1.歌詞と曲と演奏など
(ことば、ストーリー、ドラマ、情景描写、構成、展開、メロディ、リズム、演奏、アレンジなど)
2.歌手のこと
(声、オリジナリティ、感じたこと、伝えたいこと)
3.歌い方、練習へのアドバイス
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1.セリーヌ・ディオンも最愛の夫を、2016年に亡くしています。そのあたりも、今回の熱唱につながっているのでしょう。
曲の始まりが、第5音から順次進行で第3音に下がり、そのまま第3音を繰り返してから第5音の#を通過しながら第7音、高い第2音と進んで高い主音のロングトーンへ。それを模倣して、第6音から第4音へ順次下行して第4音を繰り返し、第6音、高い主音、高い第3音へ進んでから、高い第2音のロングトーンへと。このドラマティックな上行音型を、さらに発展させて、高い第3、4、5音から高い主音へもどり、第7、6音から高い第4へ跳躍し、高い第5、4音を飾りにして、高い第3音、高い主音、高い第4、3、2音のロングトーンに落ち着く、絶妙なメロディです。このような落ち着きのあるドラマティックな前半とは対照的に、細かい音符でまるで語りのように構成されているのが中間部分で、不安感さえ漂いそうな部分を歌ってから、冒頭のメロディにもどり、さらに歌い上げることになります。
2.セリーヌ・ディオンは、ピアフに比べると、少しクラシック風で、オールマイティな安定感が漂います。通常は、もっとクラシック風なイメージがありますが、ピアフに敬意を表してか、ピアフ寄りに歌っているようです。中間部のレシタティーボ風の部分は、さらに言葉を大切にしていますが、ベースにはクラシック風なオーソドックス感が、にじみ出ています。
3.まずは、セリーヌ・ディオンよりもさらに、クラシック風に歌うことが、発声も伸ばしてくれます。その後で、シャンソン風に取り組みたい人は、まねしてみましょう。 (♭Ξ)
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1.歌い出しから上行形の旋律で始まりますが、この曲の主題のような部分であり、この旋律で最初の印象を左右するため正確な音程が求められます。その直後には、下にも上にも音幅のある旋律が続きますが、声が階段のように途切れないよう極力レガートを意識して演奏したいです。
2.ディオン自身の声に合うように原曲よりも調を高くしたことで、声の伸びやかさがより引き立ったように思います。口腔内が開いていることや、フレーズ末尾の息が途切れず次のフレーズに向かっていることで、聞き手も一緒にブレスをしながら歌が進んでいくように感じられます。また声を張るところは張り、緩めるところは緩めるという緩急も絶妙なバランスで歌っていることもより聞き手を歌に惹き込みます。
3.出だしから上行形の旋律があるので、正確な音程の上に歌詞を乗せたいです。いきなり音程と歌詞を同時に歌うのではなく、音程の確認と歌詞のリズム読み(音程を外し、リズムに合わせて歌詞の発音をする)をそれぞれ別に行うと効率よく練習できます。また、始めの段階ではややゆっくりめのテンポでていねいに練習し、音程やリズム、歌詞の発音が馴染んできた後で元のテンポに戻すと曲全体が安定します。(♯α)
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1.シャンソンの代表作で、作詞はピアフによるものです。日本語版では越路吹雪などによって歌われていますが、複数あります。原語のフランス語を訳してみてみると、細かい部分で日本語版とは異なることがわかると思います。ぜひ、フランス語をよく調べて、原語の内容を理解して歌ってみてください。
2.ディオンのこの歌唱では、彼女の解釈、ことば、音楽性を活かした歌唱になっているように思います。彼女の持ち歌として充分通用するでしょう。彼女自身も難病に侵されているという中での経験やさまざまな要素が、この歌唱に表れているのかもしれません。
3.この曲はピアフの歌っているイメージを強く持っている方が多いのではないでしょうか。彼女の持つ表現力や音楽性はすさまじいものがあると思いますが、その一方で、発声面では少々「揺れ」が目立つのが気になるところです。この曲を歌おうとする人の中には、その「揺れ」までマネしようとする人がいるかもしれませんが、それは学ぶべきことではありません。この曲を自分自身がどう解釈してどう語りたいか。それを追求してまとめたものがディオンのように、自分の声と表現で演奏できるとよいですね。
中間部に関しては特にセリフのように語る要素、ドラマティックな要素が見えないと非常につまらない歌に聞こえてしまうと思います。語りで進めていくことを大切にしてみましょう。(♭Я)
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1.ABAの構成です。Bの部分は語りのように歌われます。「空が落ちてきても、地面が割れても、どんなことがあっても私はあなたを愛する。あなたが望むなら髪をブロンドにも染めるし、祖国も捨てる」と深い愛を歌った曲です。
2.圧巻のパフォーマンス、素晴らしい復帰の舞台だったと思います。フランス語話者とのことで、とても説得力のある語りの素晴らしい演奏だと思いました。(私がそう評価するのもおこがましいくらいの。)オペラの発声と共通する面も多いのですが、あきらかに違うのは、高音で声が開いている、girareしていないことです。そのため音が広がってしまいマイクなしで広い会場をオーケストラを突き抜けて通る声というよりも、パワフルさを感じさせる迫力のある声かと思います。
3.フランス語をしっかり発音練習し、ディオンのドラマティックな語りを、表現力をもって読めるようになることが近道かと思います。最後に驚くほどのロングトーンが聞かれますが、横隔膜をしっかり広げてそれを維持する体感部の筋肉が必要かと思われます。(♯β)
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1.雄大な曲です。言わずと知れた、シャンソンのスタンダードナンバー。苦しいほどの一途な愛。あなたのためなら地の果てまでも。歌詞の情熱的なメッセージが、音域の広い旋律とともに心に突き刺さります。
2.パリオリンピック開会式での歌唱。難病と闘っているディオンの久しぶりの舞台とのことです。エッフェル塔で歌っているそうです。感動的な歌唱で、無理がありません。感情的な表現は見当たりません。むしろ、すべての声が正しく使われているという印象を受けました。正しく響き、正しく身体を使っています。このような「正しい」歌い方がこのように深い感動を呼ぶのだ、ということが意外でした。
3.せっかくなのでフランス語で練習しましょう。ディオンになった気持ちで、オリンピックで歌っている気持ちになりましょう。思い込みも大切です。
いつもスタジオでレッスンをしていると、音量というより、空間の使い方が「狭く」「みみっちく」なってしまいます。イメージを大きく持つ練習にいいでしょう。そしてフルヴォイスでフランス語で冒頭を熱唱してみてください。うまくいかなくてもいいのです。自分の理想に近づける努力を続けていきましょう。(♭∴)
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1.「あなたの燃える手で私を抱きしめて」という日本語の歌詞がよく知られているラブソングですが、原詩の内容は、どんなに望んでも戻ることのない故人への愛を高らかに歌ったものです。
2.ディオンの歌唱は大変力強く、宇宙を感じさせるような壮大さがあります。力いっぱい歌っているにもかかわらず余計なことは一切していないため、聞いていて心地よいものとなっています。
3.徹頭徹尾、熱いものを絶やさないように意識しましょう。そのために重要なのは、休符で休まないことです。声を出している間にいろいろ表現するのは当然のことですが、休符の間に想いやエネルギーの流れが切れないように意識しましょう。(♯∂)