V002「さよならをもう一度」尾崎紀世彦       

1.歌詞と曲と演奏 ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど

 

2.この歌手自身の声、歌い方、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと(VS比較歌手)

 

1.近年の男性の歌うポップスは、高音域ばかり流行っていますが、それに比べると、音域は、むしろ低めです。それなのに、とても輝かしく力強く、決して低くて暗い印象ではありません。高い声さえ使えれば、迫力が出る、とつい高い音にばかり気が向いてしまいますが、本当に大切なのは、声の音色なのです。

この曲の中の、サビ以外の部分では、確かにサビの部分のような輝かしさは抑えられていますが、サビだけが特別に輝かしいのではなく、他の部分でも輝かしい声は出せるけれども、あえて控えめにしていると感じさせます。つまり、サビだけ、いい声が出せるわけではないのです。これは、とても重要なポイントです。

 

2.男性が歌うことが、こんなにカッコイイことだと、子供心に、思わせてくれた歌手です。

歌い始めの「ラー~」で、サビに近い輝かしい声を聞かせ(実際、ほぼサビの音型ですが)、「いつか逢える~」から少しトーンを抑え、「さよならは愛の言葉さ~」の中で、最高に輝かしい声まで、無理なく上げていく余裕のある声のコントロールが、とても魅力的です。 (♭Ξ)

 

1.わかりやすい歌詞の内容であることと何度も同じ言葉を繰り返すので、印象に残りやすい曲と詞だと思います。ポップスなのですが、どこかカンツォーネのような印象もうけます。それは、歌い手の声、歌い方もあると思います。前向きな別れを印象づけるようなメロディだと感じます。リズムという意味では、かなりゆっくりめなバラード調の曲なので、声の力が必要な曲だと思います。

 

2.歌い上げるという感じの声だと思います。今の日本のポップス歌手にはいないような歌い方ですね。高音に向かって優しく、裏声のような男性歌手が多い現代の声に慣れていると、少し強すぎるように聞こえるかもしれません。歌詞だけ読むと少し切ない内容ですが、この声で高らかに歌うから悲しい曲ではなく前向きな曲に聞こえてくる印象ですね。

シャンソンよりもカンツォーネやタンゴ歌手のようなイメージの声です。(♭Σ)

 

1.曲の頭からサビ部分のメロディを持ってきて、その後で改めて曲の歌い出しが始まるという構成です。聴き手にインパクトを与える、サビ部分のメロディを印象づけるといった効果があるでしょう。歌詞をつけずに「ラララ」で歌うところも、メロディがより耳に入ってきやすいです。演奏するにあたり、曲の頭からサビ部分を歌うときと同じテンションで歌い出す必要がある、ということです。曲の歌い出しから徐々に乗ってくる、途中で声の調子が出てくるといった人は、始めからよい声を乗せるための練習として、このような構成の曲を歌うのはよい勉強になります。


2.歌を聴いてすぐに感じることは、高音の伸びやかな声が持ち味で、曲を歌うときもそれが存分に活かされていることです。ただ一辺倒に歌うのではなく、声に緩急をつけて曲全体がメリハリのある歌い方なので、張りのある、突き抜けるような声の響きが耳に残るのだと思います。(♯α)

 

1.朗々と歌い上げる練習の曲として取り上げるのに適しているのではないでしょうか。歌詞をリズムで切りすぎないで歌えると、さらに理想的だと思います。言葉の語感が音楽とうまく結びつくように歌い、そのうえで朗々と歌うというような練習にこの曲を用いると、いい練習になると思います。どうしても日本人の特徴として、こぢんまりとまとめたがる癖がありますが、その部分を打破していくための練習に用いるといいでしょう。

2.日本人としては、このように歌い上げるタイプの人は、近年減ってきましたね。歌唱力で勝負できるタイプの人だと思います。時代とともに音楽の文化が変化したのかもしれませんが、現代の人も、このような歌い方もできるという状態になっておくと、自分自身の歌えるキャパシティが増えるのではないかと思います。ところどころリズムを刻みすぎて、言葉のニュアンスが崩れやすくなっている部分がありますが、この点は個性ととらえつつ、自分で歌う場合には、言葉のニュアンスが崩れない状態を意識していきたいと思います。(♭Я)

 

1.ボカリーゼで歌われるサビから始まり、低音から始まるAメロ、高音に上がったBメロ、そこから続けて再現されるサビへとつながるという構成です。12/8拍子で、4/4拍子のように、一小節に4拍あるのですが、その一拍のなかに8分音符が3つずつ入っているという拍子になります。美空ひばりの「愛燦々」と同じリズム運びになります。


2.この歌手の特徴は、のびやかな声、しっかりと体で支えられた歌唱が、なかなか他に類を見ないと思います。このような歌い方を身につけていれば、どんな難しい曲でも、フレーズの長い曲でも、洋楽でも歌いこなせると思います。朗々と歌い上げる曲を歌うアーティストを歌いたい人に参考になると思います。ミュージカルを歌っていきたい人にも、声の作り方としては大変参考になるのではないでしょうか。(♯β)

 

  1. 日本語によるロッカバラードです。サビ部分に盛り上がりがある構成でリズミカルな伴奏のなかに伸びやかな旋律が印象的です。

AメロとBメロの対照的な歌い方で、伸びやかな中間部を強調しています。(♯ё)

 

1.構造:サビ Aメロ Bメロ サビ

構造上の特徴は、いきなりサビから始まる。

Aメロが短い。(普通はもう一度繰り返される。)

Bメロに劇的な転調がある。

歌詞の特徴は、「ラララ」で始まり、なんの曲だかわかりませんが、少しずつ具体的になっていきます。遠近法で、遠くから近くにズームしていく感覚です。

調性は、原調はニ長調で祝典的な調性(ベートーヴェンの第九、バッハのブランデンブルグ協奏曲第五番他)それなのに「さよなら」という逆説的効果。

演奏のコツは、初めのサビをうまく情熱的に歌えるかにかかっている。「ラララ」で朗々と歌い「いつかあえる、きっとあえる」で少しリズムを立てて内向的に。「さよならは愛の言葉」で真正面に声を届ける。

 

2.意外と音域は高くはありません。最高音はfisです。ライヴの演奏を聴くと「いつかあえる、きっとあえる」の「いつか」の「か」、「きっと」の「と」のタイミングにものすごく気を使っています。

いくつかライヴの動画も見て、あらためて歌のうまい歌手が全盛だった時代が懐かしくなりました。 (♭∴)

 

1.惜別の歌ですが、その先にある再会を確実なものとして見据えており、相手を思いやる心に溢れています。演歌のような湿っぽさは皆無で、カラッと歌い上げたいものです。しかし、途中の強引な転調が、実は心中にザワザワしたものがあることを如実に物語ります。それはあくまで音楽が語るものなので、殊更、声で表そうとすると安くなります。
サビの部分を冒頭に持ってくるインパクトのある開始はカンツォーネ風で、スケールの大きさを感じさせます。
リズムは4分の4拍子、ドラムはニュートラルな1拍3連を刻みます。
楽器編成はストリングス、ドラム、ピアノにトランペットです。殊にトランペットが歌と同等かそれ以上に大きな役割を果たしています。

2.のびやかで衒いのない声です。どこにも力みのない発声には押しつけがましいところが一切なく、聴く側にさまざまな解釈の余地を与えます。唯一、つぶやくように歌われる「いつか逢える」が、大きなインパクトをもたらす。演奏はシンプルなほど効果が大きいのだ、と思わせてくれる稀有な歌い手です。(♯∂)