ニコラ・ディ・バリ「Chittara suona piu piano ギターよ静かに」

静かに語りだした瞬間、その世界の中に聴き手は入っている。何かしらの偽りを感じるような事なく、ただ自然にいつの間にか聴き手の心もその世界につながっている。歌おうとしない、ただ降りてきたことを声に、言葉とメロディに託すというようなことを改めて思いながら、1971年の白黒画像の向こう、その純粋な声と自由な眼差しの向こうにみえる壮大な世界を感じていた。
当時、イタリアの音楽祭では、ニコラ・ディ・バリ、クラウディオ・ヴィッラ、ミルバ、イヴァ・ザニッキ、ジリオラ・チンクウェッチティなど互いに比べる事のできないほど個性豊かで、並みはずれた才能あふれるすばらしい歌い手たちが優勝争いをしていた。シンガソングライターとして幼き頃から歌い描き続け磨かれてきたものが、ニコラのこの作品に大きく現れたのかもしれない。圧倒的な人気でイタリア国民を熱く沸かした。
Aメロ 相手を想いながら眠れず一人静かに外であたりの様子と共にギターをつま弾き主人公。メロディは、一か所に留まることなく、1オクターヴ半使われ上下に動き続け、入る間のタイミングや韻を踏むフレーズの語尾の音の動きからも、主人公の気持ちとうまく寄り添い、その心の中をより引き出しているように感じる
サビにはいると、永遠に別れてしまうのか、それともそうではないのか、相手を思う中、眠れず夜が明けてくる中どうすればよいのか主人公の心の葛藤がでてくる。メロディも共にその気持ちをより踏み込んで表すように、Aメロとは異なった間で、一拍めからはいり、その後もよりつめた間と跳躍から、高音から下降する動きの波がどんどんと入っている。もう一度大きな波がl’ora di respirare から入るが、新鮮な空気を吸って、春が来て緑の中、太陽が、暖かさが、夜が私たちのために、、、と相手と一緒にいられることを願う主人公がいる。
後半、繰り返すサビの前に、Aメロと同じ作りのメロディが入るが、霧の香りするこの夜に、あなたの胸で眠り、神よ、その鼓動と共に、人々は夢をみる そしてギターも眠るというような意味の美しい詞が再び静かに語られ、より聴き手の心を熱く掴みながら、ラストのサビへと入っていく。