クラウディオ・ヴィッラ「Non Pensare A Me 愛のわかれ」

別れのどうしようもない悲しみを歌に空に太陽に託したような曲。スケールの大きいメロディがそのどうしようもない思いを解放していくように、1967年サンレモ祭、クラウディオ・ヴィッラによって大きく豊かに表現し、深い感動を与えた。
原詞をさっと読むと一見さらりと淡々と去っていく相手に大丈夫だよと語り、前を向いているような主人公にもみえるものの、メロディと組み合わせながら、そこにあるエネルギーや主人公の想いを想像していると、本当は乗り越えることがとても大変で、悲しくてどうしようもない、けれどそれでも乗り越えていかなくてはならないという気持ちがみえてくる。
構造は案外シンプルであり、プロセスとしてわかりやすが、それを感じさせないスケールの大きさがあり、クラウディオ・ヴィッラは全体の流れや言葉に対して声を柔軟に巧みに扱い、情感豊かに表現している。
Aメロは全体の中では長めに語りが入り、最初に“Non pensare a
me”(私を思わないで)と何かを否定するような、穏やかなメジャー調の中でありながらも、主人公だけが心の沈みを感じているかのような、曲の中の低音域の方へと跳躍もなくメロディは下へ下へと行きたがり、私は大丈夫などと言いながらも言葉とは裏腹に何か前へ向かえない思いが感じられてくる。そして、そう感じさせるものがより確かに前に出てきだし、“Anchese mai piu saro felice come quando c’eritu”と、けれども、あなたがいた時ほど幸せではないんだと今までの下にばかり行こうとしていた動きを本当は上へ行きたいと願っているように、流れが変わりだし、サビが始まる。
“la vita continuera, il mondo non sifermera”それでも人生は続き、世界は止まないというような歌詞に、なんとか生きていかなくてはならないという心の荒波を表すかのように、不安定さを増す動きとハーモニーになり、そのドラマが聴き手をより引き込んでいく。そして“Non pensare a me”(私を思わないで)と一拍目に最高音が入ったパワーあるフレーズに到達していく。Aメロの最初のフレーズがここではオクターブの大きな波となっている。ヴィッラは、ここを前のフレーズ“Il mondo non si fermera”からノンブレスで続けてNon pensare a meと入って勢いよく、サプライズと共に大きな感動を与えている。Non といいながら、Il sole non si spengnera conte、直訳すれば、太陽はあなたと一緒に消えないからというような意味であるが、最後に太陽に救いを求めるしかないような気持ち、そしてイタリア人、ラテン系の人の感情豊かな表現を思えば、けれども私の太陽はあなたであったというような気持もそこに含まれているのかもしれない。Te(あなた)、この高音に戻っていくこの動き、上にいたい力、どうしようもない思いを上に託すしかないようないというように、メロディにより、より豊かに強い気持ちがそこに感じられる。
その後に続くLalalaもヴィッラはパワーや表現を衰わすことなく、豊かにここまで描いてきたものを捨てずにより情感を出し、聴き手により感動を与えている。
ラストにIl sole non si spengnera con teと再び最高音のte(あなた)で閉め、そこに主人公の本当に願い思っていた偽れない気持ちが感じられる。