「かあさんの歌」074

戦後の社会主義運動のひとつ、うたごえ運動にも参加していた作者の曲です。歌は、4小節単位の3つの部分で構成されていますが、始めの4小節は、属音で始まったメロディが少しずつ下降し主音まで下がった後、3小節目で6度跳躍して属音に落ち着きます。続く4小節は、いきなり5度下の主音から3度跳躍してから主音に順次進行で降り、次に5度跳躍して属音からまた主音になだらかに下がると、一気に1オクターブ跳躍してから属音に降りて落ち着きます。最後の4小節は、ひとつ上の第六音から始まった後、属音から主音へ綺麗に順次進行した後、4度下の属音(この歌の最低音)から、第三音へ6度跳躍して、順次進行で降りた主音からの5度跳躍した属音を起点に、綺麗に主音へ順次進行で降りて終わります。
このように、跳躍と順次進行が、とても効果的に組み合わされて、作者の思いを表現している曲です。跳躍は、もちろん声が途切れ過ぎないように、あるいは、音程も微妙にズレたりしないようにと、声のコントロールは、なかなか難しいものですが、それ以上にていねいに扱わなければいけないのが、順次進行です。
「隣り合っている音へ進むだけだから、簡単」などと甘く考えがちですが、メロディの中で、もっとも美しく聞こえると言われる順次進行を、100%活かすには、音程が甘くならないように、十分に注意を払うことを忘れないようにしましょう。([E:#x266D]Ξ)

レガートのトレーニングによい題材です。「母さんは夜なべをして、手袋あんでくれた」というこのフレーズを、言葉を鮮明に、レガートに歌うというのはとても難しいです。レガートで言葉が不鮮明なのはよくありません。あくまでも言葉が聞こえつつのレガートです。
10小節から11小節の1オクターブの跳躍はとても難しいのですが、指導者によって違う部分でもあります。前の音でしっかりと支えるという方法もありますし、支えると力みやすい、又は息がとまってしまうという人は、支えをあまり意識せず、自分が思っているよりも少し早めにつっこむくらいの感覚で歌いましょう。そうすると息が流れ始めますので体も力まずに歌えるかと思います。
1番から3番までで言葉の入れ方が違う箇所があるのでそこは注意しましょう。早口になりすぎないよう、センスが問われる場所でもあります。あくまでも急ぎ過ぎず、滑ったように聞き手に聞こえないように歌ってください。
([E:#x266D]Σ)

母の愛を歌った曲ですね。特徴としては、全体的な曲調の割に言葉が多いということが言えると思います。言葉を喋りすぎてしまうと、かえって歌いにくくなってしまうので、その部分を注意しましょう。言葉を喋りすぎると、アタックした感じに聴こえ、デコボコした曲になってしまいます。そうすると、哀愁漂うこの曲の雰囲気にそぐわなくなります。
ポイントとしては、全体的に母音をたっぷりめに歌うことが大事です。例えば、「かあさん」の「あ」や、「あんでくれた」の「あ」を大事に歌うことを心がけましょう。全体的にたっぷりと歌うことを心がけると良いでしょう。はねすぎずに歌うことを心がけることも重要です。特に、言葉がごちゃごちゃしている部分、楽譜でいうと二段目の4小節目からの伴奏部分を見ていただくと、クレッシェンド、デ・クレッシェンドが多く書かれているのがお分かりかと思います。これを積極的に歌でも表現できると、より良い状態になると思います。
元気いっぱいではなく、哀愁を漂わせながらも母の愛を感じ、朗々と歌えるように研究してみて下さい。([E:#x266D]Я)