ベニー・モレー

シルクハットに杖をもって踊りながら、パワーある声ががっちりと舵をとる。自らのオーケストラに自己流の指揮をとりながら、自由に優雅に歌う。ピアノのソロ、そしてサックスのソロ、全員が入るところ、すべて彼がタイミングを決めて楽団を心のままに描き動かしていく様はジャズの巨匠デュークエリントンやサッチモなど歴史的なアーティストがもつ偉大さが重なってみえてくる。テノール歌手になれそうなほどりっぱな声ともうこんな人はでてこないだろうというほどのスター性や迫力、圧倒的なパフォーマンスで、ふんだんに打楽器ような音色も豊富に取り入れて声を自在に扱い、キューバの国民を狂うほどに熱くさせた。全盛期の1950年代の映像は今見ても、びりびりと南国の太陽のような強烈な熱が伝わってくる。43歳の若さで亡くなってしまったが、国葬となったほど、キューバ音楽史で最高のヴォーカリストとして、今も、日本の美空ひばりさんのように、国民に愛され、歌い継がれている。
ラテン音楽はやはりリズムがすごく面白く魅力的で、たとえばCastellena que buenao bailausetedという明るくやや速いモントゥーノという曲調の曲やSanta Isabel de Las Lajasという曲やバラードの名曲Te QuedarasやComo fueがあるが、なめらかでありながらも、ピシッと音がたつということや、パシッとボールをキャッチするような感覚や音を伸ばすときは吸いとる、時にはすくい上げるような感じで、拍に対してどう音が効果的に扱かわれているかなど、リズム感覚が音楽をつくり流れをつくっているのが感じられる。それを無意識に延々と感じ、発していることだけでも、彼らに音楽を深く感じる。