「夏は来ぬ」 040

明治29年発表の曲ということで100年以上前の日本の歌としては少し面白い曲ですね。言葉の一つ一つに音符とリズムがついてテンポも少し速めなので曲の形としては現代曲、または現代のポップスの形が少し現れている曲ですね。
ある程度アップテンポの曲のほうが歌いやすしのりやすいので親しみやすいのだと思います。
ただこの歌を知らず、音源もなく楽譜だけで手渡されて譜読みをするとなると音程をとりやすい曲ではないです。「におうかきねに」「はやもきなきて」などはとくにそうですね。言葉的にも現代の人には馴染みのない言葉ですし少し難しいかもしれません。作曲者の小山作之助先生は現在の東京藝術大学の教授でしたから一般の人よりも世界の音楽の情報が多かったのかもしれません。この時代はマーラーシェーンベルクブルックナーなどが世界の最先端の音楽家マーラーは特に同世代ですしマーラーが大変評価していたシェーンベルクの声楽曲は無調のような、音感がよくない私などには絶対歌えないような曲も数多くのこしているのでその影響が多少なりともあるのかなと推測されます。
これだけ早いテンポで音程が動くととなかなか発声的にも難しいですが音程に意識がいきすぎると逆に体が硬くなっていくので柔らかく歌うといい方向へ向かうと思います。(♭Σ)

たった8小節しかないのですが何気に難しい童謡です。特に2小節と7小節はとても難しいフレーズがあるので注意してトレーニングしましょう。
2小節は喉が上下しやすいのでしっかりと吸気をおこない下がった喉の状態で歌えるようにこころがけましょう。7小節は響かせ辛いウの母音での上昇系なのでつぶれたウではなくよく奥が開いた状態のウ母音で歌えるようにしましょう。ウがどうしてもできない人、又はつぶれてしまう人はオ母音から初めてオと言いながら口をすぼめていく練習を行ってください。
後は全体的にレガートで歌えるときっと素敵な歌になると思います。(♭Σ)

出だしはメゾピアノです。1拍目であっても強くなりすぎないように気をつけてい始めましょう。「におう垣根に」8分音符で音が飛んでいますが、言葉がぶつぶつしないよう、音をつなげて歌いましょう。「におう」『う』はっきりウと発音せず、柔らかく歌いましょう。「はやもきなきて」先ほどと同じようになめらかに歌いますが、「早やも
来なきて」と言う言葉のまとまりを意識して歌うようにすると文章が聴く人に伝わると思います。(ひらがなだけで歌ってしまうと呪文のようで何を言っているか分からなくなる事もあります)2番「裳すそ濡らして」、3番「薫る のきば」「蛍 飛びかい」「クイナ 声して」も同じです。
「しのびねもーらーす」『も』『ら』はそれぞれ2つの音を歌いますが、これも音をつなげて歌うように充分に気をつけましょう。
この曲の歌詞は現在あまり使われない、単語や言い回しの詩で形成されています。
特に題名にもなっている「夏は来ぬ」は『来ない』という意味ではなく、“夏が来た”という意味ですので表現するときに注意しましょう。ほかの歌詞は漢字交じりの歌詞で見ると、大体内容がわかるいかと思いますので、確認して歌われることをお勧めします。
(♯μ)

この曲は1896年に発表されたので、今から120年近く前の作品になります。作詞者の左左木信綱という人は、和歌の創作や研究に功績を残した人であり、古典文学の研究や註釈、復刻にも力を尽くした人です。ですので、現代を生きる我々にとっては、詞の内容を理解するのが少々難しいかもしれません。少し紐解いていきましょう。
まず、タイトルの「夏は来ぬ」ですが、「夏は来ない」という意味ではありません。この場合の「ぬ」は完了を表す助動詞ですので、「夏が来た」というのが正解の意味になります。映画にもなった「風立ちぬ」や「風と共に去りぬ」の「ぬ」も同様の意味です。「卯の花」はご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、初夏に咲く白い花です。旧暦の4月、つまり卯月に咲いていたため、卯月の花から卯の花と呼ばれました。「忍音」とは、その年に最初に聞かれるホトトギスの鳴き声です。有名な古典文学にも使われています。「さみだれ」は「五月雨」、つまり、旧暦の5月ごろの雨。「早乙女」とは田植えをする女性。「裳裾」は衣服の裾の事。「玉苗」は若い苗、「早苗」のこと。「ううる」とは「植える」という意味。「橘」とはミカン科の柑橘類の一種。「蛍とびかいおこたりいさむる」とは、「蛍が飛び交い、怠ることの無いように戒めている」という内容。つまり、勉学に励めという意味。
このように、少しずつ古文を勉強するような気持ちで古語を学びながら紐解いていくと、徐々に情景が見えてくると思います。曲は非常に落ち着いていますので、詞の内容をしっかり理解し、情景を描くようにレガートにたっぷり歌うことを心がけると魅力的に歌えるようになるでしょう。(♭Я)