ジャニス・ジョプリン

彼女のアルバムを聴く限り、あまり強く魅かれることはなかった。

決して上手いヴォーカルだとも思わない。大好きな曲もない。

でも、この映像を観て彼女という人間が好きになった。

「何も考えない、感じること。瞬間と一体になる、宇宙なのよ」

ということばも、彼女なら素直に納得できる。

モントレーのあのステージは、何度観ても鳥肌が立つ。

“歌”が“歌”でなくなる瞬間を観るのだ。

あの大会場を真空にしてしまうようなパワーだ。

「子供が泣き叫んで訴える」というのは、まさにこれなんだと気付く。

話すように歌い、歌うように話す。歌の中で怒り、泣き、笑う。

「私は未だパワーだけ」と語ってた彼女にいつかが来なかったのが本当に残念。

彼女がアレサやオーティスの表現力に関心を寄せていたのが興味深い。

歌には確かに技術が必要で、しかし、その技術をあやつり、

創るのは「強烈な想い」であり、その人が培ってきた「たましい」なんだな。