No.289

<CD>

モーツァルト:クラリネット協奏曲イ長調K.622」エマニュエル・ヌヴー(クラリネット奏者)
モーツァルトクラリネット奏者アントン・シュタードラーのために作曲したという、モーツァルト最後の協奏曲。シュタードラーはクラリネットを人の声のように演奏したというが、今日の一番最初にクラリネットが入ってくる入り方が、先日CDで聴いたエラ・フィッツジェラルドの声みたいだと思った。楽器が演奏している上にスゥッと乗って来る感じ。クラリネットは人の声に似てるのかもしれない。高い音域と低い音域の音はかなり違うように感じるけれど、もしかしたら、人間の声もそれで良いのかもしれない。このところ、同じような声で高いところも低いところも、と思い過ぎているかもしれない。

 

<その他>

セビリアの理髪師ハンガリー歌劇場 」
出演者のサービス精神溢れる楽しい舞台だった。「こんにちは」「わかった」などの日本語を使ってくれたり、コミカルなところを分かりやすく観客に見せる演出。ロッジーナは最初、正直言って、体格の良いおばちゃんに見えたが、仕草や物言いが可愛らしく、だんだんお嬢さんに見えてきた。憎まれ役の老博士にもなんとなく親しみのわく演出が良かった。フィガロを演じたのはアジア人のように見えたがイキイキして魅力的だった。抜群のチームワークが物語を引っ張っていく。感心したのは、椅子や机、ついたてなどの小道具や階段にキャスターがついていて、出演者が登場するとき何かしら小道具を押しながら、引っ張りながら出てくる。舞台から捌けるときも、さりげなく何かしらの小道具を引っ張って帰っていくので、場面展開がスムーズ。歌や声の技術をアピールするというより、物語でお客を楽しませてくれる。こんな楽しい舞台なら、クラシック門外漢でも、劇場に通っていろんな演目を見ようかな、という気持ちになる。

 

「リトルマーメイド」劇団四季
アリエルとエリックのダンスシーンがすごく好きでした。

 

「イディナメンゼル」
ライブに行きました。とても感動しました。

 

<店>

「みゆき(日本料理)」目白
良くも悪くも捻りがなく、素材と出汁で料理の味を決めている。二十代と思しき若い客も少なくない。旬に沿った優しく味わい深いお料理は親しみやすく、誰からも愛される魅力がある。料理全般が高い水準にあり、何を頼んでも美味しいことは間違いない。反面、パンチ力には欠ける部分があり、記憶に残る一品があるかというと難しい。時間をかけて、じっくりしっかり味わうべき品々は、身近な和食でありながら、普段なかなか触れることのない本物の和食を体験させてくれる。

 

「メトロポリタングリル(グリル料理)」新宿
まず目を引くのは入り口から覗く巨大なロースター。綺麗に磨き上げられ銀色に輝くロースターの両脇には燃料になっている薪がワイルドに積み上げられており、見る者を惹きつけるインパクトがある。そこで焼かれた肉や野菜がこちらの名物になるのだが、一方でサラダやピクルスなどの冷菜・前菜類にも手抜きがない。本日のジュースなるメニューがあり、日替わりでジュースを提供しているのも珍しい。また、オニオングラタンスープは玉ねぎを数時間かけて丁寧にキャラメリゼしてあり、レストラン顔負けの完成度を誇る。ロースターでのグリル料理がメインではあるが、派手なパフォーマンスの裏でしっかりとした仕事をしている。

 

「マンハッタンテーブル(多国籍料理)」新宿
多国籍料理、あるいは創作料理のお店。生春巻きがあったり、牛ステーキがあったり、パスタやピザがあったりする。、少し節操のない印象。お料理からもお酒からも、こだわりのようなものは感じられず、一体感に欠ける。一品ずつの料理の美味しさももちろんだけれど、その品々の脈絡、前菜からメイン、デザートまで一本の線で繋がっていることが大切なのだと改めて感じた。