“多くの人が過去の時代に生きている。
人種差別がまだ容認されるような時代に差別を受け入れて邪悪を信じている。
それを祭りあげて生きている。
しかし、また一方では未来の楽園を夢みる人々がいる。
人類が一つになるという時代や精神に生きている。
予言が実現するのを待っているんだ。”
限界のない表現者。独特のリズム、メロディーメーカー。そして、詩。
自分の感覚を鋭く巧みに扱う。瞬間的に入ってくるものを受け入れ、吸収する。
ルールに毒されることなく、その自由な発想は、体のままに、感じるままに、
歌になり世界へのメッセージとなる。
1950年、アメリカのミシガン州の小さな村に生まれる。
12才からプロとして今も活躍。このDVDでは70年代に作られた名作アルバム
“Songs In The Key of Life”の制作当時を本人と周りの関係者たちが振り返り語る。
“見える者より多くのものを見ている”と、共演者の一人。
自分たちには見えない神と関わる何かをもっているようだと言う。
作曲し、演奏し、歌い、プロデュースする。
コンセプトをしっかり先まで見つめるその姿勢には、過去だけでなく、
音楽の未来の行方が見えるのかもしれない。
そして、つねに社会を心で直視する。
“与えもせず、ものに溺れるどん欲な人々もいる。”
“人が与える最高のものは時間だ。
その渦中にあるときはあまりに入り込みすぎて、その時間の大切さに気づかない。
学べば学ぶほど、自分の行いに責任を持たなくてはならない。”
ジャズの巨匠デューク・エディントンに捧げた曲‘Sir Duke'について
彼はエディントンの残した言葉を大切にしている。
“最高の歌は未来にある。できることは無限大。
しかし、経験した時間と空間は忘れることはない。”
その言葉のとおり、今も色褪せることなく精力的に作品を作り続ける。
視覚ばかりを重視し、唯物化していく灰色の社会の中で、
前向きに生きる本人の輝きは衰えることなく、
人々に目には見えない確かな力を与え続けている。(M)