1.歌詞と曲と演奏など
(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)
2.歌手のこと
(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)
3.歌い方、練習へのアドバイス
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1.同主調の短調から長調に転調する曲です。低い第5音から高い主音まで(装飾音としては高い第2音まで)の、1オクターブ半の少し音域の広い曲で、最後は高い主音のロングトーンでおわります。6/8拍子なので、Andantinoというテンポのためもあり、少し優しい雰囲気になります。8個の短調のフレーズは、どれも1小節目は同じ音の繰り返しで2小節目は装飾音を含めた細かい音符の後に7拍のロングトーンが続きます。最後の8フレーズ目だけは、第5音を3回繰り返した後は、第4、2、3音の後、同様に細かい音符の後にロングトーンの主音で、同主調の長調に転調します。
転調した後は、第5音の連続から順次進行で高い主音の装飾音の後第6音のロングトーンという高音域のフレーズを2回繰り返し、5フレーズ目には、高い主音の3連続から、順次進行で第4音まで、2フレーズを使って下りてきます。曲の最後まで、8割は順次進行で歌われているので、とても美しいフレーズで溢れています。
2.フェルッチョ・タリアヴィーニは、有名なイタリアのオペラ歌手なので、全く無理のない余裕のある声で歌っています。テノール歌手なので、あと1~2音高いキーで歌い上げても、よいのではないかと思わせます。これが、パバロッティなら、3~4音は高いキーで、オペラアリアのようにドラマティックな表現にしているでしょう。
3.音域が狭くないので、しっかりキーの設定をして取り組みましょう。曲の最後のロングトーンは、充分に余裕のある表現ができないといけないので、高過ぎるキーは厳禁です。(♭Ξ)
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1.このカンツォーネは歌詞がナポリ語で歌われています。内容は恋する女性への心情を綴ったもので、男性の溢れんばかりの気持ちが表現されています。歌い出しから前半はヘ短調で彼女の描写や男性の心の揺れ動きを歌い、後半からヘ長調に転調するとやや音域も上がり、口づけをしたい、そばで眠りたい、と彼女へのストレートな想いを歌い上げます。
2.タリアヴィーニはテノールとして美声の持ち主であり、歌い出しからカンツォーネというよりは、オペラのアリアを聞いているかのような印象を受けます。情熱的な歌詞の内容からすると、彼のダイナミックな言葉の運びが表現としてもマッチしていて聞きごたえがあります。
3.一般的な楽譜と見比べると、タリアヴィーニの歌唱は装飾音符のつけ方が少し違いますが(6小節や8小節など)、まねをして歌ってみるのはよいと思います。全体的にシンプルな旋律で、たとえば歌い出しの1小節は同じ音だけを歌っています。ただ同じ音を並べるような歌い方にならずに、いかに魅力的に歌うかという部分においてはタリアヴィーニの歌唱はとても参考になります。(♯α)
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1.オーソレミオと同じ作曲家で、カンツォーネに属する楽曲ではありますが、クラシックの歌曲とさほど差がないぐらいクラシカルなメロディ、構成の曲だと思いました。1番、2番で構成されています。2番の後半8小節が伴奏のみになり、その後歌が入って、ラストの高音をフォルテで歌い上げるという構成です。
2.声を張り上げて美声を強調するという歌い方ではなく、曲の内容を切々としっとりと歌い上げています。声を張るときもあれば、弱々しく表現するときもあります。1番の最後の高音はピアニッシモで歌っていますが、それに対し2番の最後はしっかり張って声を出し、ディミヌエンドできれいに終わります。
3. 声がただまっすぐに伸びているのではなく、次のフレーズに向かってフレーズが前に進んだり、ゆっくりになったりしていることに着目して練習してみましょう。棒歌いにならないように気をつけましょう。(♯β)
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1.曲のタイトルを直訳すると「あなたにキスをしたい」となります。愛する人と共に寝ていて、自分が先に目覚めたのでしょうか。さわやかな朝を迎えた中で、まだ寝ている相手に対して「キスをしたい」と思うけれど勇気が出ない。なのでもう1時間一緒に寝たい、と幸せに満ちた内容が歌われています。
2.タリアヴィーニの持つ声は非常に甘美でとても定評があります。また、子音の扱い方がとても上手で発音がとてもクリアであり、レガートもとても美しく聞こえます。
歌い方が清潔でありながら曲の持つ甘美さを上手に表現している印象です。
3.タリアヴィーニの歌い方からさまざまなことを学ぶことができると思います。よい意味で滑舌がよいが決してしゃべりすぎない。口形の変化を最小限に抑えつつ子音を明確に発音することや、音を保てる子音ではポジションがぶれない。それゆえに母音や子音の連結がうまく行えるようになり、レガートが美しく聞こえ、ひびきも一定の状態をキープできているということがあげられると思います。このテクニックを駆使したうえで甘美に語るように、歌い手の語り方によって歌うことができると美しく聞こえるように歌えるのではないかと思います。(♭Я)
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1.曲の内容は実に直球で、タイトルの通りです。日本人の感覚からすると、こういった直球のものに触れる機会は少ないかもしれませんが、こういったところがイタリア的でカンツォーネらしい曲のように思います。音楽も曲の内容にふさわしく甘美にロマンチックに書かれています。
2.メロディックなので比較的歌いやすいのではないかと思います。音楽の持つ甘美さやロマンチックさを活かしながら歌えると演奏効果が高くなってよいと思います。そのためには、発音・発語を工夫した言葉の滑らかさを活かして、レガートに歌える状態になると理想的だと思います。
3.前半の部分は歌い上げることよりも甘美に語るニュアンスを活かして歌えるとよいのではないかと思います。語り方が内容にふさわしくなるとそれで音楽が成立するように思います。「I'm me vurrià addurmì」からは特にこの曲の山場だと思いますので、たっぷり歌うとよいのではないでしょうか。甘く語るところは甘く語り、しっかり歌いこむところは甘美さを伴いながらしっかりと歌いこむことができると、この曲のよさを活かしやすくなっていくのではないかと思います。(♭И)
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1.まるで一篇の短編映画を観ているかのような音楽体験でした。冒頭は繊細で甘美なメロディが漂い、リズムはゆるやかに情景を描き出します。異国情緒にあふれています。愛を打ち明ける瞬間の緊張と高揚が、曲の中盤で一気に盛り上がり、テンポも語り口も熱を帯びていきます。オリジナルのイタリア語の韻律が、感情を直接ひびかせるような力を持っています。
2.タリアヴィーニの声はまろやかで、芯がありながら決して押しつけがましくないです。ふわっとした心地よい声で低音も優しく包み込むようにひびきます。一方でサビでの力強いシャウトは情熱的に耳に残ります。息のコントロール、言葉の緩急、そして高音への滑らかな跳躍に彼の高度な技術が光ります。彼が「語るように歌い、歌うように語る」名手であることがよくわかります。
3.歌い方のポイントとして、最初の一声から「息とともに語る」意識が重要です。音を張るのでなく、柔らかく投げる。中盤以降の盛り上がりでは、身体をしっかり使って共鳴を感じながら大胆に歌ってみましょう。最初と最後の静かな部分との対比が際立つほど、この曲の美しさが引き立ちます。(♭∴)
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1.カンツォーネ・ナポレターナの名曲。前半は短調、後半は長調で甘く恋心を歌っています。眠る女性を見つめ、口づけを熱望しながらも実行できずにいるというシチュエーション。8分の6拍子で、舟歌のように心地よく揺れ動きます。オーケストラはカンツォーネには珍しい木管楽器群と、ハープやマンドリンが印象的に使用された香り高い仕上がりです。
2.タリアヴィーニの歌声は甘美そのもの。リッチな声質のテノールであるものの、必要以上にはひけらかさないあたり、非常に知的で上品だと感じます。余白のある歌とでもいいましょうか、美声を垂れ流すだけのテノールとは一線を画す歌唱です。
常にマスケラから外れず、力強い部分も力ずくではなく、余裕があります。細く歌っている結果がこのように豊かな音楽になっていることは驚嘆に値します。
3.眠り姫を起こさぬよう、静かな内にも情熱を秘めた表現で歌っていただきたい曲です。力いっぱい歌うのも悪くないとは思いますが、この曲に関しては、下品にならないギリギリのところを見極める必要がありそうです。(♯∂)