アンジェリーク・キジョー

歌に無限な広がりをみせる。アフリカには輝かしい歌い手がたくさんいる。彼らがいかに心のままに音楽を奏でているか、その生活、その人生、その運命、すべてに直結した素直な音は、何の妨害もなしに遠い国にいる聞き手の心にもすっと入っていく。裸の太陽サリフケイタ、母なる大地ミリアム・マケバらに続くヴォーカリスト、キジョーもまた生命力にあふれている。「この曲は、アフリカと世界の平和を願う人々すべてに送ります。」と話す直後に叫ぶ声を聞いただけで、体が熱くなり涙がでてくる。偽りのない素直なパワーが心を叩く。アフリカの大地が生む強い色彩力。熱い日差しを思わす明るい声。踏みつけられようとも、常に前へ進もうとする屈しない力強いたくさんの歌。時にはジミヘンの名曲「VooDooChild」も大胆に粋にアレンジし、クラブサウンドと土着の音が混ざりあいながら彼女の奇抜なセンスと鋭さがうまくでている。様々スタイルの曲を野生な鋭さで、どんどん噛みついて消化していく勢い、その速さ、高い温度の声。民族特有の様々な装飾音、鳴き声やパーカッシヴなサウンド、時には大空に鳥が弧を描きながら飛ぶようなダイナミックな叫びや動物たちが大地をける時の音や舞う砂埃をめぐらせるような声に、彼女の壮大なイマジネーションと変化を恐れず迷わず向かう感度の鋭さ、持ち生まれた自然な力に、どこへ行っても、どのジャンルの音楽とも融合していけるだろうという無限の可能性を感じた。