1.歌詞と曲と演奏など
(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)
2.歌手のこと
(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)
3.歌い方、練習へのアドバイス
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1.エディット・ピアフの大ヒット曲で代表曲の1つです。多くのフレーズが長めの付点四分音符に続く八分音符の連続です。この八分音符の連続を、ルイ・アームストロングのトランペットでは、スキップのリズムにしたり、装飾的に細かい音符にしたりしています。
始まりの長い音は、主音から始まり、下に、七音、六音と進み、上の二音に上がって、また主音、七音、六音と下がり、長い音符は順次進行で下っては戻る、穏やかな流れになっていて、ゆったりと満ち足りた気分に包まれた、愛の歌にふさわしい構成になっています。
2.ルイ・アームストロングのトランペットの基本的に輝かしい音と対照的な、無理にがんばっていない掠れた声が、優しさを醸し出しているようです。マイクがなければ、成立しない声ですが、本人は、トランペットで輝かしい音をいくらでも出せるので、声が輝かしくなくても、気にならないのでしょう。
3.ルイ・アームストロングの歌うこの曲を聞いて、気に入った人は、この声も真似したくなるかもしれませんが、できれば避けましょう。本家のエディット・ピアフも悪くはありませんが、ちりめんビブラートは真似しないようにしましょう。他にも多くの歌手がカヴァーしています。岸洋子は、発声的にはオーソドックスに近いので、真似してもよいと思います。(♭Ξ)
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1.リズムもメロディも楽譜にしてしまうとさほど複雑ではないです。しかしこれを語るように表現するのはとても大変なことです。単純であればあるほど、難しくなるものです。そういう意味では歌唱力や表現力といったものが必要とされる一方、そこだけでなく声の力や声そのものの魅力が歌い上げることで成立する曲だとも思います。
- 荒れた声の印象ですが、低い喉と甘い表現で色気さえ感じさせます。発声の中でよく言われる共鳴や支えなどを考えているとは思えない声ですが、しゃべるように歌う声の力強さとそれを支える体と息の強さを感じます。おそらく彼自身が管楽器奏者ということが大いに関係していると思われます。ブレスの強さは横隔膜の強さと、その息を支える体の強さとイコールなので、それが歌にも活かされている印象をうけます。
トランペットの前奏では美しく張りのある音でメロディックに演奏して、歌では違う表現の仕方をしてみせるのが、とても素敵な演出だと感じました。
3.声そのものをまねることはおすすめしません。しかし、彼の声の魅力は荒れた声とその根底にあるブレスと体の強さです。その意味では歌の練習というよりもブレスとそれを支える強靭な体と声の強さを鍛えなければいけません。単純な言葉でいいと思います。「ハイ」や「yes」でよいので、体の低い場所からだしていけるようにトレーニングを重ねましょう。(♭Σ)
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- 歌詞は女性の目線から見た内容で溢れるような愛、未来への明るい希望といったものがゆったりとしたテンポの中で歌われていきます。
3分半ほどの曲なのに前奏と後奏が多く占めており、実際に歌う部分は1分ちょっとです。短い中でも短いと感じさせない、聴き入ってしまうような魅力的な歌い方が求められると思います。
- アームストロングの声はカサカサと雑音が聴こえて美声ではないが、とても味のある声、まさに人生と歌うことを積み重ねてきた声だと感じられます。たとえよい声でも、技術をとことん磨いても、それだけでは聴き手の心に届く歌にはならない、最終的にはその曲をどう表現するかという歌い手の表現力が問われるのだと改めて思わせてくれます。
3.なんとなくで歌うとあっという間に終わってしまう曲です。「And when you speak,~」にしっかりと盛り上がりを持っていく(声量だけではなく表現的にも)ことを意識して音楽作りをしてみてください。もし人前でアームストロングと同じ音源を使って歌う場合には、この長い「前奏・後奏」を含めた形で練習する時間も取りしましょう。前奏も後奏も音楽の一部なので、人前で歌っていることを想定し、どう自分が立ち居振る舞うのか、前奏・後奏はどう表現者としてあるのか、を準備してください。それが本番への大きな助けとなります。(♯α)
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1.「La Vie en rose」は読んで字のごとく、フランス語で「バラ色の人生」を意味します。歌詞もフランス語です。
恋をし、愛しい人のことを見たり想うと人生がばら色のように輝く。そんな幸せに満ち溢れたドキドキ・ワクワク・キュンキュンを、詞と音楽に乗せて表現できるとよいのではないでしょうか。
2.アームストロングはトランペット奏者、歌手、作曲家として活躍した類まれなる才能の持ち主だと思います。
トランペットの演奏と歌唱を一人で両立できるのは彼の強みですね。トランペット演奏部分の音楽の歌い方にも表れていると思います。
彼の歌声は、声質・音楽性など複合的に組み合わせた彼独特のものであり、他人がまねをしたところで同じような演奏ができるようなものではないと思います。
3.この曲を演奏しようとする人は、彼の独特の声をマネをしたがる傾向が強いように思いますが、彼の魅力はもっと他にあるように思います。言葉の語り方や音楽的な部分など、もっと学ばなくてはいけないようなことがたくさんあるように思います。人の心を引きつける歌い方の本質を、しっかり研究して歌ってみてください。(♭Я)
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1.有名なシャンソンです。「あなたとの生活、幸せよ」といったような単純な内容の歌です。
トランペット奏者でもあるアームストロングは、まずトランペットで吹いてから、同じように歌います。まずはトランペットを聞いてみてください。詰りがちなリズムの伴奏の上に乾いたビブラートのトランペットの音が始まります。おそらく生の音はすごかったのだと思いますが、この録音では単純に「タイミング」と「強さ」(音のアタック)だけを聞けば充分です。絶妙なリズム感と音色の選択、盛り上がるところは盛り上がり、そのために少しずつリズムを切迫していきます。
2.特徴的な声は一度で印象に残ります。性格俳優のような声。しかし、それだけに耳を奪われては本質を誤ります。すごいのは、「不潔な」声ではなく、頂点を目指して直線的に素直にまっすぐ盛り上がっていく、非常に清潔なフレージングです。サビに至るまでの3フレーズの微妙な変化。くどくなく、それでも1フレーズごとに静かに盛り上がっているのがわかるでしょう。
3.トランペットソロを「ラララ」で真似してみましょう。リズムと音色に集中できるので、歌よりも教材として優れているといえるでしょう。タイミングと強さだけでいいので、完璧にコピーしてみてください。(♭∴)
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1.元はエディット・ピアフの歌唱によるシャンソンで「薔薇色の人生」という意味で、内容は、恋することで世界は薔薇色に見える、といったものです。数多くの歌い手にカヴァーされており、ジャズスタンダードとしても扱われています。歌手でトランペッターのアームストロングによるこの演奏は、前半がトランペット、後半が歌唱という構成になっています。
- アームストロングの嗄れた声は美声とは言い難いものですが、なんとも言えない心地よさがあります。オシロスコープで見た波形の美しさだけでは、歌は計れないものだな、と思い知らされます。
特筆すべきは、トランペットも歌も区別なく扱って音を出しているということです。
3. 天才的なトランペッターのウィントン・マルサリスに言わせると、アームストロングのプレイは真似しようのない次元にあるとのこと。これはトランペットについてのコメントですが、彼の歌について私も同感です。
少し角度の違うアドバイスではありますが、歌以外の楽器、特に管楽器を勉強してみるのはとても役に立ちます。トランペットはどちらかというと「息が余る」楽器なので、より歌に近い笛系の楽器(フルートやリコーダー)、あるいは、尺八がおすすめです。(♯∂)
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「福島英のヴォイストレーニングとレッスン曲の歩み」より(https://www.bvt.co.jp/lessonsong/)
19.ルイ・アームストロング(サッチモ) 「ラヴィアンローズ」
ジャズのトランペットプレイヤーでヴォーカリスト、スキャット唱法を生み出した人です
エラ・フィッツジェラルドとの「ポーキーとベス」も著名です。マイルド・デイビスに「しゃべりまでジャズになっている」と言われました、しわがれた声をまねた白人たちが喉を壊したというので、発声のコピーにはお勧めできません。
「バラ色の人生」(ラヴィアンローズ)は、ピアフ、美空ひばりと比べてください。
彼のトランペットを聞いて、彼の歌唱で聞くと、楽器のプレーと声の歌唱のことについて、多くを学べるでしょう。トランペットは、初心者には音が出せない金管楽器です。音を出すこと、次に音を伸ばすこと、そして少しずつ長く強くしていきます。声も、すぐに歌うという前に声をきちんと出して、フレーズにしていくというプロセスをふまえることと同じです。
スキャットというのは、ことばのない歌です。ハミングと同じで、発声、声の音色でメロディを聞かせるのによいと思います。
参考:スキャット「夜明けのスキャット」由紀さおりの「ルールールルルー」(1969、2011ピンク・マルティーニ)(THE YELLOW MONKEYの吉井和哉、香西かおりほかカヴァー)