A.この課題は伴奏の形と歌の旋律の違いを感じて歌うと面白くなってきます。

伴奏は常に8分音符で進行していくが歌の旋律は複付点で16分音符になっているので伴奏とは合いません。これを理解して歌う必要があります。

2小節の♭ミと4小節のソの音の響きが落ちないように気をつけましょう。その前の高い音と同じ場所で歌えるように。

7小節4拍のシの音はナチュラルなので高めの取りましょう。

17小節の♭ミの音はずり上がらずその音から入ってこれるように、その後の18、19小節の下降形で響き、体の支え、音色が変わらないように気をつけましょう。

22小節と26小節の上侯形のアクセントは喉でアタックせずに横隔膜でアタックできるよう訓練してください。

28~30小節の♭ラの音は押さずに揺れないよう気をつけてください。(♭Σ)

 

A.Allegro maderato(ほどよく速く)にassai(きわめて、非常に)がついているので、ゆっくりにならないよう「きわめてほどよい速さで」というテンポ感を持って歌いましょう。それにより、始めに出てくる付点のリズムも重くならず、軽快に捉えやすくなります。もし14、18小節の8分音符が滑ってしまう場合には、その前後の部分だけ予めテンポを落として練習しておきましょう。

曲全体としては、アクセントがついている箇所以外は常にレガートを意識することです。15、16小節は、2分音符なのと音の幅もあるので、息の流れが停滞しフレーズが途切れやすくなるため、特に意識したい場所です。

22、26小節は、音が上行形でさらにアクセントがついています。ミの音に向かってアクセントを頑張るあまり、ただ押すような声になると力みで4分音符が維持できず短い音になってしまいます。勢いにまかせずに、しっかりとした横隔膜の支えの中でアクセントをつけてください。(♯α)

 

A.テンポとしては、比較的、快活な感じだと思います。伴奏が8分音符のリズムで刻んでいるのが特徴です。旋律は長めに伸ばす音符もあれば、付点で少し粋のいいリズムのように見える部分もあるというのが特徴です。でも、全体的にはレガートに歌うことを崩さないように心がけるとよいと思います。スラーでくくられたまとまりを大事に感じるとよいのではないでしょうか。

この曲のもう一つの特徴として、絶えず緩やかなクレッシェンドとデクレッシェンドがついていることだと思います。これを心掛けて演奏することは大変だと思いますが、テクニックを身につける上ではとても役に立つと思います。ぜひ指示を大事にして歌うようにしましょう。伸ばしている音でクレッシェンドとデクレッシェンドをかけることによって、声が凝り固まるのを防げると思いますので、かえって歌いやすくなっていくと思います。

多くの人が鬼門に感じる部分があるとしたら、17小節のミへの跳躍ではないでしょうか。この部分に関しては、音を狙うくせのある人は苦手に感じることが多いと思います。音を見過ぎて構えやすくなってしまうことが原因だと思います。コツは、その直前のラの音と口の形やポジションを変えないことです。同じラインの中で処理できるとうまくいくと思います。(♭Я)

 

A.曲の構成としては、最初の4小節、次の4小節が対になって始まります。

9~12小節では、8小節までに上昇した音が下降しながら進行し、13小節~16小節と17小節~20小節も上向下降の音形で対になっています。18小節以降も長いロングトーンの音形が対になって構成されます。

この曲に特徴的なのは、1オクターブの上昇がいろんな形で出てくるところです。13小節のミ♭の音は4小節かけて17小節の一オクターブ高いミ♭に繋がっていきますし、22~23小節にいたっては、たった2小節でオクターブに達さないといけません。オクターブの跳躍を歌うには、高い音が来てから準備をしていては間に合いませんので、フレーズの最初から、高く上がるぞという意識で歌い始めてください。

冒頭では3拍であったり、13小節意向だと6拍であったりと、長く音を伸ばす際は、拍感を失わず、その拍感も下向きのビートではなく上向きの跳ね上がるようなビート感を意識して歌いましょう。その跳ね上がりの結果、高い音に向かうようにして歌ってみてください。(♯β)

 

A.伸びやかなメロディを大らかに歌っていただきたい曲です。複付点や付点のリズムは正確に軽快に。

小節をまたいでタイで繋がれているロングトーンは、和声がどんどん変化していきます。

和声は変化しますが、歌い手が何かの作業をして声を変える必要はありません。耳をよく開いて伴奏のハーモニーを感じていれば、自然に和声にマッチした声が流れ出すでしょう。(♯∂)                             [2008]

 

Q.カーロミオベンの歌い方について教えてください。

A.冒頭はpから始まっていますが、低い音ではないので、弱くし過ぎると歌いにくくなります。恋人に歌いかける歌詞なので、やさしくていねいに歌いかける気持ちを忘れなければ、mfでもだいじょうぶでしょう。また、もしpで歌い始められたとしたら、下降音型が続きますが、すなおにデクレシェンドしてしまうと、これもまた窮屈な歌になってしまいます。自由にダイナミクスを動かしてよいでしょう。14小節目から始まるフレーズは、アッチェルランド(ややテンポアップ)して、逸る気持ちを表現してみるのもよいでしょう。
それに続く16小節目のfは、しっかりと準備をしておかないと、fまでもっていくのがなかなかむずかしいですが、勢いあまってffにはならないように気をつけたほうがよいでしょう。
20小節目のfとrit.から21小節目のport.とpppのa tempoは、この曲の中でもっとも表現し甲斐のある部分かもしれません。
25小節目と26小節目の装飾音(前騨音)は、つい軽視しがちですが、きちんと表現に結びつけられるとよいでしょう。
28小節目のfとフェルマータとデクレシェンドは、この表記に忠実に歌うのは、高声域の得意なソプラノやテノールにとっては、かなり生理的に辛いものです。3拍目の音に、fとフェルマータとデクレシェンドを丸ごとずらして歌うのも、よいのではないかと思います。(♭Ξ)

A.この歌はよく音大生や声楽を始めて間もない方が歌うことが多いですが、丁寧に歌おうと思うと、とても難しい曲です。
まず出だし「Caro」は♭E(高声用ではF)から始まりますがこの音はちょうど各声部のパッサッジョの位置から始まるので出し辛いものです。またアの母音というのも出し辛くさせている要因の一つでしょう。パッサッジョでのアの母音というのはとても難しい音なのです。この歌は一つ一つ言い出すときりが無いくらい大変な歌なのであまり細かくは書けませんが重要ポイントとして、この歌は本来ピアノ伴奏の歌ではないということです。
本来は弦楽四重奏と独唱のための曲であり弦楽器4本と同等の声でなければいけないのですからあまり強弱記号にとらわれすぎて小さく歌いすぎてはいけません。
特に「tanto rigor」のフレーズの長いピアニッシモでは初心者はあまりピアニッシモは考えすぎず自分の一番出しやすい声で出してください。上級者はそこを響きのみでピアニッシモにするのですが初心者は声を奥に引っ込めてしてしまったり喉を詰めたりする可能性が高いので自分の出しやすい声でだしていきましょう。
また本来は「カーロ ミーオ」なのでミオと短く切りすぎないようにして母音をのしっかり歌ってください。(♭Σ)

A.レガートに歌うことが基本です。歌詞は、とても情熱的ですが、決して自己陶酔にならないように、気持ち、速めに歌うことをおすすめします。最初の、Caがとても難しいですが、舌の奥と軟口蓋を使って、はっきりとCaと言ってみるとよいと思います。最初から高音ですが、おへそより10センチ下の、丹田を意識して、支えのある声で歌いましょう。
次第に、音型は下がりますが、気持ちは、高揚するように歌います。senza di te languiscie il corの部分は音の跳躍があります。喉で歌わないで、支えでもって、レガートに歌います。そこまで、単調だった伴奏がここから、刻み始め心のざわつきのような表現になっています。平常心を失うような、気持ちの高まりです。Cessa crudel tanto rigor に向かって歌いましょう。
そしてポルタメント。ここが、一番大事なところですので、あわてずに、気持ちを表現してみてください。pppになっていますが、弱弱しくならないよう、気持ちの高まりが、pppになっていると、思って、柔らかいイメージで歌うとよいと思います。
またcaro mio ben。最初とまったく同じ音型、ことばですが、より、感情をこめて歌ってみてください。そして、最後に向かっていきますが、最後のフェルマータがマックスになるように、最初は、p、次はmfと、だんだんに、近づいてくるようなイメージで歌うとよいと思います。そして最後は、華やかに、堂々と盛り上がって歌いきってください。(♯Ω)

 

A.有名な曲で、かつ単純なメロディーだけに大変難しい曲です。
歌う時に一番大切なところは、メロディーを流れるように歌うことです。いわゆるレガート唱法です。イタリア歌曲に関わらずどの曲にも必要なことですが、特にイタリア歌曲においては最も重要なところです。イタリア語で歌うときは、ご自分が思う以上に母音を長く繋げて歌いましょう。最初は、歌詞を子音を抜いて母音だけで歌う練習もよいです。
〔例えば、Caro mio ben(カーロ ミオ ベン)を、アーオ イオ エン というような形で。〕 そして、それが滑らかにうたえるようになったら、子音を少しずつ混ぜていきましょう。 
曲想としては、起承転結が非常にはっきりしている曲なので、そこをメリハリをつけて歌いましょう。細かくいうと、中間部のところからメロディーが上行していきますので、それに伴ってダイナミクスをつけていきます。クレッシェンドをするときに気をつけることは、最初の音の大きさです。メゾフォルテくらいからクレッシェンドをかけると、どうしてもフォルテにいくまでの差が少ししかなく強弱の差がなくなります。クレッシェンドをかけるときは、メゾピアノかピアノまで音量を下げてからにしましょう。
(♯Δ)

 

A.高音からの出だしですので、喉を詰めないように気をつけましょう。そのためにはブレスのタイミングも重要になってくると思います。ブレスから歌は始まっています。ブレスをしながら“caro”をイメージし、高いポジションを作っておくとよいでしょう。
そして、この曲では繰り返し下降音型が登場します。音型と一緒にポジションが落ちてしまわないように、下降音型は上昇していくようなイメージで歌います。Larghettoでゆったりと歌うのですが、音楽や声が停滞してしまうことのないように、常に次のフレーズを意識しながら歌いましょう。
特に前半や再現部は伴奏の動きもゆったりしていますので歌でテンポを引っ張っていくとよいと思います。中盤(il tuo fedel~)から伴奏の動きが出てくるのに伴って、少し前に前に音楽を持っていきます。最後8小節目から登場する装飾音符は息の動きで処理します。うまく回せないうちはHを入れて練習してください。あくまでも3拍目に(中声用でしたら)ドの音がはまるように。最後は伴奏の盛り上がりに繋がるように、あまり収めすぎない方がよいでしょう。
どの楽曲にもいえることですが、歌詞をスムーズに読めるようにしておくこと。単語のアクセントも大切ですが、フレーズの中でのアクセントを大切にしてください。(♯Λ)

 

A.発声の観点からみた場合ですが、イタリア語を美しく発音しながらも、フレーズが途切れ途切れにならないようにしたいです。そのために、イタリア語を知っているか知らないかに関係なく、まず歌詞の母音部分だけで歌う練習をすることをお勧めします。音程、リズムに合わせながら母音で歌い、そのときの感覚を身体に慣れさせます。その後で子音を入れて、本来の歌詞で歌ってみます。このときに、子音が入ったことで全く別ものになってしまわずに、母音部分だけで歌ったときの感覚に近い状態(歌う体勢、母音を発音したときの口の状態など)で歌うことを心がけます。ようするに子音に惑わされないようにします。特に音の高低に幅がある箇所(~di te languisce il cor)や中間部フレーズの上行形(il tuo
fedelから4小節)などは、発音するのに必死で母音の口が狭くなり喉が上がってしまいがちなので、母音の口を開ける、母音を長めに歌ってみるなど、母音の状態に注目してみてください。(♯α)

 

A.高い音から始まり、まず前奏を聞きながら、力を抜き、歌い出しの音の準備をします。歌い出しのフレーズは音が下行形になっています。こういう場合、そのまま歌っていくと、音がさがってしまいがちなのて、実際の音は下行していますが、音が上行していると考え、フレーズを歌うと音程がしっかりとれます。Il tuo のフレーズは音が上行しているので、反対に音が下行していると考えます。そうすると、一番高いCessaが楽に出ます。最後の装飾音符はあわてず、丁寧に歌いましょう。(♯γ)

 

A.まずイタリア語を何度も読みましょう!スラスラとことばがひっかりなく出てくるようになったら、さらに高めの声(力まず出るところで、できたら裏声でも)でアクセントも意識して読みます。
この練習をしてから音をつけて歌います。
カーロミーオベン、前半は下降していく音階が続きます。このときに音が下がるとおもわず、ずっと出だしの音と同じ音を歌っているつもりで響きを保ちます。わからなくなったら、また歌詞を読みましょう。フレーズの最高音で読んで見るのもよいでしょう。
後半にはいってからもフレーズの最高音、もしできたらそれ以上の音をいつでも出せることを想定して歌います。特に最後のsenza di teのEsに上がるところなど、上がった音で準備しておかないとかなり苦しいことになってしまいます。(♯Ж)

A.全体としては常にレガートで母音が繋がるように心がける。
歌いだしが高い音なのでずりあげ無いように注意します。「caro」の「c」の子音にも音程があると意識するとよい。前半は高い音から低い音へ下降していくメロディーだが、低い音で弱くならないように、次第にクレッシェンドしていくような気持ちで歌う。クレッシェンドするには通常よりも多くの息を吐くようにし、さらに響きの部分を高くするようにする。
中盤は盛り上がりに乗るとともに詩の意味を感じながらしゃべるように歌う。フレーズごとに音楽の流れが止まらないように気をつけること。最後の高音「senza di te」でのピアニッシモはできる範囲でやるようにし無理はしない、場合によってはフォルテで決めるパターンもある。曲終わりのロングトーンは途中で息がなくならないようにしっかり準備しておくこと。「cor」の「r」は出切れば巻き舌で終われるとよりよいでしょう。 (♭Ш)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

V006「サイレント・ナイト」 マヘリア・ジャクソン 

1.歌詞と曲と演奏

ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど

2.この歌手自身の声、歌い方、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと(VS比較歌手)

 

1.静かにしっとりと穏やかに歌うイメージが強いこの曲を、もちろん落ち着いたテンポで、終始オーケストラは囁くような音量ですが、静かにうたう部分もあるとはいえ、このように朗々と、時には激しく歌い上げられると、最初に聴いたときは、何事かと思いました。しかし、なるほどゴスペル歌手ということで、キリストへの何の信仰心も無い我々が、曲のうわべだけを感じて演奏するのとは、わけが違うのだろうと、恐れ入りました。張りのある立派な声で、今や伝説の「美空ひばり」を思わせる部分も多く、喉の柔軟さを感じさせます。

 

2.ところどころでソットヴォーチェも使っていて、もちろん力ずくだけで大きな声を出しているわけではないことは分かります。さらに、きれいにかかっているビブラートが、ときにはやや揺れ気味になり、また、ややちりめんビブラートになってしまうのは、きれいな声で充分に歌える部分を、わざと力むことで、「がんばり過ぎ」すらも、ひとつの表現として活用しているようで、クラシックの声楽とは違う、表現の幅を感じさせます。(♭Ξ)

 

  1. 伴奏がなっているようで、あえて音量をかなり落としてのアカペラに近いような構成で展開していきますが、歌手の実力がしっかりしているからこその構成なのだと思います。色をつけず、歌手の声と音楽だけで勝負しているのがこの録音なのでしょう。個人的にはちょっとテンポが遅すぎるのではないかと思います。なかなか先に進まないので好きな音楽かと言われると100%賛成ではないです。歌手の実力はわかるのですが、様々な箇所を伸ばして、声を披露しているだけに感じてしまう部分もあるので、好き嫌いのわかれる構成ではないでしょうか。

 

2.声の力がとても高い歌手だと思います。日本人にはほぼいないと言っていいほどの低音の魅力と声門閉鎖がしっかりと行われた高音へのアプローチ。話している声、台詞の延長に音楽があるような歌い方で、非常に高いレベルの声の持ち主です。ただ、声をみせつけるかのようなロングトーンや突然の声の抜き方はあまりいいとは感じません。これだけの声の持ち主ならばもっと音楽によりそっても素敵な歌になると思います。この録音は曲は歌手の声を披露するために使ったように私は感じてしまいます。(♭Σ)

 

1.テンポがゆっくりめだったり、メロディに装飾音がついていたりと歌手の個性が出ている演奏です。世界的に良く知られた曲ですが、同じ「サイレント・ナイト」でもこのような演奏を聴くと、聴き手の受ける印象や思い描く情景がまた違ったものになります。色々な表現の仕方がある、表現には個性がでるもの、ということの勉強として分かりやすい題材だと思いました。

 

2.ものすごくテンポがゆっくりですが、歌手自身が表現する中で一番しっくりくるテンポがこれだったのだと捉えると、この曲と深く向き合われたのだなと感じます。ゆっくりなためか単語のあいだでブレスをしている箇所がありますが、そこも切らずに一息で歌ったらもっと素敵なのでは?と思ってしまいました。(♯α)

 

  1. 曲はアレンジされていますが、もともとほとんどの人が知っている曲だと思いますので、聞きやすいと思う人もいると思いますし、逆に、アレンジの癖が強すぎて、受け付けにくいと感じる人もいるかもしれません。多くの人が知っている曲よりも、テンポも遅く、リズム的な部分でもだいぶ崩しているので、同じようにまねをしようとするよりは、表現方法のひとつとして参考にしてみてはいかがでしょうか。曲調に関しては、誰がどう歌いたいかという部分が見えてこないと、ただまねをするだけでは成立させるのが難しい曲だと思いました。歌詞の内容と音楽的な部分で、どこを丁寧に歌いたいか、どこをどこまで歌いこんでいきたいかは、ある程度センスが必要だと思います。

 

2.この人独自に色々解釈して、音楽的な表現を工夫していると感じます。また、歌い上げるところも、しっかりたっぷり歌っているので、聞きごたえがあるように感じます。テンポやリズムの揺れに関しては、この人独自の解釈の中で成立させているものがあると思うので、この通りにマネをするというよりは、、歌う人それぞれの解釈での間の取り方、テンポの揺らし方で歌っていくことが重要なのではないかと思います。(♭Я)

 

  1. 静かな曲を、特別なアレンジなどをせずに、大変シンプルな伴奏で歌われています。黒人霊歌のスピリットを感じさせる歌唱です。途中、ハミングやメロディのアレンジにR&Bに通じるメリスマチックなこぶしのようなアレンジを加えています。

 

  1. 低音で大変ゆっくりとしたテンポで歌われます。このようなゆっくりしたテンポで歌うのは、確実な技術がないと難しいと思います。息を吸ったら横隔膜が自然に下に下がり、下腹も押し広げられ拡張しますが、この状態を筋肉の力で、極力保持しながら歌うことで、ブレスがキープされこのような歌唱が可能になります。

美空ひばりを歌う方に参考になると思います。とても低い声が充実している歌手です。低音の響かせ方、下の音から入る音の運びかたなどが美空ひばりのゆったりした曲を歌うのに共通しています。(♯β)

 

1.まず誰もが気が付くのは、テンポの遅さでしょう。この曲のようにだれもが知っている曲を、普通と違うテンポで歌うのは余程の理由がないといけません。テンポを遅くすることは一般にはデメリットばかりです。間延びする、フレーズ感がなくなる、ブレスが足らなくなる、粗が目立つ(?)など。実際このマヘリア・ジャクソンの歌唱でも、フレーズや歌詞のと分け目と無関係にブレスをとっている箇所が五か所ほどあり、そこだけを聴くと耳障りですらあります。(しかし逆にこのぎりぎりまで使った深いブレスと体の使い方を聞き取って盗めるように勉強してください。)

 

2.では、なぜこのテンポなのか。私が思うにそれは「大きさ」につきます。ここでいう「大きさ」とはまず彼女の声の深さです。「低い」と聞こえるかもしれませんが、声域はむしろ高めで、その高い音域を軽々と体でコントロールできているから深く聞こえるのです。圧倒的な深さ。そして次にフレーズ感の「大きさ」です。このテンポなのに、フレーズがつながって聞こえます。一曲終わるまで3分ほどかかってますが、その間大きな波のうねりのようにフレーズが途切れず、ずっと進んでいます。(♭∴)

No.348

<TV>

 

「フェイスシェアリング」

TV番組で、「純烈」のメンバーが「フニクリフニクラ」をイタリア語での口の動きで再現をしていました。

 

「Jonathan Antoine」 

オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント2012」に出場した17歳のジョナサンと16歳のシャーロットによる男女デュオは、「The Prayer」でジャッジと観客を圧倒しました。のちに契約金12500万円で契約したと、今さらですが、TVで放映されました。

 

<BOOK>

 

「どこからお話しましょうか」柳家小三治

寄席で小三治を聴いたとき、マクラが長くて、地味な気がした。マクラで数週間先のテレビ番組の話をして「私がこんなふうに話しても、じゃあ見ようか、なんて実際見る人は、まず、いない」などと言うので、よし、見ましょうと思ったけれど、実際は見ずに過ぎてしまい、とても悔しい気がした。けれど、この本を読み、この人はすごいと思った。この人は、もがいてもがいて、シンプルになろうとしている。どんどん付け加えるのでなく、玉ねぎの皮をどんどん剥いでいこうとしている感じがする。「客もよく知っている。話し手もよく知っている。だけど、噺の中に出てくる登場人物は、この先どうなるのか、なにも知らない。そう思ってやると、いつもやってる噺じゃなくなる。なぞることをしなくなる」、この感覚がすごい。

 

「あふれでたのはやさしさだった 奈良少年刑務所」絵本と詩の教室/寮美千子

びっくりした。どんな人にも自分の言葉があり、どんな形でも自分から取り出せたら、それは詩なのだと思った。教養や知識はあった方が良いけれど、それらで作り上げたものが必ずしも自分の体から取り出した言葉とは限らない、という気がした。声も同じかもしれない。体から声を取り出すことが私はまだ出来ていないと思う。音程も取れるようになってきて、声も綺麗になってきたとしても、自分から取り出せているか?自分の体から取り出した声は変な声かもしれない、歌には向かないかもしれないけれど、レッスンしていくなかで、この視点は忘れずに行こうと思う。

 

「山小屋ガールの癒されない日々」吉玉サキ

一年の半分を山小屋の仕事をして暮らす、という、生き方があることが新鮮でした。著者の働くきっかけが、山が好きだから、ではなく、こんな自分でもできるかもしれない、というところから始まったということで、読む気持ちになりました。気取らない文章が、特殊な社会や人間関係の濃さを、たんたんと伝えてくれます。その集団の中にいるけど、どこか客観視しているというか。よく、役者さんは演じている自分と、それを見ているもう一人の自分がいると言いますが、ちょっと似てるかな、と思いながら、電車の中で一気に読んでしまいました。

 

「最速でおしゃれに見せる方法」MB

プロのファッションバイヤーであるMBさんが、主に高校生から40代の男性に向けて書いた本です。

日本の街着ファッションは、アメリカンカジュアルに傾き過ぎており、ドレスとカジュアルのバランスを7:3にすることで、誰でも高い費用をかけずにおしゃれになると、MBさんは自身の理論を展開しています。

単体では、どんなに高級でカッコいい時計や靴、服でも、全体のバランスを考慮しないファッションは、とたんに

おかしくなるという話は、歌、音楽のアレンジと重なるように感じました。

MBさんが服を着た写真と解説も載せてあり、イメージが湧きやすく、自分のような初心者にも分かりやすい内容でした。

 

「働きながらリスクゼロで小さく稼ぐ 朝晩30分 好きなことで起業する」新井一

10000人の起業をプロデュースした「起業のプロ」として知られている新井一先生の著書で、「好きなことで起業すること」のメリットを力説しています。

まず、自分の過去に目を向けることで自分を知り、自分の才能(=苦労しなくてもできること)を発掘し、その需要の有無を検討し。そのうえで「参入障壁ができるくらいまで極める」、という手順で事業へと育ててゆくことを推奨しています。

起業というものにためらいを持つ人に、「敷居の低さ」を解き明かし、背中を押してくれる一冊です。

 

<OTHER>

 

ドニー・イェン」(アクション俳優 武術家)

香港のアクション俳優であるドニー・イェンさんは、幼少期から太極拳を母親から学び、その動きはジャッキー・チェンジェット・リーと比較しても、素晴らしいものがあります。

映画「イップ・マン」シリーズで詠春拳の達人として主人公を演じる、ドニーさんの落ち着いた低い声が自分は好きです。

 

「武田 双雲」(書道家

NHK大河ドラマのタイトル字や、スーパーコンピュータ「京」のロゴを手掛けた武田 双雲さんは、上機嫌で

居ることの達人とも言われています。

友人と食事をしている時にわざと箸を落とし、「う、うまい!」と感激を表現して、周囲を和ませているそうです。

書を心から楽しみ、創作を続けている双雲さんのように、自分も歌を歌っていけたら良いなと思います。

 

「佐藤 二朗」(俳優)

映画、ドラマの脇役として、多数の出演作があります。

CMで見せる、アドリブをふんだんに盛り込んだ芝居が、自分は好きです。

他の出演者が笑いをこらえながら芝居を続けているのが、とても面白くて、何回も見てしまいます。

アーティスト論 目次

ミルバ

ジャニス・ジョプリン

アマリア・ロドリゲス

ジュリエット・グレコ

パブロ・カルザス

シャルル・アズナブール

マイルス・デイビス

セザリア・エヴォラ

レイ・チャールズ

ジルベール・べコー

ジェームス・ブラウン

美空ひばり

エディット・ピアフ

ドメニコ・モドューニョ

フィリッパ・ジョルダーノ

ジム・モリソン

ビリー・ホリディ

ルイ・アームストロング

マレーネ・ディートリッヒ

ボブ・マーリィ

シャルル・トレネ

トム・ウェイツ

エルビス・プレスリー

チャーリー・チャプリン

スティービー・ワンダー

メルセデス・ソーサ

大竹伸朗

武満徹

ビオレータ・パラ

オードリー・ヘップバーン

セルジュ・ゲンズブール

ビル・エヴァンス

ジョン・コルトレーン

高橋竹山

ジミー・スコット

ミルバ

クラブといった感じの小さなステージ。テレビのセットかもしれない。
しかし、一曲ごとに舞台も声も移り変わっていく。
一曲目はリリー・マルレーン。ゆっくりとした動作…
a音でよく下あごが動くな、と感じる。目はほとんどつぶっている。
二曲目、まだ動きはゆっくり。しかしハスキーで、小声にしても
しっかり音が入っている。どんな風に扱ってるんだろう?

次の曲は短調でタンゴのリズム。いきなり前の2曲とイメージ変わる。
しぐさを入れて、語り、叫びを合間に。しかし曲から決してはずれない。
シルクハットをかぶり直して、指先で失敬…それまでに決まりまくってるから、
ちょっとくらいキザでもカッコいい。

今度はジャズ曲だ。歌詞も英語を歌っている。あんまり下には入れない声に
なっているのかな?低音でも軽くした感じになっている。
ピアノにちょこっと座ってピンク色の照明、この辺から既に創り上げているのだろう。

次はシャンソン。ちょっとおどけた感じ、振りつけも声も。
歌詞もしっかりフランス語で歌ってる。しかし、ダミ声ぽくウォーと張った後に
すぐ囁き声…面白いし、凄いなと。声楽の方ではちょっと無い表現では?

そして、オーソドックスにカンツォーネの大曲へ。
とにかく、この声量…。響きに持っていってる感じではないのに。

その次は「ジョニィ」。歌の途中で床に寝ている男に語りかける感じで。
そして、髪の毛パタッと倒して終わる。役者だな…と。

「待ちましょう」。バイオリンの人と背中合わせで楽しそうに。
el mio cuo、たったこれだけでも一瞬で深く入れて浮かせている。

何曲か続く…間奏の時の動きもサマになっている。顔の表情に合わせて
声も本当に良く変わる。語るような所でも、演説みたいに訴えかける所も
あるし、すぐ小さくもできる。演奏でブレイクした後に軽快なリズムに
なる所も、切り替わった感じをすぐに出していく。

「oi vita mia」と言っている曲で、叫ぶ所も何回かあった後、
最初のリリー・マルレーンに戻り、再びゆっくりとした動き。
何もかも計算されているのか。それがあったうえで、
数え切れないアドリブを繰り出しているのか。

2回目に観て感じたのは、とにかく「この人は役者だ」。
声の感じからリズムから、しぐさから全てを含めて表現に注ぎ込む。
自由にやる所はやるし、踏まえる所はきちんと踏まえる。
その幅が恐ろしく広くて、自分にはまだ到底分からない所もある。

【「ミルバライブ」】

ジャニス・ジョプリン

彼女のアルバムを聴く限り、あまり強く魅かれることはなかった。

決して上手いヴォーカルだとも思わない。大好きな曲もない。

でも、この映像を観て彼女という人間が好きになった。

「何も考えない、感じること。瞬間と一体になる、宇宙なのよ」

ということばも、彼女なら素直に納得できる。

モントレーのあのステージは、何度観ても鳥肌が立つ。

“歌”が“歌”でなくなる瞬間を観るのだ。

あの大会場を真空にしてしまうようなパワーだ。

「子供が泣き叫んで訴える」というのは、まさにこれなんだと気付く。

話すように歌い、歌うように話す。歌の中で怒り、泣き、笑う。

「私は未だパワーだけ」と語ってた彼女にいつかが来なかったのが本当に残念。

彼女がアレサやオーティスの表現力に関心を寄せていたのが興味深い。

歌には確かに技術が必要で、しかし、その技術をあやつり、

創るのは「強烈な想い」であり、その人が培ってきた「たましい」なんだな。

アマリア・ロドリゲス

何かが違うのではないかという気がしてしょうがない。
今まで「耳が聴ける」ということがわからないとは思っていたけれど、
心の底から全くわからないとは思っていなかった。
それが何なのかは全然わからないのだが、
今初めて「何か違う」ということばが私の頭に飛び込んできたのだ。

アマリア・ロドリゲスはピアフとは違うけど、
同じようにことばが後から後からかぶさっていくようなところがある。
そのリズムについていけない。追いついたと思ったら待ってるし、
こっちがひと呼吸おいてる間にもう走り出している。
それは曲がスローだとかアップテンポだとか、そういうことでの違いじゃない。
とにかくつかまえられないのだ。
曲が始まると、どんどん滑り出していくあの感覚は、私にはわからない。

ファドというジャンルは、
歌詞をみるとポルトガルという国の歴史や国に対する想い、
生活している人々の姿など、いろんなことがわかる。
決して明るい曲ではないが、強く生きてゆこうとする姿勢がみえる。
イワシの歌なんてかわいらしいのだけど、
アマリアが歌うと、歌詞のことばの世界が音によって、
どんどん広がっていくのがわかる。
アマリアのように、生きてきた中でのつらいこと、苦しいことを、
歌にすることができるというのは幸せなことだ。

ステージに立つアマリアは存在感に溢れていた。
黒の衣装で身をつつみ、ほとんど動きもせずに、あごを少し上にして歌っていた。
あごをすっと上にしたまま歌っていて苦しくないのかと思ったけれど、
あれが彼女のしぜんなスタイルなのだろう。
歌うということは自分の感情を一つの世界にして伝えるだけだ。
本物は皆そうだ。何も余計なものがついていない。
ことばを音に乗せ伝えるだけ。(K)