No.283

「八山(日本料理)」六本木
十月にリニューアルオープンしたばかりの日本料理店。寿司に天ぷら、すき焼き、しゃぶしゃぶなど日本料理の代表格が並ぶ。リニューアル前には訪れたことがないが、とても綺麗な内装で居心地がいい。お料理もおいしく、職人さんがきちんと仕事をしている。ただ、席についてくれた担当の方が、リニューアルに際して新しく雇ったアルバイトさんのようだった。オーダーを間違える、鍋物のタレを大幅にこぼしたうえそのままにして拭かない、など、落ち度が目立った。こちらに限らず、飲食店においてお料理のレベルとサービスレベルの乖離がしばしば見られるが、そのたび、どちらも決して欠けてはならないものなのだということを痛感する。たった一人の不手際だけで、どんなに素晴らしいお店の印象も台無しになってしまう。不安要素があるときは、それを補う準備と態勢を整えておかなければならないように思う。今回はお料理が美味しかっただけに、とてももったいないと感じた。

 

オーベルジュドリルトーキョー(フレンチ)」六本木
 キャーヴド平松の経営店。入店前の出迎えから、退店の見送りまで、さすがのサービス陣で固められているという印象。白塗りの綺麗な店内はフランスのお城のようで、別世界に来たかのような感覚に陥る。料理は、当然のように美味しく、加えて華やかさがある。ソースが主体と言われるフランス料理だが、素材もその調理も、他のどのジャンルの料理にも見劣りしない。ただ、唯一残念だった点として、数種類出てきたデザートだけは甘ったるさが強く、あまり口には合わなかった。紅茶と一緒に頂くために甘味を強調してあるのか、あるいはフレンチのデザートがそういうものなのかは分からなかったけれど、日本人の舌には馴染のない類の甘さであったように思う。

 

重慶飯店(中華料理)」麻布十番
裏路地に佇む中華料理屋さん。前菜は九点盛りで、あまり中華のイメージらしくなく、繊細で綺麗な料理が一口ずつプレートに並ぶ。コース全体としては、やはり中華らしく味が濃く、重たい印象の料理が多い。デザートも盛り合わせで、杏仁豆腐だけならばすっきりとまとまるが、月餅や中華饅頭のようなものが続くと、中国茶ではちょっと拭いきれない重さになってしまうように感じた。スタッフの方にお話を伺ったところ、最近こちらのメインシェフが変わったらしい。以前のシェフは四川の出身で濃口・辛口の味付けを得意としており、現在のシェフはそれを引き継ぐために意図的に味を濃くしているという。中華料理の本場のシェフは、その出身県により味付けが全く異なるというが、同じ麻婆豆腐を作っても全くの別物になるらしい。中華を食べる際には、それを作っているシェフがどこの出身なのかなど、考えてみるのも面白いのかもしれない。