シャルル・アズナブール

彼の歌は、とにかく自然体。
「ほら歌っていますよ、ハイ、歌ってるんですよ、どーだ!」
などという、外形のラインが全く感じられない。

アズナブールは、強い表現をしているときも、
ツンツンと尖ってなくて、柔らかい感じがする。
音色だけであんな感じになるのかな?
どうしてゴチゴチにならないのかなあ?

音量をある程度出して、フレーズを大きく作った上で、
優しさ、丸さ、穏やかさを出すというのは、本当に難しい。
自分で無理にかけている圧力を解放してあげなければ、
アズナブールのような自由な表現はとてもできそうもない。
フレーズの作り方にしても、音色にしても、
体のコントロールと気持ちの余裕が先ず必要。

彼があまりにも演技派なので、
ついついそれに乗せられているんじゃないか?と思い、
目を閉じて聴いてみた。・・・語っている。
なんてさりげなく、ポンと吐くように、音を置くのだろう。
けれど、胸にチクッとくるような切なさが残る。
目を閉じていても、観せられる歌だ。

彼は、根っからのロマンチストなんだな。
あと20年くらいしたら、ツボに入ってしまうかも。
いや、こう思ってしまったということは、
すでにアズナブールの魔術に引っかかってしまったということか・・・。(Y)