V056「ガリオーネ(バンビーノ)」 アウレリオ・フィエロ 

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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1.まだうら若い美少年が、背伸びをして大人の仲間入りをしようと、夜の街で必死にもがいている様子を、大人たちの目線で、コミカルに歌い上げている曲です。メロディはもちろんですが、伴奏部分も、なかなかコミカルで、思わず笑顔になってしまいます。

 

2.アウレリオ・フィエロは、俳優ということもあり、声の美しさなどよりは、表現を大切にしているようで、とても好感の持てる歌い口になっています。それにもかかわらず、声のチェンジが自然にうまくできていて、高音域も無理なくよい声を使えています。チェンジの苦手な人はぜひ見習うべきでしょう。

楽譜としては、メロディの終わりはほとんどが2分音符や全音符ですが、アウレリオ・フィエロは、特に低音部分のフレーズ終わりを、短い音符で歌いきっています。それがまた、コミカルさを増していて、味のあるところです。ただ、作曲者の意図とは反するので、ずるい表現方法ともいえます。

 

3.まずは、楽譜どおりに歌ってみましょう。そのためには、他の歌手が歌っている音源を参考にした方が、よいかもしれません。特に、日本人のカンツォーネ歌手や、イタリア人でもオペラ歌手が歌っている音源があれば、楽譜に忠実に歌われていることが多いので、参考になるでしょう。

(♭Ξ)

 

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1.Moderato,un poco mosso(中くらい速さで、少し速く)とありますが、2/2拍子で歌詞の発音も多いので、実際に歌ってみるとかなり慌しく感じると思います。むしろテンポに乗れないと追いかけて歌っているように感じるくらいなので、演奏にあたってはしっかりと自身のテンポ感を確立しておくことが必要です。

 

2.フィエロは歌い出しからマルカート気味に歌っており、歌詞の発音にも弾みをつけているので音が途切れて(音が短く)聞こえるのですが、あえてそのような歌い方で表現をしているのでしょう。

表現は自由ですが、あまり音が途切れると息苦しく聞こえてしまうので、もう少しフレーズに流れがあってもいいように感じました。転調してからはフレーズ感が出てきて聞きやすくなったのは確かです。

 

3.フィエロのように弾みをつけて歌詞を発音すると、口が狭くなり母音がつぶれやすくなってしまうので、ナポリ語が不慣れな人は歌い方を真似しない方がいいかもしれません。

2/2拍子ですが、始めは1小節を4つ取りにしてゆっくりめのテンポで練習しましょう。歌い慣れてきたら、最終的に2つ取りに戻して歌うと旋律が流れやすくなります。(♯α)

 

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1.男子も、小学校の高学年から中学生くらいになると恋をしたくなるでしょう。そんな、まだあどけなさも残るような男の子に対して、恋するにはまだ早いんだから、恋人じゃなくてお母さんのもとで慰めてもらいなさいと歌われている曲です。

 

2.基本的に語るような声で歌われているのが特徴的ですし、そのため、比較的聞きやすい印象を受けます。表現からなのでしょうが、最後の方で鼻にかけすぎているような部分があり、その部分以降は鼻声の要素が目立ってしまっている印象を受けます。

 

3.歌い始めるよりも前に、音もリズムもつけずに文脈を活かして読む練習を繰り返し行うことが望ましいと思います。言葉のニュアンスを活かすことなく楽譜のリズムで歌うことに専念してしまうと、この曲のようなナポリターナの持つ叙情的なニュアンスが出なくなってしまうと思います。鼻にかけるような歌い方のマネはせず、自分の声で自然に語れる部分を最大限活用して歌うとよいでしょう。曲自体は歯切れのよい語りの要素もあった方がよいと思います。歌いすぎず語りに音とリズムがついたような状態で歌えると理想だと思います。(♭Я)

 

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1.民謡的な要素を残しているせいか、短調になったり長調になったりを繰り返して構成されているところは「帰れソレントへ」にもみられる傾向です。最後のコーダは短調で、今まで出てきていない音型で締めくくられます。

 

2.見慣れないイタリア語のように思われるかもしれませんが、ナポリの方言で書かれています。素朴な表現で子供を諭すように表現しています。

声もはったり大げさなフォルテなどせず、語るように諭すように歌っています。こぶしや、音の最後の処理で味を出しています。こぶしの回し方が民謡を彷彿とさせます。

 

3.おどけたような表現、かわいらしく揶揄するような表現で歌えるといいですね。細かい音符は言葉がしっかり回るようによく発音練習して言葉のリズムの楽しさを音に乗せられるように練習しましょう。(♯β)

 

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1.リズムがかわいらしいイントロです。フルートのトリルもアクセントになります。ちなみに、どの曲でもイントロと間奏をよく聞くことを勧めます。楽器の音をたくさんインプットすることが表現のヒントになります。また、イントロだけからどういう曲なのか想像するのも大切です。「何だか楽しそうだけど物悲しい」みたいな陳腐な言葉でもよいのです。想像するだけで、表現が変わってきます。

 

2.語尾を短く切る歌い方ですね。淡々と歌っているようですが、高い声から低い声まで、完全にコントロールできていて均一な音質です。とても音域の広い曲なので、それはとても難しいです。

この曲は、短調から、長調、また短調の切り替えが急なので、そのタイミングが難しいのです。普通の歌手なら、伴奏が先行し引きずられるように歌が遅れて転調についていくのですが、この曲では歌手が先導して変えていきます。ほんの一瞬の絶妙なタイミングをつかまえていくのです。何も変わっていないようなのに、変わって聞こえますよね。最後遅くなるところも、何事もなかったように、自然に変わるのが凄いです。

 

3.長調短調と変わるところをよく聞いて、真似してみてください。伴奏よりも先に変わらないといけません。自分の歌を録音して比較してみると、この歌手の凄さがよくわかると思います。(♭∴)

 

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1.「ガリオーネ」とはナポリ方言で少年、男の子という意味です。バンビーノは同じ意味の標準イタリア語です。セレナータ(意中の女性の窓辺で男性が歌う恋の歌)を歌う少年を「まだお子様のクセに」とからかって「ママのところに帰りな」とあしらう内容です。

 

2.フィエロの声は女声アルトのような妖艶な音色です(はじめ女性歌手が歌っているのかと思いました)。こちらの録音は若いころのもののようで、晩年の演奏はどっしりした男性らしい声です。やや鼻にかかった声でシャンソンのような軽やかさもあります。

 

3.アップテンポで言葉を捌くのが大変ですが、余裕綽々で歌うことが大前提の音楽です。よくしゃべる練習をした後で、軽さを意識してメロディに乗せてみましょう。(♯∂)