ヴォーカルの耳づくりと歌唱の学び方

ブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナーや受講生によるライブラリー

V059「悪女」 シルヴィ・バルタン

1.歌詞と曲と演奏など

(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)

2.歌手のこと

(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)

3.歌い方、練習へのアドバイス

 

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  1. 中島みゆきの「悪女」のフランス語カヴァー。前奏の始まりは、高く細かい音が散りばめられて、気負いがなく少しお洒落になっています。「悪女」というタイトルからは、ややズレていますが、そこがまたよいところでしょう。自分の本心は隠して、やや強がって、遊び回っている女性を演じている女の子の歌です。カヴァーということもあり、フランス語でもそれらしく聞こえますが、日本語の歌詞だとさらに違和感がなく、中島みゆきらしい世界観が垣間見えます。

 

2.シルヴィ・バルタンは、当時の日本でももてはやされた人気の女性歌手です。日本では、外国人女性なのに強すぎず女性らしさも漂い、そこそこ艶もある声としてもてはやされたのでしょう。もちろんパンチのある声も使えたかもしれませんが、日本では要求されなかったようです。昨年は、セリーヌ・ディオンが評価されました。

 

3.曲を練習するには、キーも半音低い中島みゆきのオリジナルをまねた方がよいかもしれません。それでも楽に歌えなければ、さらにキーを下げましょう。この曲の最高音は、楽に綺麗にキラキラと歌えないと意味がありません。余裕をもったキーを選択しないと、いつまでも曲として完成しないことになってしまうので、気をつけましょう。(♭Ξ)

 

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1.歌詞は女性目線から見た恋の歌なので、曲名からも男性には不向きな曲です。穏やかな歌い出しで始まりますが、歌詞の発音は意外と忙しいので子音のせいで遅れが生じないよう拍感を持って演奏してください。

 

2.バルタンの声は癖もなく一般的にみて聞き心地のよい歌声だと思います。また、歌詞のアクセントに息を乗せる、フレーズの盛り上がりに息を送るといった息のコントロールがとてもうまく、自ずとメリハリのある立体的なフレーズに聞こえてきます。

 

3.フランス語は日本語よりも子音が多いので、歌詞に関してはていねいな確認と発音の練習が必要です。旋律の音程、発音の練習はそれぞれ別で行い、慣れてきた後で旋律に歌詞を乗せると効率よく練習できます。歌詞の発音は、リズム読み(音程を外して、リズムに合わせて歌詞を発音する)をお勧めします。子音の入れ方やタイミングを確認し、発音が遅れる箇所はリズム読みの段階で解消しておきます。発音に慣れてきたら、最終的には歌詞も旋律もテンポに乗って流れるように歌いましょう。(♯α)

 

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1.日本語でのタイトルは「悪女」ですが、フランス語のタイトル「Ta vie de chien」を直訳すると「犬としてのあなたの人生」となります。なかなかインパクトのあるタイトルです。やや抽象的な歌詞の内容ではありますが、「私」にとっては「あなたの犬としての生活」が必要なのということを、明るい曲調にのせて歌っています。

 

2.シルヴィ・バルタンの歌い方は、とても明快で聞きやすい歌い方をしているように感じます。

 

3.音域もそれほど幅広いわけではないですし、どちらかと言えば言葉数が多いように思いますので、せりふを語るようなイメージで歌うのがよいのではないかと思います。どう表現するかを語り方で変化させてみるとよいかもしれません。(♭Я)

 

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  1. AAB(サビ)を2番まで繰り返しています。少しゆったりしたテンポで歌っています。

 

2.明瞭なフランス語で歌っているように感じます。各音節が強調して聞こえるかもしれませんが、かえって日本人にとってはマネしやすいかもしれません。フランス語で歌っている割にはとても明るめの声です。

 

3.とても聞きやすいフランス語の発音で歌っているので、しっかり各音節の母音の特徴を聞きわける教材になると思います。各母音の音色の違いをまねてみましょう。各母音がしっかり歌えるようになった後は、音節が物切れにならないようにレガートで歌ってみてください。(♯β)

 

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1.イントロが不思議な音色です。2オクターブで違う楽器が同じ旋律を演奏しています。曲のつくりは単純です。Aメロとサビだけの簡単な構成です。1番はAメロが4回でサビが2回、2番はAメロが2回サビが2回です。間奏に急な転調があります。あまりに急な転調が2回あるのでびっくりしますが、元の調に戻ってきます。

 

2.低音から高音まで統一感のある声です。それはすごいことですが、ぱっと聞くには歌がうますぎて単調に聞こえるかもしれません。(少し下手なほうが「個性的」と言われて売れたりします。)Aメロを4回歌うたびに少しずつ変化があります。これもよく聞かないと変化が聞き取れないのが凄いところです。聞くポイントは、ブレスの変化と、伸ばしている音のビブラートの変化です。やや音程がフラット気味の箇所があります。

 

3.このヴォーカリストの声の統一を学びましょう。歌い始めから、フレーズの終わりの伸ばしている声の「いれかた」「伸ばし方」「抜き方」をよく聞いて、区別してまねしてみてください。(♭∴)

 

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1.原曲の内容は、悪女のふりをして心変わりした男をリリースするという複雑な女心を歌ったものですが、こちらのフランス語版は全く異なる内容の歌詞となっています。タイトル「Ta vie de chien(犬の一生)」で、内容は飼い主と犬のわかちがたい関係、あるいはそれを暗喩とした、互いに隷属しあう恋人同士の関係を歌ったものかもしれません。

 

2.シルヴィ・バルタンは非常にていねいに歌う歌手だという印象を受けました。音の運び方、しゃべり方ともに明瞭で、歌詞は数回聞けば書き取れるレベルです。強烈な個性はありませんが、万人受けする歌を歌う歌手だと思います。

 

3.是非日本語、フランス語両方で歌ってみてください。音の跳躍が少なく、滑らかなメロディラインに言葉を乗せて歌う訓練にぴったりの曲です。奇をてらわずにどこまで表現できるかのチャレンジです。(♯∂)