ビオレータ・パラ

“すべての人の歌 それが私自身の歌 人生よ、ありがとう”
ラテンアメリカ、チリを代表するシンガーソングライター
ビオレータ・パラの歌 “GRACIAS A LA VIDA”。

1964年、愛する人が去った絶望の中、自らの身を絶ってしまった彼女。

しかしこの歌は、その後不思議な運命を辿っていった。

ドキュメンタリーは、メキシコを代表する歌手アンバロ・オチョアの
娘である若手歌手、マリアス・イネア・オチョアが亡き母が愛したこの歌と
当時の足跡を追ってラテンアメリカを旅する。
さまざまな人々との出会いを通して、歌と母親が生きた激動の時代を知っていく。

80を過ぎた今も健在で歌い続けるビオレータ・パラの弟が語る
ラロ・パラの姉との思い出。
ビオレータの歌を愛し、社会主義を志した大統領アジェンテが、
1973年の軍事クーデターに倒される前に残した国民へのメッセージ。

ビオレータを敬愛していた吟遊詩人、歌手ビクトル・ハラが虐殺される
前に書いた最後の詩と、それを読む奥さんの姿。
囚われ痛めつけられながらも生き延びた3人の女性たちの涙。
拉致され行方不明になったままの家族を探し、街中に立ち続ける人々。
そして余儀なく国外追放されていたアルゼンチンを代表する歌手メルセデス・ソーサ。
当時の様子を話し、この歌を歌う。一人一人の姿と声が訴えかけてくる。

悲惨な歴史の中で、歌は、人々の強い願いと愛情の中で生き続けている。
“今も真実が知りたいし、正義が見たい。”冬の街中で家族の写真を抱えながら
待ち続ける老婆の言葉。そして、行き交う人々が口ずさむ。
“人混みの中から 愛する人を すべての人の歌 それが私自身の歌
 人生よ、ありがとう” (A)