メルセデス・ソーサ

愛、そして勇気。そのまっすぐな愛情を社会へぶつける。
大地の歌声 ラテンアメリカの母」と呼ばれる。
中南米の伝統音楽フォルクローレや、反戦歌を歌う、
ラテンアメリカを代表する女性歌手。

1935年、アルゼンチン北部の山岳地帯の村で生まれる。
祖国の自然、広大な大地を吹き抜けていく風の中を、
恐れず裸足でしっかりと立っている人間像を思い浮かべる生命力
あふれる力強い歌声。そこには幼き頃の変わらなき純粋な光が宿っている。
自然の恵み、命を受けた尊さが呼吸と共に聞こえ聞く者の心を震わす。

愛の歌、夢の歌、そして反戦歌。
当時のアルゼンチンの独裁政治の抑圧に苦しみ、
生死を彷徨う人々のため、命をかけて自由と人権の尊さを歌う。
映像では、歌を通して、インタビューで繰り返し彼女が語る言葉がある。
エスペランサー希望-

人間としての基本的な善悪の判断をせずに歌を歌っても何の意味もない、
平和、正義、そして自由という同じ理想が私たちを一つに結ぶと言う。
残酷で痛ましい社会状況に正面から向い闘い続けている。
映像からは目を輝かし、希望を持って一緒に歌い出す人々の姿が伺える。
彼女の歌は、人々が手を互いにとりあい、思いやること、空を見上げるように
目を見開いて生きることへ力を与え、問いかけている。

彼女の声を聞くと自分が再び赤子に返るような感覚を与えられる。
それはつねにある深いところへ、海の中へ導くかのようだ。
感動して止まない真の芸術、歌という力、表現が彼女の中にある。
それは、軽率に判断されることのない、心の奥底からくる、消えることも、
逃げることも、奪われることもない純粋さが働きかける。
彼女の歌声は、さまざまな世代、境遇におかれる人々を全身全霊で包み込む、
偉大なる社会の母の叫びである。(A)