「言葉にできない」 034

この曲は、小田和正さんという持ち声の人が歌うから成立する曲だと感じます。実際にこのキーを小田さんのように柔らかく歌うというのは困難です。小田さんは生まれつきかなり声帯が短いか薄いのだと思います。最近のJポップの男性はかなり声が高くなってきましたが、小田さんのように柔らかい音色で高い音までいくひとはあまりいません。実際に女性が歌ってちょうどいい音の高さかもしれません。
高い音というのは訓練である程度出るようになりますが、それがその人にとって自然であるかは別問題です。TMRの西川さんやL’Arc-en-CielHydeさんは体格も小柄ですし体格と声帯の長さは比例することが多いので小柄な体格の方は高い音が出やすい人が多いです。しかしそれを好きでだしたとしても、がんばって出ていても「自然」かどうかは別問題だということです。それぞれの声が活かせる音域というのもありますのでよっぽど声が高い人がいらっしゃったら課題として与えることがあるかもしれませんがレッスンやトレーニングとしては不向きな楽曲だと思います。(♭Σ)

小田和正さんの持ち声は非常に高く、楽譜を見ていただければよく分かると思いますが、基本的に5線の上半分かそれ以上の高さで旋律が書かれています。更に言いますと、歌い始めて2小節目で早くも2点B(「べー」(ドイツ音名)
シの♭の意味)の音が出てきます。この高さの音というのは、オペラではテノールの主役クラスの歌い手が、魅せ場として歌う場面でお客さんも期待する、絶対にキメなくてはならない音です。実は難易度としてはかなり高く、高音域のトレーニングを受けたことがない人が歌うというのは非常に危険な曲です。
ですから、このキーにこだわらずに、各々適切なキーに移調して歌う事を心がけましょう。無理をして原曲のキーにこだわったとしても、どこかに無理が出るはずです。却って変な癖をつけてしまったり出にくくなってしまったりという弊害も考えられますので、自分に合ったキーで歌う事を心がけてください。自分に合ったキーを見つける上で気をつけなければならないのが、原曲であれば、最高音が2点B、最低音が1点Es(「エス」(ドイツ音名)ミの♭の意味)という、2オクターブ弱もの非常に音域の幅があるという点です。この中で無理せずに歌える高さで歌いましょう。(♭Я)