「怪物」(映画)
映画の予告からは想像がつかない結末に驚きました。一つの出来事でも視点が違うと全然違うものになり、何が真実かなんて簡単にわからないものだと思いました。
「流人道中記 上・下巻」浅田次郎(本)
新聞の書評欄にオススメとあったので、手に取った。読み始めはそれほど面白いとは思わず、上巻だけパラパラめくって返却しようと思っていた。ところが、青山玄蕃という流人が、ものすごく魅力的なのだ。破廉恥罪を犯し、武士なら切腹なのだが、腹を切るのは痛いから嫌だと言い張り、位の高さゆえ粗末にできず、遠く蝦夷の松前藩にお預けとなる。その押送人として旅を共にするのが、年若き十手持ちの石川乙次郎、苦労性の堅物。この組み合わせがなんとも、楽しい。読後感は爽やか、ラスト近く、玄蕃は言う。「存外のことに、苦労は人を磨かぬぞえ。むしろ人を小さくする」。なるほど、世間では苦労は買ってでもしろ、などというが、しなくてすむ苦労はすることない、と、私も思う。なぜなら、苦労していると思っている人は語りたがるから。「むしろ人を小さくする」、これは一理あると思った。
「ドミトリイ」小川洋子(小説)
謎めいた学生寮を舞台とした話。平和な日常の中で気づかないうちに何かが歪んでいく、そして後戻りできない、というちょっとゾクっとする物語です。