彼女のアルバムを聴く限り、あまり強く魅かれることはなかった。
決して上手いヴォーカルだとも思わない。大好きな曲もない。
でも、この映像を観て彼女という人間が好きになった。
「何も考えない、感じること。瞬間と一体になる、宇宙なのよ」
ということばも、彼女なら素直に納得できる。
モントレーのあのステージは、何度観ても鳥肌が立つ。
“歌”が“歌”でなくなる瞬間を観るのだ。
あの大会場を真空にしてしまうようなパワーだ。
「子供が泣き叫んで訴える」というのは、まさにこれなんだと気付く。
話すように歌い、歌うように話す。歌の中で怒り、泣き、笑う。
「私は未だパワーだけ」と語ってた彼女にいつかが来なかったのが本当に残念。
彼女がアレサやオーティスの表現力に関心を寄せていたのが興味深い。
歌には確かに技術が必要で、しかし、その技術をあやつり、
創るのは「強烈な想い」であり、その人が培ってきた「たましい」なんだな。