「からたちの花」 002

まずこの歌を歌う上で常に心がけておかなければいけないのは決して声を大声で張り上げてはいけないということです。そして絶え間ないレガート唱法で歌うということです。
6小節はミックスされた声でなければいけません。特に男性は声をチェンジ(ジラーレ)できないままこの歌を美しく歌うことは決してできないということを憶えておきましょう。
19小節の高いソの音はイ母音です。このイは日本語の横開きのイではなく奥のよく開いた縦のイでなければいけません。22小節も同様です。25小節から30小節に掛けてのフレーズは安定した支えよく流れた息、よく混ぜられたミックスの声がなければとても難しい箇所です。まずはすべてフォルテで大きく歌い身体に憶えさせてから徐々に記譜されてある強弱記号にそって訓練していきましょう。
36小節は音がア母音で開きやすいので先ずはオやウで訓練することをお薦めいたします。(♭Σ)

この曲は、プロの歌い手でも上手に歌いこなすのは至難の業と言われるほど難易度の高い曲です。
全体的にダイナミクス(強弱記号)が細かく設定されています。
では、美しく歌うためのコツを最初から見ていきましょう。
冒頭部分「からたちのはながさいたよ」ですが、最初に跳躍、そして同じ音の連続ですね。最初にここを歌うと起こりがちな現象は、「か・ら・た・ち・の・は・な・が・さ・い・た・よ」と一つ一つブツブツ切れた歌い方になってしまうということです。
美しく歌うためには思いっきりレガートを意識して滑らかにベタァーと歌ってください。そして、ppと共にその隣に”Sempre sotto
voce”と書いてあります。意味は「常にソットヴォーチェで」。ソットヴォーチェとは、遠くに聞こえるようなコソコソ話のような声だと思ってください。この課題を両立させることが、この曲を綺麗に歌いこなす第一歩です。
曲の内容もとても繊細ですし、譜面を見れば強弱記号や表現記号の細かさにそれが表れていることがわかると思います。
この曲は兎に角時間をかけてじっくりさらってください。表現の幅を広げるのにも、テクニックを磨くのにもとても良い教材です。