ブレンダ・リー(Brenda Lee)

彼女が歌うJambalayaジャンバラヤは、とてもユニークで面白い。ハスキーな特徴ある声で、田舎の男が嫁を連れて故郷へ帰るという内容のこのスタンダート曲を細かいところまで小回りを利かせ、すばしっこく、さまざまな色に変化する。
とくに跳躍があって高音を聴かせるわけでもないこの曲、ちょっとコミカルな感じの曲調と明るく楽しい内容で、それを出すことも、とても難しい。
声量や声の太さよりも、何よりも、一フレーズに、一曲にどれだけたくさんの持ち味やアイデア、センスを入れられるか、自分の絵が描けるか、その才能について改めて考えさせてくれる歌手である。
レコーディングとライブバージョンなど年代によって入れ方が変わるが、その時その時の体やイメージの状態で即興のように変化していく。
かなりアップテンポなアレンジにしたということもあり、最初のフレーズは、細かくやや詰め気味でしゃべっていて、語尾も伸ばさず、さっさと切り、メロディを抜いたような扱いをしているが、なぜか不思議なほどそこに音程がぴったりとのっている。本人は無意識にやっていて、感覚が自然とそうなっている。そして勘が鋭い。
全体をこんなにメリハリよくできるものだろうかと驚かされる。ノリよく、そのまま最初から2フレーズの途中まで軽くしゃべっておいて、いきなり語尾でシャウトで切り込み、次のMy Yoからさらにテンションが加速し、巧みに体がリズムをどんどん刻み切っていく。Son of a gunのあたりから、うら拍をとりながら、がんがん細かく言葉の韻と田舎英語をまぜこぜにアクセントだけを面白く取り上げる。
息がフレーズを巧みに扱いアレンジしていく。声だけでなく、日本人にはなかなか取れないリズム感だ。どんどん面白くなっていく。Jambalaya のところからシャウトして突っ込んで入る。かなりしゃがれ声でのどをつぶしそうにも思えるが、その後そんなのなんてことないのよと軽く楽々と細かく切り取っていく。
そしてまたシャウト、軽くリズムで巧みに詰めるところ、など交互にうまく変えて入れている。いろんな声色が使えるし、この曲のイメージのくみ取り方に驚かされる。
次第に一人2役のように、ギターやリズム隊の一部となり、ソロをとっているみたいだ。自分でこの曲を掛け合いにし、巧みに操っている。
瞬発力や反射神経のよさ、勘の鋭さ、マンネリ感が全くなくセンスが抜群である。