「うみ」 067

昭和16年に、国民学校の1年生(小学校1年生)用に選ばれた曲です。前奏4小節に、4小節のフレーズが2つの、短い曲ですが、3番までの歌詞が付いています。3拍子で、4分音符も多く、テンポもあまり早くないので、ゆったりと揺れる海の感じが、うまく表されている名曲です。明るくおおらかで童謡らしいこの曲が、戦時下の検定を通過できたのは、3番の歌詞が「うみにおふねを うかばして」だったからだということです(今は修正され「うかばせて」)。
楽譜の伴奏部分には「レガートで」とありますが、歌はレガートにこだわり過ぎると、少し窮屈な感じになるかもしれません。それでも、2小節単位でブレス記号が付いているので、練習としてチャレンジするのは悪くないでしょう。
また、3番の歌詞の9小節目2拍目の「っ」は、通常ならば1拍目の歌詞の「い」をそのまま伸ばして、2拍目の裏拍辺りで「っ」を入れますが、「うかばして」の歌詞の変更を、亡くなるまで許可しなかった作詞家・作曲家の思いを考えると、2拍目を楽譜通り、ほぼ無音の「っ」で歌うべきなのかもしれないとも、思います。([E:#x266D]Ξ)

この曲はリズムを出し過ぎたり切れすぎると子供っぽくなります。4小節を1フレーズと捉えて大きな枠で歌うと演奏効果もトレーニング効果も上がると思います。基本的に二つの大きな枠の曲ですので一つ一つの言葉や音よりも全体の流れを意識するとよいでしょう。
最初からmfですのである程度の声量をもって歌うとよいです。丁寧できれいな声というよりはしっかりと声をだし息の流れと支えを鍛えていくためのトレーニングと考えるとこの曲を歌うことに意味を持てると思います。
日本語的な感覚でいくと一番の「月がのぼるし」というフレーズの「が」は決して大きくない言葉ですが、音があがるのでどうしても強く歌いがちです。そのようなときに身体の支えがしっかりしていると丁寧に歌っても声が抜けることはないので日本語が美しくなります。
([E:#x266D]Σ)

きっと誰もが幼いころに一度は耳にしたことのある曲ではないでしょうか。「赤とんぼ」もそうなのですが、歌詞は3番までありますが、歌の部分は1回あたりわずか4小節しかありません。シンプルな構成ですが、印象に残りやすいメロディーですね。
大きなフレーズとしては、4小節をひとまとまりにするようなイメージでとらえるといいと思います。また、この曲で練習する意味として、「ウ」の発音を訓練するといいでしょう。いわゆる日本語の潰れたような「ウ」、タコのような「ウ」ではなく、欧米言語寄りの限りなく「オ」に近い「ウ」。「オ」に近いけれど「オミ」ではなく、ちゃんと「ウミ」と聞こえるような発音。非常に難しいですが、これができるようになると、レガートに歌いやすくなり、表現の自由度が増してくると思います。
乱雑にならず、美しく滑らかに歌うための訓練として、この曲をエチュードにするのも一つかと思います。全体的にたっぷりと朗々と歌うことを心がけるといいでしょう。([E:#x266D]Я)