エディット・ピアフ 「愛の賛歌」

ピアフ自身が作詞を手掛けた曲。彼女自身の大切な讃美歌であり、そこには彼女が強く信ずるものがある。愛のように、メロディと歌詞の結びつきの強さ、深さ、そしてその歌は、いつ何度聞いても胸を打たれる大作である。
表現者にとって自分自身が何を信じているかということはとても大切なのことかもしれないとふと思う。そして不思議なほどに、魂はそれをよくみている。
歌声が色の変化をつけているというより、彼女が歌うと色がぱっと変わるようにその変化や展開していく様は、魔法のようにも感じられ、オーケストラも率いる。下からぐっと上がってくるような力強さと真直ぐな意志を感じる最初のパートを丁寧な入りで鋭く漲ったエネルギーで歌っている。独特の声質の中に純粋な愛らしい素性も強く感じられる。しゃべっているような声に高いところも低いところを感じさせないほど、しっかりした充実した声の強さ。詞とメロディが特により踏み込みハイライトしたいフレーズの部分に声も巧みに入る。稀有な人生であっただけでなく、歌唱力、歌そのものも、類まれな素晴らしい力をもっている。
最初のなめらかでスケールの豊かなパートから、闇がかかってくるように葛藤が入り、より喋るパートとへ入るが、ただそのパートがただ一色の闇になるのではなく、例えば最初のフレーズの始めは闇に入り、葛藤がはじまり、微妙な色合いをだし、少し明るく緩めるような面白い色彩のハーモニーから、でもまた暗く、そしてJ`irais
loin de ma patri Je renierasi mes amis Si tu me le demandais(祖国も友も捨ててもいい、望むのであれば)に入るとより重要で、破滅的な葛藤の歌詞にぴったりと寄り添うハーモニーの色合いがオーケストラからも聞こえてくる。闇の向こうから射す一寸の光へとどう抜けてどうエンディングへと輝かせているか、本当にピアフは豊かで壮大な力を瞬間の中で最大限にみせ愛を育む一曲に仕上げている。