「背くらべ」086

ピョンコ節の多い中山晋平の作曲です。この曲が3拍子ということもあるのか、スキップのリズムは一ヶ所も出てきません。ただ、日本らしさを大切にしていた作曲者らしく、4小節単位のフレーズが、通常は4個のところ、6個で構成されていて、前奏も4小節ではなく5小節になっています。それでもあまり不自然には感じず、流行り歌い継がれてきたのは、日本人の感覚に沿っているからなのでしょう。また歌詞は、少子高齢化の現代の日本とは違い、当然のように「兄さん」がいる、兄弟の多さを反映し、家の中から「遠いお山」がよく見える、高層建築物の少なさを感じさせます。そこに表現されている「こどもの日」の、子供たちの晴れがましさと喜びを、しっかりと歌うことが大切でしょう。
1、2フレーズは、伴奏部分にスタッカートが付いているように、あまりレガートにならず、はつらつと歌い始め、3、4フレーズでは伴奏部分の音符が細かくなりますが、そこにスラーが付いているので、生き生きとしながら徐情感を持ちつつ、ややレガート気味にするとよいでしょう。5、6フレーズ目は、また伴奏部分にスタッカートが現れますが、終わりの2小節ではスタッカートが消えるので、最後は、レガートでしっかり歌いあげましょう。([E:#x266D]Ξ)

日本語での歌詞でレガートに歌うためのメニュとして取り組むと面白い曲だと思います。若い世代の人から聞くと少し聞き慣れないようなメロディだと思います。しかし日本的なメロディにどこか懐かしく思う人も少なくないのではないでしょうか。
声楽家が最初に勉強することばのある曲は古今東西ほぼイタリア語です。 単純に考えれば母国語の歌のほうが意味もわかりますし歌いやすいと思います。ではなぜイタリア語かというと、声の基礎作りは、考え方は様々ですがいきつくと、母音の響きの統一とロングトーン、そしてレガートです。日本語が高低アクセントに対しイタリア語は長母音がアクセントなのですでに喋っているときから自然に声を伸ばしていることになります。ですからイタリア語をしゃべるということ自体が発声練習になりえるのです。
日本語は伸びることがあまりなく、歯を閉じた状態でも喋ることができます。浅い言語の日本語をレガートで歌うというのは実はかなり高度な技術を要します。この背くらべは音域も広すぎませんから、日本語のレガートの技術を学ぶ初歩的な曲としてはとてもいいと思います。([E:#x266D]Σ)