No.296

<CD>

「ハイッブリッドレインボウ」BUMP OF CHICKEN
もともとはthe pillowsというバンドの曲ですが、バンプがアレンジをして自分たちなりに表現しています。もともとはピロウズの中でも激しい曲の部類に入る曲ですが、バンプはキーを下げて、しっとり歌っています。そういったアレンジでは物足りなさを感じることが多いのですが、聞き応えがあり、しっかりと自分の表現にしています。他のアーティストと何が違うのかを学ぶよい教材になると思います。

 

ジョン・ウィリアムズ
スター・ウォーズ』『E.T.』『ハリー・ポッター』など、彼の作曲した作品は数えきれません。どれも大好きです。どこが好きなのか説明するのは難しいのですが、映画音楽なのでその音楽を聴くとやはりその映画の場面を思い出します。わたしがこれらの映画を好きなのも音楽の要素も強い気がします。スターウォーズの曲を聴けば宇宙を思いますし、戦いですから落ち着いてもいられず常に行進できる前に進んでいくような曲ですが、main themeではその壮大さに思わずため息をしてその中にもキラキラという音があって、ヴァイオリンの高くて細かい音に何億もの星が宝石のように輝いてうずまいている様子を想像してとてもすばらしいものを見たような気分になります。まだ見ていないエピソードもいくつかあるので全部見たいし、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』もできれば仮装して見に行きたいです。

 

<映画、TV>

マンマ・ミーア!
ABBAの曲を使ったミュージカルなので、曲を聴いたことのある人は多いと思います。ドナのドスのきいた声と雰囲気に対して、「The winner takes it all」などのように、失ったものや背負ってきたものも描かれていて、しっとりとした表現と力強さがじわーっと伝わってきます。この歳になったらこんなにたくさん経験することも感じることも増えるのかなと思いました。いちばんのお気に入りは最後に流れる「Thank you for the music」です。息をするのを忘れてしまうくらいに聴き入ってしまいます。混じり気のない澄んだ声に、息使いに、圧倒されます。

 

THE 有頂天ホテル
セリフも物語もテンポよく進んでいき、ずっと笑っていました。ひとつ笑ったら次は何が出てくるんだろうと身構えてしまいました。それぞれが夢をもっていて、過去をもっていて、そこでの人間関係や失敗が描かれており、新年幕開けとともに前へ進んでいこうというシーンで終わります。でもそんなことよりなによりとにかく笑えます。娼婦の役がでてくるのですが、そのしぐさや動きがとっても美しいというかダンサーのようで、わたしには印象に残りました。

 

「ステキな金縛り」
仕事ができないと言われてきた女性弁護士がある殺人事件を調査する過程で落武者と出会い一緒に事件を解決していくコメディーです。落武者が戦国時代の武将という設定で、その時代を語ったり今の時代にあるものをわからないなりに堪能していたり、受け継がれる歴史の間違いを正したり笑ってしまうところはたくさんあるのですが、落武者を通して死後の世界があることやそこで亡くなった親戚もいつも見ていてくれているというメッセージも込められていて、散々笑ったあとにも温かい気持ちが残るような作品です。

 

「シティ・ハンター」北条司
新宿を舞台にしたハードボイルドなドラマです。
フィクションとはいえ、新宿の治安悪すぎだろと思いました。
そして悪者の人たちがなんだか妙に自信たっぷりで、冷酷で、武器弾薬を大量に持っていたりして、わかりやすくて良いです。

 

<本>

「人生をワンランクアップさせる男塾入門」良岡侑宙著
女性の視点から、時に厳しく、時に暖かく、素敵な男性であれかしと願いつつ、身だしなみから男性の「なりたい自分」をサポートする「ビジョンスタイリスト」良岡侑宙さんが満を持して初出版しました。
「なりたい自分」実現のステップは「V6」。
1.「VOICE」:自分の内面の声を聴く
2.「VISUAL」:見た目から人生を変える
3.「VIVID」:生き生きとした毎日を送る
4.「VISION」:人生の目的に向かう
5.「VALUE」:自分の価値を自分で上げる
6.「VICTORY」:輝く人生は自分が作る
長唄の題材にも、それぞれの登場人物の望みや思いがあり、それをまずは声(言葉)にして伝え、態度や仕草に表し、目標に向かって力強く進みつつ、自分に誇りを持って生きてゆく姿が歌われています。
まずは、しっかりと声を出し、声を聴くことから始まるということなのかも知れません。

 

<その他>

「CHICAGO」(渋谷ヒカリエ
NHK朝ドラ『マッサン』でおなじみのシャーロット・ケイト・フォックスさんがロキシー・ハート役で、とても柔らかくて深い声が印象的でしたが、ヴェルマ・ケリー役のアムラ=フェイ・ライトさんがとてもセクシーで声の張りが強くて感動しました。私がイメージしていたヴェルマ・ケリーより男っぽくて驚きましたが、そこから伝わってくるエネルギッシュな女を超えた力強さが圧倒的でした。演奏が舞台の上でされていたのでジャズの雰囲気をさらに楽しむことができました。歌もダンスも盛りだくさんでした。

 

「ニューイヤー・ミュージカル・コンサート」(渋谷ヒカリエ
ミュージカルの代表的な曲をたくさん聴くことができました。私はローラ・オズネスが好きだったのでシンデレラの代表的な曲を聴けたのがとても嬉しかったのですが、『南太平洋』の魅惑の宵(some enchanted evening)がうっとりとしてとても感動しました。『南太平洋』の映画を見たことがないので見てみたいです。

 

「MUZAアコースティック・ライブ ウィーンは踊る」アンサンブル・ウィーン
良く歌うヴァイオリンだなぁ、と聴きながら思った。はっきり言って、私よりはるかに体を使って歌っている。ヴァイオリンに息を送っているのは、ウィーン国立歌劇場管弦楽団のコンサート・ミストレス、アルベナ・ダナイローヴァ、ヴァイオリンは1728年製グァルネリ・デル・ジェス。モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」のメドレー、歌手の代わりにヴァイオリンが歌う。強弱のはっきりした美しい音色だ。このアンサンブルはチェロの代わりにコントラバスが入っている。曲は他に、こうもり序曲、ウィンナワルツ、ポルカ。あまりに素敵だったので、CDを購入した。CDに入っていた「フィガロの結婚バリトンの歌う所をヴァイオリンが歌って、美しい。歌手がいらないとは言わないが、ヴァイオリンの挑戦状だ。声の奏者の一人として、ヴァイオリンに負けないよう、体を使って歌わなきゃ。

 

「菅原佐知30周年記念コンサート」(南青山マンダラ)
演劇出身のシャンソン歌手、声の使い分けや雰囲気作り、選曲が良く、飽きずに何曲も聴けた。特に良いと思ったのは、曲の終わり方、他の歌手なら綺麗に伸ばすところを、短くして、しかし、歌い手として、歌の中にそのまま立っている感じがした。声は切っても、歌が続いている、というのは、演技力なのか、集中力か。自分の歌い方というのを、つかんでいるから、できるのだと思った。

「リズ・ライト」(丸の内コットンクラブ)
海の底で聴く声のようだった。スウッと入って来て抵抗がなく、響きというより、声そのものがそこにある、というか。地底の声というと、もっと響くと思う、それより柔らかく、そこに魂が存在するような感じが深海のイメージ。声だけ突出するのでなく、音楽としてそこにある。歌っていない時のリズは、タンバリンをさりげなく叩き、それが少しもうるさくなく、演奏に参加している。テンポの早い曲でも、海の底のような静けさを感じのに、リズム感がすごくよい。バンドメンバーそれぞれのソロパートを楽しんでいるようで人柄の良さを感じる。衣装が黒で、キラキラさせないところが私好み。すっかりファンになり、また聴きたいと思った。本当に行って良かったライブだ。

 

エリック・ミヤシロ」(かわさきジャズ)
ジャズアカデミー講義「トランペットの魅力と音楽の楽しさ」で聞いた話が、ヴォーカルにも通じるものがあり、この研究所の福島さんの考えにも共通するものがあり、勉強になりました。「自分の肺活量は一般人と変わらない。自分の持っている肺活量をいかにバランスよく使うか。勉強はいろんな考え方があり、自分に合ったものを進めていけばよい。ひとりの先生に、はまってしまうと、自分が考えなくてすむ、言われたことをやっていた方がラク。でも、10人いたら10人のやり方がある。そして、ひとりになったら自分が自分の先生になる。学校で最初にトランペットを教わる子供たちは、唇をしめすぎている、唇自体も共鳴している。でも、最初にそう教わってしまっているから、しめてしまう。マウスピースの選び方は、音が良いことより、自分がラクなこと、音は後からついてくる。何かが苦手なネガティブは進歩の妨げ、客観的にどうするか考えて、先生を探す。リハーサルを見学させてもらうのは良い勉強、作る作業に協力することは大切。練習について、音楽は心を使うと同時に筋肉に覚えさせる、4回ミスして1回クリアすると、体は4回のミスを覚えている。ネガティブは体に残る。個人練習だから、ゲネプロだから、本番がうまくいけばいいというのはダメ。音を下げて、ゆっくり、絶対ミスしない。練習でも、誰かが前にいて聞いていると思う。練習時間が長いから良いとはいえない。人間の集中できるのは長くない、気が散るのは脳が休みたがっている。5分やったら5分休む、同じ時間休む。小分けした練習の方が成果が出る。アドリブはどの音を吹いちゃいけないとしばられがち、でもジャズは間違った音はない、間違いは二回すれば間違いにならないとマイルス・デイビスは言った。ポジティブに行く、何か起こったら次にどうするか、動ける心がまえ、これを吹いてしまったら、どう処理するか。食わず嫌いで拒むより、いろんな音楽を聴く。なぜ嫌いか、分析してみる、批判は簡単。苦手なジャンルの何か面白いものを探すのが前向き。それに刺激されて、いろんなドアが開く。幅広くいろんなことをする。音楽全般は死ぬまで上達できる。息が続かなくなっても、悲しいことを経験すると、悲しい曲の表現が豊かになる」。

「障害者支援のためのチャリティ・コンサート、鎌倉オペラティックコンサート」
ソプラノ、テノール、ピアノの3人による15曲。「リゴレット」と「椿姫」より数曲ずつ。
「女心の歌」「乾杯の歌」というような有名な曲、またオペラとは?というミニ講座的なお話が面白かったです。

「芸能界で最も人柄の良い悪役俳優」阿藤快さん逝く
2015年11月14日、丁度満69歳の誕生日に当たる日に、阿藤さんは亡くなりました。
主に狂気じみた悪役の他、コミカルで憎めない役を得意としていましたが、後には通販雑誌で商品の宣伝マンとして人気を博しました。
出身地である神奈川県小田原市への思いが強く、2010年からは毎年5月3日に催される「小田原北條五代祭り」に、地元の英雄でもある戦国武将北條早雲の役で参加し、祭りを盛り上げてくださいました。
私もこの祭りには毎年参加しておりますが、阿藤さんの訃報を知って寂しく思っております。
2016年の祭りからは、阿藤さんの志を受け継いでくださる方に、是非新たな北條早雲として、我々と一緒に頑張っていただきたいと願っております。

 

いろんな役者さんが演じた「遠山の金さん」
江戸後期の江戸町奉行、遠山左衛門尉景元(通称:金四郎)は、時代劇で実に多くの役者さんによって演じられてきました。
中村梅之助さん、市川段四郎さん、橋幸夫さん、杉良太郎さん、高橋英樹さん、松方弘樹さん、松平健さん、などなど。
声量、音程、体格、仕草、表情の違う様々な役者さんが演じても、遠山金四郎という一つの人格には変わりがないわけですが、その一つの人格が多面的、立体的に見えてきて、視聴者側の発想力も豊かになってくるところが一つの楽しみであり、人気の秘密なのかも知れません。
これは、他の登場人物にも言えることです。

 

<店>

「Grow(鉄板焼き)」(六本木)

日本最古の肉牛と言われている千屋牛を扱うお店。二百年以上の歴史があるというが、古食材にありがちな粗さはなく、今現在の和牛らしい優しく甘い味わい。品種は同じでも、時代の中で改良され続けた結果なのだろう。さらに一人につき一尾の伊勢海老が提供される。高級食材だけあって美味しいが、ただ単純に「焼きました」ではなく、蒸し焼きにして濃厚なソースをかけている手間に好感が持てる。ソースはエビの味噌がベースになっており、よく合う。素材や見た目のインパクトは確かに大事な要素だけれど、頼りすぎてはならない。より良い味を作るということが何よりも優先して考えるべきことで、他の要素はその土台の上に積み重ねていくべきものなのだと感じた。
 
「ブリーズヴェール(洋食)」(赤羽橋)
特に美味しかったのは、茹で上げたラビオリの下に、ブレゼした鯛とバジルのソース。字面でも十分に美味しいが、実際の味はそれを上回る。しかしこうした店を訪れた時、満足感と共に、伸び白の少なさを感じてしまう。一度ハードルを上げてそれをクリアした場合、次はさらにハードルが上がる。多くのお店は月単位でメニューの変更をしているが、そこに常に全力で取り組んでいるがゆえに、毎回クオリティを上げ続けるのは不可能である。期待値の高すぎるお店が目指すもの、ただ普通に「美味しかった」だけでは許されないお店に求められるものをどう満たしていくか。改めて注目していきたいと思った。

 

「メトロポリタングリル(グリル料理)」(新宿)
グリル料理の店。サーロインのプロシェット(串焼き)なども、専用のロースターで焼かれている。肉であれ魚であれ、薄かれ厚かれ、焼き加減は絶妙の一言。ローストに関しては焼き時間などをマニュアル化することはできないため、仕上がりを左右するのは、経験から得られる繊細な感覚でしかない。そういった意味では食べて学ぶことのできる点は多くはないのかもしれないが、完成品とも呼ぶべき料理を体感することは無駄にはならないと感じた。

グラスコート(ブッフェ)」(新宿)
時節柄、ハロウィンフェアの開催中。秋の味覚が勢揃いするだけあって、食材のラインナップが他の時期よりも魅力的に感じられる。誰からも愛される料理が並ぶ反面、ぐっと惹きつけるようなここだけの演出は無い。「家族で楽しむ」とか「団体で来ても各々が満足できる」とか「これといって食べたいものがない」というような、鮮明なビジョンを持たないシーンには間違いのない選択肢として挙げられるけれど、印象に残るパンチ力はない。前菜からメイン、デザートに至るまで品数も多く、どれも美味しい。サービスはホテルらしく凛としているが、声をかけにくいほどではない。お店のスタイルそのものが、良くも悪くも生真面目な優等生といった印象だった。

 

「金太郎(鶏料理)」(神楽坂)
地鶏にこだわるお店。大和肉鶏という地鶏だった。筋肉質で脂が少なく味が濃いので、名古屋コーチンに近いがそれよりも野性味がある。こちらでは丸鶏を仕入れて捌いているので、大和肉鶏の内臓系も特別に出していただいたが、これが非常に美味しい。決してメジャーな地鶏ではなくとも美味しいものは幾らでもあるのだろう。ただ、全体のメニュー数が減っていることが気になった。どれも美味しいが、渋い構成になっており、年配向けの内容になっている。単価も上がり、客を日本酒好きの年配男性に絞っているようで、「鶏が美味しい」こと以外はあまり魅力的に感じられないラインナップだった。

 

「アミュゼット」
小さなお店で路地裏にある。バーニャカウダのソースとデザート類。野菜ソムリエがいるだけあって、豊富な種類でふんだんに使用されている野菜は新鮮で美味しい。手作り感溢れるデザートは、アップルパイ一切れに丸ひとつのリンゴが入っていたり、保存料や着色料などの化学調味料のない優しい美味しさ。