「朧月夜」 041

とても声楽的な歌だと思うことが多いです。まずレガートで歌うこととある程度の音域がもとめられること、「はるかぜそよふく」などはけっこう嫌な音域なので決して歌いやすい曲ではありません。しかし元来「尋常小学唱歌」の中の一曲なので綺麗に歌うというよりは元気一杯に歌うのが本来の形なのかもしれません。しかし私も尋常小学唱歌の中の曲を数多く歌わせていただく機会が多いのですが、子供が歌っても、大人がしっとりと歌ってもどちらでもぴったりの素晴らしい曲が多いのです。案外とてもいいヴォイトレの教材かもしれません。
この曲は言葉が立ちすぎるととても子供っぽくなります。逆に言葉を立たせたほうが元気な感じはするでしょう。
私はあまり言葉を立てすぎず言葉がメロディに寄り添うようなつもりで歌います。決してリズムや言葉の強さが先行しないように気をつけています。
youtube夏川りみさんが歌っていますが、夏川りみさんと言えば最近の歌手としては実力派のイメージですが私からするとこの曲の録音は子供っぽいのです。
別に倍賞千恵子さんの映像がありますが、こちらは雰囲気がよいとても美しい大人の曲に聴こえてきます。一度参考にしてみるとよいと思います。(♭Σ)

歌詞はすべて、4・4・3・3の音節で構成され、韻を踏んでいる詩です。メロディーも三拍子、アウフタクト、付点からなる、ほぼ、(タタターンタ タタタタタンタンターンタ タタタアーン)のリズムで構成されています。のどかな自然の光景とゆったりとした曲の雰囲気を感じながら歌うとよいと思います。
「なのはなばたけーに」の『け』は1拍目ですが強く歌わないように、そして8分音符2つの音からなっていますが、音の動きを意識し過ぎないよう2つ目の8分音符は柔らかく歌うと普段話す日本語と違和感なく表現できます。この歌い方は「みわたすやまのーは」の『の』、「「はるかぜそよふーく」の『ふ』、「そーらをみれば」の『そ』、「ゆうづきかかりーて」の『り』、そして2番の歌詞の同じ箇所すべてに通じます。フレーズもクレッシェンドして膨らまして、ディクレッシェンドすることを忘れないように歌いましょう。
(♯μ)

この曲は、小学校6年生の音楽の教科書にも取り上げられているので、一度は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?とはいえども、言葉が古いですので、解釈しやすいように紐解いていきましょう。
1番は「菜の花畠に 入日薄れ」は「菜の花の畠に夕日がどんどん沈んでいき薄暗くなり」、「見わたす山の端霞ふかし」は「見わたす山の端は霞が深くかかっている」、「春風そよふく 空を見れば」は「春の風が心地よく吹く空を見ると」、「夕月かかりてにほい淡し」は「夕方の月、特に三日月が空にかかっていて微かな春の香りがする」というような意味です。
2番は「里わの火影も 森の色も」は「人里のあるあたりの火の光も森の色も」、「田中の小道をたどる人も」は「田んぼの中の小道を進む人も」、「蛙のなく音も 鐘の音も」は「カエルの鳴く声も鐘の音も」、「さながら霞める朧月夜」は「すべてを霞めてしまう 朧月夜」というような意味です。
1番も2番も情景を思い浮かべながら歌うと、風情ある表現で歌えるようになると思います。4月から5月ごろの夕方の情景を思い浮かべるといいと思います。音楽を見てみると、非常に穏やかに書かれていますので、情景が伝わるように丁寧に歌いましょう。目立った跳躍もありませんし、ほぼ1オクターブの中で書かれていますので、突き詰めるのであれば別ですが、譜面上は比較的歌いやすいと思います。(♭Я)