ミルバ

クラブといった感じの小さなステージ。テレビのセットかもしれない。
しかし、一曲ごとに舞台も声も移り変わっていく。
一曲目はリリー・マルレーン。ゆっくりとした動作…
a音でよく下あごが動くな、と感じる。目はほとんどつぶっている。
二曲目、まだ動きはゆっくり。しかしハスキーで、小声にしても
しっかり音が入っている。どんな風に扱ってるんだろう?

次の曲は短調でタンゴのリズム。いきなり前の2曲とイメージ変わる。
しぐさを入れて、語り、叫びを合間に。しかし曲から決してはずれない。
シルクハットをかぶり直して、指先で失敬…それまでに決まりまくってるから、
ちょっとくらいキザでもカッコいい。

今度はジャズ曲だ。歌詞も英語を歌っている。あんまり下には入れない声に
なっているのかな?低音でも軽くした感じになっている。
ピアノにちょこっと座ってピンク色の照明、この辺から既に創り上げているのだろう。

次はシャンソン。ちょっとおどけた感じ、振りつけも声も。
歌詞もしっかりフランス語で歌ってる。しかし、ダミ声ぽくウォーと張った後に
すぐ囁き声…面白いし、凄いなと。声楽の方ではちょっと無い表現では?

そして、オーソドックスにカンツォーネの大曲へ。
とにかく、この声量…。響きに持っていってる感じではないのに。

その次は「ジョニィ」。歌の途中で床に寝ている男に語りかける感じで。
そして、髪の毛パタッと倒して終わる。役者だな…と。

「待ちましょう」。バイオリンの人と背中合わせで楽しそうに。
el mio cuo、たったこれだけでも一瞬で深く入れて浮かせている。

何曲か続く…間奏の時の動きもサマになっている。顔の表情に合わせて
声も本当に良く変わる。語るような所でも、演説みたいに訴えかける所も
あるし、すぐ小さくもできる。演奏でブレイクした後に軽快なリズムに
なる所も、切り替わった感じをすぐに出していく。

「oi vita mia」と言っている曲で、叫ぶ所も何回かあった後、
最初のリリー・マルレーンに戻り、再びゆっくりとした動き。
何もかも計算されているのか。それがあったうえで、
数え切れないアドリブを繰り出しているのか。

2回目に観て感じたのは、とにかく「この人は役者だ」。
声の感じからリズムから、しぐさから全てを含めて表現に注ぎ込む。
自由にやる所はやるし、踏まえる所はきちんと踏まえる。
その幅が恐ろしく広くて、自分にはまだ到底分からない所もある。

【「ミルバライブ」】