No.280

DVDCINEMATV

 

時代小説「お助け同心巡回簿」笹沢左保

木枯し紋次郎」の原作者としても名高い笹沢さんの作品で、1993年に小林稔侍さんと田中健さんの主演で、「お助け同心が行く」というTV時代劇シリーズとして放映されました。

TVでは、冤罪に苦しむ人の容疑を晴らすために二人の同心が真犯人を探し出し、それが法で裁けないとわかるや闇に葬るという、「必殺」シリーズのような展開で事件が解決し、最後に容疑が晴れた人は釈放されるという結末がお約束。

しかし、原作では真犯人を見つけ出して暗殺するところまでは描かれておらず、冤罪に苦しむ人の容疑が晴れたところで一話完結となっている、オムニバス形式になっています。

それにしても、面白いのは主役の二人。片や今で言う窓際コースの高積み見廻り役同心緒形左門次(小林稔侍さん)、片や超エリートコースの定町廻り同心辺見勇助(田中健さん)。普通なら立場も違うし仲が良いはずのないこの二人が、強い信頼関係で連携して事件を解決するところに、意外性があります。

勇助に比べてうだつの上がらない左門次ですが、原作でもTVでも、エンディングでの左門次の台詞がたまらなくカッコイイのです。

容疑が晴れた人が涙ながらにお礼を言うと、いつも決まって左門次は照れ臭そうにこう答えます。

「俺は、やるだけのことをやったまでさ。」

こんな台詞がさりげなく言えるような仕事をしたいものです。

 

BOOK

 

斎藤一人」(著書多数)

暗黙知を言葉にして表現するのがとてもうまいと思う。わかりやすいし説得力がある。もっと他にたくさん教養がある人は多くいると思うがこれだけわかりやすく噛み砕いて説明できるのはすごい才能だと思う。またおまけのCDも付いているが講演会をきいていてとても説得力がある。正直言って最初は自分も斜に構えたような本の読み方をしており、そんな単純なことで人生変わりませんよという気もしていたが、多くの著書を読み進めるにつれて、その単純なことができない人々が圧倒的に世の中にあふれかえっているのだなとつくづく感じる今日この頃である。(私は仕事で電話でクレームを受けることがかなりあり応対をしているが、不幸な人は自分でその環境を招いていると感じる場面がかなりある。不幸を愛しているというか、不幸になじんでいるというか、とにかく人生について考えさせられる事が多い)

 

EVENT

 

「赤木りえ(ラテンフルート奏者)

森村献ラテンジャズスペシャルで聴きました。今までのフルートのイメージが変わりました。ソロパートではとてもアグレッシブな演奏、キューバンラテンの中で自己主張し、跳躍するフルートはかなり印象的です。

 

「田中朗(シャンソン )」 

田中朗のソロライブを聴きました。故立川談志が「シャンソンともジャズともくくれない至芸」と言ったピアノ弾き語り。スタンダード曲がフランス語日本語交えた語りによって、温かく新しく聞こえました。圧巻は「パダムパダム」、次はお前の番だと叫びつつ迫ってくる謎の足音。ものすごいホラーです。ステージにいるのは田中朗とピアノだけ。ある意味、能や狂言に通じます。何もない空間に世界を作って行くのです。

 

「サンバ実験工房」ジョーダ・バビロニア

ジョーダ・バビロニアは日本人です。サンバ・オペラの作曲とバンドのヴォーカル&バンジョーを担当、サンバのリズムにのせて日本語で歌う、風俗嬢ナナコの物語。放送禁止用語も入った、かなり危ない歌をバンドメンバーは大まじめで奏で歌います。最初はなんだこれ、ひんしゅく~と思いましたが、ノリの楽しさ、お坊さんの唱和のようでもあるコーラスに引き込まれます。77才フク爺さんが風俗に通う歌や、知り合いが客として現れ、とっさに中国人のふりをする歌、ナナコをナンバーワンにするべく財産をつぎ込み、貧乏になったマーシーが今も時々来るとき、恩を忘れず張り切るナナコの歌など、楽しく聞きました。クラシックのオペラも良いけれど、この破天荒なオペラも私は好きです。

 

<その他>

 

山口淑子

歴史の激流に耐え抜いた女優、逝く。

先日、山口淑子さんが94歳で亡くなったニュースを見て驚きました。亡くなったことよりも、今まで生きていたことに驚きを感じました。

南満州鉄道職員の娘として生まれ、女優「李香蘭」として活躍し、歌手としても「蘇州夜曲」や「夜来香(イェライシャン)」などの名曲で人気を博しました。

終戦後は国内で女優として活躍し、後には国会議員として国政にも参画しました。

山口さんの前半生は、劇団四季のミュージカルになった他、TVドラマスペシャルとして、1989年には沢口靖子さん、2006年には上戸彩さんの主演で放映されました。

激動の時代に翻弄されながらも力強く生き抜き、多くの足跡を残した山口淑子さんのご冥福を祈ります。

 

<店>

 

「カスケイドカフェ(ブッフェ)」六本木一丁目

とにかくコストパフォーマンスが高いブッフェ。ブッフェ台に新しいお皿を取りに行って戻ってくると前のお皿が片付いていない、飲み物のオーダーを一切取りに来てくれない、などと気になる点もあったけれど、客席の広さを考えると多少は仕方のない所かもしれない。瞬間的に「あれ」と思うことはあっても、後々まで引きずるような不快感を覚えることはなかった。料理に外れらしい外れのものはなく、入店前のわくわく感を最後まで維持できる。味はどれも本格的なものが揃っており、特にサラダ・ハム・チーズをはじめとした前菜類の充実っぷりは他ではちょっと見ることができない。ディルとキュウリのドレッシングが初めて食べる味で、夏らしく爽やかな味が美味しかった。

 

「軍鶏郭(日本料理)」神楽坂

店名通り、東京軍鶏の専門店といった色を持ったお店。単価が高く、その割に「これを楽しみにして来ている」はずの軍鶏から、満足感は得られない。味は十分に美味しいけれど、口いっぱいに頬張るようなボリュームがあるわけでもなく、皿の上のものがあっという間になくなっているという印象。スタッフの方も、こちらから呼ぶ前に何かをしてくれるということはほとんどなく、ドリンクのオーダーも料理の注文もスタッフさんを探さなければならなかった。席を立っても会計をしに来てくれることはなく、入り口の戸を開けて扉についた呼び鈴を鳴らすことでようやく店員さんが来てくれた。東京軍鶏自体は魅力ある地鶏で、その様々な部位を様々な楽しみ方で提供してくれるお店としては貴重な店舗だと思うけれど、残念ながら、個人的に満足して帰ることはできなかった。

 

アンリ・ルルー(洋菓子)」六本木

塩バターキャラメルで有名なお店。C.B.S.という名のキャラメルは、キャラメリエが作り出した、塩を使ったスイーツの原点と言われている。ショコラとキャラメルのお店だけれど、軽食もあり、初めてガレットを食べてみることに。ガレットに対しては「少し前に流行ったそば粉のクレープ」という大まかな知識しか持っておらず、あまり興味を持っていなかったけれど、想像とは違う味だった。クレープという言葉の持つ人工的な甘さは一切なく、そば粉の持つ自然の甘味は主食としての小麦粉や米が持つそれと変わらない。食感は硬めのパンのようで、ベーコンや卵などとよく合う。もっと定着してもいいと思えるほど完成された味で、一過性のブームで終わらせるには勿体ない、と感じた。食後に食べたキャラメルも美味しく、キャラメリエの繊細な仕事を初めて見ることができた。

 

AW ELEMENTS (イタリアン)」六本木

六本木らしく、お洒落で洗練されたお店。カタプラーナやエスペダータというあまり聞きなれないお料理が中心となっているが、それぞれBBQとブイヤベースのようなもので、意外と舌によく馴染む。母体となっているAW Kitchenグループの看板ともいうべき「農園バーニャカウダ」は盛り付けも美しく、美味しくたくさんの野菜摂ることができる。ただ、いくらバーニャカウダブームの火付け役であっても、バーニャカウダがありふれてしまった今、他店との差別化を図ることは難しくなっている。綺麗で美味しいというのが当然になり、それ以上の付加価値というものは、いくらAW kitchenグループといえども、まだ模索している途中であるように思えた。

 

 

「うかい亭(鉄板焼)」表参道

うかいグループの中でも一、二の売り上げを誇るという表参道店。店名を冠しているうかい牛は、和牛らしい味で香り高く柔らかく、非常に美味しい。マナガツオのソテーは旬を迎えた茄子と一緒に頬張ると、うかい牛に負けないほどの旨みが広がる。北海シマ海老のジュレは、キンキンに冷やした半熟卵と同様に冷やしきったシマ海老の相性がよく、温度管理の重要さがよく分かる一品。料理の完成度が高く、それはデザートも例外ではない。シフォンケーキのようなシンプルなデザートが美味しいのは、作り手の腕前もさることながら、うかい亭ならではの空間造りによるところもあるのだと思う。値は張るものの、価値ある贅沢に多くのファンが付いているのは、納得のいくところでもある。